ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

理想郷
日時: 2010/08/14 13:59
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)

この物語の題材は『理想郷』です。
エデン、ユートピア、シャングリラや桃源郷……そんな数々の理想郷を舞台に様々なキャラ達が物語を繰り広げます!
楽しんでくれると嬉しいです!
多分微SF気味だと思います。

一日一回か二日に一回は更新を心がけていますが、意外と体力が持たなかったり……w

目次
序  >>3
第一話>>7-8>>24>>35-36
第二話>>37>>39>>41
第三話>>42-44>>47-48
第四話>>51>>54>>57-58>>61
第五話>>62>>65-67>>72-73>>76-77
第六話>>78-80>>89>>92>>96 幕間>>97
第七話

第二回目のオリジナルキャラ募集です。
良いと感じた物だけを採用させて頂きます!
期限は来週の木曜日まで!
皆様の個性豊かなキャラをお待ちしております。

募集用紙

名前【】
性別【】
年齢【】
性格【】
容姿・外見【】
口調【】
設定【】
住んでいる場所【】
サンプルボイス【】
       【】

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27



Re: 理想郷 ( No.42 )
日時: 2010/07/17 18:28
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

第三話 一部の人々の一部の人々による一部の人々の為の幸福。 

「加藤先輩!どうしたんですか!?何があったんですか!?」
「先輩よく学校来ようと思えましたね!無理なさらないで下さい!」
「レンリ!うわぁ!地震にやられたのかぁ!」

放課後、部活を辞めるを伝えに体育館へ行くと、俺の姿を見るなり後輩や高等部の先輩達がすぐに周りに集まり騒ぎ始めた。
俺は適当にそれっぽい表情をしながら、「もうすぐ高等部三年は部活止めるし、春には春季大会が有る大切な時期に……本当に悪い……」と適当な謝罪の言葉を並べていった。
周りにいる奴等は完璧に騙され、とくに部長はわざとらしい涙を目に浮かばせながら、

「良いんだ!気にするなレンリ!自分の怪我だって大変だろうのに高等部三年の事まで気にしてくれて……ゆっくり休んで早く元気になって戻ってこいよ!」

ここで『有難ウ御座イマス沢田部長、皆、本当ニゴメン!俺ハ皆ヲ応援シテルカラ!』と言っておけば全てが丸く収まるのだが、今日は部活を休みに来たのではなく部活を辞めに来た、だから丸く収めるきは一欠も無い。
一回だけ俺は息を吸ってから、出来るだけ良く通る声で、

「有難う御座います沢田部長。しかしながらも、誠に申し上げ難いのですが単刀直入に言います……俺は部活を辞めます」
「……え?」

部長のわざとらしいくどい涙は一瞬にして引っ込み、周りにいた奴等全員が目を点にし、何を言っているのだコイツはと混乱をしていた。

「何言ってんだよレンリ……」

やっと声を絞り出したのは部長ではなく、同学年でしかも同じクラスの奴で、しかも予想通りの事を言ってくれた。

「別に怪我が治ってからでもバスケは出来るし……」

俺は首を横に振り、今度は毅然とした態度を心がけながら出来るだけ力強い声で言った。

「怪我が原因で辞めるわけでは御座いません。部活を辞めると言うのは一週間前に顧問に伝えてあります。
 もし今俺が怪我をしていなかったとしても、部活を辞める事に変わりありませんでした。
 部活に入っていたのは、運動が人より出来れば理想教在住権が手に入れられる確率が高いと考えたからです。この時期が大切な時期と分かっていながらも申し訳ないです……さようなら」

そう言い捨てて俺は逃げるように体育館を出た、後ろからわざと俺に聞こえるように「加藤レンリってやっぱり加藤イチイの弟だよな。性格悪いのがソックリだ!」「本当だな、外見が良いと人にチヤホヤされてどんどん性格悪くなるんだな」「加藤っていつもテストとかなんでも学年トップだよな、どんだけ理想郷行きたいんだよ……最悪」と皮肉の言葉が浴びせられた。
そんな物痛くも痒くもない、嫉妬にはもう慣れている。俺は「……凡人は指咥えて見てろ」と呟いた。
体育館を出て、教室に置いておいた鞄を取りに俺は校舎に入ると、丁度良くそこで放送が鳴った。

『ピンポンパンポーン……中等部三年A組加藤レンリさん、中等部三年A組加藤レンリさん、至急職員室へ……ピンポンパンポーン』
「俺?」

職員室に呼ばれる様な心当たりは無かった。
普段は絶対に目立つような事はしないし、成績だって落ちたわけでは無い。となるとありそうなのは……姉の事だろうか?
姉はこの学校には珍しい大変な問題児だ。授業をサボってバイクに乗ってるし、テストは名前すら書かない……退学にならないのが不思議な位だ。
そうだ絶対そうだ。勝手に俺は納得して、職員室へ急いだ。

Re: 理想郷 ( No.43 )
日時: 2010/07/16 20:57
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

「怪我してるのにここまで来るの大変だったでしょ?ごめんなさいね、私ったら忙しい事続きでうっかり忘れてたわ。飲み物は何が良い?お菓子も色々有るよ?」

遠野ヨトコ……レンリのクラスの担任である彼女は顔を大きく覆っている眼鏡を揺らしながら、レンリを近くにあった椅子に無理矢理座らせ、先程までレンリの持っていた二本の松葉杖を近くの棚に寄っかかるように立てて置いた。
レンリは何も思っていないような表情をして、落ち着いた声で「お構いなく」と言った。

「あーうん……そう?本当にそれで良いの?」
「良いですから、早く話を始めてください」

遠野はどっと額に滝のような汗を流し、視線を変な所に泳がせボソボソと喋り始めた。

「うん……それもそーだね……あー……
 加藤君には先生、凄ーく感謝してるよ、学級委員として、いやそれ以上にしっかり仕事をこなしてくれるし、成績も良ければ運動も得意で、誰とでも仲良くできて……」

おろおろとした様子の遠野にレンリは苛々し、とうとう痺れを切らし、

「……長い前置きは要らないです。早く本題に入って下さい」

と、レンリは遠野に言い放った。

「う……うんうん……あ、あのね、その加藤君のね……アレがね?まぁソレで……やっぱこんな事私からは言えないわ!誰か!誰かぁ!」

言葉自体は敬語なのだが、その敬語から滲み出る苛立ちと威圧感に圧迫された遠野はぶるぶると震えながら、もう耐えられないとうろたえた。
すぐにそこに三年学年主任である木乃マサヨシが駆けつけ「しっかりして下さい遠野先生!担任教師である貴方が言うんです!」と一喝した。
その様子が余りにも他人任せでしかも偉そうなので、レンリは自分の事では無い筈なのに何故だか少し腹が立った。
そのせいなのかレンリは遠野に少しばかりの助け舟を出した。

「別に遠野先生じゃなくて良いです。木乃先生でも構わないですから……」
「それは出来ない!さぁ!早く言いなさい遠野先生!」

その助け舟はあっさり跳ね飛ばされ、遠野は今にも泣き出しそうな勢いでおろおろと震えながら、途切れ途切れ言い始めた。

「あ……あのね、そのね……何でだろうね、どうしてだろうね……加藤君のね、本当、先生は何も分からないけどね……訳分かんないけどね、加藤君に与えられる筈だった……

                 理想教在住権が取り消されちゃったの……」
「……は?」

レンリは遠野の言っている事の意味が分からず呆然としていたが、すぐに正気を取り戻して何を言っているかを理解した。
その間僅か0,5秒、しかしながらもレンリの脳はまだ何も理解しておらず、、

「……それは何故ですか?」

と、どこか間抜けな感じになってしまい、遠野は感極まって「ごめんね!ごめんねぇ!……私は分からないの……!それにね、知ってる人は言っちゃいけない決まりで……!本当に、何でだろうねぇ……佐伯さんは、行け!行けるっのにぃ……!」と金切り声の様な大きな声を出した後「ごめんなさぁい木乃先生……ごめんねぇ加藤君……ごめんねぇ……えぐっ、ぐしゅっ」と弱々しい声を出して泣き始めた。

「遠野先生!」

余計な事を言うな!と木乃は遠野を大きな荒い声で叱り付けた。
それよりもレンリは荒く大きな声で、

「遠野に謝れたってどうにもなんねーよ!誰か理由を話して納得させやがれ!木乃も何もしらねーのかよ!何で、何で俺が!」

レンリの脳はやっと全てを理解し、いつも絶対に崩さない敬語を崩し、職員室に怒声を響かせた。
しかし勿論それは誰も教えてはくれなかった。木乃は出来るだけ怖がらせるような大きくて力強く、低い声で「加藤!気持ちは分かるが今は落ち着け!」と言ったが、

「テメェに何が分かるんだよ!口から出任せを言うな!
 なんで万年二位の佐伯は良くて一位の俺は駄目なんだよ!この前のテストで佐伯が94点を取った時俺は100点を取った!アイツがした失敗の尻拭いだって俺がいつもいつもいつも……!」

この辺りにある不良校の中の、とくに手の付けられない生徒さえも怯む様な木乃の声も、爆発寸前の怒りを湧き上がらせているレンリには虫の羽音にも満たない様な雑音にしか聞こえなかった。

「畜生……畜生……何で、何でだよ……!」

足を骨折しているのも忘れ、レンリは松葉杖を持たずに走り出した。

「加藤!その怪我で走ったりなんかするな!」

木乃は職員室から走り去って行くレンリを急いで追いかけようとすると、突然何者かに肩を掴まれ「良いんですよ、追いかけなくて、良いんですよ」と後ろから囁かれた。

「何を言って……」

振り向くと、そこには顎に真っ白な髭を生やした中老の白髪の男がニッコリと微笑んでいた。
木乃は目を見開かせ、やっとの思いで声を絞り出した。

「こ、校長……聞いていらしたのですか……」

その肩は小さく震えていた。

Re: 理想郷 ( No.44 )
日時: 2010/07/17 14:52
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

「それで良いんですよ」

男は、校長は木乃から手を放し、もう一回静かに微笑んだ。
一見すると人柄が良く温厚な優しい中老の男にしか見えないのだが、何故だか木乃の肩はぷるぷると小さく揺れている。
木乃は何を言えば良いか分からず、職員室の中は静寂が流れていた。

しかし突然、見計らったかのごとく一人の女性職員の声が職員室中に響いた。

「た、大変です!何者かによって紫陽花学園ネットワークへの侵入……ハッキングされています!」

助かったと、内心木乃は思いながら女性職員を怒鳴りつけた。

「ハッキングなんぞ別に珍しい事では無いだろ!紫陽花学園ネットワークのプログラムはスーパーハッカーでさえも解除が不可能、侵入なんぞ有り得ん!」

髪をぼさぼさに振り乱しながら、女性職員は手の平でバンッと机を思い切り叩き「そのプログラムがどんどん解除されています!このままでは時間の問題です!」と、叫んだ。

「今すぐプログラムとパスワードを書き換えろ!絶対に到達だけはさせるな!」

木乃はすぐに女性職員に指示を出し、その他の職員達もパソコンのキーボードを叩き、出来る限りの抵抗を始めた。

「もうやりました!しかしまったくもって効きません!」

女性職員の指は、キーボードを物凄いスピードで必死で叩き続けたせいで真っ赤になり、木乃の表情には焦りが出始めていた。
木乃は表情を戻し、すぐに近くの男性職員に指示を出し始めた。

「今すぐ逆探知して相手がどこに居るのか調べろ!もうプログラムでの抵抗は諦めろ、今は到達されないよう時間を稼げ!」
「了解!」

男性職員はプログラムの書き換えを止め、すぐに逆探知を始めた。
何故か簡単に逆探知は成功し、男性職員はほんの10秒程度で逆探知を終わらせ、

「……逆探知成功!相手は、紫陽花学園のコンピューター室です!」
「ここに居るのか!?」

木乃は驚きの声を上げた。
その木乃の後ろで校長は周りとは打って変わって落ち着いた様子で、

「はっはっは……どれ、監視カメラの映像でも見てみようじゃないか」

小さく笑いながら遠野を退かし、彼女のパソコンで監視カメラの映像を開いた。
その映像を見て遠野は声を上げた。

「加藤君!?」

紫陽花学園のネットワークをハッキングしているのはレンリだったのだ。

映像の中のレンリは今この瞬間、恐ろしいスピードでキーボードを叩き続けている。
「これは凄い!まさか生徒が解除不可能のプログラムをここまでのスピードで解除できるとは……!ヘルに居なければならないのが勿体無い!」

校長は感嘆の声を上げ、遠野は目を真ん丸に大きく見開かせて「これが……天才と言う者なの……?」と、呟いた。

「す、すぐに止めなければ!コンピューター室へ行きます!」
「私も行きます!」

木乃と遠野は急いでコンピューター室へ向かった。

Re: 理想郷 ( No.45 )
日時: 2010/07/17 15:08
名前: りん ◆mTqouqsI7s (ID: 9ySylEp9)
参照: 「バンパイア」書いてます☆

レンリが可哀想です・・・(;_;)
なんで2位の人がっ・・・涙

レンリく〜ん!
さっさとハッキングやっちゃえww

Re: 理想郷 ( No.46 )
日時: 2010/07/17 15:53
名前: 金平糖  ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)

りん様 コメント有難う御座います!とても嬉しいです^^
理不尽なのって嫌ですよねー有難う御座いました。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27



この掲示板は過去ログ化されています。