ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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理想郷
日時: 2010/08/14 13:59
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)

この物語の題材は『理想郷』です。
エデン、ユートピア、シャングリラや桃源郷……そんな数々の理想郷を舞台に様々なキャラ達が物語を繰り広げます!
楽しんでくれると嬉しいです!
多分微SF気味だと思います。

一日一回か二日に一回は更新を心がけていますが、意外と体力が持たなかったり……w

目次
序  >>3
第一話>>7-8>>24>>35-36
第二話>>37>>39>>41
第三話>>42-44>>47-48
第四話>>51>>54>>57-58>>61
第五話>>62>>65-67>>72-73>>76-77
第六話>>78-80>>89>>92>>96 幕間>>97
第七話

第二回目のオリジナルキャラ募集です。
良いと感じた物だけを採用させて頂きます!
期限は来週の木曜日まで!
皆様の個性豊かなキャラをお待ちしております。

募集用紙

名前【】
性別【】
年齢【】
性格【】
容姿・外見【】
口調【】
設定【】
住んでいる場所【】
サンプルボイス【】
       【】

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Re: 理想郷 ( No.72 )
日時: 2010/07/31 17:41
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)

「如月君……その、ありがとう」
「……れ、礼を言われるような事はしてねーし!」

その日から、ジュンイチと間宮は一緒に居る事が多くなった。
やんちゃ坊主のジュンイチと大人しくて、どこか女々しい間宮は、いつの間にか二人で足りない部分を補う関係、言わば親友となっていた。

「ジュンイチ君、下、下!犬の糞!」
「え……あぁ!セーフ!セーフ!これセーフだし!靴にちょんってしちまっただけだし!踏んでないし!」
「全く……ジュンイチ君はちゃんと地面を見なくちゃ」
「へへ……間宮が居てくれてよかったぜ」

ツヨシやその取り巻きは、親から「ジュンイチ君をいじめる、ましてや暴力なんて絶対駄目」と、きつく言われ、必然的に間宮は弄られる事も無くなった。

その翌年の2033年……
二人は中学生になった。
嬉しい事に、二人は同じクラスとなった。

そして、理想郷の完成。
それを引き金に、二人は親友とは言えなくなる関係になってしまった。

理想郷が完成して半年、理想郷に行ける者が限られているのを知った者達が抗議や反発を始める。
如月家はまだ理想郷に行く予定は無く、限界までヘルに住む予定だった。

「テレビ……理想郷の事でずっと持ちきりだね……」
「そーだよなー……あーあ、俺、お笑い番組が見てぇー」

ジュンイチは机に突っ伏しながら言う。

「おい如月」

何者かがジュンイチに声を掛ける。
低く擦れたその声で、すぐにジュンイチはこの声は奴しか居ない!と後ろを振り向きながら、

「なんだよツヨシ」

中学一年生にして高校生をも凌駕させてしまう程の体格、筋肉によって構成された丸太の様に太い腕と足、分厚い胸板……
ツヨシは中学一年生にして、誰もが恐れる喧嘩番長となっていた。
ツヨシとジュンイチは別のクラスで、普段会話する事は全く持って無かったので、ジュンイチは何故話し掛けられたのか分からなかった。

「おめぇ、」

何人もの人間を病院送りにした喧嘩番長ツヨシの質問に、教室に居た生徒全員が耳を傾ける。

「理想郷にいつ行くんだ?」

その質問は、受け取り方によっては失礼になる質問だった。

「……俺が理想郷行く事前提かよ」

ジュンイチはその質問にとくに何も感じず、思った事をそのまま口にする。

「だっておめぇの親、社長だろ?金沢山持ってんだろ?何で居るんだよ」

最後の言葉にジュンイチは眉間に皺を寄せる。
何で居るんだよ?
俺がここに居ちゃ駄目かよ。
ジュンイチはツヨシを睨みつける。
いつの間にやら間宮もツヨシを邪険そうな目で見ている。

「知っててもお前何かに言う必要はねぇし!とっとと教室へ戻りやがれ!」

ジュンイチは立ち上がり、ツヨシを指差しながら怒鳴る。
ツヨシは親に言われた事を思い出し、しぶしぶ教室を出て行く。

Re: 理想郷 ( No.73 )
日時: 2010/08/01 11:04
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)

「何なんだよアイツ……」

ケッ、と言いながらジュンイチは椅子に再び座る。
間宮は……

「ジュンイチ君もいつか、理想郷に行っちゃうの?」

その表情は不安げで、しかしジュンイチはそれを小さく鼻で笑った後、

「そんな顔すんなよ……大丈夫、親父は限界までここに住むって言ってるし、
 もし俺が行っちまったとしても時々会いに来る位はしてやるよ」
「……うん」

間宮の顔に安心の色が浮かぶ。
だが、時に運命は残酷で、

「ジュンイチ……突然の事で申し訳ないんだが、来週には理想郷に行く事になった」

……え?

「本当にすまないと思っている、だが工場が地震で全壊してしまってなぁ……
 ヘルに立て直してもまたすぐ壊れるだろう?だから、しょうがないんだ」

しょうがないって……限界までここに住むって行ったじゃん!

「来週だから、荷作りをすぐに始めときなさい」

無視すんなよ!親父!親父!

父は反発の声を聞こうとすらせず、予定通りに来週、ジュンイチは理想郷へ行く事になった。

「知っている人も居るかもしれませんが、ジュンイチ君は明日、理想郷へ行く事になりました」

なんで言ってくれなかったの?明日なんて……

ジュンイチも間宮の声を聞こうとすらしなかった。
いや、聞く事が出来なかった。聞けなかった、しょうがなかった。

「如月様ですね、はい……そちらは■■の息子さんで?」
「それが何か?」

理想郷への手続きの途中、父の顔が突然深刻そうな顔に変わる。
女性は絶対に崩さぬ営業スマイルで、

「如月ジュンイチ様のみ、理想郷に行く事は出来ません」

無機質な機械音の様な声で、女性は淡々と言い放った。
ジュンイチは目を大きく見開かせる。

Re: 理想郷 ( No.74 )
日時: 2010/07/31 19:30
名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: Da9K.gCv)

どうもコンニチハ。意外とここにコメをするのは初めてな紅蓮の流星です。
細かい状況まで鮮明に描かれていて面白いです。
これからも更新頑張ってください。

Re: 理想郷 ( No.75 )
日時: 2010/08/01 11:05
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)

紅蓮の流星様 うおぉ!神じゃ!神からコメントが来ちょった!
嬉しい言葉どうもありがとうございます^^これからも頑張らせていただきます^^

Re: 理想郷 ( No.76 )
日時: 2010/08/01 14:55
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)

拾い子だからじゃないの?
祖母が思わず口走った言葉に、ジュンイチも祖父達も凍りつく。
父が慌てて祖母を言い咎めるが、祖母に言っている事は間違いじゃないどころかむしろ正解であった。

『そちらは養子の息子さんで?』

女性の言っている事は間違いで、ジュンイチは正確には拾い子だった。

そうだ……そう言えばそうだった。
余りにも普通で、幸せだったんでうっかり忘れてた。
俺は建物の瓦礫の上に置かれてた赤ん坊で、名前はオデコに大きく『純一』ってマジックペンで書かれてて、たまたま通り掛った不妊症に悩む余り鬱病になりかけた母に拾われた捨て子だった。

ジュンイチは、気付かれない程度に小さく笑った。
祖母を除いて、父も母も祖父もジュンイチを受け入れた。
しかし、何があろうと捨て子は捨て子のままらしく、ジュンイチ一人だけヘルに残る事となった。
時々、母と祖父が会いに来てくれる事はあったが、それは本当に時々で、ジュンイチは家に一人で居るのがが当たり前となっていた。
祖父はもう地主では無くなり、ジュンイチは地主の孫では無くなった。
けれど、元々ジュンイチは普通の子と何ら変わり無かったのもあって、彼は何も変わった事は無かった。

誰が流したのか、ジュンイチが拾い子と言う話はすぐに色んな人に知れ渡ったが、からかわれたり噂される事は無く、むしろ皆同情をした。
学校でもそれは同じで、ジュンイチは幸せなままだった。
しかし、例外は絶対に居て、

「オイ間宮!何だよこのはした金!」
「だって……昨日ので全部で……!」

ツヨシの間宮への弄りは再開して、弄りはすぐに苛めへと変わった。
親友が苛められてるのを無視なんぞ出来る筈も無く、すぐジュンイチは止めに入った。

「ツヨシ、お前いい加減にしろよ!」

ツヨシは一年前と同じ様に、呆れた顔で「いい加減にするのはオメェだろーが」と言う。
その次の瞬間、ジュンイチはまた一年前と同じ様にツヨシに顔面を殴られる。
当たり前のように痛く、鼻血が沢山出て来る。
鼻血が布の上を広がって、制服を赤黒く染めていく、口の中に鉄の味が広がっていき、真っ白な歯を真っ赤にしていく。

「今までお前のせいで俺がどんだけ我慢したと思ってんだよ!慰謝料払えよ!」

次にジュンイチの腹の上にツヨシの丸太の様に太い足が乗る、

「っぐりゃぅ!」

ツヨシの全体重が圧し掛かり、ジュンイチの口から変な呻き声が出てきて、朝ご飯に食べた物全てを吐き出しそうになる。

「慰謝料!金くれたら止めてやるよ!」

ジュンイチは外に出掛けているゲロを飲み込み、やっとの事で声を絞り出す。

「お前、なんか、に、やる金、一円も、ねぇ……」
「この期に及んでまだ俺に口答えすんかよ!この愚図!」

ペッとジュンイチの顔に唾をかけた後、ツヨシは力一杯に彼の腹を蹴り上げる。

「ジュンイチ君!」

間宮の涙混じりの声が遠く小さく感じる。
ジュンイチは食べた物を全て吐き出す。
嗚咽を繰り返して息が上手く出来なくなり、余計苦しくなる。
少ししたら何とか喋れるようになったジュンイチは、馬鹿みたいな反抗を繰り返してツヨシを煽り始めた。

「殴れよ蹴れよ!俺に暴力振り続けろよ!何されようとお前なんかに一円もやんねぇし!」

問答無用でツヨシはジュンイチに殴る蹴るを始める。
痛みと吐き気により彼の視界はぐるぐると回っている、間宮の止めてよ、と言う声はツヨシにもジュンイチにも届かなかった。

どれ位やられ続けたのだろうか、ジュンイチはボロ雑巾の様になって、辛うじて意識がまだ残っている状態で、
ツヨシは息をはぁはぁと言わせ、肩を大きく上下している、ツヨシの両手は真っ赤だった。
間宮は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながらジュンイチの名前を呼んでいる。
最後の抵抗でジュンイチはツヨシに「もう……終わりかよ……」と消え入りそうな小さな、ゾンビの様な声で言った。


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