二次創作小説(紙ほか)

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HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】
日時: 2016/10/19 15:40
名前: cinnamon (ID: zRrBF4EL)

みなさんどうも!
今まで書いていた小説の展開に行き詰まり、ずっと書いてみたかったHoneyWorksの小説を書こうという、かなりの荒業を成し遂げようとする馬鹿者、cinnamonです!

ここでいくつかの注意点!

一、この物語(本編)は、作者の完全なるもうそu…想像の世界でございます。
本家本元に関連したものでは全くありませんので、本家本元を見たい方はここでUターンすることをお勧めします。

一、荒らし・暴言は禁止です。
(最も、そんな下らない事をする為にカキコやってる人なんていないと思いますが)

一、作者は一応バリバリ中学生な為、更新は決してマメではありません。
そこんとこご了承ください。

一、一応の為にHoneyWorksをよく知らない方のために、それとなく説明を書きますが、説明下手な作者の説明なんて決してアテにせず、HoneyWorks公式サイトをご覧ください。

以上です!
それでは、HoneyWorksの世界へ!

目次 リクエストについて>>41 やっとやっとのお知らせ!>>68
次回予告>>101

本編【あのキャラ達がHoneyWorksの曲をレコーディングするようです】
>>1>>5>>11
>>14>>22>>29
>>32>>35>>37-38
>>40>>47>>50
>>52>>57>>61
>>66>>74


ひな様リクエスト小説
【花畑〜始まった恋〜】>>78-99



童話シリーズ
〜ヤキモチの答えペア〜 かぐや姫
>>102>>108>>123>>133-135>>138-139>>144-145


〜初恋の絵本ペア〜 赤ずきん
>>154>>166>>174>>183


〜告白予行練習ペア〜 シンデレラ
>>192>>199>>209-211>>228




(小説の間にコメント返し等が挟まると読みづらいので、このような細かい分け方になりました……面倒ですがご了承下さい)

Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.239 )
日時: 2017/03/23 17:25
名前: cinnamon (ID: 3JMHQnkb)


大変ご無沙汰しております、cinnamonです。

最後の更新からもう三、四ヶ月が過ぎ、年も越してしまいました。
以前にも少しお話したと思いますが、私の携帯で直接投稿することが出来なくなった為、投稿するには友達の携帯を通じてする以外に手段が無い状態となってしまいました。
それに加えて私の学校行事などもあって、今の今まで更新を停止していました。

もしもこの小説の更新を楽しみにしてくださった方がいらっしゃいましたら、深くお詫び申し上げます。
大変申し訳ございませんでした。


また、小説の更新をしばらくストップしていた故に、目次を更新するためのパスワードをど忘れしてしまいました……なのでしばらくは目次無しでご利用下さい。


そして、これが最後のお知らせです。
私はこの春から俗にいう受験生、というものになります。
それ故、更新もほぼほぼ出来なくなると思います。
春休み期間中に出来る限り投稿しますので、それでご了承下さい。

尚、更新停止する際はきちんとこのスレで報告させていただきます。




以上、長々と書きましたがcinnamonでした。
これからも暇を見つけては投稿できるようにしていきますので、どうぞよろしくお願いします。



Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.240 )
日時: 2017/03/23 17:40
名前: cinnamon (ID: 3JMHQnkb)







『えー、続いてはダイアナ家ご令嬢のあかり様ー…………』



(ふーん、この人、結構人気あるんだな…………)



舞踏会が始まって既に二時間が経過しているが、舞踏会に来た令嬢の紹介は一向に終わる様子がなく、優は無礼だとは分かっていてもどうしても顔に出てくる疲れを隠せなかった。

今紹介された令嬢は、優と同い年くらいで艶やかな黒髪が印象的な、なかなかの美少女だった。周りからも彼女が通るたびにその美しさに感嘆の声が出ている。

しかし当の本人はどうやら人前が苦手らしく、ガチガチに緊張しきっていて優と目が合ってもすぐに逸らされてしまった。


(これ、相当緊張してるな……夏樹なら、人見知りなんか何もしないんだけどな)


そこまで考えて、優はまた昨日の夜のように、思考を止める。気がつけば夏樹のことを考え、誰かと夏樹を比較している。そんなことをしても無駄なのに。


夏樹とは、もう会えない。
実を言うと、ついさっきまでは少しだけ、今日なら会えるかもしれないと希望を捨てずにいた。
今回の舞踏会は貴族だけではなく、一般の女性でも年頃の女性なら誰でも参加できるからだ。

夏樹と優は同い年だから、年齢的には何も問題ないし、夏樹の方に舞踏会に来ようという気持ちさえあれば会えるかもしれない。

そう思ってはいたが、舞踏会が始まる直前にホール内を探しても、夏樹の姿は見えなかった。おまけに、優が自ら招待状を書いた蒼太と春輝の姿もなかったのだ。


(とにかく、あと少しで休憩だろうし、気を抜かずにしないとな……)


そうして深呼吸し、気持ちを切り替えた瞬間、急にホール内の一部がざわめき出した。何事かと優もざわめいている方を見ていたが、優の位置からは駆けつけた兵隊が騒ぎの中心を見た瞬間、面食らった顔をしているのが見えただけだった。
そして優が騒ぎの元へ行こうと足を踏み出した直後、一気に人混みが二つに分かれ、優へと続く道を作った。
そしてその道を歩いてくるのは、よく知っている二つの顔だ。

「よぉ。久しぶりだなー、優」
「う、うわぁ、もうすっかり王子様が板についてきたね!」


春輝はいつも通りの気楽さと悠々としているが、蒼太は元々緊張に強くない性格だからだろうが、声が裏返っている。


「………お前ら、俺に恨みでもあるのか?」
「いやいや、恨みなんてこれっぽっちもございませーん」
「敬語やめろって前に五回以上言ったこと、もう忘れてるとは思わなかったな」


わざとらしい敬語にため息をついていると、蒼太が「そうじゃなくて、」と話を戻してくれた。

「そうじゃなくてさ、僕たちは優に会わせるべき女性を連れてきただけだよ」

蒼太が春輝に視線で同意を求めると、春輝も「そうそう」 と返した。

「さっき入る時に聞いたけど、ご令嬢さんの紹介とか何とかって、さっきで最後だったんだろ?じゃあちょうどいいし」
「だね。ラストを飾るに相応しい人だよ」
「ラストを飾るっていうより、ラストを奪う、じゃね?」
「まぁまぁ、そこは優次第でしょ?」


優がポカンとしているのをいいことに、二人でどんどんと話が進んでいく。肝心なところは隠しまくって全然明かさず、こういうところは変わらないな、と呆れと妙な安心感で体から力が抜けていく。


「おーい、当事者の俺を置いてくなよな。………で?俺に会わせたい人?誰だよ?」


もったいぶってなかなか話出さないので遠慮なく追求したが、それでも二人は全くその人が誰なのかを話さない。このままでは埒があかないような気がしてきた頃、再び先ほどの人混みがざわめき出した。


「お、来たか」
「うん。……じゃあ春輝、僕たちはここで退散しないと」


一歩後ろに下がった春輝と蒼太が、真っ直ぐに優を見てくる。その二人の背に隠れるようにして、誰かが先ほど春輝たちの通った道を進んできた。




「お前が、一番会いたい人だよ」






そうして二人が左右に分かれて、優へと続く道を開ける。その姿を見た瞬間、優は声を出していた。







「夏樹…………!」









どんなに昔のことでも、一日たりとも忘れなかったあの頃の姿より、うんと女性らしくなった夏樹が、目の前に立っている。その事実が信じられなくて、優は名前を呟いたきり言葉を失った。
しかし優の小さな呟きは、しっかり夏樹にも届いていたらしく、夏樹は照れていて、けれどあの頃と何も変わらない太陽の笑顔を見せた。


「優………!」


少しずつ優の元へと進んでくる夏樹が待ちきれずに、優も足を前へと踏み出した。


一歩ずつ、足を進めるたびに、
少しずつ、夏樹が近づくたびに、

優の体の底から、数えきれないほどの感情が溢れてくる。


(そうだ、そうだよ、やっぱり俺は夏樹しか………)


夏樹しか、好きになれなかった。
あんなに幼い頃に、あんなに突然な別れ方をして。
夏樹にもそれなりに寂しい思いをさせてしまったと思う。

寂しさ、喜び、驚き、幸せ。
様々な感情が一気に押し寄せ、緩んでくる涙腺に力を入れながら、人一人分の間を空けて、優は足を止めた。夏樹もそれに合わせて自然に足を止める。

夏樹も、まさか優が王子であるとは思わなかったのだろう。泣きそうだけど嬉しそうな、それでいてどこか現実味の無い夏樹の表情がそれを証明していた。



「優………わ、私………」
「夏樹」



沈黙が気まずくなったのか、何か言おうとした夏樹を遮って、優は夏樹の名前を呼ぶ。名前を呼びかけることすらも嬉しくて、この奇跡を想いながら『王子』として姫に手を差し出し、跪く。





「俺と、踊ってもらえませんか」





*・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・*





Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.241 )
日時: 2017/03/23 17:46
名前: cinnamon (ID: 3JMHQnkb)






*・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・*




「にしてもびっくりしたー!まさか優が 王子様だったなんてさ!」


あれから優の手を取ったが故に始まってしまった舞踏会をそっと抜け出し、優に案内されるがままに来たのは、宮殿を出たところにあった小さな庭だった。

(いきなりダンスとか信じられなかったし、全然出来なかったけど……)

しかし、夏樹の動揺は優には全てお見通しだったようで、優はダンスに関して右も左もわからない夏樹の手を引いて難なくエスコートしてくれた。

……そう、今の優はあの頃の自分と一緒に無邪気に笑っていた優とはまるで別人の、まさしく『王子』の優だった。

「まぁ、俺が王子になったってことはあいつら以外には言ってないしなー」
「えぇ⁉あいつらってどうせ春輝ともちたでしょ!なんで私には言ってくれなかったの⁉」


なんでなんで⁉、と散々喚いている夏樹の抗議はあっさりとスルーされたが、優は自分が夏樹と離れてからのことを話してくれた。

まだお互いが幼かったあの日、突然優がいなくなったのは、母親が数年前に行方不明となった幻の王女だと判明したから。そして母親が元王女であり、現王妃となった以上、その息子である優も宮殿に行かざるを得なかった。
今は王子として、そして次期国王としてこの宮殿で暮らしている。

優の現状を一通り聞いた夏樹は、始めは全く現実味がわかず、ただただぽかんとしているだけだった。固まった頭の中にぼんやりと浮かぶのは、先ほどの舞踏会での、あの『王子』。

(でも確かに……さっきの優、完璧に王子様だったもん!これはもう、信じるしかないんだよね………)


今の優の服装といい、先ほどまでホールにいた時の優の立ち振る舞いといい、何もかもが童話の中の、夢の王子様なのだ。昔に童話で見たことのあるだけ、もしくは新聞に載っているような遠く離れた存在が、今自分の横にいると思うと、夏樹はなんとも不思議な気持ちになる。


「……夏樹は?」
「え?」
「夏樹は今も変わらずに、おばさんたちと暮らしてるんだろ?」


優のその言葉が、ブスリと夏樹の胸を容赦なく貫いていった。王子である優は、別れてからの夏樹を、今の夏樹を何も知らない。そのことを、今更のように思い出した。


「私、は………」


胸の痛みを無視しながら、言葉を紡ごうとしたその瞬間、夏樹の言葉をかき消すように大きな音がした。


ゴーン、ゴーン、ゴーン………


音の大きさに驚きながらも、何の音か分からなくてぼけーっとしていた夏樹を見かねたのか、優が口を開く。

「鐘の音だよ。ほら、ここに来る前に時計の塔があっただろ?」
「へー……って、ちょっと待って、それって日付変わるってことだよね⁉12時だよね⁉」
「何だよ、いきなり慌てて……そうだけど?」

優の何気ない一言に普通に返しかけて、夏樹は慌ててもう一度優に問いかけた。
この鐘の音が日の変わり目を告げる音ならば、夏樹は今すぐにこの幸せな一時から離れねばならない。


夏樹のタイムリミットが、もうすぐそこまで近づいている。


「ごっ、ごめん優!私もう帰らないと!!」
「はぁ!?ちょっ、待てよ夏樹!!そんなこと聞いてないぞ!?」
「言ってないもん!!」


事の起こりは、まだ優と出会う前。




☆*:.。..。.:*☆



Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.242 )
日時: 2017/07/19 16:06
名前: cinnamon (ID: 5kx3QSMp)

☆*:.。..。.:*☆



「「「………」」」



「………で、どうするの?」
「ん?もちたが考えてるだろ」
「えぇ!?僕何も考えてないけど!?」



一致団結したのはいいが、これからのプランは誰も何一つとして持っていなかった。完全に蒼太任せの夏樹と春輝に対し、当の本人は「何で僕なの⁉」と慌てている。


「もー、嘘だよもちたー!冗談冗談!」
「だ、だよね!よかったー……じゃあどうする?」


と蒼太が言えば、再び沈黙が落ちた。夏樹も、蒼太任せにするというのは冗談だが何も案が無いのは本当なので何も言えない。


「と、とりあえず夏樹のその服をどうにかしないとだよね!そんな服だと王子に会いにいけな……っていうより舞踏会行けないし!」


蒼太の一声により、みんなで協力しながらまずは森を抜けることになった。森を抜ければ街にたどり着くのも容易いと考え、夏樹も春輝も勘を頼りにとにかく街を探し続けた。

(私も周りとか見ずにひたすら走ってきちゃったからなぁ……いざここがどこかってなると分かんないんだよね……)


それから数十分、三人それぞれ森の中を探索しているうちに、夏樹は今一番やってはいけないことをしてしまった。


「あれ?春輝ともちたは!?」


はぐれたのである。
夏樹は真っ先にこの場から動かない方がいいと思ったが、ここには電話なんてないし、はぐれてしまった以上大声で叫ぶ以外に動かずに二人を見つけられる方法はない。


(でも、森だってかなり広いし大声で叫んで見つかるかどうか………いや、でもやらないと!)


幸か不幸か、夏樹の近くにいつ出来たのかも分からないような古い噴水がある。これを目印として叫べば、もしかしたらあの二人も気づいてくれるかもしれない。
夏樹は疲労感を押し殺し、すうっと肺一杯に空気を吸い込んだ。


「もちたーーー!!」
『うわぁっ!?』
「春輝ーーー!!」
『ちょ、ちょっと待って!そんなに大きな声を出したら喉痛めちゃうよ?』
「おーーーい……って、え?さっきから誰かが喋ってるような気がする………えぇぇえ!?」


どこかから聞こえてくる声の出所を探していると、なんと夏樹の真正面にある木の背後から、可愛らしい少女が現れた。淡い紫色のフードの付いた服を身にまとった少女の周りも、暗闇から浮かび上がるように淡く光っているように感じた。
その姿は、何処か人間離れした雰囲気を醸し出していて、夏樹はほうっと感嘆の息を吐いた。


『……あ、の……』
「どうかした?」


できる限り優しく返事したのが良かったのか、目先の少女は少し安心したように口を開けてくれた。


『あの、その……あなたの事、実はずっと見ていたの。今日の事も、全部……』
「………そう、なんだ」


どこでどうやって見ていたのかは全く分からないが、ずっと見ていたという少女の言葉は嘘ではないだろう。少女の申し訳無さそうな、今にも涙が溢れそうなほど悲しそうな顔がそれを証明していた。だから夏樹も、否定的な相槌をする事もなく、やや戸惑いながらになったが、事態を受け止める事が出来た。


「それで……」
『あ、はい!あの………夏樹、ちゃん……は舞踏会に行きたい、んだよね?』
「そう!ってあれ、私名前言ったっけ?」
『あ………わ、私、魔法使い、なんだ………』



魔法使い。
確かに何処か人間離れしているところはあるけれど、“魔法使い”と言われても当然その存在は童話の中でしかないものだと思っていたから、急すぎて信じがたい。 ただ、信じてと言わんばかりの今にも泣きそうな彼女の視線から、またまた戸惑いながらも事態を受け止める他なかった。


「……あんまり現実味わかないけど、とりあえず魔法使いさん、ってことで…… …?」


恐る恐るそう言うと、彼女の顔に安堵の表情が戻って、これで正しいのだと夏樹も安心する。すると魔法使いなのを信じてもらえたことが大きかったのか、彼女の方から口を開いてくれた。


『それでね、ずっと頑張ってきたあなたに……夏樹ちゃん、に私も少しでいいから力になりたいと思ったの』
「………ずっと?って、もしかして………」


ずっと、の範囲がどこまでなのか、なんとなく予想はついていたけれど、夏樹はあえてそう聞くことを選んだ。


(もし、もしあなたがずっと私を見ていたら………)


目の前の少女は微笑んだ。
夏樹の早まる鼓動すら分かっているような、何かを安心させる、そんな穏やかな微笑みで。



『あなたはお母さんの言葉を、きちんと守ってくれた。

“勇気と優しさだけは忘れないで”。

あなたは勇気を持って新しい環境を受け止めて、舞踏会に行こうと決めた。
あなたは優しさを持って人と接し、自分の受けた傷を他の誰かにつけることもなく、耐える事を選んだ。

勇気と優しさを持ったあなたは………ううん、夏樹ちゃんは誰よりも辛かったけど、その分誰よりも強く、美しいんだよ。


お疲れさま』




その言葉で、涙はついに夏樹の瞳から零れ落ちた。



ずっと、ずっと、誰かに言ってもらいたかった。




“お疲れさま”、その言葉でどんな疲労でも達成感に変わり、自分のしてきたことが無駄ではないとしっかり分かるかを、夏樹は知っているから。

夏樹は、幼い頃に両親から、そして優からいつもかけてもらっていた、“お疲れさま”の一言が、大好きだった。

幼稚なことかもしれないが、夏樹は誰かに褒められることを、心配されることを、労ってくれることを、心の底から望んでいたのだ。


静かに涙を流し続ける夏樹を、彼女は止めずに見守っていてくれていた。
そして夏樹がどのくらい泣いたか分からなくなってきた頃に、彼女は両腕を広げた。


『さあ、夏樹ちゃん!今からでも間に合うよ、舞踏会に行こう!私、頑張る、から!』


始めとはうって変わった力強い彼女の言葉に、夏樹はあの頃の無邪気な笑顔で頷いた。










☆*:.。. .。.:*☆




こうして魔法使いに身も心も、良い意味で変えられた夏樹は、無事春輝と蒼太にも出会え、なんとか舞踏会へ行くことが出来た。

ただし、幸せの時間は今日一日。
言ってみれば日の変わりを告げる鐘の音が鳴り終わった時、夏樹のドレスは消え、全ての魔法は現実へ還る。


今日だけでも十分だと思っていたけれど、実際に幸せな時間を過ごすと、その速さは一瞬にすぎなかった。


(優にも会えて………あの時って、本当に夢だったのかな………)


何度もあの一日は夢だったのではないかと不安になる夏樹に、あの魔法はちゃんと夢ではないことを教えてくれる。

そう、なぜか魔法が全て解けた後も、夏樹があの時履いていた靴だけは消えなかったのだ。
ドレスの色みに合うから、そして夏樹の脚が綺麗だから、とたくさんの褒め言葉とともに贈られた、シンプルなガラスの靴。

慌ててお城から帰る時に何処かで片方だけ脱げてしまったのをそのままにして来たことを、夏樹は今になって全力で後悔していた。

(残るなら、きちんと両方とも残しておきたかったのに………)


はぁ、とため息をついた瞬間。


「あぁっ!ちょ、ちょっと待ってー!!」


昨日の出来事にぼんやりとしていたせいで、手に持っていた洗濯物が悪戯な風で飛ばされていく。少し走ってようやく洗濯物を捕まえた時には、夏樹は別の意味でまたため息をついていた。



☆*:.。. .。.:*☆



夏樹は突拍子もないことをよくしていた。
それは今も昔も全く変わっていなかった。
ただ昔と違うのは、昔なら笑って面倒を見ていられたのに今は会うことすら奇跡だということ。

(本当、なんであんな時に突拍子もないのが発動するんだよ………)

もう会えない人とばかり思っていた、それでも一日たりとも忘れたことはなかった、誰よりも好きな人。
そんな夏樹とまるで何かのおとぎ話のような、幾つもの偶然の重なりで生まれた奇跡によって、会って、踊れて、話すことが出来た。それなのに、彼女は何に急かされていたのか、幻のごとく忽然と姿を消して。


「………夏樹、お前は今、どこにいる?」


呟く声も虚しく、優は自分の声に余計に寂しさを感じて手元に視線を落とす。
そこにあるのは今朝執事の爺から渡された、夏樹が履いていたガラスの靴。
優は夏樹を追う際に多くの女性に囲まれてしまい、最後まで追うことができなかったが、どうやら夏樹は門の近くの階段で片方の靴だけ脱げてしまっていたらしい。それを放置してまでして急いで行ったのは何故なのか、延々と考えたが過去に夏樹の突拍子もない行動の理由を当てられた事は少なく、優は今回も諦めるしかないか、と思ったが。


(……いや、ここで諦めたら終わりだ)



あの夜の偶然は重なり合うべきものとして重なり、起きるべくして起きた奇跡なのだとしたら。
もう一度、起こせないだろうか。
夏樹と出会う“奇跡”を。


優は、その為の一歩を踏み出した。
























※次で完結予定

Re: HoneyWorks〜告白実行委員会〜【復活宣言!】 ( No.243 )
日時: 2017/08/23 01:31
名前: ひな (ID: ivWOcvW3)

シナモン!
久しぶり〜( *´艸`)
………って、覚えてるかな?w(覚えててくれてたら嬉しいな)
私も受験生になって、いろいろ忙しくて全然来れなかったけど、
シナモンの小説がもう一度読みたくてきてみたら…更新されててとても嬉しかったよヽ(*^ω^*)ノ
お互いに受験勉強頑張ろうね!

シナモンの小説は完結してもまた何度でも読み返しに来るからね(´・∀・`)
夏樹と優のシンデレラ編、最後の一踏ん張り頑張れ!

やっぱり美桜ちゃん可愛いなぁ(*´ω`*)魔法使いとかすごく合ってる!


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