ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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隠忍
日時: 2010/07/22 16:22
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

〜主な登場人物〜
神崎悠 kanzaki yuu(15) 孤独な天才美少女。
鬼藤大和 kidou yamato(18) 抜群の運動力を持つクール少年。
月次空雅 tsukinami kuuga(16)ムードメーカー的存在美少年。
橘築茂 tachibana tsukumo(18)天才的な頭脳を持つ知的少年。
荻原日向 ogihara hyuuga(17)心優しい常に笑顔の王子様美少年。
氷室玲央 himuro reo (19)冷めた態度の無口少年。
春日井煌 kasugai kou (20)スタイル抜群の大人びた男性。

柊柚夢 hiiragi yuu(15)

他 
佐々木舞 sasaki mai(15)悠を友達だと思ってる。

神崎要 kannzaki kaname (45)悠の父。
  翠紗 kannzaki misa(43)悠の母。
  流香 kannzaki ruka(13)悠の妹。
  柊斗 kannzaki syuuto(10)悠の弟。

高須賀篤 takasuka atsushi(45)
   芹花 takasuka serika(23)悠の姉。
   昴 takasuka subaru (17)悠の兄。

風峰暁 kazamine satoru(36)警視庁最高司令官。





「あぁ〜平和だなぁ」
3階にある音楽室の窓から野球部やテニス部の応援の
声を聞きながら、5月の青い空と木々を見ていた。

私はここ、T中学校で毎日隠忍の日々を送っていた。

「悠!どうしたの?空なんか見上げて」
私の名前を呼ばれて一瞬どきりとしたが声のトーンですぐに安心できた。
「舞。ううん、ただ風に当たってただけ。」
にっこり微笑んでみせると舞も「そっか」と一緒に空を見上げた。
「はぁ〜それにしても、中間テストの結果、やばかったなぁ。ねぇ悠。どうしたらそんなに頭よくなるの?」
またこの話かと、内心飽き飽きしたが表に出ないようにいつもの笑顔で答える。
「別に私はよくないよ。」
「嘘!ま〜た学年1位だったでしょ!!お見通しなんだからね。」
口を曲げて話す舞に私は少し苦笑した。
「学歴優秀、スポーツ万能、淡麗美麗、さまざまな才能を持つ学校一の天才少女!ほんっとに悠がうらやましいよ・・・。」
「大げさだって。別に私みたいなのはそこらへんにいるから。」
舞のいつものセリフに罪悪感を抱きながらも普段通りに答えた。

いつもこうだ。
誰もがみな私を天才少女だと言う。どこが天才なのかさっぱり分からない。こんな最低な人間に騙されている舞や教師たちがばからしく思う。

私は残酷な人間だ。

確かに人よりもすぐれているのは本当だが、それで優越感にひたったことなど一度もない。それどころか、自分が愚かに思えてくる。
なぜ自分だけこんなにも普通ではないのかとーー。

私は普通がよかった。
自分が普通ではないことに、周りの人間が憎らしく思う。私の周りにいる人たちはみな、いい人ばかりで、私を好きといってくれるし、信じてくれている。だけど私は誰ひとり、信じてなどいない。
人を信じられるわけがない。

(ほんっとうにめんどくさい世の中だよね)
舞が習いごとがあると言って帰って行ったあとも一人で空を見ながら自分の未熟さに孤独となっていた。

だからあんな突然の出会いが私に訪れるなんてこのときの私にはまったく考えられなかった。

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七つ星 ( No.35 )
日時: 2010/09/27 18:27
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

「落ち着いた?」

煌がコーヒーを私に差し出しながら、言った。
私たちはあの後、親戚に後のことはまかせて、そのまま煌の車で6人の家へと向かった。
そして今、6人の家のリビングのソファに座っている。

「うん・・・。ありがとう。」
私はコーヒーを受け取って、一息ついた。
私の隣には大和と築茂が座っていてくれて、前のソファに玲央と日向、少し離れた椅子に煌、
カーペットの上に空雅が座って、私をみんなで守ってくれているようだった。

「悠、お前が話したいときに話してくれればそれでいい。何も焦ることはない。」
築茂の初めて微笑んでいる顔を見て、少しびっくりしたが、とても嬉しかった。
「うん。でもね、私は今みんなに伝えたいんだ。」

そして私はゆっくりと話し始めた。

「私は今まで、自分の本当の気持ちを誰にも話したことがなかった。
ずっとずっと、本当の自分を隠していた。誰にも気づかれぬように。
そして、自分も気づかぬように———。

人を愛さず、人を信じず、誰にも甘えず、孤独の中をさまよっていたんだ。

いつか死ぬ人間を愛すなんてばかばかしい。
いつか絶対に裏切る人間を信じるなんてばかばかしい。
自分以外のやつを頼るなんてばかばかしい。
そうやってずっと逃げてばかりいた。

そして、自分は一生孤独なんだと、私には味方なんていないんだと思い込んでいた。

でも私の周りには私を愛してくれる人、私を信じてくれる人、私を頼りにしてくれる人がたくさんいた。
だけど余計にそれが、私にはプレッシャーだったんと思う。

もし、私からみんなが離れて行ってしまったらどうしようって、ずっと不安だった。
そう思ってしまう自分が悔しかったから、私は自分が傷つかない一番楽な方法で、人間関係から目をそらした。

それでもやっぱり辛かった・・・。

一番辛かったのは、私の涙をぬぐってくれる人がいなかったこと。
私はずっとずっといろんなことに我慢をしていた。
自分を隠すということは、いろんなことに我慢をしなくてはいけない。

いくら辛くても苦しくても絶対に涙は見せなかったし、絶対に弱音なんか吐かなかった。
無理をしてでも笑っていた。
本当の私を知っている人なんて本当にどこにもいなかったんだ。

家族にも偽りの自分を見せていたから・・。

でも家族だけはしっかり愛していたよ。
だけどね、愛しさが生まれれば生まれるほど、一緒に憎しみも生まれていったんだ。
こんなに近くにいるのに何にも知らないで、私を知ったふりをして、へらへら笑っていて、すっごく憎かった。

だから、家族が死んだってわかった時も、今日が来るまでも、涙なんて流れなかったんだと思う。
いつのまにか、愛しさより憎しみのほうが大きくなっていたんだって思った。

でも、みんなを見た瞬間、今まで堪っていたものが、今まで我慢してきたものが我慢しきれなくなった。

大和の腕で抱きしめられた時、初めて人のぬくもりを感じたんだ。
すっごく温かくて、いろんなことから解放された気がした。
もう、私は独りじゃないんだって感じることができた。

ううん、最初から私は独りなんかじゃなかったんだね。
ずっとずっとたくさんの人の腕の中にいたのに、自分がそれを受け入れられていなかっただけだったんだね。

それを教えてくれたのは、みんなだよ。ありがとう。」

私は涙をたくさんこぼしながら、みんなの一人一人の目を見て微笑んだ。
やっと、自分の気持ちを素直に言えてとてもすっきりした。
気持ちがとても楽になった。

「悠、俺たちは何があってもお前を独りにしない。そして何があってもお前を信じている。
俺たちが今ここにいられるのも、悠のおかげなんだ。」
大和が私の手も握りながら、まっすぐに私の目を見て言ってくれた。
私もそれが嬉しくて、大和の手を握り返した。
「きっと、すぐに本当の自分を見せることは難しいだろう。だが、心が変わればいいだけの話だ。
きっとお前はお前に好いていてくれるやつらのことを本気で好きだったわけではないだろう?
それをそいつらに言うのは、はっきり言ってやめたほうがいい。

じゃぁ、これからも嘘をつき続けるのか?

いや、これも違う。
お前がこれから本気でやつらを好きになればいいんだ。
これでお前はもう自分を偽らなくていいし、嘘をついているわけではない。
アメリカの心理学者、ウイリアム・ジェームスにこんな言葉がある。

 心が変われば行動が変わる
 行動が変われば習慣が変わる
 習慣が変われば人格が変わる
 人格が変われば運命が変わる
 運命が変われば人生が変わる

すべてを変えるのは心からだ。
難しいかもしれないが、悠ならできると俺は信じている。
いや、ここにいる全員が信じているよ。」
築茂の言葉に私はとても大切なことを学んだ。
「うん。ありがとう、築茂。」

「悠、これからは一人で我慢しないでほしい。辛いことがあったら、俺たちに言えることはいってほしい。
力になれるかは分からないけど、それでも俺たちはいつでも悠の幸せを願っている。」
熱い玲央の言葉にまた涙があふれた。その涙をふきながら、私は頷いた。

私の涙が止まるまで、みんなそばにいてくれた。
きっともう私は大丈夫だ。
本当の本当に強い人間になれるような気がする。
彼らと一緒に・・・。



いつの間にか、雨は上がり空にはきれいな七つ星が輝いていた。

愚鈍 ( No.36 )
日時: 2010/10/09 20:15
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

夏休みが終わり、本格的に学校が始まった。
9月の目玉の学校行事と言えば、体育祭だ。今年の私の学校は、種目のほとんどが生徒会主催によるものだ。
そのため、学校が始まると、私はまた忙しい日々を送ることになった。

「会長!2年生の団旗リレーなんですが、各クラスの旗の案がまだ片付いてないようです(汗)」
「分かりました。まぁ、2年生は部活も忙しいですからね。では、旗のイメージだけでも考えるように言ってください。
あとは手の空いている2年生に作らせましょう。」
「会長っ。パン食い競争と天食い競争どちらかがいいというアンケートでは、アメのほうが多かったです!」
「そうですか。では、アメを当日までに一袋30個入っているものを、300袋何とか集めてください。
金は生徒会日で払うので、領収書付きでお願いします。」
「はい!」
「会長、1年の障害走の準備物はここに書いてある通りでいいですか?」
「ええ、大丈夫です。数は決められた数で用意してください。」
「あーはいは〜い、明日の5,6時間目に全体練習をやるんだよね?それの確認をあとでしておきたいんだけど。」
「分かりました。この仕事が終わってからでもいいですか?」
「あいよ〜。」

などなど、生徒会役員は合計11人、しかし、会長である私が最年少で、高一だ。
1年生での生徒会長はもちろん前代未聞だが、先輩、先生からの信頼の上、こうなっている。
もちろん、ほかの役員は全員先輩だ。だから、やりにくいところもあるが、そこは会長としての自分を見失わない。

なんとか、着々と体育祭に向けての準備は進んでいった。



私はあれから、彼らの家で暮らしている。
前、住んでいた場所からそんなに遠くはないから、学校もかえずにすんだ。
女子一人と、男性6人が同居しているなどということが、世間に知り渡ったらどんな目で見られるか分からないので、
学校側には、伯父の家に住んでいると言ってある。


いつも私が家に帰るのは夜の10時〜12時だった。
最高では夜中の2時になることもあった。
しかし私が家に帰ると必ず全員が起きて待っていてくれて、私を向かえてくれる。
「ただいま〜。」
今日は10時頃に家に着いた。しかし、早く着けばほかにやることがある。
「おかえり、悠。今日もごくろうさん。ご飯できてるよ。」
「ありがとう、日向。いつもごめんね。」
「ううん、全然平気だよ。」
平日は日向が夜ごはんを作ってくれる。休日、私に余裕があるときは私が作る。

リビングに行くと、いつものように、テレビの前に空雅と大和と煌、築茂はパソコン、玲央は本を読んでいた。
「みんな、ただいま。」
「おかえり。」
と私のほうを見て、全員が言ってくれた。
「ご飯食べ終わって、お風呂入ったら今日の報告をしてもらえるかな?」
「了解!」
空雅が代表で答える。
今日の報告というのは、もちろん、私がラクスである以上、かかせない仕事である。

ご飯とお風呂をさっさと済まし、リビングのソファに座った。
「さてと、築茂、何か分かった?」
「あぁ、ファイルG462の事件については、悠の考え通り、炭疸菌が原因と分かった。」
「やっぱり、そうだったか。じゃぁそれは、東京都地裁ののほうにまかせよう。
大和と煌はどうだった?」
「アメリカで2004年に起こったテロ事件は、直接あっちに行って、アメリカのパソコンでハッキングをしないといけないみたいだ。」
「あぁ、あと大和のに付け足しで、これはかなり危険だよ。」
「だろうね。普通ではありえない方法でやつらはやってくるからね。でも、逃しておくわけにはいかないよ。
必ず捕まえる。」

こうして、夜には警察沙汰の動きを確認している。
数日前に、みんなからアメリカのFBIから私の力がほしいと連絡があったことを聞いた。
私はそれを承諾した。6人や風峰さんはかなり心配していたが、困っている人たちを放っておくわけにはいかない。

話し合いが終わり、おやすみとそれぞれ言って、それぞれの部屋へと戻った。


もうすっかり暗くなったが、私は眠れずにいた。
学校のことや、事件のことで忙しくて体は疲れているが、頭は起きたままだった。
私はベッドから抜け出して、何か飲もうと思い、リビングへ言った。

キッチンの電気をつけると、ソファに誰かがいた。
大和だった。
(あーあ、ここで寝ちゃったのか・・・。大和もいろいろと疲れてるんだろうしね。
忙しいのは、私だけじゃないか。)
大和を起こさないように、大和の上に掛け布団をかけた。

しばらく、大和の寝顔を見ていた。
(やっぱり、きれいな顔だよなぁ・・。ってか、6人全員ともかっこいいよね。
こんなに若いのに、命にかかわることやってんだから、すごいよなぁー。)
そんなことを思いながら私は微笑んでいた。
(もうそろそろ、寝ようかな。頭は起きていても、体が明日ついてきてくれなくちゃ意味がないからね。)
そう思って、立ち上がろうとした瞬間、
グイっと手首を引っ張られた。

「大和・・・?」
「う・・・んー、あ、悠。」
「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫、悠こそどうしたの。もうこんな遅いのに。」
「なかなか眠れなくてね、何か飲もうと思って下に降りてきたら、大和がソファで寝てたんだもん。」
「あ・・・布団かけてくれたんだ。ありがとな。」
「ううん、大丈夫。」

私がそう言って少し沈黙が流れた。異様な雰囲気だった。

「あのー・・大和。」
「ん?」
「・・・・・・手。」
私はずっと大和に手を掴まれたままだった。
「放してほしいの?」
「・・・・。放してくれないと眠れないから。」
「それもそうだね。じゃぁ、ここで寝る?」
「何言ってんの(汗)」
「眠れないんでしょ?俺の隣ならよく眠れると思うぜ?」
「大和、寝ぼけてるな。さっさと寝ろ!」
「はははっ。寝ぼけてなんかないよ。悠が鈍すぎんのが悪い。
これでもすんげー我慢してるんだからな。」
「我慢?私が大和に我慢をさせてるの?何を?意味が分からん。」
「今は分かんなくてもいいけど、そのうち俺も限界が来たら容赦しないから。」
「そんな変なこと言ってないで、早く手を放して!」

ガタンッ。

いきなり物音がして、私はふっとその音のしたほうを向いた。
そこには、怖い顔をして立っていた、築茂がいた。

「何してる。」
すごい冷たい目・・・。その瞳の中に静かに怒りも混じっているような眼。
「あ・・築茂。」
「大和、お前はこんな夜に何をしているんだ。」
「・・別に。悠と話してただけだよ。」
「そうなのか?悠。」
「んーと・・そう、なのかな。」
「疑問形だな。俺には悠は嫌がっているように見えたが。」
「あーはいはい。俺が悪かったです。悠、悪いな。ふざけすぎた。」
「ふざけすぎた?あはっ、やっぱりふざけてたんだ。ならよかった。
大和、どうかしちゃったのかと思った。築茂、まぁこの通りだから、大丈夫だよ。」
「・・・。」
「っと、じゃぁ俺は部屋で寝るわ。おやすみ。」
「おやすみ。」

大和はそう言って、部屋へと戻って行った。
ここから出て行く前に、少し築茂と目を合わせて睨んでいたのは、私の気のせいだろうか。

「・・じゃぁ私も寝る。おやすみ、築茂。」
「悠。」
「何?どうかした?」

そう言って私が振り返ると、築茂は私のほほに触れた。

私の目をまっすぐ見て、何かを言いたそうだった。
「築茂?」
「いや、なんでもない。早く寝ろ。明日も大変だからな。」
「うん・・。おやすみ。」

私は少し駆け足で自分の部屋へと戻って行った。

なんなんだよ、二人して。
なんかいつもの二人じゃなかったみたいだな。
私が何かしたのか?

そんなことを考えながら眠りに就いた。


蝶は悪魔の掌の中 ( No.37 )
日時: 2010/10/09 20:57
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

あの夜から何もないまま、ついに体育祭の前日となった。
私は生徒会室で、生徒会役員のみんなと明日の最終打ち合わせへと入っていた。

「ついに明日は体育祭です。天候は晴れの予報ですから、心配はないと思います。
学校にはかなりの人数が入ることが分かっています。朝は交通整備をしっかり行い、安全にも重視をしましょう。」
「はい!」
「各種目の準備や放送、接待案内などくれぐれも人さまのご迷惑のならないように実行してください。
また、私たちが楽しまなければ生徒もやる気が出ないでしょう。
思う存分に楽しみながら、優勝を目指してください。」
「はい!」

約10分くらいで、明日の調子も考え終わらせた。

私は校舎に残って、まだやらなければならない仕事と、窓閉めをしていた。
すべてが片付いて、帰ろうとして靴をとろうとしたら、一通の手紙が入っていた。

(いまどき靴箱にラブレターかよ・・。)

そう思いながら宛名を見ると、隣のクラスの男子からだった。
こんなのはもう日常茶飯事だった。
まだ高校に入学して約半年だが、告白はこれで100回をらくらく超えているだろう。

一応、手紙は受け取って、私はいつも通り帰宅した。


次の犠牲者を私はまだ知らなかった—————。




パンッパンッパンッ
体育祭当日の朝6時になると、体育祭開催を連絡する、花火がなった。

「悠、俺たちいけなくてごめんな。」
「いいって。それにみんなも体育祭なんでしょ?煌は教師なんだから、休むわけにはいかないし。
私は大丈夫だから。」

そう、煌は教師でほかの5人もまだ学生。都内の学校はほとんど同時に体育祭を行う。
だから、私はみんなのを見に行けないし、みんなも私のを見に来れない。

「悠!頑張れよっ。俺たちもガンバっからさ。」
「おうっ。空雅は元気があればなんでもできそうだからね。」
「俺も頑張るしー。」
「ぜってーに大和には負けねーかんな!」
「お前なんか視界に入ってねーよっ。」
「そっか、みんな違うクラスなんだもんね。お互い頑張れよ!」

そんな会話を朝っぱからしていた。
築茂や玲央は普段、動かないようだがかなりの運動神経の持ち主だ。
一番いいのは大和だけど、やっぱりみんなの体育祭も見に行きたかったと思う。

「さぁーてと、私はもう行くよ。生徒会は朝から忙しいんでね。」
「そっか、じゃぁ気をつけてね。いってらっしゃい。」
「いってきまーす。」



そして、体育祭の開幕。
順調にことは進み、どのクラスもいい勝負をしていた。
私はもちろん、クラスのエースなので、さまざまな種目でクラスに貢献をしていた。

そして、あっという間に時はすぎ、結果発表となった。
「1年生優勝—————3組。」
私のクラスだった。私は心中とても喜んだが、表には出さず、冷静さを保っていた。
縦割り班の優勝も3組だった。純粋に喜んでいる生徒、悔しがっている生徒、全員を見て
私は今年の体育祭はかなり成功したと思った。

閉会式も終わると、片づけに入った。
片づけをしていると、たくさんの人が私に寄ってきて、いろんな言葉をかけてくださった。
生徒会様さまという感じだった。

片付けもすべて終了して、私は生徒会役員を呼んだ。
「今日は大変お疲れ様でした。無事成功となりました。明日は、ゆっくり体を休めてください。
あとの片づけは私がやっておきます。」
そう言い残して、すべてが解散となった。


私にはまずやらなければならないことがあった。
昨日告白をしてきた人への返事だ。
彼を見つけると私は呼んだ。

「昨日はありがとう。とてもうれしかったです。」
「あ・・いえ、こちらこそ。おっ俺、本気で神崎さんのことが好きで、ずっと見てました。」
「うん・・・でもね、」
彼はとても勇気を出して、私に告白をしてくれていることが分かった。
でも、答えはもちろん決まっている。
私は常に全員、同じ答えを出している。

「私みたいな人間を好きになっちゃダメだよ。」



家に着くと、もう全員帰ってきていた。
「おかえり、悠。どうだった?」
「ただいま。私のクラスは優勝したし、縦割りも優勝できたよ。」
「へっ!憎たらしー。」
「あれっ空雅、その様子だと・・・ははは」
「笑うんじゃねーよ!そうですよーだ、大和に負けましたっ。」
「そこいばるとこじゃねーし。」
「出たなっくそ大和!あれはまぐれだ!本当は俺の勝ちだったはずなんだからなっ。」
「何度でも言え。結果は俺の勝ちだ。」
「なんだとー!」

そんな二人の様子を見て私は笑った。

「疲れただろう、早く飯を食え。」
「うん、ありがと玲央。」

今日だけは久しぶりに早く眠れた。
とても深い眠りで、嫌な夢は見なかった。


ピロロロロピロロロロ。
携帯の着信で目が覚めた。
「ん〜誰だよ、こんな朝早く。」
着信画面を見ると、校長先生からだった。
私はびっくりして、すぐに出た。

「はい、神崎です。」
「校長です。悪いね、こんな朝早く。」
「いえ、一体どうしたんですか?」
「あぁ、実はね・・・」


その内容は、つい昨日私が告白の返事を出した、男子生徒が交通事故にあい、死んだという内容だった。

操られる蝶 ( No.38 )
日時: 2010/10/10 16:21
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

電話をもらってすべての状況を飲み込んだ私は、すぐさま、緊急連絡として生徒会役員に伝えた。
そして、休みであったはずの今日を学校側は臨時開校とした。

そこで彼が亡くなったことを生徒に伝えた。

今年に入って、生徒が事故で死んだのは2人目だ。
そのどちらもが私とかかわりのあった人間。
そして、私の身近で死んだ家族も合わせて、8人だ。


—————胸騒ぎがおさまらなかった。



「確かにおかしいな。もうこれで8人もの人が死んだというわけか。」
私の考えていることを、家に帰ってから彼らに話した。
「やっぱり築茂もそう思うでしょ?でも、どう考えてもすべてきちんとした事故なんだ。」
「事故はいつどこで起こるか分からないしね。」
「日向の言うとおりだよね。でも、もしこれが偶然だったとしても、明らかにおかしいことがある。」
煌が眉を寄せた。私も煌と同じ疑問を抱いていた。
空雅だけは分かってないみたいではてなマークが並んでいる。
「なんだよ?おかしいことって」

「事故にあった人間とその原因の相手側、どちらも死んでいるんだ。」

「それってどういうこと?」
「もし、これが誰かが意志的にやったのだとしたら、相手側も殺してしまえば、相手は何も話せない。
つまり、すべて事故で処理されてしまう、ということだよな。」
「そう、大和が言ったとおりだよ。」
「じゃ、じゃぁこれは殺人だっていうのか!?」
「その可能性もないわけじゃない、というだけの話だ。」
「これは、調べてみなくちゃ分からないみたいだね。」
「ええ。みんな、私に力を貸して。私は真実を突き止めたい。」

真剣なまなざしでみんなに訴えた。
そんな私を見て、玲央が動いた。
「当たり前だ。」
「だよな!こんなのほっとけるわけにいかないでしょ。」
「お前はあまり邪魔すんなよ。」
「あぁ?邪魔なのは大和のほうだっつーの!」
「うるさいぞ、お前ら。遊んでる暇はないんだからな。」
いつもの大和と空雅を叱りつける築茂。
そんな姿を見ていると、本当に心強い。

「ありがとう、みんな。」

私はこれが事件ではなく事故であることを心の奥で願いながらも、調べ始めた。





しかし、これが悪魔の狙いだったのです。



蝶率いる、ミツバチ始動 ( No.39 )
日時: 2010/10/23 18:08
名前: 涙歌 (ID: qizRGjjT)

亡くなった男子生徒の葬儀も無事終わり、私たちは本格に事件について調べ始めた。
東京都警視庁に全員集まり、刑事さんたちも加わり捜査会議を開いた。

「今ままでの事件の流れを確認します。

 第一の事件 私の兄、神崎昴 7月23日にトラックとの接触事故で死亡。
 第二の事件 私の友人、佐々木舞 8月12日に東京都○○プールで、転落事故で死亡。
 第三の事件 私の家族全員 8月31日に交通事故で死亡。
 第四の事件 私の同級生 男子生徒 9月11日に交通事故で死亡。

なお、第二の事件以外はすべて交通事故に巻き込まれた人は亡くなっています。
つまり、事故を目の当たりにした人で生きていた人はいませんでした。
その結果、交通ルートなどから見て、事故と判断されました。
また、事故にあった車やトラックは衝撃により、何がどうなっていたのか分からない状況でした。

ここまでは大丈夫でしょうか?」

全員の目を見て、大丈夫そうなのを確認して次へと進めた。

「これからの捜査の動きについて確認します。
事前に分けられた班で各自調べていただきます。
Aグループさんは、第一の事件について、現場の周辺の調査をお願いします。また、兄の乗っていたバイク、
相手側のトラックの企業メーカーで働いている人の名前を調べてください。
Bのグループさんは第二の事件、Cグループさんは第三の事件、Dグループさんは第四の事件について、
Aグループと同様に調べてください。

またその他で気付いたことがありましたら、私のほうに確認の上、捜査を行ってください。
何か質問はありますでしょうか?」

「はい。この捜査は世間には極秘で行うのでしょうか?」
「そうですね。絶対にこの中の情報が外に漏れないように注意をしてください。
とくにマスコミや新聞社には要注意をお願いします。
ほかにいらっしゃいますか?」

「では、なるべく早く事件の真実を見つけられるように、細かいところまで捜査をお願いいたします。
では、各自それぞれの仕事へ移動してください。」
これで、事件への動きが本格的になった。
私と6人は全員が部屋から出た後、私たちの動きを話し合った。

「みんなにお願いがあるの。」
私はみんなの目を見て真剣に話し始めた。
「よく分からないけど、まだ事件が続くような気がするんだ。だから、もしかしたらまた誰かが死ぬのかもしれない。
だけど、絶対に死人だけはもう出したくないんだ。
もし、次に狙われるとしたら私とかかわりのある人が狙われるはず。
犯人は私と6人の関係をまだ知らないと思うんだ。だから、このまま犯人にあななたたちのことを気付かれないようにしたいと思う。」
「おい、それはお前にあまり近づくなってことか?」
「・・・できれば築茂の言うとおりにしたいんだ。
だけど、それだと連絡するときとかもあるから完全には無理なんだ。
それに・・・・私がみんなと離れるなんて絶対に嫌だから。」
こんな言葉を口にするのが恥ずかしくて少し、下を見ながら言った。
そんな私の姿をみんなは表情を出さないように頑張っているが、ばればれだ。
「分かったよ、悠。それに、俺たちだって悠と離れるなんてぜってーにやだかんな!」
「へへっ、ありがとう空雅。それじゃぁなるべく私たちは人目につかないようにしよう。
それと、もうひとつ約束をして。」
この言葉を言わなければ絶対に私は安心してみんなに任せられない。



「—————絶対に死なないで。」



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