ダーク・ファンタジー小説

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嫌いだ【作者より】
日時: 2019/03/14 22:11
名前: riyal (ID: Zodo8Gk0)

嫌いな人。
恨んでる人。
許せない人。

じゃあ。

殺っちゃえばいいんじゃない?

『あたし、君みたいな奴って』

冷たく嗤ってさ。

『嫌いだ』
***
はい。riyalです。
スレを立てるのは初めてです…!
なので初心者を見る目で見てくださると嬉しいです←

それでは。

目次 >>2
歳を食った作者より >>104

Re: 嫌いだ【Remake】 ( No.95 )
日時: 2016/03/19 23:19
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

第44話 それってつまり

「...やっぱ天才、ルキちゃん。そう思うでしょ」

アキさんはボクに向かってそう言った。
思わずこくこくと首を縦に振る。

「初めて会った時からああだった。何にも寄せ付けなかった」

ルキちゃんのことをじっと見つめたままアキさんは喋る。
ルキちゃんは相変わらず、理不尽なほど綺麗に殺していた。

「それに、不思議と綺麗だった」

ファルルちゃんの左腕を縦に裂き、手首の上で止める。

「殺しなんか汚いものだと思ってたし、今でもそう思ってるけど、ルキちゃんのは綺麗」

そのまま手首から先を切り落とし、ナイフを握り直して今度は右足に突き刺す。

「一般人が見ても、何かのショーだと勘違いしそうなほどに」

ファルルちゃんからの攻撃は全て躱すか、左手に握ったナイフで捌いていた。

「本人は何の傷も負わず、何も汚れることなく」

そしてファルルちゃんが少しでも隙を作れば、それに入り込んでダメージを負わせる。

「相手を跡形もなく、潰す-----」

その言葉通り、大きく体制を崩したファルルちゃんに、止めの一撃。

『あたし、あんたのこと』

ぐ さ り 。

『嫌いだ』

ルキちゃんの決め台詞を聞きながら、ファルルちゃんが沈んでゆくのをただただ見つめるボク。さっきまで優しかった親友が肉片になるのを、ゆっくり眺めるしか出来ないボク。

ボクは、冷たいんだろうか?
ルキちゃんが助けてくれるようになって、冷たくなってしまったんだろうか?

それって、つまり、ボクがルキちゃんを変えたというよりは、むしろルキちゃんがボクを…。

《あんたか、ルキちゃんを変えたのは》

アキさんの言葉が頭の中でぐるぐると廻っているまま、ルキちゃんが戻ってくるのを酷く空虚な気持ちで迎えるしかなかった。

Re: 嫌いだ【Remake】 ( No.96 )
日時: 2016/03/24 18:53
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

第45話 恩人

『サン、大丈夫だったー!?』

だだだだだっ、とこっちに向かって走ってくるルキちゃん。
ボクの方を見て、アキさんの方を見て、満足そうに頷いた。

『いやー、亜樹、助かったよ。なんていうか、こう、道が入り組んでてさ、来にくかったから。たまたま亜樹が仕事でこっち来てるなんて、いい偶然もあるもんだね』
「ああ...そうだね」
『いや、ほんと助かったよ。ね、サン?』
「.........」

ゆっくりとした動きで、一回首を縦に振った。
助かったには、助かった。

『じゃあ、紹介しようか。サン、この子は星無月 亜樹。星が無い月、白亜の亜に樹木の樹で星無月 亜樹。平たく言って、同業者って言えばいいのかな?...で、亜樹、この子がサン。あたしがいつも言ってる子』

いつも言ってる...って、ボクのことを他の人に喋ってるのか、なんか恥ずかしい。
声が出せないため、ぺこりとお辞儀すると、亜樹さんは視線をそっぽに向けながら浅かったけどお辞儀してくれた。

そしてルキちゃんに向き直る。

「...ルキちゃん」
『何、亜樹?』
「この少年は、ルキちゃんの何なの?」

え?

唐突すぎてぽかんとしてしまう。心なしかアキさんの口調が刺々しいのは気の所為だろうか?
...けど、それは前からボクも聞きたかったことだった。ルキちゃんは、ボクのことどう思ってるんだろう?

『んー、そうだね...』

ルキちゃんはしばし悩み...何かぶつぶつと呟いてから、顔を上げた。

『サンはね』

ごくり。
息を呑む。
ボクは?

『あたしの、恩人だよ』

...おん、じん———?

ボク、何かしたっけ?
むしろルキちゃんこそ、ボクの恩人なのに、何でボクが。
ずっと助けてもらってばっかりのボクが、何でルキちゃんの恩人?

そんな思考が顔に出ていたのか、ルキちゃんはこっちを見てにっこり笑って言う。

『ま、詳しいことはまだ喋んないけどね。今はまだその時じゃないってやつだよ。とにかく、あたしはサンに恩返しがしたいだけだよ』

恩返しなんてされるようなことをした記憶もない。いやむしろ、さっきから言うように、恩返ししなきゃいけないのはボクの方で。でも何も出来てないボクの方で。

なんか腑に落ちない、と亜樹さんも思うのか、ルキちゃんになおも質問した。

「何で恩人なの」

が。

『今はまだ喋るときじゃないって言ってるでしょ』

圧倒的な威圧感を伴った真顔で言われ、びくっと身体を強張らせるとともに、ぎゅっと唇を噛んで引き下がる。

まるで、これ以上聞くなと言わんばかりに、ルキちゃんは亜樹さんを拒否した。

Re: 嫌いだ【Remake】 ( No.97 )
日時: 2016/03/31 18:04
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

第46話 冷たくも温かき

『...亜樹、ごめんね?』

かと思ったら、今度は申し訳なさそうに亜樹さんに謝った。
なんかしゅんとしている。

『いくらサンのためとはいえ、急に応援依頼しちゃったりしてさ。仕事中とかじゃなかったみたいだし、よかったけど』

何かと思えば、普通に急に呼び出したことを詫びているみたいだった。
露骨に話題を逸らしたようにも思えるけど、これ以上何を聞いても教えてくれなさそうなので、この話題はもう考えないようにしよう。

「いや...いい、別に。暇だったし」

亜樹さんも同じように諦めたような表情をしていた。

『そっかそっか、じゃあ良かった!...あ、そうそう、死体処理どうしよっか?ほっぽってくわけにもいかないし〜』
「じゃあ任して。処理場持ってく」
『ん、助かる!ありがとーっ』
「それと武器が消耗してたら———」

当然のように物騒な会話をする2人の向こうに、ファルルちゃん...だったものが見える。

そっとその肉片の方に向かい、しゃがんで見てみた。
最初の方こそ気持ち悪くて吐いたけど、もうそんなことはない。何十回、何百回と見ていると不思議と慣れるものだった。
やっぱり、ボクは冷たいんだろうか。

ファルルちゃんは、どうして、ボクなんかを。
そもそも、ボクに裏切られただけで殺したくなるのだろうか。それとも何か別の理由があって...もしくは最初からボクを殺したかった?いや、それじゃあ理由がわからないし...。

ファルルちゃんだったものに、そっと触れてみる。まだ生暖かくて柔らかいけど、これが冷たく硬くなっていくんだろう。今までルキちゃんに殺されてきた幾人もの人と同じように———。

「.........」

相変わらず声は出ないけど。
もしこれがボクだったならと思うと———叫びたくなるほどの恐怖を覚えた。

Re: 嫌いだ【Remake】 ( No.98 )
日時: 2016/04/02 21:22
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

第47話 Have a nice day

「...じゃ、その物件で。え、ローン?何それ?一括で買うに決まってんでしょ。舐めてるの?」

イライラした感じを前面に出し、威圧感バッチリの金持ちお偉いさん風に振る舞う。勿論、演技。
今、私は不動産屋に来ていた。

「あ、あの、しかし、お客様———」
「あ?」
「...い、いえ。何でもありません...では、こちらの物件でよろしいですね」
「ええ」

...あんまり難癖つけられても困るので、こうした態度を取ったあとには必ず———

「ありがとう」

———天使の笑顔で微笑むようにしている。

それだけで「あ、い、いえ...」と魅了されてしまうのだから、単純なものだ。これだからつまらない...と言いたいところだが、今はそれだから助かる。

ルキちゃん。
私が騙せなかったのはルキちゃんだけだった。
出会って間もない頃の話だけど、私はやっぱり誰のことも信じられず、ルキちゃんからお金を騙し取ろうと目論んだことがあった。
が、それを見破られたばかりか、更にルキちゃんはこう言った、

『あたしにお金があると思ったんじゃあ、ハルレこそ騙されてたよ』

つまり———ルキちゃんがお金を持っていると勘違いした私こそ、ルキちゃんに騙されていたのだと。
敵わない。本当に敵わない...と、当時も思ったものだった。

「それじゃ。———Have a nice day」

いい日を、という意味だが、直訳はいい日を持ちなさい...つまり、せいぜいいい日になるように努力しろと、そういう意味で言った。嫌味以外の何でもないけど、当然相手にそれがわかるはずもなく(わからせる気もない)、そのまま不動産屋を去った。

「もしもし」

そしてすぐ電話をかける。

《あ、もしもし。ルキちゃんは今ちょっと出掛けてる》
「そうですか。あの、家、買ってきました」
《おー、ありがと。まさかウチらに家がね...》
「5人で暮らすのに申し分ない家、ですよね?5人って誰なんでしょう」
《ウチ、ルキちゃん、ハルレ、カイン...あと、亜樹?》
「アキ?」
《あー、知らないか。じゃあいいや、後で説明するよ》
「はい」

アキって誰だろう、なんて思いながら、とりあえずホテルに帰ろうと踵を返す。

てっきり私は、5人目はサンだとばっかり...それで断ろうとしていたのに、違うのか...。まあいい。もう、サンのことはあまり考えないようにしないと、私が駄目になる———

せいぜい、私もいい日が送れるといい。

Re: 嫌いだ【Remake】 ( No.99 )
日時: 2016/04/07 18:27
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

第48話 すれ違って

『携帯持たずに出てきちゃってさ、ハルレから電話掛かってきてたらどうしよ』

びくっ。
ハルレ———もはやその単語を聞いただけで、ボクは反応してしまうらしい。どうしてなかなか、傷は深いようだった。

姉ちゃんが実質消えてから、ファルルちゃんの事件ときて、なんかもぬけの殻のようになってしまったようだった。そのせいか、自分のことなのに他人事のように考えてしまう。

『ん、どうしたの?サン』
「.........」
『んー?...変なのぉ』

首を横に振ったボクも悪いのかな。いや、それにしたってルキちゃん、無神経すぎないかな。変なの、って...。
そんなボクの思考などわかりもしないようで、ルキちゃんは別の話に移っていく。

『あ、そうそう、それで...亜樹、家ってあったっけ』
「さあ。アレを家と呼べるのならあるけど」
『じゃあ無いね?』
「まあ」
『じゃあ一緒に住もうか』
「は?」

家?
ルキちゃんに家なんてあったっけ?

『ハルレがね、家買ってきてくれるんだって。だから、住む?』

...ハルレさん、何歳だっけ。
家買うのには早すぎるんじゃないかと思いつつも、ルキちゃんと絡んでるくらいだし、それくらい朝飯前なのかな...と思う。思うけどやっぱり納得できない。

そんな風に考えている間にも、ルキちゃんと亜樹さんの話は進んでいく。聞く必要もないだろうけど、他にすることもないので聞いていた。

『亜樹も家みたいな家はないんでしょ?住む?』
「断る」
『えーっ!...亜樹なら断ると思ったけどさ...』
「思ったなら誘わないで。...わたしは独りでいる」
『そっかあ...残念。じゃ、サンだね』

...へ?
ボク?

『サン、今までの話聞いてたよね?ってことで、一緒に住もうか、よし決定』

え、ちょ、え?
拒否権は無いの...っていうか絶対ルキちゃん、亜樹さんが断るのわかってて言ったよね、いやそもそも住むって何...。

「...ルキちゃん、仕事だから行く」
『お、ごめんね引き留めて。行ってらっしゃーい』
「.........うん」

ボクが困惑している間に、亜樹さんは行ってしまった。...去り際、ボクの方を見ていたのは、気の所為...じゃ、ないと思う。

「ルキちゃん」

亜樹さんが去ったが同時、ルキちゃんに詰め寄る。


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