ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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世界と一緒。【完結しました】
日時: 2012/08/25 15:08
名前: 結城柵 ◆cSPwlATP2E (ID: 49KdC02.)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=13174

↑リメイク+新作

参照1600突破! ありがとうございます!

おはようございます。僕は結城柵、現在は白沢祐と名乗っているものです。

エグい描写が時折入ります。

目次 >>130 >>131


完結記念企画更新一覧

05/25 ryuka様より世界のイラストを頂きました! >>119
06/15 番外【ストーカーは歌姫がお好き?】 >>121
06/16 If話【もしも、過去で世界が死んでいたら】 >>122
07/12 番外【天の川】 >>125
07/14 番外? 【僕らの新たな物語】 >>126
07/23 番外 【神代と星野】 >>128

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Re: 悲哀と世界。 ( No.10 )
日時: 2011/12/03 20:25
名前: 結城柵 (ID: khvYzXY.)
参照: トリめんどいの。

【父親 2】

「それは…本当なのか?優香が、死んだ…?」
「はい」
 狼狽えるおじさんとは正反対に、自分でもびっくりするくらい冷静な僕がいた。
ぼんやりと、セミの声に耳を傾けながらおじさんをみつめる。
 こほん、とおじさんが一つ咳払いをした。
「ところで、だ…竜胆君。十年前のことは…」
 おじさんは、ずっとそのことが言いたかったみたいだ。
おばさんの話はどこへ消えたのだろうかと、僕は小さく笑った。
「忘れてくれ、と?」
「いや…その、すまなかっ」
 おじさんの言葉を遮るように、どこかから、ガラスの割れる音がした。
自分の手元にあるガラスが割れている…つまり僕がやったのだと理解するには、少し時間がかかった。
「ははっ、なにが“すまなかった”んですか?今更ですか?何について謝ってんですか?と、いうより謝る相手、間違えてますよね?
あぁ、それとも。本人や遺族に会うのが怖くて行けませんか?捕まっちゃいますしね?


…ふざけんなよ、クソが」

 ガラスの欠片を首もとに突きつけ、笑顔で言ってやればおじさんは、おびえた表情で僕を見る。
ぞわりと身体が震えて、ガラス片を投げ捨てた。
手は真っ赤に染まって、滴が落ちた。

Re: 悲哀と世界。 ( No.11 )
日時: 2011/12/03 20:41
名前: 結城柵 (ID: khvYzXY.)
参照: トリめんどいの。

【父親 3】

「殺さ…ないのか?」
 ガラスを投げ捨てた僕を見てそいつが呟く。
僕はそれに対して、何を言ってるんだといわんばかりに笑みを返した。
「当たり前じゃないですか。僕は誰かさんと違って忙しいんです。世界を守らなきゃいけないんだから、犯罪者ごときになってる暇はないんです。それに…なんだかんだ言っても僕は、貴方に感謝していますから」
 慌ててやってきた店員さんたちが砕けたガラスを集め始めた。とても申し訳ない。
僕の手に気が付いたらしい一人が手当を申し出してくれたけど、やんわりとそれを断った。
「感謝…?一体、何を…」
「あんなに美しくて可憐で脆くて儚げで、大切にしたくなるような世界を、僕に教えてくれたこと」
 それだけ言うと後は何も言わず、言わせず、そいつに背を向け歩きだす。
数歩進んだところで、忘れ物を思い出して振り返る。
「言い忘れ。今度、“僕の”世界に会いに来たら、殺すから」
 笑顔で言い残してその場を去る。

 明日は世界の誕生日だ。
あの日から、十年。あぁ、待ち遠しい。
あんな奴、世界にはいらない存在なんだ。世界を汚すゴミは、撤去しなきゃ、だもんね。

さ、パーティーの準備だ。

Re: 悲哀と世界。 ( No.12 )
日時: 2011/12/04 05:56
名前: 結城柵 (ID: khvYzXY.)
参照: トリめんどいの。

【夢】

 夢を、見た。
世界が僕の下で、僕を呼んでないてる夢。
世界の瞳からは雫がこぼれて、僕はそれをなめとる。
世界の腕からは血が流れて、僕はそれをなめとる。
世界の首には紫色の僕の指の痣がついていて、僕はそれを見て口元を歪める。
それでも世界は、僕を求めてなく。
りんどう、と苦しげに掠れた声が、悲しげに苦しげに、なのに必死で僕を呼ぶたび、全身が熱くなる。
 異常だ、なんてとうの昔に気づいてる。
世界のため、と称した行動全てが自己満足なことも知っている。
世界の細い首に手をかけるたびに、噛みつくたびに、世界のなきごえを聞くたびに、血を見るたびに、世界がおびえるたびに、悲しむたびに、そしてなによりも、僕を求めてくるたびに、僕の全身は熱を持つ。鼓動が聞こえてくるくらい早くなって、息をするのもつらいくらいに。
おかしいんだ。世界を手にかけようとして悦に浸るなんて。僕は世界に嘘を吐いてるんだ。僕は彼女を、正常になんて愛せないんだ。

 それでも、僕に笑いかけてくれる世界がいるから、僕は今日も夢を見る。

僕は世界を守っている。僕は世界を愛している。世界は僕だけを見ている。僕だけの、世界。

そんな、甘い甘い夢を

Re: 悲哀と世界。 ( No.13 )
日時: 2011/12/05 20:51
名前: 結城柵 (ID: khvYzXY.)
参照: トリめんどいの。

【誕生日くらい平和に過ごしたって】

 今日は月曜日だけど、僕と世界はテーブルの上のケーキに蝋燭を差している。
十年前からの習慣。世界の誕生日の日はサボりだ。一昨年までは三人、去年からは二人でお祝いしてる。
「はい。おめでとう、世界」
 ぬいぐるみを渡すと、世界は嬉しそうに笑う。
セミの声がうるさい。あの日のことが不意に思い出されて、不快な気分になって、思わず眉をよせた。
 しばらく楽しげに笑っていた世界の声が止んだ。僕のせいだろうか、と世界を見つめる。
「お母さん、今日も帰ってこなかったね…」
 世界が悲しげに呟いた。おばさんは、行方不明…ということになっている。世界は素直にそれを信じてるし、捜索願いがでていれば警察もそれに対応する。
つまり、真実を知っているのは、僕だけだ。
「大丈夫、絶対帰ってくるよ」
 僕の言葉に、そうだねと力なく笑った世界を見つめる。絶対に見つかるから、泣かなくてもいいのに。
ねぇ、世界。笑ってよ。

 誕生日くらい、平和に過ごしたっていいでしょ?

 僕にとっても、特別なこの日くらい心から笑ったっていいでしょ?

 ね、おめでとう。世界。

Re: 世界と一緒。 ( No.14 )
日時: 2011/12/06 18:00
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
参照: トリめんどいの。

【夏と僕とあの人の死体 1】

 僕は一人、セミが大量に鳴く山奥にいた。山の中は涼しくて嬉しい。
世界は学校に行っている。というか僕も登校はした。
いきなりいなくなって心配してるだろうな、なんて少し自惚れてみる。
「けほっ…」
 刺激臭がして、思わずむせる。折角のすがすがしい気分が台無しだ。
でも、それでも僕は歩く足を止めない。
「あ、いたいた。こんにちは、久しぶり。世界が心配してたよ。…そろそろ見つけた方がいいかな?」
 しばらく歩くと、少し匂いがきつくなった。
そろそろかな、と思ったら木の根本に黒い人影が見えた。
それに声をかける。返事はない。むしろあったら怖い。
「しかし…よく見つかってないよね。ま、私有地の山の奥にくる奴なんて、そうそういないか。感謝しなきゃね」
 人影から、蠅が飛び去った。
悲しいかな、返事のないそれに話しかけたって、独り言にしかならない。
「ま、貴方が見つかったら、世界は余計悲しむよね」
 深い穴を見つめながら笑いかける。そこは元々目があったけど、今は白い何かが…恐らく蛆がひしめき合っている。
ぽろり、と目から雫のように蛆がこぼれ落ちた。


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