ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 理想郷
- 日時: 2010/08/14 13:59
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: FwQAM/tA)
この物語の題材は『理想郷』です。
エデン、ユートピア、シャングリラや桃源郷……そんな数々の理想郷を舞台に様々なキャラ達が物語を繰り広げます!
楽しんでくれると嬉しいです!
多分微SF気味だと思います。
一日一回か二日に一回は更新を心がけていますが、意外と体力が持たなかったり……w
目次
序 >>3
第一話>>7-8>>24>>35-36
第二話>>37>>39>>41
第三話>>42-44>>47-48
第四話>>51>>54>>57-58>>61
第五話>>62>>65-67>>72-73>>76-77
第六話>>78-80>>89>>92>>96 幕間>>97
第七話
第二回目のオリジナルキャラ募集です。
良いと感じた物だけを採用させて頂きます!
期限は来週の木曜日まで!
皆様の個性豊かなキャラをお待ちしております。
募集用紙
名前【】
性別【】
年齢【】
性格【】
容姿・外見【】
口調【】
設定【】
住んでいる場所【】
サンプルボイス【】
【】
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- Re: 理想郷 ( No.37 )
- 日時: 2010/07/11 15:56
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
第二話 天使と悪魔にとっての天国と地獄。
「もう……信じられない!」
ラン・アウェイ……移動型理想郷であるそれは英語で『逃げる』と言う意味の名前を持つ。
勿論名前の通りラン・アウェイは危険地帯から安全な場所へ常に移動をするように設計されており、今ラン・アウェイは大西洋上空を飛んでいた。
そのラン・アウェイの中の都市の一つで、高級住宅街ビバリーヒルズ……
大富豪などの多くの豪華かつ華麗な邸宅が立ち並ぶ住宅街の中でも一際大きく、どこよりも豪華で華麗な豪邸の中のある一部屋から華麗な豪邸に似合わぬ、少女の憤怒の声が響いた。
「このブランドは嫌って言ったじゃない!こんな安い服よくも着せようとしてくれたわね!もう良いわ……アンタ達はクビよ!今すぐここから出て行きなさい!」
腕までの茶色の綺麗なストレートの髪を揺らし、同じ色した大きなぱっちりとした目をさらに大きく見開かせた少女は、息を荒くしながら手に持っていた服を床に投げ捨てた。
「そんなぁ……お願いします、それだけは勘弁してくださいませ」と部屋に居るメイドは涙を流しながら必死で懇願した。
全身をブランド物で固めた少女、マリン・デイアスは大企業の社長の娘……つまりは社長令嬢で何不自由なく我侭一杯に育てられた箱入り娘だ。
今年で14歳になると言うのに小学生か幼稚園児の様に我侭で、使用人や家庭教師達を困らせてばかりいた。
「お黙り!立場をわきまえなさい……そもそもあなた達の様な土人が理想郷に居る事自体がおこがましいのだわ!」
そこへ突然部屋の扉が開かれ、
「マリンお嬢様、どうなさいました!?」
執事服を着た一人の男性が焦った様子でマリンに近づいた。
男性はまだ20代前半の若い男だった。
「セイイチ!この使えない土人を今すぐ追い出しなさい!」
マリンは部屋に居るメイドを指差しながら地団駄を踏んだ。
セイイチは床に投げ捨てられた服を拾い、マリンを宥めた。
「お怒りなのは分かりますがここは気分をお鎮めになって下さいませ、お洋服は私が直ちに用意します。
カヨさん、あなたは午後の為に応接間の掃除を……」
もう慣れたという表情でセイイチはメイドに指示を出した。
年齢的にはセイイチよりもメイドの方が年上なのだが、物心ついた頃からずっと執事として働いて来たセイイチの方が立場は上であった。
「は、はい!」
メイドは助かったという表情で涙を袖で拭きながら部屋を出て行った。
「ちょっとセイイチ!なんであの土人をクビにしないのよ!」
「私にそのような権限は御座いません……それにお嬢様、土人なんてはしたない言葉は使ってはいけませんよ」
セイイチはマリンを椅子に座らせ、紅茶を入れ始めた。
「だって学校で習ったわ!ヘル居る殆どがお金を知らない、読み書きも出来ない、何も出来ない土人達って教えてもらったのよ」
てきぱきと紅茶をティーカップに入れながら、セイイチは言葉を選びながら会話を続けた。
マリンが母親のお腹の中に居た頃からの付き合いであるセイイチはマリンを怒らせずに、なおかつ納得させるのには慣れている。
「学校で習った事としても、そのような言葉を使ったら奥様がお嘆きになりますよ。それにマリンお嬢様、貴方だって六年前……八歳の時まではそこに住んでいたのですよ?」
マリンは渋々理解した様子で、足をぶらんぶらんと揺らしながら少しだけ不機嫌そうな声で「分かったわよ……」と呟いた。
「それでは、すぐにお洋服を用意いたしますので……」
セイイチは紅茶をマリンに差し出し、部屋を出た。
- Re: 理想郷 ( No.38 )
- 日時: 2010/07/11 17:07
- 名前: りん ◆mTqouqsI7s (ID: 9ySylEp9)
- 参照: 雑談掲示板では「みさき」です☆
早速使ってくれてありがとうございますww
思ったとおりのキャラで嬉しいです☆
これからも更新がんばってください!!
- Re: 理想郷 ( No.39 )
- 日時: 2010/07/12 16:04
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
マリンが気に入る洋服を選び、それをセイイチはマリン専属のメイドに渡した。
「良いですか、絶対に着せる時にマリンお嬢様に手が当たらないようにするのですよ」
メイドは不安そうな顔で頷き、洋服を受け取った。
つい最近まではこのような仕事はマリンが一番心を許しているセイイチがやっていたのだが、半年前にマリンの将来の婚約者が出来てからは『14歳の娘と年のそこまで離れていない男にそのような仕事をやらせるべきではない』とマリンの父親が言ったのでセイイチはマリン専属の執事を降ろされた。
代わりに他のメイドをマリンの専属にしたのだが、セイイチよりも仕事が出来るメイドは滅多におらず、毎日毎日マリンの部屋からは怒鳴り声が響いた。
その度にセイイチはマリンを宥める為に自分の仕事を投げ出してマリンの部屋へ駆け込んだ。
一体何時になったら自分は開放されるのだと思いながら、セイイチは先程のマリンが投げ捨てた服を持って中庭に出た。
中庭にはつい最近ヘルからやって来た、整った顔立ちをした14歳の庭師の少年が仕事をしていた。
この屋敷に勤めている使用人の大体は整った顔をしていた。
その理由は奥様で、奥様は常に『美しき物』に囲まれていなければヒステリーに陥ってしまう人間であり、衣服、装飾品、椅子、テーブル、床、壁、置物……花瓶に挿してある花までも美しき物ではないといけなかった。
セイイチの顔も完璧とまでは行かないが、それなりに良い方である。
「ユーリー君、約束通りお嬢様の要らない服を持ってきましたよ」
「わぁ!有難う御座います!」
嬉しそうに少年……ユーリーはセイイチにお礼を言った。
「君はその要らない服をどうするつもりなんだい?」
ユーリーは小さく微笑んだ後、
「売ってお金にするんです。
お嬢様、こんなに高価な服を一回袖を通しただけで捨てたり、気に入らないという理由で着ないで捨てたりするじゃないですか。だから、売ればかなりお金になると思って……」
「あぁ、成る程。じゃぁ君はそのお金をどうするつもりなんだい?」
「僕が今まで住んでた孤児院に献金するんです」
セイイチは一瞬の間少しだけ戸惑った。
「僕、孤児院出身なんです。でもその孤児院、お金が全然無くてすごいひもじいんです。
だからお母さんと兄弟……と言っても孤児院の院長と同じ孤児院の子の事ですけど、お母さんと兄弟の為に少しでも多くのお金が必要なんです」
孤児院とは身寄りの無い子供の為の施設とは知っていた。
セイイチもかつては身寄りの無い子供だったが、気付いたらここで働いていたセイイチにはお母さんも兄弟も、孤児院でさえも程遠い物だった。
今ではすでに子供という年齢じゃないセイイチは、たとえ血の繋がりが無くても『家族』と呼べる物を持っているユーリーが少しだけ羨ましく思えた。
だから、つい聞いてしまったのだ。
「家族とは、どんなものなんだい?」
ユーリーは目を少しだけ大きく見開いた後、大きく笑いながら、
「ピアノみたいなもの!」
セイイチは納得する事が出来なかったが、その言葉を忘れる事は無かった。
「ピアノの……みたいなもの……?」
そこでセイイチは、ファの音が壊れてもう駄目なピアノを捨てていなかった事を思い出した。
- Re: 理想郷 ( No.40 )
- 日時: 2010/07/11 17:27
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
りん様 お褒めの言葉を有難う御座います^^マリンちゃん可愛らしゅう御座います。
- Re: 理想郷 ( No.41 )
- 日時: 2010/07/18 09:21
- 名前: 金平糖 ◆dv3C2P69LE (ID: TQ0p.V5X)
紫陽花学園、日本政府の管理するヘル日本エリアの中で最もレベルの高い学園。
小等部から高等部まで有り、そのどれかの部に在学中に一定基準値を大きく超えていれば、小等部か中等部、あるいは高等部卒業の日に理想郷在住権が与えられる。
その紫陽花学園中等部の朝の教室、トウキは教室に入ってきた親友の姿に絶句した。
「ユウイチ!どうしたんだよその怪我!」
慌ててトウキが駆け寄ると、幼稚園の頃からの幼馴染であり親友であるユウイチは笑いながら、
「はは、昨日の夕方に地震があったじゃん。その時に部屋の壁が崩れちゃってさ……参っちゃうよ。でも大した怪我じゃないって医者も言ってたからトウキ静かにしてて、声が怪我に響いて痛い」
「参っちゃうよって……よくそれで済ませられるな……つーか痛いんじゃん!」
と、いつも通りにトウキが突っ込みをいれようとすると「触れるな!」と言われ、トウキは少しだけ凹んだ。
「つーかここまで酷いのによく学校来ようと思ったなー」と呟きながら、ユウイチのギプスで固定された左腕と右足をトウキはまじまじと見つめた。
顔にはガーゼや絆創膏が貼られ、よく見ると指にも包帯が巻かれており、右手に持っている松葉杖を持ち難そうにしていた。
「はよー……」
そこへトウキ後ろから朝なのに疲れきった声が届いた。
すぐにそれがユウイチと同じ幼馴染であり親友であるレンリの声と分かったトウキは、後ろを振り向きながら「おはよー」と言った次の瞬間に本日二度目の絶句をした。
レンリの涼しげな整った顔は、無残にも赤黒いや紫と言うよりも黒と言う方が正しい大きな痣がニ、三個作られ、左眼には眼帯が付けられ、
右頬は他人の顔としか思えないほど腫れ上がり、左足に関してはパンパンに腫れ上がっており、木の棒がしっかりと固定されて、両手にはそれぞれ一本ずつ松葉杖が握られている。
圧倒的に顔のダメージが酷い……酷すぎる!どうして学校に来ようと思えた!とトウキを含み教室にいる全員の人間が心の底から叫んだ。
「レンリ君!どうしたのその顔は!」「わぁぁぁああ!レンリ君の綺麗な顔がぁ!」「つーか足もパンパンに腫れてやがるぞ!」
クラスメイト達がすぐにレンリの周りに集まった。
レンリは「邪魔じゃけぇ!声が怪我に響くから黙るんじゃけ!」とエセ方言でクラスメイト達を蹴散らしながら自分の席に座った。
急いでトウキとユウイチはレンリに駆け寄り、
「レンリどうしたんだよそれ!お前も地震にやられたのか!」
一回、レンリはフッと溜息をして「俺の家は強化素材で作られてるから24時間安心!これ全部姉貴にボコられたんだよ……たく、まだ痛ぇ……」と泣きそうな声で呟いた。
レンリの姉と言えば、二つ上の高等部二年に居るあの美人で胸が凄く大きいで有名な人である。切れ長い目と艶やかな長い黒髪から、ちょっとキツそうな人に見えるが、自分の弟をここまでボコボコにするような人とは到底思えなかった。
トウキは半信半疑気味で、
「姉貴ってあのすっげー美人で胸のでかい?」
「美人かは分からないが胸はかなりでかいな。あの胸に押し付けられて窒息死寸前になった事が何回もある……て、着目点そこ?」
ユウイチは「これは酷い」と言う顔をしながら、
「風呂でも覗いた?」
机をバンッ!と思いっきりレンリは叩き、
「そんな事したら俺の顔の面積が二倍になる!!」
「じゃー何したんだよ」
トウキに聞かれ、レンリは気分を落ち着かせながら
「俺は何にもしてない、昨日家に帰ってくるなり行き成り殴ってきたんだ」
「レンリのお姉さんあんなに綺麗なのに、ゴリラみたいなんだね」
ユウイチのその言葉にレンリは大きく首を振った。
「ゴリラみたいじゃなくて、正確にはあれはゴリラだ!しかもかなり厄介な方のな!あぁ、トウキみたいにナツミちゃんみたいな大人しくて可愛らしい妹が欲しいぜ……」
「いやいやいや……ナツミは内弁慶でさ、家の中ではお前のねーちゃんとまでは行かないがヤバイ」
「ははは、俺は一人っ子だから二人が何だか楽しそうで羨ましいや……」
トウキとレンリはその言葉に目を見開き、声をハモらせながらユウイチに「「楽しくない!」」と叫んだ。
「まったく……」とトウキは呟いた。
実はユウイチとレンリのインパクトが強すぎてトウキ自身でさえも忘れていたが、実はトウキも左手首を骨折、左足を軽い捻挫をしていた。
ヘルにいるとこのような怪我がよくある。
しかし、こんなのも悪くないかもしれない。と、トウキは思った。
こうやって怪我だらけになっても自分達は生きてるわけだし、ヘルには友達や家族、知り合いが沢山居る。
理想郷にさえ行けばこんな風に怪我をする事も無くなるし、毎日を安心して生きられるのだろうけど、
もし俺が理想郷に行ってしまったら、二人とはこんな風に話せないし友達ではなくなっていたかもしれない。
こんなのも悪くは無い。
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