ダーク・ファンタジー小説

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アシナクシ。
日時: 2016/07/02 16:08
名前: 彩都 (ID: iXLvOGMO)

始めまして、彩都(サイト)と申します。

五作目です。
完全に、グロいです。
中身は、五分で思い付いた五分クオリティです。
読む時は背後に気を付けて下さい。
アシナクシさんが、襲うかもしれませんので……
それでは、どうぞ。

目次

第一部 『アシナクシ』襲来

序章 >>1

第一章 (CHAPTER 1) >>2-3

第二章 (CHAPTER 2) >>4

第三章 (CHAPTER 3) >>5

第四章 (CHAPTER 4) >>6

第五章 (CHAPTER 5) >>7

第六章 (CHAPTER 6) >>8-9

第七章 (CHAPTER 7) >>12 >>15-16 >>23-24

第八章 (CHAPTER 8) >>32-34

第九章 (CHAPTER 9) >>35-36

第十章 (CHAPTER 10) >>37



第二部 『アシナクシ』討伐

第一章 (CHAPTER 1) >>??

後書 第一部完 後書 >>38

Re: アシナクシ。 ( No.55 )
日時: 2017/12/02 21:46
名前: 彩都 (ID: e/CUjWVK)  

「…………」
 昴は両腕を組んで、後頭部に組んだ腕を乗せて、枕代わりにしていた、実際枕はあるのだが、硬いので、あまり使いたくなかった。
 そして昴はベッドに寝転がりながら、静かに溜息を吐いた、此処は学校の保健室、桃園アリス先生の独壇場である。
 そんな独壇場で静かに昴は溜息を吐いていた、すると保健室の中に一人の少女──華憐だ──が侵入して来る、昴の寝ている場所にはカーテンをしておらず、侵入者も進入者も一見出来る。
「……何だ、お前か」
「何だ、お前か……か、先輩は酷いですねぇ? そんな言い方? 教室でぶっ倒れた存在には見えません」
「色々とあって倒れたんだ、お前は黙ってろよ?」
「黙る訳が無いでしょう? 何故でしょう? 先輩を弄りたくて、口の端が三日月のように歪んでしまいます」
「うっわ、ドSかな?」
 昴は保健室に進入する華憐にそう言って、ベッドから起き上がり、華憐に続けて言う。
「……で、何しに来たんだお前は? 遊びに来た、って訳じゃないよなぁ……?」
「…………」
 華憐は無言で昴に近づいて、上着の制服を脱いだ、そして脱いだ上着の制服を昴に叩きつけた、すると左の胸ポケットに色とりどりのペンがあった、そのポケットから黒のペンを取り出し、椅子を見つけて華憐は座り、スカートのポケットからメモ帳にしては少し分厚い切り取れるメモ帳を取り出した、一体何をするつもりだ? 昴は息を、唾を飲み込んで身構えた。
「それでは……『先輩の好きな性癖を教えて下さい』ッス」
「……はぁ?」
 いきなりの展開に昴は変な声が出た、そして華憐は言葉を続ける。
「いや、心理テストッスよ? どうせ先輩も暇でしょうし、ちょっと遊びません? この心理テストで?」
「…………」
 昴は少し考えて、確かに華憐の言う通り、『暇である』という結論を出した、まぁ、『暇である』と結論が出たので、華憐の話に付き合ってやるか、と昴は思う。
「わぁったよ、心理テストだよな? それじゃあ太股でいいや」
 実際は違うが、適当に答えてみる事にした、すると華憐は黒のペンで呟きながら文字を書く。
「えーと、先輩の好きな性癖は胸っと……」
「ん? 人の話聞いてた? 俺が言ったのは、『太股』だぞ?」
「いえ、知ってますよそれ位? というか、先輩、『嘘』はダメですよぉ? 要先輩、つむぎん先輩、新兵君から話は聞いています、このドスケベ淫乱変態先輩」
「それ、完全に紬だろ!?」
「まぁ、それは置いといて、心理テストの回答です、『上半身を選んだ貴方は変態です』……ですって!」
「うーん、理不尽! ってか、『上半身』って言ったよな? じゃあ下半身は?」
 昴がそう言うと、華憐は口を尖らせながらメモ帳を確認する。
「え、えーと……『下半身を選んだ貴方はスケベです』……だって!」
「両方ほぼ一緒じゃないか!?」
「違いますよ! 変態は東京や東日本、スケベは大阪や西日本の言い方です!」
「嘘吐け! んな情報ねぇよ!」
「バレた!」
「バレたじゃねぇよ! もっと本格的な心理テストにしろよ!? それ、製作者お前だろ!?」
 昴が華憐に指を指して言うと、華憐は驚愕していた。
「せ、正解ッス!」
「だろうなぁ!? お前以外にこんな下世話で下劣な心理テスト思いつかねぇもん!」
「いやぁ、製作者を当てるとは……中々ッスね!」
「そうじゃない! 色々な意味でそうじゃない!」
 昴はそう言いながら静かに溜息を吐く、するとカーテンが掛かっている隣のベッドから、可愛い声が聞こえた。
「お前等、何年だよ? 中一じゃねぇんだから黙れよ?」
「あぁっ? お前が黙れッスよ? 私は中三の変態三年生の下のお世話をしているんッスから?」
「いや、されてねぇよ? 勝手に事実変換辞めてもらえます?」
「辞めないッス! 止めないッス! だって先輩という存在を弄るのは楽しいから!」
「くっそクズじゃねぇか! この小娘ぇ……」
 昴がそう言うと、カーテンが掛かっている隣のベッドの可愛い声の存在が言う。
「人の話を聞いているのか? 此処は静かにする場所なんだよ、言うなりゃ図書室だ、分かるか?」
「分からないッスねぇ……図書室でも図書館でも本屋でも叫ぶんで」
「ん? コイツ、気が狂ってるのか? 迷惑かける奴なのか?」
「そうッスよ? 他人に迷惑を掛けないと自分は生きる事が出来ないんッスよ」
「コイツ……」
 カーテンが掛かっている隣のベッドの可愛い声の存在はそう言って、溜息を吐く、すると華憐が言う。
「そう言うお前は何年ッスか!? ってか、名前を明かせ!」
 華憐はそう言って、カーテンを思いっきり開けた、するとそこには肌が白く、髪が黒髪、長髪の如何にも病弱そうな少女が存在していた、少女は起き上がっており、布団は折り曲がっており、髪は少しボサボサだったので、今さっき起きたと言う事が昴にも理解出来た。
「…………」
 華憐は静かにカーテンを元に戻し、昴に話しかける。
「何だ、ただのトイレの花子さんか、いや、保健室だから、保健室の花子さん?」
「誰が花子さんだこの野郎!?」
 カーテンが掛かっている隣のベッドの可愛いこの存在──基、病弱そうな少女は華憐に向かって叫ぶ、そして病弱そうな少女は言葉を続ける。
「てめぇ……私を虚仮(こけ)にする気か?」
「それがどうしたこの野郎?」
 華憐は病弱そうな少女にそう言われたので、イライラしながら返答する、お、おい? これって『女子同士の喧嘩』っていう、男が入っちゃいけないもんなんじゃぁ……? 昴はそう思いながらカーテン越しの病弱そうな少女と華憐の言い合いを見つめた──否、『見つめる』事しか出来なかった──

Re: アシナクシ。 ( No.56 )
日時: 2018/01/06 22:05
名前: 彩都 (ID: Oh9/3OA.)  

 病弱そうな少女は布団の端を掴みながら怒りを露わにする。
「てめぇ……良い加減にしろよ? てめぇが何年かは分からねぇが、私は少々苛立っているんだよ? お前等の所為でな?」
「あぁっ? 何年もクソもないでしょうが? 人類皆平等! だから学年の差、年齢の差、性差別、格差社会を無くしていきたいッス!」
 そう言う華憐に対し、病弱そうな少女は鼻で笑う。
「おいおい? 何だよそのキリスト的考えぇ? 有り得ねぇなぁ、有り得ねぇなぁ? そんな理論論理、考え方が通用する筈ねぇだろぉ? ほら、後ろの兄ちゃんも言ってやれよ、『そんなのは無理だ』ってな?」
「えっ? えぇっ!?」
 いきなり自分に振られて、昴は困窮してしまう、すると振り向いて華憐が言う。
「先輩はどう思います? あのクソ女の発言を真っ当に受けるか受けないか?」
「えっ? そ、そりゃ、あの女の人の発言が正しいぜ? でも、華憐の可能性だって捨てられない……」
 昴がそう言うと、病弱そうな少女が顔を皺くちゃにして言う。
「あーあ……これだから優柔不断な男は……少年よ、君みたいな男は嫌われるぜ? ってか、二股して、どうせボコボコにされるだろうよ」
 病弱そうな少女の発言を受けて、昴は自分の太股を強く殴りつけた。
「そんなのは分かってるよ……! 分かってるからこそ……『消えた』んだよ……!!」
 昴の発言に病弱そうな少女も『あっ、こりゃ琴線に触れたか?』と判断して、昴を宥めようとする。
「ま、まぁ、私が言い過ぎた節はあるよ、それは謝ろう……でも、流石に『消えた』所でそれは『今』だろう? 何時かは『復縁』出来るって──」
 病弱そうな少女がそう言うと、昴は首を傾げながら返答する。
「は、はい? アンタは何を言っているんだ?」
「い、いや、普通に『復縁』の話だが……?」
 昴は病弱そうな少女の発言を聞いて、『あっ、食い違ってる』と思う、すると華憐が溜息を吐きながら言う。
「あ、アンタこそ、話を分かっていないじゃないですか……先輩の言っている事は『死んだ彼女さん』の話ですよぉ?」
「ちょっ!? おまっ!? 彼女じゃねぇよ! ただの幼馴染みだっつーの!」
 顔を赤らめながら昴が言うと、病弱そうな少女は『あっ』と発言し、腕を組む。
「あぁ、『あれ』かぁ……成程なぁ……お前、もしかして『雛乃』の事かぁ?」
「そ、そうだよ……ってか、何でお前が雛乃の事を……?」
 昴がそう言うと、病弱そうな少女が口の端を歪ませながら昴に説明する。
「あぁっ? そんなの簡単だよ、『周りから流れてくる』んだ、何ヶ月もこの『保健室』に居たら、厭でも『雛乃』の事が流れてくるよ、『雛乃が死んだ』とか、『『アシナクシ』の仕業だ!』とか、ね?」
 そう言う病弱そうな少女を見て、昴は発言する。
「……んで、『お前は誰なんだ』よ、名前も話してくれないし、更に雛乃の情報、『アシナクシ』の情報を知っている……どうやら、『アンタは色々と握っている』な?」
「良く気付いたな、少年よ、名を聞いてやる、まず、この部屋で最初に叫んだからな? 先に言う権利をやろう」
「……生憎そう言う権利は貰ってはいけないって言われているんだけどなぁ……まぁ、いいや、俺の名前は芥川、芥川昴って名前だ、雛乃とは幼馴染みの男友達だったよ」
「……えっと、この状況、私も名乗らないといけないッスか……? ……面倒ッスねぇ……私の名前は花椿華憐と申すッス、昴の後輩ッス、以後お見知り置きを」
 華憐、昴の自己紹介を受けて、病弱そうな少女がその場から立ち上がり、青色のジャージを肩に乗せて、腕を組み、高らかに宣言する。
「フッフッフッ……アーッハッハッハッ! そうかそうか! 芥川昴に花椿華憐か! そうかそうか! 中々に良い名前だな! それじゃあ、私の自己紹介をしようか! 私の名前は墨名 比呂美(とな ひろみ)! 人呼んで、『情報屋比呂美』!」
「知らないな、そんな奴」
「私も」
 昴と華憐は病弱そうな少女──基、墨名比呂美──に言う、すると比呂美は驚愕する。
「うえぇっ!?私の事を知らない人が居るの!? めっずらしい! もしかして両方一年生か!?」
「いや、私が昴の事を先輩と言っているのですが!? 明らかに先輩は二年生以上ですよねぇ!?」
「そ、そうだぜ! おい、墨名と言ったよな? お前は何年生なんだよ!?」
 昴は墨名にそう言うと、墨名は笑いながら言う。
「んー? 私かぁ? 私は中学三年生だぞ?」
「…………」
「…………」
 昴と華憐は墨名の発言を受けて、無言になった、そしていきなり大声を上げる。
「はぁ!? 俺と同い年で同学年かよ!? そんな奴知らなかった……!」
「わ、私も……こんなクソみたいな奴、知らなかった……!」
「まぁ、そりゃそうだろうなぁ? だって私は不登校児だし? 態々学校に行かなくても、授業の内容は分かるし、自分は高校二年生レベルの頭脳を持っているし、だからこうやって、保健室でずっと過ごしてる」
 そう言う墨名に対し、昴は問う。
「ってか、何で不登校児に?」
「そんなの簡単だろ? 『同年代と勉強するのが可笑しい』からだよ、あーあ、何で日本には飛び級制度が無いんだろうなぁ?」
「お、おい? どういう事だよ? 話が見えないぜ?」
 昴がそう言うと、墨名は溜息を吐いて答える。
「あぁっ? 中学一年生の時に『頭が良過ぎる』ってだけで虐められた、そしてやり返したら、停学食らって、そのまま不登校ってな」
 墨名のいきなりの発言に昴も華憐も固まってしまう、とんでもねぇエピソードだな、と昴は思いながら、静かに頷く──華憐は華憐でドン引きしていた──

Re: アシナクシ。 ( No.57 )
日時: 2018/02/03 22:31
名前: 彩都 (ID: ???)  

「と、墨名、と言ったよな? お前、情報屋なんだろ? だったら少しでも良いから何か情報をくれよ?」
 昴はそう言って、墨名に情報を要求する、すると墨名は静かに溜息を吐いて返答する。
「はぁ? 何でよ? あげてもいいけれど、ちゃんと見返りも欲しいわ」
「は、はぁ!? そ、そんなの……ある訳無いだろ!?」
「ある訳無い? じゃあ、話なんか聞かないし、返答しない」
「…………」
 何とも面倒な同級生だ、昴はそう思いながら墨名に返答する。
「あぁ、そうか、それじゃあ、俺も話を出さないし、喋らない……さぁ、華憐、さっさと保健室を出ようぜ? そして授業に戻ろう」
「えっ? でも、先輩が『昴を付きっ切りで看てくれ』って言われているので……」
「いいんだよ、こんな所に居ちゃあ、墨名の迷惑にもなるだろう、ほら、先輩の言う事は聞いとけ」
「は、はぁ……分かりました」
 華憐は昴の発言を受けて、静かに立ち上がる、すると墨名が静かに言う。
「アンタ」
「んぁ? 何だよ墨名?」
「アンタ、昴と言ったよな?」
「あ、あぁ……確かに俺の名前は昴、芥川昴と言うが……」
 昴が再度自身のフルネームを言うと、墨名は静かに昴を見つめながら発言する。
「何か、不幸だな、色々と」
「そ、そうか? まぁ、確かに不幸な人生ではあるが……」
「でも、その『不幸』も他人にとってはまだ『幸福』って可能性もあるけれどな?」
「まぁな? でも、俺に取っちゃあ『不幸』だ」
 昴はそう言って、墨名の前から消える、さぁ、さっさと授業に戻ろうかなぁ? そう思っていると、華憐が言う。
「あ、あの先輩?」
「ん? 何だよ華憐? トイレか?」
「そ、それに近い緊張はしていますけれど……俺、教室に戻りたくないッス……」
「えっ? 何で?」
「だ、だって……恥ずかしいじゃないですか、皆が見ている中、授業に戻るって……一種の羞恥プレイですよ……」
「あぁっ? んな事言ったって……仕方無いじゃないか? 逆に快感になるかもしれ──」
「厭ッスよ!? 何でそんな快楽行動にされなきゃいけないんッスか!? あぁ、もう面倒な先輩ッスね……とりあえず屋上に向かいません? 屋上に向かって時間を潰しましょう?」
「はぁ? まぁ、いいけれど……今日は授業受ける気なかったし……」
 昴がそう言うと、華憐はその場で大喜びし、ジャンプしながら、前へと進む。
「やっりぃ、それじゃあ、さっさと屋上に向かいましょう向かいましょう!」
「……屋上に行く、と言った瞬間、完全に喜びやがって……まぁ、良いか、俺には関係ないし……」
 昴はそう言って、肩を落とす、そして昴は華憐と共に屋上へと向かう──

「ふぃー! 良い風ッスよねぇ、屋上は!」
 華憐は髪が靡かないように頭を押さえながら、強風吹き荒れる中、屋上の床に足を乗せていた、後から入ってきた昴にとっては華憐のスカートの中が丸見えだった。
 ……白と水色の縞パンか……確か先週紬が『そのパンツは最高だな!』とか言っていた気がする……昴はそんな事を考えながら、欠伸をし、華憐の隣に立つ。
「はぁ……風が強いな……これじゃあ、俺が吹き飛ばされてしまいそう」
「先輩を吹き飛ばす風って軽く風速50mとか出ないと難しいんじゃ……? だって、先輩は筋肉もあるし……筋肉は脂肪の何倍も重いですし……」
「んな訳ないだろ? 俺はひ弱だよ? 更に筋肉もあまりない」
 隣で言う華憐に対し、静かに訂正を入れる祐介、すると急に華憐が『ちょっと失礼するッス』と言って、祐介の右手を掴んで、手の内を見る。
「ふむ、ふむむ……」
「な、何やってんの?」
「何をやっている? そんなの簡単ッスよ、手相を見ているんス、右手は現在、左手は人生全てだったかな? そんな感じッス」
「は、はぁん……まぁ、俺には興味が無い事だけどな」
「はぁ? 何でッスか?」
 むすっとした表情で言う華憐、そんな華憐に対し、昴は静かに返答する。
「だって俺はそう言う占い、信じていないもん、だってオカルトより酷いじゃないか占いって? 神に聞いた、とかなら、まだしも、占いをどう信じろっていうのか?」
「……でも、面白いッスよ? 手相は特にオカルト寄りだと思うッス、更に案外的中率も高いッスし……」
「でもなぁ……中々に信じにくいんだよね、手相って、だから何だって雰囲気がするしさぁ?」
 そう言う昴に対し、華憐は手を離してジト目で言う。
「……先輩って、夢が無いんスかねぇ?」
「リアリストって言ってくれ、オカルトに興味があるけれど、占いと言う名のオカルトには興味が無いリアリスト」
「何だろう、凄く齟齬している気分がする発言ッスね……?」
「まぁ、齟齬は起きるだろうさ? でも、信じられないんだから、仕方無い」
「ほ、本当に仕方ない事なんスかねぇ……?」
華憐はそう言って頭を掻く、すると急にぽつぽつと雨が降ってきた。
「あっ、雨ッスよ? さっさと屋内に向かいましょう!」
「あ、あぁ……」
 昴は華憐の発言を受けて、華憐と共に屋上の踊り場へと向かう、そして昴は濡れた服を見て、あーあ、少し濡れてしまった……乾くのに時間が掛かるなぁ、と思う、次に昴は踊り場近くの椅子に座って、溜息を吐く──

Re: アシナクシ。 ( No.58 )
日時: 2018/03/03 21:16
名前: 彩都 (ID: ???)  


 昴は溜息を吐いて、椅子に座っていると、下から『カツーン、カツーン』と少し甲高い音が聞こえるのを発見する、そして昴は華憐を見る。
「な、なぁ、この音……」
「え、えぇ……誰かが……『此方に向かってくる』ッス……!!」
 華憐の発言を聞いて、『やっぱり下からだよなぁ……』と思う昴、そして、昴と華憐は奥の方へと地べたに座って、階段の陰に隠れる、右にはロッカーが一つあり、右手が当たって、若干冷たかった。
「…………」
「…………」
 ドクンドクン、と心臓が高鳴る、心臓が高鳴る度に『カツーン、カツーン』と少し甲高い音は近づいてくる。
 ど、どうすれば良いんだ……? も、もしも先生だったら……停学ってレベルじゃないと思う……唾を飲み込んで考える昴に対し、小声で華憐が言う。
「せ、先輩……」
「な、何だよ?」
「い、一体誰が来ているんでしょうねぇ?」
「知るかよ! 俺にも分からない!」
「でしょうね、勿論私だって知らないんだし」
「お、おいおい……」
 華憐の発言を受けて、額から汗を流す昴、そして右手で汗を拭って、膝立ちで階段を確認する。
『カツーン、カツーン』と音が続く、一体誰が来るんだ? と、昴が思っていると、『急に音が大きく』なった、段々と近づいている、否、『段々と昴達との間合いが少なくなっている』! 昴はその判断をして、急いで、口を両手で覆い、その場に座りこむ。
 や、ヤバい……段々と音が大きくなり、段々と『誰か』が近づいてきている……多分先生だと思うが……此方に来るんじゃねぇ! 昴はそう思いながら、呼吸する事を忘れ考える。
 そして遂に『音』は『屋上に向かう階段』の方に移動してきた、えっ……!? えぇっ!? ま、マジか……!? 『音』が……『音』が『此方に近づいてくる』……!? 昴はそう思いながら、右目で後方を確認し、唾を飲み込んだ。
「せ、先輩!」
 小さな声で叫ぶ華憐に対し、何も出来ない、何も出来ない先輩を許してくれ……昴はそんな事を思いながら、何とか深呼吸する為に手を口から離し、深呼吸する。
 お、落ち着くんだ……落ち着かなければ、ダメだ、俺はコイツの先輩だろ? 先輩ならちゃんと落ち着かないとダメだろ? そう思っていると、急に華憐が自分に抱き付いてきた。
「ひっ! と、隣から音が!?」
「な、何だって……!?」
 上ってくるスピードが案外早いなぁ!? 自分はそう思いながら、華憐の方の階段を見つめていた、すると其処から一人の人間が現れて、屋上の扉のドアノブに手をかけ、屋上を開けた。
「は、はぁ……何と、か、屋上、に、来たけ、ど……雨かぁ……こ、りゃ、授業、が、出来、ない、なぁ……」
「……えっ? 御手洗先輩?」
 華憐がドアを開けた人物にそう言うと、『ふぇっ?』と可愛い声を出して声の方に振り向く人物、するとドアを開けた人物が叫ぶ。
「ひゃ……ひゃぁぁぁぁぁぁ!? な、何で、先輩、達が!? ど、どう、して!? ま、まさか、不純、異性、交遊!?」
「ま、待ってくれ! 御手洗! 落ち着け! 違う! 俺達も屋上に遊びに来たんだよ!」
「は、はい……? な、何を、言って、いる、んです、か、芥川、先輩、は……!?」
 焦る御手洗善子に対し、昴が頑張って声を振り絞って、単語を選んで紡ぐ。
「え、えーと……じ、実は俺は教室で倒れて、華憐が運んでくれたんだよ、そして保健室に運ばれて、その後、保健室で墨名って奴に嫌われて、華憐が『屋上で時間を潰しましょう』と言ってきて、仕方なく、屋上に向かったんだが、雨でなぁ……だから、二人で此処に座って待機していたんだ! だから不純異性交遊ではない!」
 真剣な眼差しで言う昴に対し、『は、はぁ……』と溜息混じりな返答をする善子に対し、華憐が言う。
「せ、先輩の発言は正しいッス! 信じて下さいッス!」
「え、えぇ……わ、分かった、けど……その、前に、二時、間目に、私、達の、クラス、が、使う、から、時間が、経ったら、バレるよ?」
「えっ?」
「えっ?」
 善子の発言に昴、華憐の言葉が重なった、そして善子が続けて言う。
「で、でも、雨が、降って、いるの、なら、使え、ない……」
「ま、まぁ、そうだね……ってか、何の授業を行おうとしたの?」
 善子の発言を聞いて、昴が言う、昴の発言に対し、善子が答える。
「え、えと……大まか、に、言えば、『景色、の、観察』、かなぁ……? 一応、美術、の授業、だし……」
「成程、一種の写生大会だな」
「えっ?」
「えっ?」
 昴の発言に対し、華憐と善子は目をまん丸にする、そして昴は自分が言った事を思い出し、顔を赤らめ、二人に反論する。
「い、いやっ! こ、これは不可抗力と言いますか、同音異義と言いますか……! 偶然だから! 二人共顔を赤くしないでぇ!」
「アハハ……矢張り先輩も男なんスねぇ……やっぱり下ネタに……」
「そ、そう、ですね……私、の、胸、を見る、男子、中学、『性』、のよう……おっと、男子、中学、『生』、の間違いでした……」
「お、お前らぁ……後で覚えてろぉ!」
 そう言って、顔を赤らめながら、昴は二人の後輩をポカポカと軽く攻撃する、二人は昴の攻撃を受けながら、ウフフ、アハハと笑っていた──

Re: アシナクシ。 ( No.59 )
日時: 2018/04/07 22:30
名前: 彩都 (ID: kgjUD18D)  

「フフ、フ、矢張り、芥、川、先輩は、面白い、です」
 御手洗善子はそう言って、手で口を隠し、笑う、それに釣られ、華憐も笑う。
「確かに……弄りがいがある先輩ッスよね……」
「そう、そう……」
「お、お前等……」
 昴はそう言って、嘆息する、そして昴が言う。
「……それにしても、善子のクラスが二時間目使うんなら、俺達がずっと居たらバレちまうな? それじゃあ、何処に移動しようか? 二時間目参加する迄時間がなぁ?」
「確かに……それは問題ッス、もしも教師陣にバレたら、怒られるレベルを超えるッス……反省文百枚は固いッス」
「だよなぁ」
 自分と華憐がそう言うと、御手洗善子は頭を下げて、自分達に言う。
「そ、それじゃ、あ、私、は、もう、戻る、ね? こんなに、滞在、して、いたら、不審、がられ、るしね?」
「あ、あぁ、そうだな、引き止めてすまんな」
「そうッスね……またなッス、善子!」
「……うん!」
 別れの言葉を言う二人に対し、善子はゆっくりと可愛い顔をして、走って階段を降りる、だが、階段の踊り場で、ずっこけてしまい、スカートの中が丸見えになってしまう。
 ……大丈夫かなぁ? 二人はそう思いながら、冷や汗を掻いた──

「……ふむ、一体何処に移動しようか?」
 昴が独り言を呟く、すると華憐が言う。
「どうしましょうかねぇ……?」
「……だよなぁ」
 昴は静かに返答し、考える、少しだけ、少しだけ、あの場所に寄ってみようかな? 昴はそう思いながら、華憐に言う。
「なぁ、華憐?」
「ん? 何スか?」
「保健室に、向かわないか?」
「は、はぁ!? な、何言ってんスか先輩!? 保健室には厭な墨名先輩が居るじゃないッスか!」
「そうだ、でも、少し会話したくて……!」
「……分かりましたッス、行きましょうか、保健室に……」
 明らかに元気が無い華憐を見、何だか済まない気がする昴、だが、それでも、自分は墨名に会わなければならない、そう思いながら、二人は再度、保健室へと向かう──そして二人は保健室に到着し、入室する。
「……入るぜ、墨名」
 昴がそう言って、保健室に入ると、『お前また来たのかよ!?』と叫ぶ墨名。
「お前、来んなって言ったろ!? 何で来たんだ!?」
「……気になったからだ」
 昴の発言を聞いて、不思議がる墨名、そして墨名が神妙な口調で言う。
「……何が、気になった?」
「そんなの……『情報屋比呂美』が知っている情報全て、だ」
「……中々に面白いな、お前は……分かった、良いぜ、情報を渡しても」
「あぁ、ありがと──」
「ただし、その分、情報量はでかいぜ?」
「!?」
 墨名の発言に昴が戸惑う、そして昴が言う。
「……情報量、どれだけでかいんだ?」
「そうだなぁ? 大まかに言えば、A4サイズのプリント100枚程度かな? おまけに400字詰め二枚分でA4サイズ、な?」
「……中々に面白いな、それで? 情報屋、というんだから、何か対価を支払わねばならないんだろう?」
 昴がそう言うと、『あぁ』と墨名は返答する。
「でも、『私が知っている情報を全て引き出そう』とは、初めての客だ、だから、少しだけ安くするよ?」
「おぉっ、それは有難い、それで? どんな対価なんだ?」
 昴の発言を受けて、墨名が元気に言う。
「フフフ、そんなの簡単だろ? 『私とエッチしろ』、それが対価だ」
「……はぁ? い、いや、墨名先輩? もう一回言って欲しいッス」
「んぁ? 何だ、聞き取れなかったのか? もう一回言ってやろう、『私とエッチしろ』、それが対価だ」
「……は、はぁ!? あ、アンタ……何巫山戯てんスか!? 此処は神聖な校舎! そんなの、しちゃダメッスよ!」
 驚く華憐に対し、昴は静かに息を飲み込んで、発言する。
「なぁ、墨名? 少し聞きたい」
「ん? 何だよ?」
「『赤ちゃんは何処からやってくる』のか、分かるか? 俺はちっとも分からない」
「は、はぁ!? そんなの、赤ちゃんレベルで分かるだろうか!? お前、それでも男か!?」
 昴の発言に驚く墨名、そして墨名が続けて答える。
「はっ! 仕方ねぇ、答えてやる! 赤ちゃんってのはなぁ、『コウノトリが運んでくる』んだよ! 分かっとけ!」
「……そうか、じゃあ、『人ってキスをしただけで、妊娠する』っけ?」
「……そりゃ、そうだろう? 普通だろ?」
「…………」
 訳が、分からない、華憐はそう思いながら、静かに深呼吸する、普通赤ちゃんが何処からやってくるって? そんなの簡単だ、女の体の卵子と男の玉の精子だ、そしてその二つが合体して、受精卵となり、子宮に引っ付いて、臍の緒とかが出来、子宮から臍の緒を伝って、栄養が補給され、成長し、赤ちゃんとなる、そして『キスをしても、妊娠はしない』、したら外国人出産大国じゃねぇか、華憐はそう思いながら、昴と墨名を見る。
「……そっか、分かったぜ、じゃあ、『今から俺はお前にキスをしよう』、それで、いいだろ?」
「……なっ!?」
「……なっ!? 『何てエロい事』を!? い、厭だ! 恥ずかしい! 妊娠しちゃう!」
「……えっ?」
 華憐は目の前の状況を視認する事が出来ても、『理解する事が出来なかった』、そして昴は墨名のベッドに座って、『それじゃあ、行くぜ』と言って、墨名の顔に自身の口を近づける──


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