ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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世界と一緒。【完結しました】
日時: 2012/08/25 15:08
名前: 結城柵 ◆cSPwlATP2E (ID: 49KdC02.)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=13174

↑リメイク+新作

参照1600突破! ありがとうございます!

おはようございます。僕は結城柵、現在は白沢祐と名乗っているものです。

エグい描写が時折入ります。

目次 >>130 >>131


完結記念企画更新一覧

05/25 ryuka様より世界のイラストを頂きました! >>119
06/15 番外【ストーカーは歌姫がお好き?】 >>121
06/16 If話【もしも、過去で世界が死んでいたら】 >>122
07/12 番外【天の川】 >>125
07/14 番外? 【僕らの新たな物語】 >>126
07/23 番外 【神代と星野】 >>128

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Re: 悲哀と世界。 ( No.1 )
日時: 2012/01/12 20:47
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【加虐性愛者はこうしてつくられる】

 その日は、蒸し暑くて、蝉の声がひどく騒がしかったことをよく覚えている。
この世の悪意を見せつけるように叩き付けられた現実を、僕はただ静かに見つめることしかできなかった。
 親友のなきごえが今も鼓膜にこびりついている。親友の白いからだが今も角膜に焼き付いている。赤色と白色とか入り交じった液体と、すえたにおいが充満する小屋の中をまだ忘れてはいない。

忘れられるわけがない。

無造作に床に投げ捨てられた親友たちを忘れられるはずがない。
 それは、忘れてしまいたいぐらいひどい光景だった。
けど、僕にはひどく愛おしく思えてしかたがなかった。
りんどう、と僕を求めるなきごえも、苦痛を含んだ意味のない母音を吐き出す上擦った声も、だらしなく全てをさらけ出したからだも、赤と白の親友たちも、それを玩具にしているそいつも、悲惨なせかいも。全部、愛おしかった。
 勘違いされては困る。僕はそいつを恨んでいる。殺してやりたいくらい憎んでいる。
けど、感謝もしている。
だって、そいつは

はきけをもよおすくらいうつくしいせかいをぼくにおしえてくれたのだから

Re: 悲哀と世界。 ( No.2 )
日時: 2011/12/07 05:36
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【非常食】

 朝、学校に行くと昨日の地震の話題でもちきりだった。
別にどうとも思ってないけど、声をかけられて面倒だったから一言二言、言葉をかわして席についた。
「りんどー、おはよ」
 隣に座った世界が笑った。
世界は僕の大切な大切な大切な大切な幼なじみだ。可愛くて、どこか抜けていて目が離せない。
「ん、おはよ」
「昨日、おっきい地震あったね。怖かった」
 挨拶を返すと、世界の口からも地震の話が出た。正直、お前もその話か、と少し思ったけど、世界は馬鹿で素直で正直だから、思ったことそのまま口に出してるだけって知ってるからなにも言わない。
「そうだね。この前のでかいやつの被害でまだ大変なとこ、まだあるのにね…」
「うん。ああなったら私、逃げ遅れるよ…」
 心配そうに呟く世界に、この県は海がないから平気だって言いかけてやめた。山だって崩れたりするんだった。
「大丈夫。僕が助けるよ」
「そっか…!でも、食べ物とかはどうするの?」
 世界の心配症。と心の中で呟く。避難所の食事とかがあるし、仮に無くたって。
「大丈夫、世界」
僕は、笑う。
「非常食なら、ここにいるでしょ」
世界も、笑う。
そうだよ、世界には僕がいる。

Re: 悲哀と世界。 ( No.3 )
日時: 2011/12/07 05:41
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【チャームポイント】

「二人は付き合ってるの?」
 もう飽きるくらい聞かれた質問に正直、うんざりした。
けど、世界は耳まで真っ赤になってて凄く可愛かったから「うん」と頷いてみた。
 世界は驚いて僕を見て、質問してきた子はやっぱり、と納得してた。
「じゃあ、またね」
 そう言って真っ赤な世界を引っ張って、中庭に向かう。
「ね、ねぇ…りんどー」
 非難の声をあげる世界を全力でシカトする。
じおじおとアブラゼミの声がうるさい。そういえば今は夏だっけ、と当たり前のことを再確認した。
もう数日で世界の誕生日だ。プレゼント買わないと。
「ねぇ、りんどう!」
「なに?」
 反応して振り向いてやると、暑さのせいなのかまだ真っ赤な世界がいた。可愛い
「わ、私も、竜胆のこと、すき」
「知ってる」
「う。…竜胆は私のどこがすき?」
 無粋な答えには無粋な質問が返ってきた。
「その茶色っぽいサラサラの髪もおっきい目もピンクの唇も細い首も
華奢な肩も柔らかい手も桜色の爪も控えめな胸も真っ白い体も子供っぽい声も優しい心も全部全部すきだよ?」
 もちろん汚いとこもすきだけれど。そんな狂気的な告白する気はないから。
「…愛してる、世界」

Re: 悲哀と世界。 ( No.4 )
日時: 2011/11/24 20:34
名前: 結城柵 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)

【金魚】

 左腕がずきり、と痛んだ。
蛇のように巻き付いた真新しい包帯にじわりと、赤色が滲んだ。
それはまるで、絡みついた赤い糸みたいで僕は薄く笑った。
「竜胆、手首どうしたの?」
 世界が不安そうに僕の左腕をなでる。少し、くすぐったい。
テレビからはゴールデンタイムのバラエティ番組の、作ったような笑い声が聞こえてくる。
「ん、怪我した」
 適当な答えに、泣きそうに顔を歪ませた世界を見て、ぞわりとした。
自然と口角があがり、手が世界に伸びる。
「え…、りんど…っ!?」
 ぱすん、とソファーに倒れ込む世界。
その上に僕はいて、その細くて白くて綺麗な首に手をかけていた。
「り……、ど…、くる、し…」
 生理的な涙と生存本能で僕の手をどかそうとする弱々しい手に、笑みがこぼれる。
金魚のように口をパクパクとさせるようすが、可愛い。
綺麗。きれい綺麗綺麗きれいキレイきれい綺麗キレイ綺麗。
「ぁ…せ、かい。世界!」
 手の下で弱まった脈と動かなくなった世界に我にかえり、呼吸を確かめる。
…あぁ、よかった、生きてる。
愛しい愛しい世界に、死なれたら困る。
 世界の黒髪を優しく撫で、額に口づける。

「…愛してる、世界」


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