ダーク・ファンタジー小説

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STRONG!(参照1100感謝致します!)
日時: 2014/02/08 23:26
名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)

お客様
岸 柚美様 >>2 >>22
エンヴィー様 >>3 >>6 >>14 >>17
七海様 >>8
ヒント様 >>27
明鈴様 >>34




プロローグ
>>00

♯01 children/anfang
>>01 >>04 >>06 >>09 >>10 >>11

#02 changed/scort
>>12 >>13 >>16 >>20

#03 first/judgment
>>21 >>23 >>25 >>26 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>36 >>37 >>38 >>39

どうも多寡ユウです!今回はどちらかというとリメイクに近い形だったりしますが、呼んでいただけたら幸いです!
死とはなんなのかっていうことは、ふと思い至ったりいますが、やっぱ結論は死ぬの怖ぇーな。って結論で終わっちゃいます。
ということで、またシリアスで書かせていただきます!
目を通してくれて呼んでくれたら、本当にうれしい限りです!
ぜひともよろしくお願いいたします。orz


プロローグ 
















人の生というものは実に奇怪なものだ。どれほど今の世を懸命に生きたとしても、必ず人には「死」がやってくる。如何なる生命体でも決して免れることのできない、絶対にして不条理にして正しすぎる「死」。彼の偉人、大隈重信でさえも人間は125歳までが限界と言ったものである。
不死の力など存在もするはずがない。否、して良い筈がない。そんなものがあったものなら大切な者達の死でさえも、改変することができてしまう。それはあってはならない。

勿論、その人を生き返らせたい人間は絶対に居るであろう。死んでいたままの方がいいなどという人は存在しない。いやいたとしても、それは表面上であり、内面的感情は異なるであろう。心の片隅でも、生きて欲しいという希う気持ちがあったのならそれでいい。それだけでその人は優しい人になれるし、生き返らせたい人間にもなれる。

だがそれは、不条理にして正しすぎる「死」に抗うということであり、生命の絶対的なルーティーンに齟齬を加えてしまうということである。それは間違っているという意見があるからこそ、人はそういうものを作りたがらなかったのだろう。


これが、先人達の頭脳と可能性と犯してはならないところの境界線の限界である。



しかし、それこそ間違っていると私は思う。
死にたくないのなら、死ななければいい。死にたくなかったのなら、生き返ればいい。
「死」は確かに絶対的なものではあるが、不変的なものではない。絶対王政もいつかは地盤を無くし、権威は失墜し、支配することもできなくなるような力量しか持たなくなる。



では「死」をなくそう、と私は決意した。


この世から生命というものを永久なものにすれば、どんな世界が広がるか。興味が湧く。















「今現在、このいわゆる不死の薬というのは実験段階ということでよろしいのでしょうか?」





角取材カメラのフラッシュが質問と同時に激しく光る。その数優に30は超えていて、目を開けるのも辛いぐらいに光量がすさまじい。


「はい。本人及び保護者の同意の下に癌や事故により重症化するに至っている18歳以下の子供達1000人に対し、臨床実験を行っています。結果が顕著に表れるのはあと21時間程かかりますが、この薬を投与すれば、状態も回復の一途を辿ることでしょう」


それでも囲み取材のその中心に立っている黒スーツを着た白髪混じりの30歳前後の男はどうするわけでもなく、ただ淡々と質問に対する答えを言い連ねていく。

堂々と構えたその立ち姿に年の貫禄というものがなぜか少しばかり感じられる。




「何故、子供だけに投与するのでしょうか?効果の表れ方が、この薬は年齢によって異なると解釈してもよろしいのでしょうか?」



「いいえ、それは違います。年齢は薬の効果とは全く関係ありません。未来の子供達に夢と希望を再び与えて上げられることこそが今後の未来の為にもなり、まだ世界というものを経験したことがない子にも、この世界がどれほど素晴らしいものであるのかと言うことを教えてあげられる。これ以上の喜びはありません。私達の薬で未来が救われるのですから」とその男は取材人の質問に笑顔で否定し、その表情を崩すことなくありきたりな一般論を吐き捨てた。



「しかし、商品化に至るのはまだ程遠いという意見も出ていますが、それに関してはどのようにお考えでしょうか?」



メモを取りながら新米の取材スタッフが問うた。その初々しさゆえなのか彼は笑顔を崩すことなく、世界中の人々に幸せを届けるような目でその新米を見ながら言う。


「それについては、できるだけ早く皆さんにお届けできればと思っています。21時間後には私達の薬の重要性と信頼性をご確認できるかと」



その表情に若干の薄気味悪さが漂うが、ここで今回の司会進行役であると思われるスーツを着た女性が「次で最後の質問となります」と、宣言した。


粗方聞きたいことを聞きおえた取材陣の中で特にベテランと思われる50台の男性取材スタッフが最後の口火を切る。



「では最後に、根幹の質問をしたいと思います。抵抗があるなら結構です」遠慮がちに言う。だがすぐさま。



「いいえ問題ありません」と、承認と受け取れる答えが帰ってきた。






数秒の静止の間、ベテランスタッフは言うべきか悩み、決断する。







「あなたが何故この薬を作ることになったのかをお聞かせ願いますでしょうか?」




今までの質問で一番短いものだったが、その分の重みと責任を背負った質問だったのだろう。これには白髪も少し黙りこくった後に、彼もまた決心した。



「わかりました。この薬を作ることになった理由を言いましょう」




彼は続ける。








「私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

Re: STRONG! ( No.9 )
日時: 2013/09/17 06:48
名前: 多寡ユウ (ID: LXRMec4z)

七海様
ありがとう七海!ちゃんと読んでくれて素直に嬉しいです!
この後の展開、是非楽しみにしてくれるとありがたい(泣)
今後もよろしくお願いします!

Re: STRONG! ( No.10 )
日時: 2013/09/19 00:11
名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)



「では我々は記録検査機器を運んで参りますので、何かありましたらナースコールでお呼びください」



そう言って五名の医者達は特別集中医療室と名のついたドアを開ける。アカネがいるこの場所は特別集中医療室という病院内に増築された被検体に対し不死の薬を投与する為の一室で、三重にも渡るドアを潜り抜けた先にある病院内最上階にある部屋である。

彼女のベッドの周りには簡素な机と、酸素吸引機、点滴、人工呼吸器など多岐に渡る機器が存在し、いかにも殺伐とした病室であった。

医者達五名が病室を抜け、残されたのがアカネと母親だけになると、ふとアカネが自分の右手を握っている母親に語りかける。

その様子は薬を飲む前よりかは幾分元気なようにも見えたが、それが無理にやっていることだというのは当の母親はわかりきっていることであった。




「ねぇ・・・・、おかあさん・・・・・・・・・・。わたしね・・・・、げんきに・・・・・・、なって・・・・、もっと・・・・・・・・もっと・・・・・・、おっきく、・・なった・・・・・・・ら・・・・・、やりた、い・・・・・・・・・・こと・・・・、あるん・・・・・・だ」


か弱い声で話す彼女の声をしっかり聞いてあげようと、母親も耳を澄まし聞き返す。
彼女との会話を続かせるための最善策を採って。


「なに?——アカネは何をやりたいの?」


「・・・・・・わたし・・・・、わたし・・・・・・・・・、いっぱい・・・・・・いっぱい・・・・・・・、おべん・・・・・・・・きょう・・・・・・して・・・・、・・・わたし・・・・・・の・・・・おくす、り・・・・・・・・・・・つくって・・・・くれた・・・・・・・・ひと・・・・みたい・・・・・・・・・・・に、・・・・・なりたい・・・・な」


母親は目を見開いた。驚きというよりかは、嬉しさのほうが勝っていた。彼女の生きる希望に、あの不死の薬はなったのだから。

そのことに感謝の念を抱きつつ、母親は今一度問う。

彼女の右手を握る両手の握力をより強め、ぎゅっとする。



「アカネはお医者さんになりたいの?」



その答えはあまりにも儚すぎる、けれども力のこもった頷きであった。




「・・・・う・・、ん・・・・!」




その仕草に母親は咄嗟に涙をこぼしそうになる。だがそれをあらん限りの力で留めきり、言う。今は私が感動や悲哀の涙を流すときではない、彼女の心配を解き、安心させることが今の母親の務めであると、心に念じる。




「そう。じゃあ、いっぱいお勉強して、お医者さん、ならなくちゃね。アカネに夢があったなんて、お母さんとっても嬉しいぞ!!もう、ほんと、可愛いんだから!」



けれども零れていってしまう涙を隠すように、母親はアカネの横たわっている上半身に抱きつき、軽く抱擁した。彼女の涙が白いスーツに落ちては滲み、落ちては滲みを繰り返していた。




「おか・・・・あさん、・・・・なーす・・・・・・こーる・・・・・・おし・・・・ちゃう、よ?」


「えぇ!それは、少し・・マズイかしらね・・、怒られちゃうわよ、・・お母さん」


突然怖いことを言い出す少女に、母親は少々苦笑いを見せるが、直ぐに持ち直し全てを受け止めるような暖かい表情に変化した。

今度は、アカネが笑い出しながら確認をとる。彼女のベッドには医者達がぬいぐるみやらなんやらを片付けてしまったために、話し相手になってくれる物も人もいなかった。

流石にいたいけな少女には、あの医者達の前で眠るというのはどうにも眠れないらしい。



「え・・・・へ・・・・へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。おかあさん・・・・・・・、きょう・・・・・・は、・・・・・・ずっと・・・・・・・いて・・・・、くれる?」


だが、彼女が聞くより速く、返答は決まっていた。




「もう、当たり前じゃない、心配だもの。あの医者達も、あんまり信用ならないしね。アカネが元気になるまで、絶対離れてやらないんだから」


「そっ・・・・・・か・・。よかっ・・・・・・た」




アカネは安心したように眠そうな顔を見せ、小さくあくびをする。




「・・っ・・・・もう、アカネったら・・・・。・・・・・・・・さ、
もうすぐ医者達がこぞって帰ってくる頃だし、今日は寝ちゃったほうがいいわ」




もう9時10分を回っている。消灯時間はとっくに過ぎており、本来であればもう病人は寝なければいけない時間だった。

そう、彼女が被検体でなければ。





「・・・・はぁ・・・・・・・・・い。・・・・・・・・・・おや・・・すみ、・・・・・おかあ・・・・・・・・・・・さん」




最後に片言と言葉が続く。アカネの声音を聞く度にどうにかしなければいけないという感情とももうおさらばかもしれない。
だって、彼女は明日には助かるのだから。
そのために必死で不死の薬を心願したし、希い、望み、やっと手に入れた。
これを飲む者がいくら被検体と世間からバッシングを受けようと、私だけはこの子の母親であり続けようという決心があった。

それを胸に抱き、母親は言う。









「ええ、お休み。アカネ」
















最後の別れの挨拶を。




Re: STRONG! ( No.11 )
日時: 2013/09/19 22:11
名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)


全国津々浦々の重症と判断された子供達1,000人へと配布された不死の薬は、午後9時23分35秒を持って完全に全員に投与された。
あるものはその薬に感謝し、またあるものはその薬を神と崇めた。
そして各々の被検体が薬の副作用によって深い眠りについた後、空白の21時間をもって。







世界は豹変した。









Re: STRONG! ( No.12 )
日時: 2013/09/23 00:08
名前: 多寡ユウ (ID: /AtcWqBj)


そして1000名の少年少女達は目覚める。





時は、2020年12月。
冬のある日から始まってしまった21時間の空白を埋める為に、そしてその身に起きた真実を知る為に。







少年少女達は、進み続ける。













After 21 hours







「もうっ、シュウ!いつまで寝てるの!とっくに夕飯できてるのよ!?」




「ん………んっ……。」


聞き慣れた姉の声でシュウは目醒める。ちょうど夕飯が出来上がったようで、シュウの姉がいる一階から生姜の程良く効いた豚肉の焼けた仄かな薫りが二階へ伝ってくる。いい匂いに引きつられ無性につまみ食いをしたくなる衝動に駆られるが、今はそれが出来ない筈だ。






そう、出来ない筈だった






今の今までは







シュウは自らの日課である右手が動いてくれるかの確認をする為に、脳内で天井の証明を向いた顔の近くまで右手を静かに運ぼうとする。






「……」








シュウは頭上を横切る薄っすらとした何かの影を凝視するが、それが長さの異なる五指が伸びている掌であることを理解するのにかなりの時間を要した。


二十秒程度経つと、やっと脳内が正常に働くのがわかった。


眠気の性で薄らぐ二重の瞼からでもわかる、確かな右手の影が自らの瞳に浮かび上がる。

動く筈の無い自分の右腕が、宙に伸びている様が。





「…………………こ、これ、は、俺の、腕…………?」






証明に翳すと分かるその右腕は、寝たきりで動けなかったはずのシュウの腕とは思えない程に、青春の若者というような肌の色合いと肉付きで、五指や手首を至る方向へ動かしても全く痛みは無い。
では、声は。





「…………こ、……………声も、普通に……、手もちゃんと……………………って、これも、医療用ベッド、じゃない。人工透析も、酸素吸引機も、どこにもない、なんて。一体、何がどう、なって……………………っ!?」



困惑の色を隠せないシュウは、壁に掛けられている旧来式の掛け時計に目をやり、愕然とした様子で言う。




「12月20日……18時23分…………、これって、俺が変な薬を飲んだ、次の日の日付か。ジャスト21時間……、そういえば、服用後21時間は安静にって、医者がハル姉に、言ってたっけか……」




シュウは彼自身の記憶を再確認しつつ、男物ベッドに横たわりながら感慨に浸る。



「それにしても、どういう訳だ。つい昨日まで、寝たきりの、状態だったのに………………」

「身体が動かせる。これも、あの薬の……」




あの薬、とある製薬会社が配布した1000粒のみの万能薬を一つ服用した。たったこれだけの事で、シュウが長年味わってきた辛い闘病生活から抜け出せてしまった。
ハル姉がどんなにシュウの為に頑張っても成し遂げられなかった事を、容易にやり遂げてしまった。



「これで、これでやっと、治った、のか…………?」


長年姉弟二人の歩んできた軌跡が、たった21時間という短い時に容易く踏み躙られてしまった様な気がして、素直に喜ぶ事が出来ない。



「俺の、病気ってやつは」



二人が共に割いてきた時間の大切さをしっているシュウだからこそ、ハル姉の辛い苦しみを誰よりも知っているシュウだからこそ。




「もぉ〜、速くしてシュウ!!冷めちゃうって!!」








素直に、喜んではいけない。



Re: STRONG! ( No.13 )
日時: 2013/09/25 17:58
名前: 多寡ユウ (ID: mVHy..WT)

シュウはベッドから静かに降り、周囲も見渡した。あるものは男物の家具や勉強机、そして大方私物であると思われる見知ったアイドルのポスターと有名なサッカー選手の壁紙。いかにもモダンな青春真っ只中の男子といった感じの一室である。



「これが、俺の部屋」



そうシュウは考え付く。この家庭内において、性別が男なのはシュウただ一人である。



「もーっ!!シュウったら!はやく来なさいよ!!」



今シュウが居るのは二階であるのだろう。下の一階からから猛獣の雄たけびの様に変わったハル姉の甲高い声が響く。



「ハル姉・・・・・・・・・・・・・・」


あの時まで、あの薬をシュウが飲むまで、ハル姉の持ち前の明るさは塵ほども感じられなかった。だが、今この激しい声が聞こえているということは、それ相応の改善がシュウの体に見られたか、もしくは。



「俺は、死んで・・」


実際のところ、シュウはあの薬に対して違和感を拭い切れてはいなかったし、交通事故で陥ってしまったシュウの症状は余りにも重く、下半身不全や、麻痺、全身複雑骨折、不死の薬を飲む幾日か前には五体の内右腕、右足が壊死、切断することでしか延命することが出来ない状況となってしまっていた。

幾ら最後の希望ですという風に医者に進言されても、流石にそれを飲んだとて今の状況が改善に向かうはずが無いと考えていた。渡されたときは毒物を飲ませて、安楽死させてしまおうという医者達の魂胆かと思ったほどである。

だが、そんな最悪な症状からでも、あの不死の薬というのは本当に効果を発揮したのだろうか?
もう自分自身は死んでしまっていて、今シュウが居るのは夢の世界という悲惨な結末を辿ってはいやしないだろうか?



「こんな回復なんて、本当に可能なのか?あの最悪な症状から鑑みても、今みたいに体を動かすことなんて絶対・・・・・・・・、やっぱりこれは、夢、なのか?」



シュウはそう言うと、自分の健全になった両手を自らの両頬に運ぶ。

夢なんぞの確認には、簡単な作業をすればいい。日本の伝統というに相応しい夢か否かを判別する方法がある。







ズバリ、頬をつねってみよう。


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