ダーク・ファンタジー小説

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アシナクシ。
日時: 2016/07/02 16:08
名前: 彩都 (ID: iXLvOGMO)

始めまして、彩都(サイト)と申します。

五作目です。
完全に、グロいです。
中身は、五分で思い付いた五分クオリティです。
読む時は背後に気を付けて下さい。
アシナクシさんが、襲うかもしれませんので……
それでは、どうぞ。

目次

第一部 『アシナクシ』襲来

序章 >>1

第一章 (CHAPTER 1) >>2-3

第二章 (CHAPTER 2) >>4

第三章 (CHAPTER 3) >>5

第四章 (CHAPTER 4) >>6

第五章 (CHAPTER 5) >>7

第六章 (CHAPTER 6) >>8-9

第七章 (CHAPTER 7) >>12 >>15-16 >>23-24

第八章 (CHAPTER 8) >>32-34

第九章 (CHAPTER 9) >>35-36

第十章 (CHAPTER 10) >>37



第二部 『アシナクシ』討伐

第一章 (CHAPTER 1) >>??

後書 第一部完 後書 >>38

Re: アシナクシ。 ( No.45 )
日時: 2017/02/04 17:47
名前: 彩都 (ID: ???)  

 翌日──
「あー……良く寝た、かな?」
 昴は起き上がって呟く、次に欠伸をし、立ち上がり、パジャマ姿の身なりを学生服に着替える、そして自分の部屋を出てリビングに向かう、リビングには生の食パンと少しばかりのサラダが置かれており、更にサラダの皿の下に置手紙──というより書置きか──があった、昴はサラダをどけて、置手紙を確認する。
『今日も遅れるから勝手に夕飯食べてね、冷蔵庫のおかずを温めて晩御飯食べてね 母より』、成程、ただの伝言か、そう思いながらその紙を片手でクシャッと握り潰す、昴は片手で食パンを手に入れ、食パンをトースターの中に入れ、カップにコーヒーの粉を入れ、砂糖を投入し、カップにお湯を注ぐ、そしてスプーンを取り出してカップの中を掻き混ぜる、すると『チーン!』とトースターが音を鳴らす、トースターを横目で見ると綺麗な焼目の食パンが飛び出していて、出来ていた、ゴクリ、と唾を飲み込んで食パン──トースターで焼いたので、今はトーストか──を手に取り冷蔵庫に向かい、冷蔵庫からイチゴジャムを取り出し、バターナイフを手に取ってイチゴジャムの蓋を開け、イチゴジャムにバターナイフを入れ、中身のイチゴジャムを取り出す、そしてバターナイフで取り出したイチゴジャムをトーストの表面に満遍なく塗り、トーストの耳を齧る、うん、イチゴの甘く酸っぱい感覚が口の中に広がった、とても美味しかった、もう『美味しかった』としか感想がない位に美味しかった、そのまま昴は無我夢中にトーストを食べる、満遍なく塗ったとしても多少ジャムの塗りのムラはある、なので、味が濃い所と味が薄い所を堪能出来た、そしてトーストを食べている途中に冷えてしまったコーヒーを一気飲みして、そのカップの中に冷蔵庫から取り出した牛乳を入れ、味覚をリフレッシュさせる、次に冷蔵庫からドレッシングを取り出し、サラダの上にかけ、サラダを食す、うん、酸っぱいドレッシングなので、さっぱりとしたサラダになり、イチゴジャムを塗ったトーストとは段違いに美味いな、と感じる昴、昴はサラダを食べ終わりシンクの上にサラダと食パンが乗っていたお皿を置いて、水に浸し、時間を確認する、時間は朝の七時半だった。
「ヤバいな、いい加減外に出ておかないと、雛乃に怒られるなぁ」
 昴はそう呟きながら溜息を吐き、鞄を背負い、玄関に向かい、靴を履いて自宅を出た──

「受験面倒だなぁ……」
 そう呟いて虚空に向かって顔を向ける、何で中学三年生の自分は受験をしないといけないんだろう?逆に考えて自分は進学する意味も勉強する意味も仕事する意味も勤労する意味も無いのだが……そう思いながら虚空から顔を下げた時、目の前に白衣の女性がいる事に気付いた、そういえばもう学校の手前だっけ? と考える。
「やぁ、芥川君、なぁに虚空を見て黄昏ているんだい?」
 そういう白衣の女性──名前は桃園アリスという、軽く十年程前に『とある人物』と戦い、巨乳だった胸を失う、という事件が起きたが、そんな事件十年程前に起きた、という事実がないので証明する方法が無いのだが──そんな白衣の保健医に対し昴は溜息を吐いて返答する。
「いや実は進学も仕事もしたくないんです、何と言うかその、意欲? と言うのが無くて……自分は何がしたいのかも分からないんです、この感覚は何なんでしょうか桃園先生?」
 自分がそう言うと、アリスは適当に答える。
「適当に生きたら? 私だってやりたくて教師──と言っても保健医だが──になった訳では無いからな、単純に暇だから難しい学校行って難しい授業受けて難しい資格を手に入れて難しい事に挑戦した人生だからな、単純にそんな人生さ、たまたま『教師』と言うのが難しいから挑戦してなっただけだしなぁ……私に相談せずに他の人に聞いてみたらどうだ? 私の場合は参考になりにくいタイプだからな、参考にするなよ?」
「……はぁ」
 昴はそう頷いて溜息を吐いて学校の中に入った、桃園先生では対処出来ない、か……心の中でそう呟きながら靴箱に向かう──

 昴は自分の席に座ってノートを開いて教科書を見る、小テスト対策の為に教科書を少しでも見ておかないと良い点数が取れない。
 だけど今日小テストがあるかは分からない、そう思っていると要が昴に近付いてにやにや笑う。
「さっすが昴君、小テスト対策の為に少しでも点数を上げる為に小テスト勉強ですかぁ」
「はぁ? どういう事だよ、小テスト、本当にあるのか?」
 昴がそう言うと要は驚いていた。
「何だよ、知らなかったのかよ、無知で勉強しているなんて驚きだったぜ」
「な、何だよ、生徒会長権限で知ったのかよ」
 昴がそう言うと要は頷く、ほ、本当に権限を使用したのかよ、昴はそう思いながら溜息を吐く。
「権限を使用するのは悪くない、悪いのは『悪く乱用する奴』だけだ」
 要はそう言って、昴のノートを確認する、うんうん、と頷いて確認し終わった後、昴に返す。
「ある程度は暗記出来たかな? さぁ、小テスト一緒に頑張ろうぜ?」
 要はそう言った後自分の席に戻る、あんな短時間で暗記する事等不可能だ、流石に少し勉強をしている、と思うのだが……昴はそう思いながら教科書を見ているとチャイムが鳴り、先生が来る、そしてその先生は小テストを取り出し、クラス中に小テストのプリントを配る、ほ、本当に小テストやるのかよ、と昴は思う、昴は溜息を吐きながら小テストに望んだ……いい点数が取れるかは先生の採点次第だ──

Re: アシナクシ。 ( No.46 )
日時: 2017/03/04 13:06
名前: 彩都 (ID: /dHAoPqW)  

 小テストが終了し、昴は一人、溜息を吐いていた、案外難しい問題が多かったな、と思いながら椅子から立ち上がり、トイレに向かう。
「それにしても最後のは難問だった気がする、本当、難問だった気がする」
 昴がそう言うと、隣に居た要が静かに笑う。
「おいおい、流石にあの問題は難しかったかもしれんが、何度も予習復習すれば簡単に出来る問題だ、後これは高校でも普通に使用するから、ちゃんと覚えておけよ?」
 要の言葉にうんざりする昴、あんな問題、もう解きたくは無い、昴はそう思いながら要の隣から離れる──

 一人、屋上で佇む、昴は購買で買った惣菜パンを食べながら新兵と会話する。
「なぁ、新兵、お前のクラスで小テストとか今日あった?」
「えっ? 今日ですか? 今日は国語の小テストがありましたねぇ、芥川先輩もですか?」
 新兵が昴の言葉に返答する、逆に新兵も昴に小テストの事を聞き返した。
「えっ? あぁ、今日は数学だったな……新兵、気を付けろよぉ? 中学三年の数学の公式は覚えるのが大変だからなぁ? 頑張って暗記しろよぉ?」
 昴が怖い雰囲気で話す、だが新兵は呆れながら言う。
「流石に分かってますよぉ」
 新兵はそう言って、左手に持っている紙パックの牛乳をストローで飲む、右手には食べかけのアンパンがそこにはあった。
「本当、新兵はあんこのパンばっか食べてるなぁ、それに牛乳……お前は刑事かよ!? ってツッコミが来るぞ?」
 昴が新兵の食事に難癖をつける、だが新兵は軽々しくかわす。
「芥川先輩、それ何回か言われましたよ? ですが僕はこう言いました、『好きなんだから食べているだけです』って、僕、あんこが使用された物が好きなんですよぉ」
「いや、知ってるけどさぁ……って、刑事って言われた事があるのかよ!?」
 昴はその部分に驚いてしまう、まさか正解してしまうなんて思ってもいない事だからだ。
「ん、もうパンを食べ切ってしまったようだ、それじゃあ二個目を買いに行きますか」
 昴が自分の片手に持っているパンの袋を見て言う、だが新兵はそれを否定する。
「ダメですよ、授業が遅れてしまいます、先輩は三年生なんです、少しでも品行方正な姿を教師陣に見せておかないと……」
「あー、面倒だなぁ、三年生って! どうでもいいんだよ、高校だろうが就職だろうが何だろうが! それよりも自分が今一番必要なのは金! 金!! マネー!」
「最後だけ英語に言い換えやがった!」
 昴の言葉に新兵はツッコミを入れる、どうしてだろう? 今ツッコミを入れておいた方が良いかもしれない、と本能で判断してしまった、と新兵は思う。
「いいじゃねぇか、金金金、と言うより、金金マネーの方が案外語呂が良かったりする」
「そんなしょうもない事に頭を使わないで勉強に使いましょうよ……」
 昴の話を聞いて、新兵は呆れる、すると新兵は思い出したかの様に昴に言う。
「あっ、芥川先輩知ってます? 昨日話そうと思ってましたが……」
 新兵の言葉を聞いて昴は不思議がる、オカルト研究部の百物語の時に話したかったネタかな? 一体何なんだろう? と思い、新兵から話を聞く事にする。
「昨日? 一体何なんだその話は?」
 昴がそう言うと新兵はアンパンを一気に食べ、左手の牛乳で一気に胃に押し込んでから、一息ついて話し始める。
「プハァッ! それじゃあ言いますね──」
 ゴクリ、と自分は生唾を飲んで新兵の口に耳を傾ける。
「『アシナクシ』の事ですよ──」
『アシナクシ』、多分この地域の人間なら大体の人は知っているだろう、約十年前に起きたこの地域の巨大な事件の事だ。
『アシナクシ』と呼ばれる悪霊に腰から下を切り取られる、という残酷極まりない事件だ、悪霊、と言うが、実際は『アシナクシ』という『姿形が分からない犯人像を幽霊に押し付けた』だけのただ単純な責任転嫁だ。
 実際悪霊かどうかは被害者である人にしか分からないが──そしてこの事件の被害者は全て死んでいる、それもその筈、『腰から下』が無いのだから多量出血で死んだのだ。
 だから被害者には話を聞く事は出来ないし、犯行も『被害者が一人の時』を狙われているので、証言者も目撃者もいない──この一連の事件は今も警察が追っている、と言う事だが、犯人が悪霊だか、人間だか分からないのに追うのも少し吝かでは無いか、と自分は思うが──でも何で急にそんな話をしようと思ったのだろう? 昴は思った事を口にした。
「新平は何でそれを今更話そうと思った訳?」
 昴がそう言うと、新平は顎に手を当て、少し考える様な素振りをして話す。
「それはですねぇ……実は『とんでもない』物が見付かったんですよ、僕は『とんでもない』物を読んで驚きましたね」
「えっ? と、『とんでもない』物? 一体何なんだよそれ? 物って事は警察に見せたら凄い事にな……」
 昴がそう言うと新兵は昴の口を急いで閉じて、小さな声で怒鳴った。
「しぃ! こんなの他の人に聞かれたらヤバいですよ! ……僕達はどんな部活でしたっけ?」
「えっ? オカルト研究部だけど……?」
 新兵の問いに静かに答える昴、新兵は静かに頷いて昴に言う。
「そうです、オカルト研究部です、ではそのオカルト研究部が『アシナクシ』の正体及び、逮捕迄出来たら、オカルト研究部はどうなると思いますか……?」
「……警察に表彰されて、部費とか部室のランクがアップする……?」
 新兵の言葉にゆっくりと答える昴、新兵は強く頷き、昴に言う。
「そうです、危険な事かもしれません、ですが、表彰されたら大人なんてすぐ見る目を変えるんです、そして先輩は三年生で進路を悩んでいる……もし警察に表彰されたらどうなります? そう、進路や就職に有利になりますよ……?」
「た、確かにそうだな……」
 新兵の言葉を聞いて、静かに頷く昴、だが昴は『とんでもない』物の正体を知りたくて、少しワクワクしていた──一体何なんだろう? そう思いながら──

Re: アシナクシ。 ( No.47 )
日時: 2017/04/01 17:37
名前: 彩都 (ID: V7PQ7NeQ)  

「なぁ、新兵、一体何なんだよ、『とんでもない』物って言う奴の正体をよぅ?」
 昴はそう言って証拠提示を急かす、新兵は『秘密ですから、まだ公表しないで下さいね?』と言って、新兵は鞄から一つの手帳を取り出す、その手帳には、土がついており、結構ボロボロであった。
「は、はぁ? こんなボロい手帳が『アシナクシ』の情報が載っているのかよ? 何だか信憑性が無いぜ……!」
「まぁまぁ、読んでみたら分かりますよぉ?」
「お、おう、そうか……」
 新兵の言葉に少し納得して、昴は新兵から手帳を借り、少しパラ読みする事にした。
 ……!? …………!? 何なんだこれは!? これは……色々な人の殺害情報が載っている、第一の事件、畦道小道(あぜみち こみち)という女性が死んでいる、この事件、テレビでも報道されていたし、結構話題になっていた殺害事件──と言う名の『アシナクシ』に腰から下を奪われた事件だ──だった、それにしてもこの手帳の情報、警察よりも結構詳しく書かれている、『『アシナクシ』はもう少し綺麗な足を求めている様だ、私はこれからも調査を続けたい』や、『今日も『アシナクシ』が出てきてしまった、また出てきてしまい、少し恐怖だ、学校の皆も『アシナクシ』で恐怖に包まれているだろう、早く『アシナクシ』を倒さないと……』等等、色々な事が書かれている──それにしても一体誰が書いたのだろう……最初に見たページと後半のページとではまるで筆跡が違う、最初の方は綺麗に書かれているが、後半はまるで殴り書きの様に乱暴に書かれている、二人以上が書いたのかもしれない、と判断してしまいそうだった。
「どうです先輩? 納得出来ますかね? 『アシナクシ』の手帳、だって?」
「……あ、あぁ、信じるさ、これは相当ヤバい手帳だ、早く俺達で『アシナクシ』の犯人を見つけられるぞ……!」
「でしょう? だけどもそれは無理です」
 不意に新兵が間抜けな事を言う、いやいや、今行動しないと何時行動するんだよ!? と心の中で昴はツッコミを入れる、すると心の中のツッコミに気が付いていない新兵は淡々と話し始める。
「まず、僕達では『アシナクシ』は倒せません、何故かって? そんなの簡単ですよ、『『アシナクシ』は大人』ですよ? 約十年前、小学四年生、10歳の少女、少年が成人になっているんです、大人が犯行している可能性もあります──流石に中学生とか高校生とか学生は殺人を犯さないでしょうけど──幾ら成長期、思春期の僕らでも、まだ筋力は大人より少ないし、体力も少ないです、だから僕達では『アシナクシ』には勝てません……」
「えぇ……たったそんだけで諦めるのかよ新兵は!? お前には俺より大量に武器を持っているじゃねぇか! 『忍術』や『忍法』っていう大量の武器が! それに引き換え、俺にはあまり無いけれど……新兵だけでも頑張れば勝てるんだよ! 最悪逃げるだけに徹しても良いんだし! 『アシナクシ』の顔さえ写真を取ればセーフなんだよ! お前には俺達よりも強いってのが分かるだろう?」
「そうですけど……流石に難しいですよ、自分の『忍術』、『忍法』はまだまだ開発途中、まだまだ発展途上です……それに自分の『忍術』、『忍法』は『攻撃専用では無く、主に移動、避ける専門』だけですし……まだ攻撃系統のは覚えていないんですよぉ……」
 新兵はそう言って、頭を垂れる、すると新兵は手帳を握り締めて、昴に言う。
「そ、それにもしも『アシナクシ』の事を探って、『アシナクシ』に脚をなくされたら……!」
「ま、まぁ、そりゃそうだろうなぁ、別に強制はしないぜ? 俺はただお前を元気付けようとしただけさ……」
 昴はそう言って立ち上がり、新兵に言う。
「よぉし、もうすぐ昼休みが終わるな、さて、新兵、もう教室に戻ろうぜ? お前も品行方正な学生だもんな、少しは急いで、次の授業の準備でもしようぜ?」
「あっ、はい、そうですね……」
 昴の言葉に新兵は頷いて、立ち上がり、二人で屋上を出る──昴と新兵の『『アシナクシ』の手帳』を遠目で見ていた存在が居たが、昴と新兵は知らなかった──

 その後、二人は何とか昼の授業に間に合い──教室に行く前に二人はジュースを買いに売店に来ていたが、ジュースを飲んでいる途中に予鈴が鳴って、焦ってしまい、教室に行くのが遅れてしまった、だが何とか授業には間に合った──授業を受けた、そして放課後になる。
「確か今日は『部活』行かなくても良いよな? 面倒だし、要も紬も生徒会で忙しいだろうし……」
 昴はそう呟いて、靴箱に向かう、すると走って向かってくる中世ヨーロッパの貴族の様な格好の綴喜が現れて、昴に言う。
「おぉーい! すーばるー! 今日の『部活』なんだけどさぁ? メンバーが集まらなさそうだって言って、要が今日の部活休止を言い渡したぞー!」
 綴喜の話を聞いて、ふむ、と納得する昴。
「ありがとよ、今日は家に帰って忙しいからな」
「そーかー、それじゃあ私は演劇するからなぁー」
 綴喜はそう言って、走って体育館へと向かう、昴は静かに溜息を吐いてから靴を履き替え、学校の玄関を出る──さぁ、早く帰ろうか、そう思いながら──

Re: アシナクシ。 ( No.48 )
日時: 2017/05/06 09:08
名前: 彩都 (ID: gZQUfduA)

「ちょっと」
 玄関を出た昴は急に背後から声を掛けられ、玄関を出て数mの位置で立ち止まる、聞き慣れた声、毎日聞いている声に対し、昴は少々の溜息を吐きながら振り向いて、背後から声を出した存在に言い返す。
「──一体何なんだよ雛乃?」
 背後から声を掛けたのは幼馴染みの雛乃だった、そんな昴に対し、雛乃は溜息を吐きながら昴に言う。
「アンタ……『アシナクシ』について、追いかける気でしょ? 私知ってるよ、たまたま屋上で玉藻先輩と昼食を取って、解散した後、スバルが新兵君と手帳を見ながら会話しているのを?」
 ……ヤバい、一番見られたくない相手に見られたな、昴はそう思いながら深い深い溜息を吐く──玉藻先輩かぁ、あの人、自分は嫌いだなぁ、だって、完全に雛乃の事が好きそうに見えるし……別に自分は雛乃の事は好きじゃないけど、何だか、心からぽっかりと穴が開きそうで玉藻先輩とあんまり関わって欲しくないんだよなぁ、そう思いながら硬く閉ざしていた口を開かせる。
「で? それがどうしたんだよ? いいじゃねぇか、オカルト研究部、最悪部費が増えるかもしれない、だから俺は追いかけるぜ? お前は玉藻先輩の尻でも追っかけてろよ、俺は知ってるぜ? 雛乃が玉藻先輩の事が好きだって事」
 昴が皮肉交じりにそう言うと、雛乃は頭を垂れ、顔を赤らめて小声で言う。
「そ、そんなんじゃないし──本当はスバルの事──じゃなくて! 『アシナクシ』なんていう『非科学的な者を追うのは止めろ』って言いたいのよ! 『アシナクシ』なんて科学的に考えて存在しないし、有り得ないわ! スバルも科学的に考えたらぁ? 『幽霊は存在しない』、これは何年も前から科学が答えを記しているわ!」
 雛乃の怒声を全身で受けて、部活の存在意義を貶されている感じがして、昴もつい、声を荒げて反論してしまう。
「じゃあ、幽霊が引き起こす『ポルターガイスト』は何なんだよ!? 密室の中、風も起きないのに何で机の上にある花瓶が倒れるんだ!? 更に密室なのに何で扉が勝手に開く!? 有り得ないだろ! これは『俺達人間が見えていない『力』が引き起こしている』筈だろう!? その『見えていない『力』ってのが『幽霊』だ』と、俺は思う! じゃあ逆に聞くが、『『ポルターガイスト』を科学的に説明してみせろ』よ、浅黄雛乃(あさぎ ひなの)さんよぉ!?」
 昴は雛乃のフルネームを言って、反論した、雛乃は『うぐぐ……』と声を漏らして、必死に考え、スマホを駆使して、反論しようと言葉を脳内で構築し、昴に言い返す。
「甘いわね! スバル! 『ポルターガイスト』ぉ!? そんなの科学的に反論してみせるわ! 『ポルターガイスト』の正体、それはこの『地面』よ! 地球には『プレート』という物があるのを知っているわよね? そのプレートが動いて、地震が起きるわ、そう、『その場所がたまたまプレートの移動の揺れを強く受けて、その場所が強く揺れて、密室の中の机の上の花瓶が倒れた』と言う事! そしてドアが勝手に開くのも、『たまたま閉じ方が甘かっただけで、揺れて、偶然にもドアが開いた』と言う事! どう!?これが『ポルターガイスト』の正体よ! これ以外に有り得ないわ! これで『幽霊がポルターガイストを引き起こしている』という理論は無効になるわ!」
「……じゃあ、逆に聞くけど、『ポルターガイスト』で起きる、『物の移動』は……? 地震が原因だと言っても、『物の移動』は地震では説明出来ないよな? 『物の移動が前後に起きたらどうなる』んだ? 流石に地震じゃ説明が出来ませんけどぉ?」
 雛乃の発言に対し、昴が煽る様に言う、昴の発言に反論出来ない雛乃はその場で跪く。
「はい、俺が雛乃の発言を論破した事により、これで『幽霊が存在する』可能性は有り得る、となった、更に『アシナクシ』の存在も証明された、訳だが? まだ反論するかい?」「は、反論出来ないから、仕方なく、『アシナクシ』が存在する事を認めてあげるわ……!」
「最初っから認めておけば良いものを……」
 雛乃の発言を聞いて、昴は静かに溜息を吐いて、雛乃に言う。
「さぁ、さっさと帰るぞ? 今日は忙しいんだ、さっさとご飯を食べて、パソコンがしたいからな」
 昴はそう言って、一人で先に進む、そんな昴の後ろ三歩程後ろの所で歩き始める雛乃、この雛乃との会話がこれで最後だなんて昴は微塵も思っていなかった──

「ふぅ、帰宅した……今も母は居ないのか……」
 昴はそう呟いて、玄関で靴を脱ぐ、いい加減教師からも『母親と会話して、進路を決めなさい』、と言うが、母が『何で息子のアンタと会話しないといけないの? 進路を決めるのは自分、母親である私は息子の行く学校の入学金とかを支払うだけ、中学卒業したら自分で何もかも決めなさい』と言って、聞く耳を持たない、本当、この家庭は壊れているなぁ……そう思いながら自室に向かい、制服を脱ぎ、部屋着に着替える、そういえば最近、というより、ここ近年、いや、小学六年以降から雛乃の部屋に行っていないな、勉強と称して、部屋を観察しに行くのも良いかもしれないな、そう思いながら昴は鞄を持って、近所の雛乃の家に向かう、同じクラスだし、勉強している所は一緒だ、二人で復習すれば、もっと勉強の知恵はつくだろう、そういう考えも持ちながら、雛乃の家のチャイムを鳴らす、すると出てきたのは、雛乃の母親、『雛乃と一緒に勉強しに来た』と説明すると、『そう? それなら勝手に雛乃の部屋に行って、驚かせてきなさい!』と言って、昴を家内に入れる、これで第一関門突破だ、さぁ、次は部屋の中に入るという第二関門だ、そう思いながら二階の雛乃の部屋に向かう、そして階段を上り、雛乃の部屋のドアをノックし、昴は入室する。
「おっす、雛乃ぉ、一緒に勉強しよう……」
 昴がそう言った瞬間、肩に掛けていた鞄がズルッとずり落ちて鈍い音を放つ、そしてその後、雛乃の母親がショートケーキとオレンジジュースを持って、二階の雛乃の部屋に運んでくる、だが、雛乃の母親は二階の雛乃の部屋の前でショートケーキとオレンジジュースが入っているお盆を落として、その場で膝から崩れる、それもその筈だ、何故なら、『真っ暗の部屋の中、雛乃が腰から切断されている』からだ、左の太股には一筋の赤い紅い一本の線があった──
CHAPTER 1 終了 CHAPTER 2 に続く……

Re: アシナクシ。 ( No.49 )
日時: 2017/06/03 14:37
名前: 彩都 (ID: DYDcOtQz)  

 CHAPTER 2 謎の死体

「雛乃!? 雛乃!?」
 昴は叫びながら雛乃と思われる遺体に触れる、まだ温かい、と言う事は『こんな姿になってまだ浅い』と言う事! では、『誰がこんな事をした』んだ!? 昴は首を振って、周りを確認するが、電気が廊下、階段の方からしか来ていないので、一筋の光だけでは部屋の中等分かる筈も無い、昴は扉を閉めて、扉の裏に隠れていたスイッチを押して、部屋の電気を点ける。
 電気が点いて、やっと明るくなる、すると目の前には風で靡くカーテンが、何時も雛乃は戸を開けて、自室を過ごしている、雛乃は暑がりで、よく冬でもTシャツに短パンという寒い格好で買い物に行く時もあったり……なので、戸が開いている事は別段何も可笑しくは無い。
 だが、その時、昴は探偵ばりの行動を何時の間にかしていた、まずは進入されたのでは無いか? と思い、戸を確認、戸の下の溝を指で擦り、土が無いかを調べるが、存在しなかった。
 次に箪笥の引き出しに手をかけ、雛乃の下着や衣類を確認する、だがそもそも雛乃の衣類や下着の枚数なんて知らないので、調べても意味が無い、だが、きっちり丁寧に整理整頓されているので、衣類や下着を盗みに来た訳では無い、と考える。
 と、此処で、昴は雛乃の腰の部分を確認する、『腰から下が無い』遺体、それはどっかで聞いた事が……と思い、『ハッ!』となる、これは『アシナクシ』の事件の時の! だけど、流石にそれは……何故なら『アシナクシ』は十年も前の事件のモノ、こんなに期間を空けるなんて普通有り得ない! 『アシナクシ』がまだ存在しているとなると、『この十年間も事件は続く』筈だ! だけど、続いていないと言う事は『アシナクシ』自体、もう存在し無くなった、と言う事……では一体誰がこんな事を? 自分は雛乃のベッドに座りながら考える、目の前にあるのは雛乃の上半身の遺体、一体誰が……そう思っていると、急に雛乃の部屋の戸を開ける人物が居た、それは雛乃の父親だった。
「ひっ、雛乃は大丈夫か!? 昴君も襲われていないかい!?」
 昴は雛乃の父親に抱き締められ、雛乃の父親の胸の中で静かに泣いた──自分の中の感情はどう、表現したら良いのか? 更に思春期という事で、もっと感情が混濁している、昴は何も言えず、雛乃の父親の胸の中で、すすり泣いた──

「だ、大丈夫かい……?」
「あっ、はい……」
 居間に連れて来られた昴は正座で頭を垂れる、雛乃の父親も正座で昴に言う。
「え、えっと……昴君に聞きたいんだけど、『部屋に入る前は雛乃の悲鳴とか聞いた』かな?」
「いえ、俺が来たのもつい数分前ですし……戸を開けた時は部屋が真っ暗で気付かなかったけど、背後の電気で雛乃があんな姿に……!」
「そ、そうか……その辺は妻に少し聞いたよ、妻がデザートやお茶を用意して、階段を上がって数分の出来事だ、とても君が殺人出来る体力も力も無い、と判断出来るしね、君はまだ若いし、力はもうついているかもしれない、だけど、流石に『たった数分で女性の腰から下を斬って、上半身と下半身を分ける』なんて芸当、出来る筈が無いもんね……もしも戸から入った、と考えても、雛乃の悲鳴は聞こえるしね、君が殺害する事は有り得ない、では誰が殺害したのだろう? 『悲鳴を出さずに殺人』だなんて……」
「……『アシナクシ』」
 昴が小さな声でそう言うと、雛乃の父親が訝(いぶか)しく言う。
「『アシナクシ』ぃ? す、昴君、さ、流石にそれは有り得ないんじゃないか? だって、『アシナクシ』は十年前の事件、更に、『アシナクシ』はどんな犯人かも分からない、『幽霊だ』という噂もあるんだぞ!?」
「だからですよ、『幽霊が雛乃を殺害した』としたら? 逆に考えて、『犯人も雛乃の返り血を浴びて』いますよね? あんな出血量だから、返り血が服に引っ付いていないといけない、更に、返り血がつく、と言う事は、『返り血がついた服はどう処理をする』のでしょう? もしも幽霊なら、返り血もつきませんし、服を処理するという工程も要らない」
「た、確かに……でも、逆に考えて、『幽霊はそもそも存在しない』だろう?」
「そう、なんですよね……だから、『人の手のさちゅじん』……いえ、『人の手の殺人』ですよね……」
 昴の言葉に対し、雛乃の父親も腕を組んで考える、そして腕を解いて、昴に言う。
「もう、今日の所は君の精神の事も考えて、帰った方がいい、外も暗いからね……それじゃあ、また今度……」
「……はい」
 自分はそう言って、雛乃の父親及び雛乃宅を最初に来た時の荷物を持って、出る──また今度? いや、もう来ないと思う、昴はそう思いながら近くの自分の家へと向かう──

 何で? 何で何で!? 可笑しいだろ! 何でアイツが死ななきゃいけないんだよ!? 可笑しいだろ! あんなに頑張って動いていたのに……何だよ、神様は『頑張っている奴』を殺したがる存在かよ!? なぁ、おいぃ、神様よぉ、この声が聞こえているならよぉ……アイツを……! 雛乃を生き返らせてくれよ! アイツは悪い事をしていない! 良い事しかしていない! 何で……何で『俺』が生きているんだよ!? 普通は俺が死ななきゃいけないじゃねぇか! 可笑しいだろ!? 可笑しい……だろぉ!!
 昴は帰宅早々ベッドにダイブして、泣きながら思う、誰も救ってくれねぇ、何なんだよこんな世界……! 残酷だ、残酷だ……! 昴は心の中で叫びながら、枕を濡らす──そして何時の間にか寝ていた──そして望んでいない明日が、また来る──望んでいない明日は希望か、それとも──


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