ダーク・ファンタジー小説

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アシナクシ。
日時: 2016/07/02 16:08
名前: 彩都 (ID: iXLvOGMO)

始めまして、彩都(サイト)と申します。

五作目です。
完全に、グロいです。
中身は、五分で思い付いた五分クオリティです。
読む時は背後に気を付けて下さい。
アシナクシさんが、襲うかもしれませんので……
それでは、どうぞ。

目次

第一部 『アシナクシ』襲来

序章 >>1

第一章 (CHAPTER 1) >>2-3

第二章 (CHAPTER 2) >>4

第三章 (CHAPTER 3) >>5

第四章 (CHAPTER 4) >>6

第五章 (CHAPTER 5) >>7

第六章 (CHAPTER 6) >>8-9

第七章 (CHAPTER 7) >>12 >>15-16 >>23-24

第八章 (CHAPTER 8) >>32-34

第九章 (CHAPTER 9) >>35-36

第十章 (CHAPTER 10) >>37



第二部 『アシナクシ』討伐

第一章 (CHAPTER 1) >>??

後書 第一部完 後書 >>38

Re: アシナクシ。 ( No.35 )
日時: 2016/06/04 12:21
名前: 彩都 (ID: 6Bgu9cRk)  

CHAPTER 9  生きるとは死ぬよりも辛いんだ

麻美子は喪服を着ていた──周りには喪服の男女、老若男女が居る──そして皆は同じ方向を向いている──その方向には、にっこり笑ってピースをする将人の遺影があった──
周りの何人かは泣いているが、麻美子は泣けなかった──何故なら、目の前で死んだ姿を見ているからだ──そしてお坊さんの念仏も唱え終わり、少し休憩がてら、外へ出る──
そこには『アシナクシ』が居た。
「アンタ……よく成仏しないわね……」
「それハそうダ……あの『くろいジぶん』をたおサないカギり、ワたしはジョうぶつできナイダろうな……」
「そう?なら貴女も大変ねぇ……私はこの仕事が嫌になってきたわ──」
「ふぅん?そうカ……?」
その理由を聞こうとすると、勝手に真美子が話した。
「だってね、仲良くした相手が死ぬ事はもう見たくないし──私はね、こう思うんだよ──『生きるとは死ぬよりも辛い』ってね……多分、精神的に耐えられなくなったら、もう、この仕事を辞める──私はそう感じるんだ……」
「……それハわたシハしらン……わタしはモうヒトりのじぶんヲたおしテ、じょうブツするサ……』
「私と、アンタ──どっちが早く消えるか、勝負ね?」
「そんナしょウぶ、したくナイといイたいガな……」
『アシナクシ』はそう言いながら、空を見た……あの日以降は大変だった──そう思いながら、あの日を思い出した──

あの後、桃園アリス基二人と『アシナクシ』は将人の遺体を持って、将人の家に向かった。
そして死んだ旨を話して、そのままその家に引き渡した。
だが、不思議な事に将人の母は泣いておらず、何かを覚悟していた様な顔だった──
その後時間を作ってもらってアリスは将人の母と話した。
「いえ……もう分かってた事なんです──将人、あの子は何時も考えていました──自分が『アシナクシ』に死なない様に考えていた事を──ですが、『アシナクシ』の所為で死んだんですよね?死んでしまったら、もうどうしようもないと思うんです──だから、あの子が死ぬのも運命なのかもしれないと思うんですよ……だから、私達母親、父親はあの子を弔う事しか出来ない……」
確かにそうだ、死んだ者の話等もう出来ない、だからもう弔う事しか出来ない──そう考えながらその日は帰ってもらった──人には色んな死の別ち方があるのだな、と考えながらアリスはコーヒーを飲んだ──

「まぁ、面倒だわ、今度は何処を放浪しようかしら?」
「てキトうに」
「でしょうね……でも、一体もう一人の『アシナクシ』は何処へ隠れたのかしら?」
「それナンだよ……イクらセんさクしたが、わからナイ……」
「そう?貴女も大変ねぇ……」
そんな話をしていると、謎のフードの人物──間野悠子だ──が現れる、目の下には泣いた痕と思われるクマが出来ていた──
「お前……ッッ!?何しに来やがった!」
すると簡単に話す悠子。
「死んだ将人の葬儀を見に来ただけだが?それ以外に何もない」
そう言いながら花束を麻美子に投げる。
「私はそもそも殺していない、だけれど葬儀をする視覚は有っても良いと思うの──殺したのは──『悪いアシナクシ』なんだから……」
そう言いながら走って消える悠子──麻美子と『アシナクシ』は悠子を見つめる事しか出来なかった──

そして時間が過ぎ、もう夕方になった。
「さぁて……バイバイ『アシナクシ』……私はもうどっかへ行くわ──もう会う事もないでしょう──」
「それハどうダロうな?」
そう言いながら麻美子は消えていった──そして一言、『アシナクシ』は言った。
「いるンダろ?『将人』?」
そう言うと、反対の屋根からひょっこり脚の無い将人が現れる。
「幽体って、結構楽なもんだなぁ──って何時から気付いてた?」
アハハ、と言いながら将人は『アシナクシ』に聞いた。
「……イマしった……」
実は結構前から知っていたが、あえて言わない事にした『アシナクシ』──そして将人に聞いた。
「おまエハどうすルンダ?」
「自分?……どうしよう?直に成仏するよ──もうこの世に未練は無いからね──まぁ、悠子に着いていっても良いが、『悪いアシナクシ』に感付かれてしまうかもしれない──」
「そうカ──わたシハもうすコシ、ここニタイザいするよ……まだイルかもしレナイからな……」
「そうか……もう良いんだよなぁ……『アシナクシ』の戦いを──自分が脱落しても……?」
そう言うと、『アシナクシ』は言った。
「それはオマエがキメろ……わたシハしらン……」
「ハハッ!そう言うと思ったぜ……んじゃーな、また来世、会おうぜ?会う時は生きている身でな!」
そう言いながら将人は天へ昇っていった──私も成仏して、天へと登る事は出来るのだろうか?そう思いながら『アシナクシ』は考える──だが、そんな考えも諦めた。
何故なら私は『アシナクシ』だから──アイツをタおすまデワタしはじょうブツできない──!
そう思いながら『アシナクシ』は空を見た──綺麗な夕焼けが『アシナクシ』を包む──

Re: アシナクシ。 ( No.36 )
日時: 2016/06/04 14:33
名前: 彩都 (ID: REqfEapt)  

左手の疼きに苛つきを覚えながら、悠子は空を見上げる──綺麗な夜空に悠子はまた苛ついた──
「何だ?まだその『部分』が疼くのか……?」
「あぁ……あのクソ母親の──な──」
そう呟きながら悠子は苛ついた──その理由は数年前からだった──
母が悠子の服を来て、援助交際──そして性的行為へと繋げていたからだ──をしていたからだ──その時はまだ知らなかったが、昔から『よく似ている』母娘だったので、区別がつかなかった──そんなある日、援助交際がバレて、父と母は口論をしてしまった。
その時だった、母が父を殺してしまったのだ。
それを隠すべく、畦道山に埋めに行った──その埋めた所が今の悠子がいる洞穴だった──
そして母は二人目の夫と結婚、そして母娘の仲は悪くなっていった──そんな援助交際も学校にバレない訳ない──その援助交際の所為で悠子の進学が危なくなったというのに……そんな怒りもあり、悠子は母を殺した──だが、『アシナクシ』に殺された様にしなければ……そして足を切ったという事だった。
「だが、死んで清々しただろう?さぁ、後はこの街から逃げるだけだな……」
「そうね……では、明日から少しは移動しましょう?『アシナクシ』にバレないようにね?」
「あぁ、分かっているさ──」
そう呟きながら、『アシナクシ』は邪悪な笑みを浮かべる──そして翌日から間野悠子は行方不明になるのだが──それはまだ知らない──

……ん?此処は……?
そう思いながら、麻美子は目覚める、此処は、ホテルだ──昨日は、色々な所に移動して、疲れて、ホテルに移動した事をゆっくり思い出す。
そしてモーニングを食べて、少し思慮──さて、矢張り、将人の事を思い出してしまう──何でだ?ただの商売相手だったろうに?ん?本当に『ただの商売相手』だったのだろうか?あんな一般人の泣き面も見てしまって、それは無いだろう。
だが、そこ迄考えても結局は私には関係が無い、そう思いながらホテルを出る。
そして麻美子は遠い遠い場所に向かう──場所なんて関係ない、今はこの気持ちの整理がつける様な場所に移動したかった──

さぁ、今からどうしようか?足取りなんて無いのに……
そう思いながら『アシナクシ』は将人の葬儀会場の上、屋根に乗って、考える。
まず、あの悪い方を見つける事が大事だ、だが、どうやって探す?方法は幾らでもあると思うが、まず、此処に居ない場合はどうするべきか?
そう考えながら、空を見る、お前は私の為に闘ってくれた存在、絶対無下には出来ない、いやしない!
そう思いながら、『アシナクシ』は周りをふよふよ浮いてから、色々な場所に移動した──

「ふむ……まだつまらないな……」
そう呟きながら、卒業アルバムを見る、アリス──昔死んだ『仲間』を思い出す──『アシナクシ』を倒した五人の仲間達──生きていたら、もっと楽しかったろうに……そう思いながら、クラスの集合写真が写ったページを見る──一クラスに二人程度の右上やら左上の欠席者の写真が貼られている──その中で実に半分ものの人数のクラスがあった──それがアリスのクラスだった。
そして二組、三組とアリスと同じ様な人数のクラスが存在していた──その中に赤く丸をつけている顔写真の男女が居た──それが昔死んだ『仲間』だった──五人の内、自分だけが助かった卑怯者──そう思われても良い、そう思いながら私は生きて来たんだ──今もその事は忘れない──そう……『十年前の大悲劇』──それはもう起こしたくない、そう思いながらアルバムを閉じた──
そしてビールを一杯、一気飲みをする。
もう今日は飲んで忘れる、そう思いながらアリスは一杯飲んだ。

……さて、どうしようか?……やる事もないしなぁ、女子の裸を見に行くってのも何だか不純な動機過ぎて見に行く事を控えてしまう……そう思いながら、幽体の将人は空中で胡坐を掻きながら腕を組む。
やる事が無い、それが今の将人だった。
死んだのは良いが、天界に行くのに時間が掛かり過ぎる事、そして一番は、『人間が思っている天界が存在しない』事──ただ単に死んだら、天界に行って、はい御仕舞なのだ。
『天国も地獄も存在しない』、それが天界だった、だったら、罪はどうやって償う?そもそも償わなくても良いのだ、ずっと、天界が用意した『部屋』の中で『転生する迄待つ』しかないらしい。
だが、何もせず、ずっと『部屋』の中でいる事は苦痛でしかない、なので、将人は自然消滅迄待つ事にした。
自然消滅は、一年で消滅してしまう、そして勝手に転生されてしまう、転生する前の記憶も無くなってしまう、たったそれだけだった。
それなら待つだけで消える、『部屋』に行かなくても良い、それの方が楽だ、そう思いながら、宙に浮いたまま欠伸をする。
まぁ、スカートの中なら覗いても良いよね?そう思いながら、覗きたい、と思っても体が反応しない、めんどくさいからだ。
このまま空中でゴロゴロしていたら、消滅するからもう、このままで良いや、そう思いながら空中浮遊する将人だった──

CHAPTER 9 終了 LASTCHAPTER 10 に続く……

Re: アシナクシ。 ( No.37 )
日時: 2016/07/02 14:58
名前: 彩都 (ID: iXLvOGMO)  

LASTCHAPTER 10 死んでしまえば皆同じ

貴方は生きていますか……?こんな不条理な世界を楽しんで生きていますか?
生きているなら良いんです、そう、私も早く『その場所』に立って死にたいです──

「あぁ……暇だなぁ……何でこんなに暇なんだ──」
死んだ将人はそう呟きながら自宅の湯船に浸かる──そこには誰も居ないが──
まぁ、幽体の将人に湯船の温度等分からないが──
そして湯船から離れて少し浮遊する、幽体とは楽な物だ、そう思いながら悠子と戦った畦道山に辿り着く──
(懐かしいなぁ、もう何ヶ月が経ったんだ……?いや、まだ一ヶ月か──)
そう思いながらあの戦いを思い出す──まさか闇の『アシナクシ』がまだ潜んでいたか、それを知った時は驚きだったが──だが、それを知ってももう遅いが──
まぁ、もう良いんだ──もう俺は自由だからな──
今はもう居ない悠子の事を思い出し、涙を浮かべる。
将人の葬式の時、悠子は現れた、そして将人は追いかけたが、もう居なかった──そして闇の『アシナクシ』の『匂い』さえも無かった──まるで『この街から元々居なかった』様に──
「さぁて、もう麻美子さんも居ないんだ──そして『紫』も──」
流し目で横を見る──もう居ないんだ、この『街』から──
あの後真美子さんは忽然とこの街から消えた──そして『アシナクシ』も『やミの『アシナクシ』ヲさがしにいク』と言って、此方も消えた──
そう、この街にいるのは、被害を闇の『アシナクシ』に受けた自分だけだった──まぁ、誰も自分の事は簡単に忘れさせられるだろう──それは少し悲しいが。
まぁ、どうせ忘れさせられるんだ、放って置いても良いだろう、どうせ自分だし。
そして電車の中に乗り込む──乗り込むと言うより、入り込む、が正しいか?──そしてどっかのおっさんの新聞を覗き込む、一通りその新聞を見てみたが、この街の『アシナクシ』事件はもう取り上げておらず、自分の記事でさえもう存在してなかった、そうこれが現実なのだ、もう忘れ去られた存在、それが今の自分、憩将人だ。
まぁ、もう取り上げられるのは辛かったし、まぁ、良いんだけれどね。

次は自分の学校だ、夜の学校と言うのは些か怖い、その理由は昼の学校とは違い、雰囲気が変わるからだ、まぁ、夜の学校の方が暗さが激増していて怖い、という理由もあるが──
そして自分の席を見つけて、その席に座る、懐かしい、知り合いが死んで悲しんで、気絶したっけ?それは今では恥ずかしい想い出の一つだ。
そんな想い出も『自分』という憩将人が消えれば元も子もないが──
そして学校を周って気付く、校長室だ、校長室に入ってみる、そもそも何も悪い事をした事が無いから入った事が無いが、少し気になっていた場所の一つだった、そして中に入る。
「失礼しまーす……って誰もいないから言わなくても良いんだった……」
そう自分でボケながら中に入る、そこには真美子が貼ったと思われる札があった。
「此処にも貼ってたんだ……そういや此処の中学の校長ってオカルト信じてなかった気がするんだけど……まぁ、良いか」
そう呟きながら色々見回る、戸棚の中には個包装されたお菓子が入っていたりする、それは本当なのだろうか?そう思いながら見てみる、物体をすり抜け、見てみる──何と真っ暗で何も見なかったのだ、でもこういうのは七不思議並みに不思議なモノなんだよなぁ……そう思いながら戸棚から離れる、そして分かった事が一つある、この学校──お札貼り過ぎ……
まぁ、良いんだけれどね、そこ迄『アシナクシ』来て欲しくなかったのが切に分かる……
「さて、次は何処へ行こうか……」
それを考え、少し辿り着く、次は……悠子の部屋だ──

「えーと……何だこの破片は……?ブタの貯金箱かな?そして衣類がボロボロ──一体何があったんだ……?」
悠子の部屋に来て開口一番がそれだった。
衣類は自分の服を母が着た為破っただけだった。
「……成程、貯金箱は金を回収しただけか──でも衣類を破る理由が掴めないなぁ……まぁ、いいか、どうでもいいし」
そう言いながら興味を無くして部屋を出る。
まぁ、今日は色々行って探索も疲れて、どうしようか?まぁ、もう二週間もすれば49日が成立する、まぁどうでもいいけれどね。

そしてまた浮遊する、将人は呟く。
「早く現世から消えてぇなぁ……」
そう呟きながら将人は空を見る、幽霊には『寝る』と言う行為が出来ない、何故なら『人間の肉体を有していないから』だ、人間の肉体を持っていると脳の関係で睡眠を取ってしまうが、人間ではなく幽霊なので睡眠や食を取る必要はなくなってしまう。
まぁ、現世なんか勝手に消えるけどなぁ……そう思いながら空中で寝転がる、少年はのんびりと浮遊する──

今生きている者も死んでいる者も結局は無に帰る、それは仕方無い事だ、それは本当に『仕方無い』事なのか?もっと運命に抗ってみませんか?抗って抗って手に入れるモノは何ですか?それは──

LASTCHAPTER 10 完

『アシナクシ。』 第一部 完 『アシナクシ。』 第二部に続く……

Re: アシナクシ。 ( No.38 )
日時: 2016/07/02 15:43
名前: 彩都 (ID: iXLvOGMO)  

『アシナクシ。』第一部ご愛読頂き、誠に有難う御座います、作者の彩都(サイト)と申します。
 何気に不定期更新でしたが、何とか第一部完結しましたね、第二部はどうなる事やら……(汗)
 実はこの話の完結は結構前から決まってましたね、その完結迄勝手に進め、とか思いながら執筆しましたね。
 まぁ、まさか将人と悠子が戦うとか誰も思わなかった……(作者自身も)
 でも、結構進んだよなぁ……そう思いますね、まぁ、まだ回収していない伏線とか回収したいし……(汗)
 本当、キャラの名前とか作るの大変だったなぁ……(白目)
 第二期の伏線の為に作らなきゃいけなかったし……(汗)
 まぁ、何だかんだで完結出来て嬉しいです。

 とまぁ、ここら辺で後書は終わらせましょうか?
(本音:そもそも書く事が無いので)

 それでは、彩都でしたっ!

Re: アシナクシ。 ( No.39 )
日時: 2016/08/06 13:37
名前: 彩都 (ID: vKymDq2V)  

『アシナクシ。』 第二部 『アシナクシ』討伐
CHAPTER 1 『アシナクシ』復活

 十年後、同中学校にて……
「受験、面倒だなぁ……何か他にやる事が無いかなぁ? まぁ、就職はしたくないしなぁ、はぁ、進路って面倒だなぁ」
 そう呟きながら中学三年の少年、芥川昴(あくたがわ すばる)は一人ごちる──別に就職も進路も興味が無い、もっと言えば県外の高校に行きたい位だった、だが昴は別にお金持ちでは無いので、そんな願望も願えないが。
 昴はそう思いながら学校の図書室に居座っていた、図書室の身にとっては良い迷惑だった。
「……もう帰って寝よう」
 そう一人ごちてから鞄を肩にかけて進路希望の用紙を鞄のミニポケットに突っ込む、そして椅子を入れた瞬間、可愛い女性の声がする。
「ちょっと! スバル! 早く進路希望の用紙を出してよ!」
「……何だ、雛乃か、どうしたんだ?」
 昴がそう言うと、雛乃という少女は昴の襟首を掴む。
「どうしたんだ? じゃないでしょう……? まず、明日提出の進路希望の用紙を出していないのは貴方だけよ? 早く出して?」
「厭です、だって未定で出したくないし……」
 そう言いながらスバルは下を向く、だが雛乃は許さなかった。
「いいから黙って書け」
「……はい」
消極的な声を出して昴は仕方無く鞄のミニポケットから進路希望の用紙を出して、同じくミニポケットからシャーペンを取り出し、渋々考えて、用紙に書き始める──

「……うん、これでよし! それじゃあ、スバル、また明日」
「もう会いたくないね」
「煩い、どうせ同じクラスだし、明日結局は会うわよ?」
「僕は君みたいな友人は持ちたく無かったよ」
「友人? 違うわよね? 幼馴染みよね?」
「はて? それは何だったかな?」
「巫山戯るな、OK?」
「巫山戯るさ、働きも高校も面倒だからね」
「うっわ、面倒臭がり……」
 そう言いながら雛乃は少し後退りして、体を縮込ませる。
「別にそこ迄の事じゃないだろ? さっさと帰らせてくれよ?」
「んー、そう? んじゃ、もう帰って?」
「ONとOFFが激しいね……通常運転過ぎる」
「そうかな? 別に普通よ、アンタの面倒臭がりよりも」
「うわ、酷いなぁ、僕の面倒臭がりは別段普通だというに……」
「何処が普通よ、何処が!?」
「まぁ、普通は異常ってかも知れないよ?」
「どういう意味よ、それ?」
「簡単な話さ、100人の内、99人が普通で1人が異常な能力者だったとしよう、集まった100人が『たまたま99人の普通と1人の異常者』ってかも知れないし、逆に『99人の異常者と1人の普通』って事も考えられるからね」
「結構面白い話ね、でももう時間だわ、また今度、話し合いましょう?」
「今度は明日じゃないか……」
 昴はそう言いながら溜息を吐いた──

 雛乃との会話を終え、昴は自宅に向かった、誰も居ない自宅、誰もまだ帰ってこない自宅──昴は一人で『ただいま』、と言って、家の中に入った──
 昴は世間で言う母子家庭、所謂シングルマザーの家庭だった、父親が居ないのが普通、自分の中ではそう思っている、だが何故父親が居ないのか、というと、父親が死んでいるからだ。
 母が昴を産む数日前に自転車に乗っていた昴の父がバイクによって轢き逃げ、頭部を強く打ち付けて、そのまま帰らぬ人に成ってしまった──それを聞いたのが、小学校卒業後の時だった、その時は凄く動揺したが、今はもう慣れてしまった。
 父がいなくても、自分が母を支える、そう思いながら今の今迄生きてきた、だから少しでも母を楽にさせたい、その一身で頑張ってきた。
 そして自分の部屋に入って、服を部屋着に着替えて、制服を洗濯機の中に入れて、ボタンを押し、洗濯する。
 昴は自室に戻って、漫画を読み始める、今の時刻は午後六時半、まだ夕飯は遅くても良いだろう、どうせ八時迄に食べれば良い、さぁ、のんびり時間を潰そう、そう思いながら寝転がって漫画を読み始める──

「さぁ、もう七時半だ、流石にご飯を食べないとね──」
 そう呟きながらリビングへ向かう、そして冷蔵庫の中に入っている夕飯用のおかずを取り出して、電子レンジで温める、チンッ! と少し心地良い音がする、昴は電子レンジに入れたおかずを取り出して、机の上に置いて、サランラップを外す、そして箸を用意して、
茶碗にご飯を入れて、食べる準備をする。
「さて、準備も出来たし、頂きます……!」
 両手を合わせて、昴は夕飯を食べた、夕飯は母が朝、一気に作ったモノだった。
 昴は夕飯を食べ終え、お皿を台所に置いて、スポンジに洗剤をつけて、自分が食べたお皿を洗う、お皿を三枚程スポンジで擦って、その後は茶碗を擦って洗う、そして後は洗剤を洗い流す、少し流れる水が心地良い冷たさで少し楽しかった、そのまま水で洗剤やお皿を洗い流した、さぁ、これで良いだろう、そう思いながら、隣の食器置き場にお皿、茶碗を置いて、昴は自室へと戻った。
 さぁ、晩御飯も食べ終わったし、どうしようかな? あぁそうだ、明日は部活メンバーが集まって怪談をするんだった、そして僕が蝋燭を20本用意するんだった、早く買いに行かないと……
 そう思いながら昴は近くの百均に向かって、蝋燭を買いに行った──


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