ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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姫は勇者で魔法使い。【お知らせ有り】
日時: 2012/03/10 20:07
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)

どうも、厨ニ設定丸出しで小説を書き続けている堕文制作機こと、野宮詩織です。

注意
・荒らし、喧嘩、誹謗中傷は禁止です。
・一見、コメディ成分が強いですが、ちょこちょこグロが入りますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
・作者が嫌いな方もブラウザバックを推奨します。

これらを守れる、もしくは大丈夫という方は大歓迎です!!

†callers†
風(元:秋空様 玖龍様 朝倉疾風様 夜兎_〆様 七星 空★様 双華様 瑚雲様 神凪夜草様 夢姫様

†Character’s profile†
【】内は名称確定。 『』内は通称、ないしは総称。

【サフィール・アミュレット】
【クロヌ・リール】
【オルドル・ヴェリテ】
【ヒジリ・ミコガミ】
【シャルロット・アミュレット】
『腐槌』
『月兎』
『百鬼夜行の主』
『能力者』
『【不知火】の血族、及び眷族』

†contents†
第1話 「姫、奮闘す」
>>1 >>4 >>5 >>10 >>19 >>26 >>34 >>37 >>43 >>52 >>60 >>67 >>72 >>75 >>76 >>82 >>83
第2話 「五宝、現る」
>>86 >>89 >>90 >>95 >>96 >>99 >>101 >>102 >>103 >>104 >>105 >>106 >>110
第3章 「運命、分かるる」
>>111 >>117 >>119 >>120 >>125 >>126 >>127 >>130

†illustration†
>>27 >>63 >>100

†他の方に描いていただいたもの†
>>107

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姫は勇者で魔法使い。 ( No.102 )
日時: 2011/11/05 16:35
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)

「断る」
「あうっ!? 即答!?」

クロヌが妾の決意の言葉をバッサリと斬る。
まさかこんなにストレートに否定的な言葉が返ってくるとは思っていたから、心が痛い。

「腕の確かな奴は力量で切り抜けられる。 そもそも自信の無い奴は逃げるから、死なない。 下手に自信を持った奴が真っ先に死ぬぞ?」

……全くその通りじゃな。
自分が言い出したこととはいえ、他の人からの冷静な指摘を踏まえると「妾が戦えるようになればいいじゃん!!」というものは愚策この上ない。

「ところでさ」

キョロキョロと周りの地理を確認しているミコガミが話題を変える。

「……ここ、どこ?」

言われてみれば、それが一番最初に持つべき疑問じゃな。
ミコガミと同じように一通り、周りを見回してみる。

「……とりあえず、移動しましょうか」

唖然とする妾の横で、珍しく驚いているオルドルが提案する。
そのアイデアは最も良いものであることには間違い無いが、問題がある。

「リアル背水の陣なんだが、出来るのか?」

妾らは先の撤退後、崖の近くに出てしまったため、後方には移動できない。
そうなれば、横か前に移動するしかないのだが、困ったことに残った道は獣道だったらしく全て狼やら熊だとか大型の動物達が取り囲んでいる。

ここまで大量の動物に囲まれるまで気がつかない妾らも妾らじゃけどな……。

「クロヌ、危機管理云々はどうしたのじゃ? あ、あれ?」

さっきまで危機管理について説教をしていたクロヌを呼ぶ。
しかし、自分のすぐ近くに立っていたはずのクロヌが見当たらない。

「早まっちゃダメだぜ!!」

ミコガミが慌てた様子で崖の方に向かって叫ぶ。
その方向に視線を移すと、崖から飛び降りようとしているようにしか見えないクロヌがいた。

って、ぬあああっ!? 彼奴は何をしようとしておるのじゃ!?

「何を言ってるんだ? この高さから落ちても、死なないだろ。 ……サフィール以外」

クロヌに続いて、ミコガミも崖下を覗き込む。
周りの獣達はオルドルの得物を警戒しているのか、はたまた単純に特に攻撃してくる様子の無い妾らの動きを見ているのか、襲ってくることは無い。

「あっ、本当だ。 オルドル、姫、ここから行くぜ!! 下は砂浜だし、緩衝用の魔術を使えば全く問題ないぜ」

ミコガミがオルドルと妾を呼ぶ。
念の為、クロヌが最初に飛び下り、安全を確認する。

読み通り、大丈夫だったらしくテレパスで『続け』というような内容のことを伝えてきた。
ミコガミ、オルドルがクロヌに続いて、立て続けに飛び降りる。
もちろん、無事に着地できたようだ。

さて、次は妾の番じゃな。

ぬ……? 何か忘れているような気がするのじゃが……。

すると、突如、背後から獣達の唸るような大きな声が聞こえた。
どうやら、自分達より格上で下手に出だし出来なかった3人が消えたお陰で、格下の妾を食えるぞ、という意味らしい。
間違いなく、妾は敵ではなく食べ物のカテゴリーに分類されておる……!!

姫は勇者で魔法使い。 ( No.103 )
日時: 2011/12/04 08:36
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)
参照: 亀更新でごめんなさい((汗 12月9日位からハイペースでいける……はず←

「嫌じゃあああ! 妾は食べ物として生涯を終えたいとは毛ほども思わん!!」

そんなようなことを叫びながら、崖下のクロヌ達の方へとダイブする。
しかし、妾が飛び降りた瞬間、下にいる三人の顔から血の気が引く。

「姫、【衝撃緩和】は!?」

ミコガミが叫ぶ。
うむ、すっかり忘れておったが、今から発動しても間に合わない。

一周回ったせいか、不思議と冷静さを保っていることが出来ているが、今更冷静になれたとて全くもって意味がない。

「うぬ……間に合わぬ!!」

駄目元で魔術を発動してみたものの、やはり間に合いそうにもない。

妾は相当加速してしまっているため、下にいる三人が受け止めようにも勢いを殺しきれない。
それが可能だとしても、彼ら自身が無事では済まない。
これはマズい……!!

「……あれ? 無事じゃ……」

そういえば、地面に激突したはずなのに、あまり衝撃が無かったのぅ……。
まさか、あまりの衝撃に魂だけ飛び出したというわけではあるまいな!?

「サフィール!! 無事か!?」

そんなこんなでパニックに陥っている妾のところに、クロヌが猛スピードで駆け寄ってくる。
そこまで心配しなくても、無事なんじゃがのぅ……。

「翔の上から降りろ」

右隣から声が聞こえると同時に、妾の喉元に薄青色に光り輝く魔法形成円が出現する。
顔だけ右に向けると、そこには金糸のような髪を持ち、身長190センチメートルはありそうな美形の青年が立っていた。

彼の青色の目は、氷のように冷たい————。

「お前らは動くな。 動けば、この餓鬼のいる空間ごと、存在を凍結する」

氷のような瞳の青年が、クロヌ達に忠告する。
もちろん、3人の命も妾の命も大切故、魔法陣にぶつからないようにその場からそそくさと左に移動し、クロヌの横で立ち止まる。

どうやら、妾が落ちてきた際、彼の知り合いを下敷きにしてしまったらしい。

「翔、大丈夫か?」

氷のような瞳の青年が、妾の下敷きとなってしまった黒髪の青年を軽く揺する。
すると、黒髪の青年が髪と同じ黒色の目を開く。

あんな高さから降ってきた妾に激突されたはずなのに、何事も無かったかのように起き上がれるだなんて……。
此奴、本当に人間か……?

「大丈夫だ。 相斗……じゃないな。 今は雨音か?」

黒髪の青年が氷のような瞳の青年に問う。

「あぁ。 お前が潰された時に、相斗がパニックになって俺が引きずり出された」

氷のような瞳の青年が、妾達に刺々しい言葉を向けた人と同じとは思えないほど、優しい声で答える。

「お前は大丈夫か?」

黒髪の青年が妾達の方へと振り返り、心配そうに問うてくる。
こちらの青年は金髪の青年と違い、敵意の欠片も見当たらない。

姫は勇者で魔法使い。 ( No.104 )
日時: 2011/12/07 14:23
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pFXOI/OC)
参照: 亀更新でごめんなさい((汗 12月9日位からハイペースでいける……はず←

「う、うむ。 お陰様で無事じゃ。 礼を言う」

黒髪の青年に答えると同時に、礼を言う。
妾よりもあんなスピードでぶつかった黒髪の青年の方が重傷を負っていそうなものだが、青年には大きな怪我どころかかすり傷一つ見当たらない。

「そうか。 ちゃんと受け止められたようで良かった」

黒髪の青年がニコッと屈託なく笑う。
しかし、彼の横にいる氷のような瞳の青年が殺意の籠もった視線を送ってきているせいで恐い。

「受け止めた? 事故じゃないのか?」

ミコガミが黒髪の青年に聞く。
その間も氷のような瞳の青年は殺意の籠もった視線を妾達に飛ばし続ける。

確かに妾のせいで黒髪の青年を危険に合わせはしたが、当の本人は何事も無かったかのような表情をしているのに、氷のような瞳の青年の方が殺意を抱いていることが恐い。
まるで、黒髪の青年が自分以外と関わることを赦さないようで——。

「事故だったらそこのチビが降ってくる前に、他の奴に潰されてるだろ」
「確かにそうですね」

黒髪の青年の言った言葉にオルドルが同意を示す。
彼の言葉自体に肯定するのは構わないが、妾を「チビ」と言ったところを訂正してもらいたかった。

「それにしても、この辺には普通の人間は近付かないのに……。 迷子か?」

黒髪の青年が先の日本刀を携えていた青年と同じような質問を投げかける。

「うむ、迷子じゃ」
「姫様、胸を張って言うことではありませんよ」

妾の開き直った発言にオルドルがつっこむ。

「あぁ、やっぱり。 どこに行きたいんだ?」

黒髪の青年が尋ねてきた。
やはり、日本刀を携えた青年と同じようなことを言う。

髪や目の色、言動の一致のせいもあるのだろうが、この青年と日本刀を携えた青年は目元などの顔のパーツも似ている気がする。

「目的地というか、人探しをしているのですが……。 この中に知り合いとかいませんか?」

オルドルが異次元から取り出した資料を黒髪の青年に手渡す。

「うわわわっ! 雨音!? どうしたんだ!?」

黒髪の青年がオルドルから資料を受け取ろうとした瞬間、氷のような瞳の青年が黒髪の青年を抱き寄せる形でオルドルから遠ざける。

妾達は勿論、黒髪の青年にも意図は分からないらしく、氷のような瞳の青年の腕の中でジタバタと暴れている。

「もしも、その中に入っている奴を知っていたらどうするんだ?」

氷のような瞳の青年が瞳と違わず冷たい声で問う。

「その方を探しだして、協力していただきます。 戦力になる方々なので、戦場での戦闘をお願いすることになるかと」

下手に隠し立てする方が危険と判断したオルドルが真実を具体的に伝える。
すると、案の定、氷のような瞳の青年の表情が険しくなり、より一層腕に力を入れる。

黒髪の青年はさらに訳が分からなくなったようで、疑問符を浮かべたまま氷のような瞳の青年の名——雨音、と呼びかけ続けている。

姫は勇者で魔法使い。 ( No.105 )
日時: 2011/12/11 16:27
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: DvMOJ6NL)
参照: 今回はモチベーションが上がっていたので、長めです

「そんなものに協力するようなアホは、そこには載っていない。 少なくとも【不知火の血族】は不参加を表明する」

刺々しく冷たい声で、雨音が言い放つ。
ようやく何が起こっているかを飲み込んだらしい黒髪の青年が、口を開く。

「勝手にそんなこと言っていいのか?」

不安げな表情で言った黒髪の青年を、雨音が「どうせこうなるだろうから、大丈夫だ」と言いながら腕の中から解放する。

「……汝が【不知火の血族】なのか?」

雨音に問いかける。
すると、雨音は不機嫌そうな表情をして頷く。

幸か不幸か何の覚悟も準備をしていない内に、探し人のうちの一人が見つかってしまった。
しかし、異常なまでに警戒心を抱かれているため、下手に動けない。

そして、何より恐いのは黒髪の青年の存在だ。
彼はどうにもオルドルの好みのタイプと完全一致をしているようで、オルドルが今にも襲いそうな雰囲気を醸し出している。
それを実行すれば、雨音が攻撃を仕掛けてくるだろう。
オルドルもそれを懸念して動くのを我慢しているらしい。

「雨音、翔。 遅いから迎えに来たよ」

そんな一発触発の状態に、黒髪の青年に少し似た美しい顔立ちの青年が現れる。
これで数は四対三になった。
とは言っても、欠片も戦力にならない妾を数にカウントしなければ、ちょうど同数じゃな。

「……お前はどうして、姿を確認していないのに俺か相斗か分かるんだ?」

雨音が不機嫌そうなしかめっ面で、突然現れた青年に問う。
それに対して、彼は雨音に飛びついてからこう言った。

「オーラと匂いで簡単に判断出来るよ。 相斗がふわふわしたオーラと甘い匂いで、雨音が」
「やっぱり、忍は黙ってろ」

突然現れた青年——改め、忍の言葉を遮り、彼を自身から引き剥がそうと襟首を掴んで引っ張る。

「嫌だ!! 兄さんは雨音が甘えてくれるまで、絶対に離れない!!」

しかし、忍は凛々しい声と表情で変態としか思えない言葉を口にし、必死に雨音の体にしがみつき続ける。
「あ、あれ? 忍さん?」

少し間を空けて、金髪の青年——雨音がさっきよりも僅かに高い声で、更にはキョトンとした表情を自分に抱きついている忍へ向ける。
忍は顔を向けられるよりも前に、察したようで子供のように小さく頬を膨らませる。

「雨音が逃げたぁぁぁ!! でも、兄さんは雨音が甘えてくれるまで相斗にだって、抱きつき続けるからね」

…………【不知火の血族】について、分かったことがある。

「……変態率が高いのぅ」

思ったことがつい口に出てしまった……!
いくら攻撃的な雨音が大人しくなっているとは言っても、流石に誰かに起こられそうな気がする。

攻撃されたら恐いから、あらかじめクロヌの影に隠れておこう。

「大丈夫だ、聞こえてないみたいだからな」

妾の前に立つ、クロヌが妾の頭をワシャワシャと撫でながら言う。
忍達の方を見ると、確かに忍は雨音に必死にしがみついているし、雨音は何が起こったのか分かっていないらしい。
黒髪の青年——改め、翔は忍を引き剥がそうと忍を全力で引っ張っている。

「ん? あいつら、誰?」

ようやくこちらの存在に気づいた忍がこちらを振り向く。

「申し遅れました、私は王国の第一王女の執事を務めているオルドル・ヴェリテと申す者です。 そして、こちらの方は第一王女のサフィール・アミュレット様でございます」

オルドルが執事らしい丁寧な口調で妾と自分の名を名乗り、続いてクロヌとミコガミを紹介する。
クロヌもミコガミも若いが、騎士団や隠密機動隊では確かな実力で、かなり高い地位にあるらしい。
うむ、初耳じゃ。

「へー、興味ないや」

聞き終わるや否や忍がそう吐き捨てて、雨音の方へ顔を向けて、「雨音、出ておいで」と言いながら彼の腕に頬ずりする。
雨音が嫌そうなのにどこか嬉しそうな表情で、忍の身体を遠ざけようと、彼の身体を押す。

「兄貴のせいで、しばらく雨音は出てこねぇよ」

翔が忍を引き剥がすために引っ張りながら、雑な口調で言った。

「しょうがないなぁ……。 予定を変えて今日は相斗をモフモフすることにするよ。 とりあえず、家に帰ろうか? 兄さん、ご飯作らないといけないから」

翔の言葉に対して、忍が矢継ぎ早にまくし立てる。
分かったことは、雨音を離す気がさらさら無いということくらいじゃな。

「いや、でも、サフィールだっけ? あいつらは俺らを探してたみたいなんだが……」

翔が忍に事情を説明する。
実際に資料を読んだのは雨音だけだから、断片的にしか分かっていないようだが、上手く内容を要約して伝えている。

しかも、ちゃんと資料を読んだ妾よりもしっかり理解している。

「うーん……正直、弟以外の話なんてどうでもいいんだけど、これはフランか父さんに聞かないとどうしようもないしね」

忍が困った様子で呟く。

一番この状況を切り抜ける案を持っている可能性が高いオルドルを見上げる形で見やると、翔達三人を恍惚とした表情で見つめていた。
…………相手が美形になると、此奴は一番頼りにならなそうじゃのぅ。

姫は勇者で魔法使い。 ( No.106 )
日時: 2011/12/26 20:38
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: DWh/R7Dl)
参照: やっとこさ、ハイペース更新ができそうです♪

「しょうがないし、家に連れてくか。 お前ら、寝床はあるのか?」

翔が妾達に問いかける。
ミコガミが首を横に振ったのを見てから、翔が先ほどの森の方へと歩き出す。

「ついて来い。 少しの間だけだが、泊まっていけばいい」

翔が屈託の無い笑顔でそう言った。

「翔ってばお人好しなんだから。 そこも良いんだけどね!!」

忍が鼻血を垂らしながら、こちらも輝かんばかりの笑顔を浮かべる。
2人とも素晴らしい笑顔だとは思うが、明らかに質の違う笑みだということはよく分かる。

————

翔に付いて森の中を近道をしつつ進んでいくと、先ほど、凸凹二人組に遭遇した場所に出た。
翔達は何ら危険を感じていない様子で、進んでいく。

「兄様、おかえりなさーいっ!」

すると、忍の首に妾よりも一回り小さく、明るめの茶髪が特徴的な少年が飛びつく。
首からなってはいけない音がしたことなど気にも止めず、茶髪の少年を引き剥がし、地面に叩きつける。

「翔、お菓子は?」

首が有り得ない方向に曲がっている茶髪の少年が、地面に寝ころんだまま、翔にお菓子を要求する。
翔が「ちょっと待ってくれ」と言ってから、異空間に繋がる穴を開き、そこからお菓子が入っていると思わしき茶色の紙袋を取り出す。

「わーい!! ありがとう!」

茶髪の少年が何事も無かったかのように立ち上がり、翔から袋を受け取る。
すぐさま袋を開け、中身を物色し始め、割り箸に刺さった半透明で赤色のキレイなガラスのような球体を取り出す。

ガラスのような球体についた保護用のビニールとそれを縛っているモールを外し、嬉しそうな表情で球体を舐める。

「クロヌ、彼奴は何故、ガラスを食べておるのじゃ?」
「俺にも分からん。 今まで、ガラスを食ってる奴なんて見たことないからな……」

クロヌに尋ねてみたものの答えは得られなかった。

「……そうか、オレ以外は小さい頃から宮廷暮らしで、日本に来たこと無いんだもんな。 あれはガラスじゃなくて、飴だぜ。 リンゴ飴っていう名前で、縁日とかの出店によくあるんだ」

ミコガミが茶髪の少年が食べているガラスのような球体の説明をしてくれる。
どうやら、これのことをミコガミ以外が知らなかったのは日本特有のものだったからのようだ。

「縁日や出店とは何じゃ? それで、あのガラスはリンゴの味がするのじゃな!?」

説明に出てきた知らない単語を聞いてから、ガラスのような飴についても尋ねる。
リンゴはかなり好きだし、リンゴ飴も是非とも食べてみたいものじゃな。

「縁日はお祭りで、出店はそこに出てる店のことだ。 リンゴ飴って言っても、見た目がリンゴなだけで、大概はスモモとかだぜ?」

表情で考えていることを悟ったミコガミが言う。

「スモモ? なんじゃ、それは?」

そうミコガミに問いかけると、驚いた顔になる。
しかも、ミコガミのみならず、翔や茶髪の少年も物珍しそうな目を向けてきた。

「……一つ、分けてあげようか? さっきも物欲しそうだったし」

茶髪の少年が可哀想なものを見る目で、袋から取り出した新品のリンゴ飴を差し出す。
ちびっ子にまで気を使われるというのは、なかなかどうして複雑な気分じゃな……。

「ん……? さっき?」

思うところあって、ちびっ子にもう一度目をやる。
茶髪、小柄で幼い体型と顔立ち、飴、服装……間違いない。

「汝、さっきのちびっ子か!?」
「え? 今更?」


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