ダーク・ファンタジー小説
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- 嫌いだ【作者より】
- 日時: 2019/03/14 22:11
- 名前: riyal (ID: Zodo8Gk0)
嫌いな人。
恨んでる人。
許せない人。
じゃあ。
殺っちゃえばいいんじゃない?
『あたし、君みたいな奴って』
冷たく嗤ってさ。
『嫌いだ』
***
はい。riyalです。
スレを立てるのは初めてです…!
なので初心者を見る目で見てくださると嬉しいです←
それでは。
目次 >>2
歳を食った作者より >>104
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.50 )
- 日時: 2015/03/18 17:47
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
いつの間にか参照が300を超えていました。
見てくださる皆さん、本当にありがとうございます!
頑張って完結させますので、どうかこれからも
よろしくお願いします!
riyal
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.51 )
- 日時: 2016/02/14 15:10
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
憎しみは転じて
………え?
え、ちょっと、何言ってるのこの人?
私たちで、莫大なお金を、どうやって?
そんな暇も体力も無いのにどうして…。
「…話はついたようね」
「あぁ」
男の後ろから無駄にスタイルのいい女が出てきた。
2人は知り合いなのか、砕けた調子で話す。
「そうとなれば撤収ね。良かったわ、返される目処が立って」
「損した分は…そうだな、倍返しで。ははっ、7200万返せよ、嬢ちゃんたち」
冗談じゃない…!
…っていうか!
「待って!借金って!?いつ!?何処で!?どうして!?」
「…はぁ?」
女に蔑む様な視線を送られても、私は続けた。
「うちはお金持ちの筈だよ!借金なんかつくらなくてもお金足りるでしょ!?どれだけ大きな買い物をしても大丈夫だって、それくらいお金持ちなんだぞって、お母さんもお父さんも言ってたのにっ、ねえ何かの間違いじゃないの!!」
有りっ丈の声で叫ぶも…男と女は、冷酷な事実を突き付けてきた。
「ああ、前までは、そうだったな」
「ま…前までは?」
「ええ…けれど、あなたたちのお父様お母様は大きな失敗をした」
「失敗?」
意味が、分からない。
「使い切っちまったのさ、金を」
「…?」
「正確に言うと、失くしてしまった、かしら」
「何で…」
「ギャンブルさ」
「ギャンブル?」
わけが、分からない。
「あの夫婦は賭け事が大好きだったわ。特に旦那の方はね」
「男の方はポーカー、女の方はブラックジャックが得意だった…かな」
「………」
「…それでな。ある時、ボーナスが入ったと言って、莫大すぎるくらいの金を賭けたんだよ。それも、夫婦揃って」
「3000万くらいだったかしらね…それが2人」
「それで、負けた…の?」
「「bingo」」
全然、分からない…。
「それで…」
「負けたから6000万くらい払わなきゃいけないだろ?×2人」
「合計1億円超ね」
「さすがに金持ちと言えど払えなかったってワケでさ」
「周りのお金持ちに金借りたのよ」
「…それが、未だに返せてない…?」
「「その通り」」
何で、何で…。
絶望的な気分に襲われたりとか、気がおかしくなったりとかじゃなく…ただただ、酷い戸惑いが全身を支配する。
強制的に知らされた両親の事実。
捨てられたのは、もしかして…いや絶対に、弟の病気を建前に本当は借金をなすりつけるため。
そして、少なからず兄や姉は知っていたのだろう。
よく両親と一緒にギャンブルに出かけていたから…。
「…じゃ、そういうことよ」
「楽しみにしてるぞ、嬢ちゃん坊っちゃん」
嘲笑や蔑みに満ちた顔で帰っていく人々。
反対に、取り残された、弟と私。
お金持ちとは、こんな生き物なのか。
平気で人を傷つけ、同情も情けもあったもんじゃない。
金を得るためなら、自分が得するためなら、どんな手段をも厭わない。
脆くて弱い子供にすら、平気で事実を突きつけて。
憎い。
両親も借金取りも、金持ち達の全てが憎い。
だったら…。
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.52 )
- 日時: 2016/02/14 15:16
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
憎しみは転じて
だったら、そのお金持ちから、全てを奪ってやればいい。
…私の怪盗人生が始まったのは、11歳の時だった。
家族の顔は、どんなのだっけ。
完全に心を許し、苦楽を共にし、笑い合った筈の家族の顔は。
全て、裏切られましたけどね。
もう誰にも心を開かない、と私は決めた。
素性も性格も情も全て、誰にも見せない。
だから誰に対しても敬語を使おう、そう決めた。
それからというもの、敬語が染み付いて離れない。1度敬語を取ってみようと試みたけど、既に私は驚く程敬語に依存してしまっているらしい。どれだけ頑張っても取れなかった。
…あれから弟には会ってないな。
私は持ち前の身体能力と頭脳で淡々と盗みをこなし、借金を僅か10日ほどで返してしまった。さすがにここまで早いと思わなかったのか、7200万返しに行った時の素っ頓狂な声を上げた男と女の顔を覚えている。
そして、その後もずっと盗みを続けて…軽く一生遊んで暮らせるくらいの大金を金持ちから奪った。…否、奪い返した。
殺人もしなくはなかったけど…ごくごく、たまに。盗みに邪魔なら容赦なく。
そして、それほどの大金を全て手放し、私は家を出た。
…つまり、弟にお金を残して、去った。
窃盗、殺人、その他諸々全てやってしまっている自分が弟のそばにいたら、弟まであらぬ恨みを向けられる可能性がなきにしもあらず。
そんなのなら…生活に困らないお金を残して私は去った方がいい。
怪盗としての腕前みたいなものは、多分結構高いから…それに慣れたから、私はお金に困らないはずだ。盗めばいい。
それに、私が生きられなくなるくらいどうってことない。弟の方が大事だ。
ただ万が一にも、私が働いた盗みや殺しが咎められ、弟に危害が及ぶのなら、それは駄目だ。
だから…だから、私は、出てきた。
出て、もう、弟とは会わないと、決めた。
会ってしまったら、何か取り返しのつかない感情に支配されそうだったから。
他の家族の顔は何処かに行ったというのに、弟の顔ばかり脳裏にこれでもかというほど焼きついている。
弟の顔も声も匂いも雰囲気も全て、染み込んで離れてくれない。
そんな弟の顔を、もう見ようとはしなかった。
思い出すのは仕方なくても、家を出て、もうその顔を見ないと、決めた。
住んでいた街の金持ちはあらかた金を奪ったので、他の街へ。あちらへ、あちらへ、一つの街の全ての金持ちから金を奪っては、また次の街へ、間違っても弟のいる街の方向には行かないように。
…それで、ここの街へ、今はいる。
ルキちゃん、という殺人鬼さんと出逢ったんだ。
それから盗みの効率は格段に良くなった。
…その殺人鬼さんを追って、ここまで来たら、
「…君に出逢いました」
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.53 )
- 日時: 2016/02/14 15:19
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
第14話 姉ちゃん
「………」
「私の中から、弟の全ては抜けてくれないんです。それは、私が忘れることを許してくれないんです。染み込んで、どうにも離れてくれない…弟を、私は1度も忘れたことはなかったです」
何故、ボクにそんな話を…。
しかも、家に帰るまでの時間すら惜しいかのように、こんな薄暗い洞窟の中で。
…ただ。
少し思い出したことは、昔の、とある笑顔-----
-----ハルレさんに酷似している、ちょっと寂しげな笑顔。
「だから、弟を見れば、すぐわかります。顔や声や体がどんなに変わっていようと、弟の本質は、雰囲気は、空気は、私の中に染み込んだものと同じですから。…だから」
ハルレさんは真っ直ぐボクを見据えて言った。
「サン…何故、今、会ってしまったんだろうね」
暖かい声。
いつか聞いた声と、全く同じ。
微笑む顔は、やっぱりほんの少し、寂しげで。
…姉ちゃん。
気がつけば、喋れない筈のボクの口が勝手に動いていた。
「何で…どうして…ずっと…探してたのに…!」
「…ごめんね」
完全に敬語は取れ、どこか距離を取るような口調も砕け、ハルレさんは姉ちゃんに戻っていた。
姉ちゃんの名前、ハルだったな…名前、ちょっと変えたのか。
『へぇ、良かったじゃんハルレ!弟と再会!』
「…はい、そうですね!盗人の私なんかがサンのそばにいちゃダメだと思ったけど…殺し屋のルキちゃんがいるんだからいてもいいのかなって、思いました」
『何それ〜』
ルキちゃんと姉ちゃんが笑い合う。
姉ちゃんとまさかの再会だった。
屈託無く笑う姉ちゃんとルキちゃん。
…笑うルキちゃんの顔が、何故か少し翳りがあるように見えた。
- Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.54 )
- 日時: 2016/02/14 15:22
- 名前: riyal (ID: bUOIFFcu)
第15話 …だから?
『…で?如何するの?』
「え?」
『サンと一緒に住むの?』
「ぁ…」
ボクと、姉ちゃんで…今度はお金にも困らずに…。
一緒に、住めるというなら。
『あぁ、言っとくけど、あたしのことは全然気にしなくていいんだよ?ウキがいるしさ』
「…は…い」
姉ちゃんの表情が、曇天の空よりも曇る。
何をそんなに迷っているんだろう。
「…何で?」
「え?」
「どうして迷ってるの、姉ちゃん」
素直に疑問を吐露した。
ボクと一緒は嫌なのだろうか?
「え…と、私…サンとは、一緒に、そりゃ、住みたい」
「………」
「でも…ルキちゃんとも、一緒に、いたい」
「………」
「…ごめんなさい」
俯き加減に言う。
わからなくは…ない。
でも、ルキちゃんとボクなら、ボクを選んでくれるんじゃ、って思ったんだ。だって弟だし。
「ルキちゃんとなら、盗む効率が、いいんです」
「…だから?」
「!」
冷たく突っ撥ねてしまったボクに驚く姉ちゃん。
しかし怯まず、続ける。
「生活費が、足りなくならないかな、って…さすがに2人分は残していかなかったので心配なんです。お金が足りなくなるのなんて、もう嫌ですし」
いつの間にか姉ちゃんはハルレさんに戻っていた。
敬語になり、少し距離を取られる。
たまらなく、寂しかった。
今まで封印してきた感情が一気に溢れ出る。
「…んでだよっ!」
「!?」
「何で!?姉ちゃんはボクのことなんとも思ってないの!?お金とボクを天秤にかけたらお金を選ぶの!?ボクとは一緒にいてくれないの!?ねぇ何で何で何で!!」
精一杯叫ぶ。
大した音量にもならないけど、あらん限りに叫ぶ。
姉ちゃんに届くように。
あの時引き止められなかった、引き止めるどころか気づきさえしなかった、小さな背中を引き留めるために。
困惑する姉ちゃんを気にせず、尚も続ける。
「逢えたじゃん!5年も待って探して、やっと逢えたじゃん!なのにまた何処か行っちゃうの!?そばにはいてくれないの!?嫌だよ近くにいてよ!また一緒にお喋りしてご飯食べてっ、もう独りは嫌なんだよ!!だからっ、だから…!」
「…だから?」
「!!」
今度はボクが突っ撥ねられた。
ハルレさんはボクからルキちゃんに向き直り…言った。
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