二次創作小説(紙ほか)
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- ポケモン二次創作 裏の陰謀
- 日時: 2022/09/29 16:23
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 5VUvCs/q)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12800
ここはは地球。
この星の不思議な不思議な生き物、ポケットモンスター
ちぢめて「ポケモン」
彼らは、海に大地に空に森に、至るところに生息している。
この世界には『表』『裏』があり、どちらを潰しても作っても、必ず表裏は現れてしまう。5年前それを無くそうとした哀れな小さき人は、結局世界に絶望し、失望し、仲間だけを助けようとしたが、仲間も、自分自身も失い、体を溶かした。これは、そんな世界で旅を始めた4人の少年少女達が『裏』に巻き込まれ、時には巻き込み牙を向け向かれる。そんな誰かを救おうとする哀れな人の物語。
※注意
〇これはポケモン二次創作です。原作とはなんの関係もございません。
〇微グロ注意です。
〇二次創作キャラもいます。殆どがオリキャラ、リクキャラです。
〇こんなのポケモンじゃねぇ!という方は閉じていただいて…
〇総合リクにて連載されているsidestory『最期の足掻き』も見てもらえれば更に楽しめると思います。
【目次】
〇第1部 ~イッシュ編~
始まりの始まり。いや、もう本当は始まっていた。その始まりを活発化させるレイナ、ヒュウ、トモバ、マオが四苦八苦しながら自分に向き合い、自分なりの答えを探す旅。
「登場人物紹介」
ホドモエシティ※ネタバレ注意
(トモバ~私~)時点の紹介 >>86
《プロローグ》 >>1-8
【第一章】レイナ
〜旅に出る〜 >>10-21
【第二章】ヒュウ
〜ジム戦と成し遂げないといけないこと〜 >>24-28
【第三章】トモバ
〜逃げる責任感〜 >>29-34
【第四章】マオ
~目的~ >>35-42
【第五章】レイナ
~信じる~ >>43-51
《第5.5章》レイナ
~進歩~ >>52
【第六章】ヒュウ
〜強さ〜 >>57-73
《6.6章》ヒュウ
〜俺のち俺〜 >>74
【第七章】トモバ
〜私〜 >>75-90
【第八章】マオ
〜PWT〜 >>92-102
【第九章】レイナ
〜過去と仲間と霊 麗菜〜 >>104-111
【第十章】ヒュウ
~海だ!春だ!夏じゃねぇのかよッ!〜 >>112-118
【第十一章】トモバ マオ
〜1歩先へ踏み出すために〜 >>120-124
【第十二章】〜終わりの始まり〜
>>125-
ーーーーーーーーーー
【短編集】
イッシュ編
マオとレイナのバレンタインデー >>96
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.72 )
- 日時: 2021/06/24 03:08
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 69bzu.rx)
「イーブイ。アイアンテール!」
「ブッ!イッ!」
その瞬間。
イーブイがアイアンテールでけたぐりを弾き返した。
「返して。そのチョロネコ。」
レイナの声がいつもより張り積めていて、怒ってることが容易にわかる。
レイナはイーブイを出して戦闘態勢だ。
俺も慌ててポカブを繰り出す。
「そのチョロネコはおじいちゃんの形見なんだ!返して…」
「すまないね、これはポケモンの幸せに必要なことなんだ。」
幸せに必要なこと…?
訳がわからない。でも、もしかしたら悪い人じゃないのかも…
俺は少しだけその人達を信用しようとした。しかそ、
「なぁ。レイナ…」
「ダメ。信じちゃ。」
レイナがいつもよりも鋭い声で言いはなったため俺はぐうの音もでなかった。
「物わかりが良くないガキだな。もうやっちまおうぜ。いけっ!ダストダス!」
もう片方の男がダストダスを繰り出す。
俺は数秒前の自分を恨みながらヘドロバクダンを見つめる。
「イーブイ!アイアンテール!」
するとイーブイがアイアンテールでヘドロバクダンを消し去る。
「今です!ミルホッグけたぐり!」
「しまっ…!」
その僅かに出来たイーブイの隙。それを男達は見逃すはずが無かった。
イーブイはモロにけたぐりを食らってしまいノックバックする。
「追撃でドレインパンチだ!ダストダス!」
叫び声を上げていたイーブイに慈悲等全く見せずに効果抜群のドレインパンチをイーブイに食らわせる。
「イーブイ!」
レベル差があるミルホッグとダストダス。そして効果抜群の技。それに耐えられる訳もなくイーブイは戦闘不能になった。
レイナは表情筋1ミリも動かさずにイーブイを抱き抱える。しかし、レイナの瞳は真っ黒で何も見えない。
なぜだ。どうして。そんなわけが無い。
レイナが負けた。あのレイナが負けたのだ。あの強いレイナが。俺の頭は疑問が浮かんでは消えていく。
「れ、れぃねーちゃん…」
妹の…メイの声で目が覚める。
レイナが負けたのは…俺のせいだ。
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.73 )
- 日時: 2021/07/10 00:49
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: gK3tU2qa)
ーヒュウー
「へぇ…そんなことが…ね…で、その後どうなったわけ?」
聞き方が憎たらしい。だが、それに悪態をつく気力もなく俺は素直にこたえる。
「その後?一番考えたかねぇよ…
レイナのやつ…トラックに引きずられながらチョロネコを取り戻そうとしたんだよ。生身の人間。しかも幼女が、トラックだぜ?もう…血だらけで…俺は何も言えなかったさ。」
椿は何かを口にしようとするが引っ込める。椿なりに言葉を選んでるつもりなのだろうか。
「それで…君はそんなに強く…強さを求めることになったわけ?」
「ま…早い話。そうだな。俺はレイナに負けるわけにはいかないから。さぁ、こんな話も終わりだ。俺はやらなきゃ行けないことがある。」
「レイナちゃんに負けるよ」
立ち去り際、椿にそう言われた。意味がわからない。今もレイナと戦うと俺の圧勝だ。ステータスの差がありすぎる。
「戯れ言はよそでやってくれ」
「レイナちゃんのあのボール、イーブイの毛並み。明らかにポケモンを大切にしている。ポケモンバトルってのは、ポケモンとの絆が固い人が最終的に勝つからね。」
椿は顔を赤らめ、手を頬に当て目を細めうっとりしている。もしかして…レイナと初めて会った時に顔を赤らめていたのはレイナに惚れたからじゃなくてレイナのポケモン愛にうっとりしていたから…?
今更椿への誤解が解けた俺だったが、やはり最終的に麗菜達(ポケモンと絆が固いトレーナー)が俺達(ステータスが高いトレーナー)に勝てる訳はない。
「根拠は?」
俺は意地悪く聞いた。
「ないさ。経験だよ。」
椿は眉を八の字にし、肩をすくめた。
「下らない。」
俺はそう言って立ち去ろうとしてた。
「ベストウィッシュ!お互い良い旅を!」
後ろからそう言われて俺は左手を上げて手のひらを大きく広げてやった。
6章 〜完〜
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.74 )
- 日時: 2021/08/04 22:51
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: lMEh9zaw)
第6.6章 ヒュウ 〜俺のち俺〜
「はぁっ…」
どんどん寒くなるこの季節。肌寒い空気を吸い、思いっきり吐く。冷たい空気に鼻がツンとするのを味わいながら俺ことヒユウはホドモエシティのポケモンセンターを目指して跳ね橋前の公園から歩いていた。
ついさっきまで椿と話していたため、あまり良い気分ではない。
「おやおやおや、これはこれは」
すれ違いかけた男が立ち止まり俺を見る。
何がおやおやで、何がこれはこれはなんだか分からず俺はその男を見つめた。
黄色で頭の周りに輪を描いている髪型の白い白衣に身を包んだ男で、どこかミステリアスな雰囲気を纏っている。
「もし良ければ、私と勝負しませんか?」
唐突にそう言われた。勝負は大歓迎だが、この男のミステリアスな雰囲気も相まって凄く怪しく見える。俺は何も返答が出来ずに怪訝そうな顔で男を見つめる。
「おっと、自己紹介がまだでしたね。私はアクロマというものです。実はポケモンの能力を最大限引き出す方法を研究しておりまして。先程のバトル見ておりました。貴方の強さに興味を持ちまして、ぜひ良ければバトルをやりたいのです。」
ぐいぐいくるな…
でもそれだけ研究熱心ということだろう。
怪しさは満点だがバトルしても減るものじゃないしここは受けてもいいか。
「あぁ。受けて立つ。」
まぁ、勝負は見えてるんだけどな。
_______________
予想通り。俺はこのアクロマという男に勝った。相手は鋼ポケモンを主に出してきたため、エンブオーとの相性が良かったことも重なり結構あっさり終わってしまった。
「ふむ…あの少女とはまた違う強さ…」
アクロマが何かをほボソッと言う。かなり小さかったため俺には聞こえなかった。
「君…そうだ。名前を聞いていませんでしたね」
「ヒユウだ」
「ヒユウ…分かりました。覚えておきます。
ところでヒユウ。あなたのエンブオーはかなり強いですね。四天王程ですよ。」
急にエンブオーを褒められる。
そりゃ血のにじむ様な努力をしたのだからと心の中では威張っておく。
「ありがとうございます。でも…まだまだですよ。もっと強くならないと」
心の中で威張ったが、やはりまだまだ力不足なのも事実である。この力量じゃ守れない…
「これ以上の強さを欲するのですか?一体なぜ…」
「守るためです」
「何を?」
「俺の大切な人達を」
「何から?」
「大切な人を傷つける奴らから」
アクロマの神速のように早い質問を俺は難なく即答して見せる。
「守るため…それはとても素晴らしい。しかし…本当にそれだけですか?」
アクロマは元々細い目をナイフのように鋭くして俺を射抜く。
他に理由なんてない。当たり前だ。当たり前の…筈なのに。何故か言葉が出ない。喉の部分につっかえて吐きたい言葉が吐き出せない。
「無自覚ですか。まぁ、それでも良いでしょう。今回は御協力感謝致します。“また、お願いしますね”」
アクロマは俺に賞金としては少し高い額のお金を俺に渡し去っていった。バイト代のつもりだろうか。
そして俺はそのお金を握りしめながらアクロマを見つめていた。
守る以外の理由?
そんなものは断じてあるわけが無い。俺はこの3年間…いや、それ以上の月日を守るために費やしてきた。
レイナを… 母さんを… メイを… マオを… トモバを… 皆を手のひらから零さないように。
もう、心に穴をぶち抜かれないように…
その瞬間“また”あの光景が脳内に流れてくる。
怖いほど美しい真っ赤な液体。そばに居る母さんの体温と煩い心臓音。俺の胸の中に居ながら息をしてない兄ちゃんり倒れかけた本棚の隙間から見える…男と幼女。
その幼女は…いや、化け物は、男を…お父さんを…方に担いで…
「はぁはぁはぁ…」
気づくと俺の心臓がフライゴンの爆音波の音量ぐらいまでうるさくなっていた。そして息もどんどん荒くなって、いつの間にか目の前に霧がかかって…
俺はそこで意識を失った。
6.6章 〜完〜
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.75 )
- 日時: 2021/11/26 14:22
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: nEqByxTs)
第七章 トモバ ~私~
今日は晴天で旅日和!
私こと統治 共羽はルンルンとスキップしてとある所へ向かった。
「ここかぁ…!」
私はホドモエシティの外れ、PWTへ来ていた。
遡ること数日前…
ーーーーーーーーーーーーー
「ホドモエジムクリアー!お疲れ!バニリッチ!」
「バニバニィー」
その日私はホドモエジムをクリアし、気持ちよく外を歩いていた。
「じゃあ準備が出来次第次の町へ行こうかな…」
そう呟いた所で、私の腕にはめてあるライブキャスターが振動した。
お父様からだ。
私は迷うことなくライブキャスターでお父様と繋いだ。
『やぁトモバ。元気かい?』
そこにはとても元気とは思えないゲッソリとしていたお父様が映っていた。
「私は大丈夫だけど…お父様は大丈夫なんですか?」
私は怪訝そうにお父様に尋ねる。
『あぁ…大丈夫だ。それよりもトモバ。明日来て欲しい所があるんだ。』
「なんですか?」
『ホドモエシティの南にあるPWTという所だ。』
PWT?なんの略なのだろう。それに、ホドモエシティの南は冷凍コンテナと昔聞いたことがあるが、そんな所になんの用事があるのだろう。
私はとても困った顔をする。
「冷凍コンテナになんの用が…?」
『ふふっ、実は統治グループの優秀な人達がね、そこにPWTっていうバトル施設を作ったのさ!』
冷凍コンテナにバトル施設…?!
家のグループはとても優秀な人達の集まりで、様々な所で知名度を上げてるけど、たまにこういう変なこともするのよね…。
「そこにいって何をすればいいんですか?」
『うん。それが最近出来上がってね。バトル場の演出の試運転として、トレーナー達を集って小さなバトル大会を開こうと思ってね。』
バトル大会…
レイナが食いつきそうなもようしものね。
でも、バトルの経験も貯めたいし、行かない選択肢はないわ。
「はい。分かりました。行かせてくださいお父様。」
『あぁ!トモバならそう言ってくれると思ったよ! あ、試運転の日は色んな人を招いてパーティーをする日もあるから良かったら出てくれないかい?』
色んな人を招く…。統治グループと仲がいいお偉いさんを招くのね。そこに次期社長の私も出ない訳には行かない…。
と、試運転を行った人へのおもてなしとして、その人たちも出るんだろーなぁ。
「はい。喜んで出させて頂きます。ところでお父様。」
『なんだい?』
「試運転をする人達はどなたかお伺いしても宜しいでしょうか?」
まぁ、大体目星は付いてるけどね。
『あぁ。それは勿論。マオ、レイナ、ヒュウだよ。他にもいるけど、トモバの顔見知りはこの3人だね。』
やっぱり。昔からお父様はこういうイベントには私含める幼馴染組4人をよく誘うのよね。他は私の知らないトレーナーってことか…。でもお父様の事だから、私に関係しなくても、他3人に関係するトレーナーを連れてきそうだけど。
「分かりました。では明日PWTへ向かいます。」
『あぁ助かるよ。じゃあね、愛しの我が娘。』
そこでブツッと通信が切れる。
バトルは楽しみだしレイナ達に会えるのは嬉しいけど…
パーティーかぁ
「はぁ…憂鬱…」
ーーーーーーーーーーーー
「さて…と、メンツはこれで揃ったかな」
そう言うと、俺ことトモバの父である統治 陽炎は資料だらけの机に向かって背伸びをする。
「ようやく集まったの?」
そこには赤髪を方まで伸ばし、鋭い目に細いメガネをのせているクールビューティが似合う小柄な女性が凛として立っている。
彼女の名前は統治 クーフ。俺の妻だ。
「あぁ。意外と骨が折れたよ。それに、明日までにこの資料も片付けて置かないとね。」
「まぁ、頑張って。私も仕事があるから。」
そう言ってクーフは去ろうとする。
「守備は?」
俺は去り際の彼女にそう問う。クーフは半分こちらに顔を向ける。
「滞りなく。」
「PWTを作ってまで、"アイツら"はなにをするつもりなんだろうね」
俺は無意識に口角を上げ、声のトーンも弾む。クーフはそれに呆れたのかため息をだす。
「もしかして、PWTはアイツらの企画だと分かった上で承諾したの?」
「まぁね。まあ、バトルになれば幼馴染組4人の経験値にもなるしね。今回は強いトレーナーも、守備もガチガチだし。危ない目には合わないだろうし。」
「貴方ってばいつもそうよね。悪いことが起こればそれを逆手に取ってあの幼馴染の子達の経験値にしようとする… 前のトモバ誘拐だって… 貴方相当の悪魔ね。」
クーフが俺を睨みつけてくるが俺は全く怯まず、困った顔をして笑う。
こうでもしないと、クーフがもっと機嫌を損ねてしまうからね。
「カエンジシの子落としということわざがあるだろう。愛が深いと言ってくれ。」
カエンジシの子落とし。自分の子に苦難の道を歩ませ、その器量を試すことのたとえである。
まあ、愛が深い故の行動ってことだね。
「はぁ…全く。まあ、別に私はそれに大反対というわけじゃないけど、ほどほどにね。」
「あぁ。で、君はレイナが狙いかな?」
クーフはサッと顔が青くなる。ずっと隠しているつもりだったのだろう。でも俺にはお見通しだ。
「そうよ。貴方は関わったりしないでよね。」
「わーってるわーってるって。でも、俺にはレイナが"裏の人間"とは思えないけどなー?」
俺のそんな言葉を無視し、クーフは仕事へ行ってしまった。
まあ、俺もそんな問題視していない訳じゃない。レイナは…危険かもしれないし、味方かもしれない。俺にすらまだ分からない。
俺は椅子を180度回し、ガラス張りの壁を向く。すると視界に太陽の光が突き刺さってくる。
「眩しいなぁ」
俺は磨かれたモンスターボールを見た。久しぶりに暴れることになりそうだ。
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.76 )
- 日時: 2021/10/18 00:32
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 62e0Birk)
「うわぁ…凄い…」
私はそんな回想が終わると、PWTの前に立っていた。
PWTは私が想像していた冷凍コンテナとかけ離れていた。道は明るい色で舗装されており、所々に屋台がある。
思ってた10倍明るい…
試運転の日だからなのか、それとも元々なのか。お祭り並に騒いでいる。
そんな光景にワクワクしていたら、会場に着いていた。そこには…
「倒れたって…お前大丈夫だったのかよ?!」
聞きなれた大声が聞こえる。
声の主は私の兄、マオだ。
「あぁ。レイナが俺を見つけてくれて、ポケセンに運んでくれた。」
ヒュウがふぅと息を着く。
「お前…男のプライド…」
「言うな…一瞬にして崩れ落ちたよ」
話が一区切り着いたところで、私はその2人へ向かって手を振って呼ぶ。
「マオ!ヒュウ!」
私の声に気づいた2人は私へ振り返る。
「トモバか、久しぶりだな。」
マオが小さく手を振り返してくれる。ヒュウは腕を組んで私へ微笑む。
「聞いたんだけどっ!ヒュウ!倒れたの?!」
私は真剣な顔でヒュウに聞く。ヒュウは面倒くさそうな、バツが悪そうな顔をする。
「あぁ。まあな。でも今は大丈夫だ。」
「そっか、良かった」
私はほっとする。体が強いヒュウが倒れるなんてよっぽどの事がないとありえない。だから余計に心配したが、本人が大丈夫というのなら大丈夫だろう。
「で、ヒュウさんヒュウさん。レイナとはどうかの?」
「えっ、は?どうって…?!」
急にヒュウの顔がマトマの実のように真っ赤になる。
ヒュウは昔からレイナに片思いをしてるのだ。それに気づいている私はその恋路を応援している。
幼馴染と幼馴染がくっつくなんてこれ程幸せなものは無い。あと、ヒュウをからかうのも楽しいし。
私はニヤニヤとしながらヒュウを見つめる。ヒュウは顔を赤くしながら必死で落ち着こうとしている。
「いや、 別に普通だが」
ヒュウは横を向いて顔を見えないようにしている。しかし、耳が真っ赤のため、照れているのはバレバレである。
その反応が面白く、私は余計ニヤニヤしてしまう。
そして、蚊帳の外のマオは特にこれと言った表情はせず、無表情のままスマホをいじっている。
「だからお前の技構成は弱いんだって!」
「それはアンタから見たらでしょ!実際使うと役に立つんだから! 」
と、なんか痴話喧嘩が聞こえる。そのうちの片方は聞きなれた声が聞こえる。
黒髪ポニーテール、濁った目をしているレイナと、もう1人知らない男子が来る。
少し長い金髪にに宝石のように綺麗な黄色い瞳。白黒のTシャツに紺色のジャケットを来ている男子だ。顔のパーツが綺麗で、イケメンだ。
美少女のレイナと並んで見ると美男美女のツーショトとなり、もう眼福この上ない。
「レイナと、誰だ?」
「レイナの知り合いかな?」
私とマオはそんな事を話して、2人を見る。
「だからここは金属音だろ!」
「いいえ!ここは剣舞よ!」
レイナと男子の話を聞くに、ポケモンの技構成で喧嘩をしてるのかな…?
それにしても、レイナがあれだけ心開いてるのは珍しい。
もしかして、もしかしなくても…
「レイナの…彼氏?」
その瞬間。場が凍り付いた。
ヒュウはもちろん。マオ、私もレイナの相手に冷たい目線を向ける。
いつもそばに居た幼馴染が知らない奴に取られる嫌な感覚が体を撫でる。
私は母譲りの鋭い目で相手を睨みつける。
ヒュウも目を鋭くして相手を見つめる。
マオに関しては悪役顔をさらに引き立たせ、周りにゴゴゴゴと、漫画みたいなオーラが出てきそうな勢の雰囲気をだしている。
何気に1番ご立腹なのはマオのようだ。
「え、」
そんな私達を見てレイナの相手は顔を真っ青にする。ヒュウは今にも飛び出しそうなのを私が必死で服を掴んで抑えている。
コイツ…コイツ…
「ほら、やっぱり剣舞の方がいいんじゃない。皆怖い顔してアンタ見てるし。」
レイナが呆れたように言う。
いつもは察しのよく、何故か人の繊細な部分まで察せる隠れ人たらし並の洞察力なのに、今回に限ってはポケモンが絡んでるのでかなり違う方向で相手を攻める。
「いや、ちげーだろ絶対。絶対違う理由だろ俺睨みつけられてるの。」
相手は顔を真っ青にしているが、立ち去ろうとしない。
その度胸は認めてあげてもいいかもね。
「…あ、あぁ。そういうこと。
コイツは私の彼氏でも何でもないわ。誤解よ誤解。」
ようやくレイナが落ち着いたのか誤解と説得する。
なんだ…誤解かー
肩に乗っかったカリビゴンが落ちたように軽くなる。
ヒュウとマオも同じなのかお互いに寄りかかって安心する。
「まあ、自己紹介をする。俺はセブン。キサラギ セブンだ。コイツとは交際関係でもなんでもない。どっちかというと犬猿の仲だ。」
セブンが丁寧に自己紹介をしてくれる。確かにここに来る時もめてたわね。てかよく見たら前にライモンシティに居たパルシェンの奴じゃないの。
「俺はヒユウ。レイナの幼馴染だ。よろしく。」
「俺はマオ。ヒュウに同じく、こいつらの幼馴染だ。よろしく」
「私トモバ!レイナとヒュウの幼馴染で!マオの妹!セブンって前ライモンシティで会ったよね。ここで出会ったのも何かの縁だしよろしくっ!」
私はレイナの彼氏でないことが分かるとくるりと手のひらを裏返して明るく接する。
「まあ、よろしくな」
セブンは鋭い目で私達をみつめ、冷たい態度を変えなかった。「お前たちとよろしくやるつもりはない 」と、言われているようだった。
「セブン。あんたもう少し愛想良く出来ないわけ?」
「お前に言われる筋合いはない。」
すると珍しくレイナがムッとした顔をする。
いや、他の人から見れば無表情のまま動いてないだけだが、長年一緒にいる幼馴染組の1人である私はたしかにレイナがムッとした顔が見えた。
てゆーか、セブンがレイナといるってことは…
「あれ、セブンも試運転出る感じ?」
「あぁ。そうだ。これ以上馴れ合うつもりは無い。俺は行く。」
そう言ってセブンは最後まで素っ気ない態度で会場へ向かった。
レイナは止めもせずに軽くセブンを睨みつけて見送った。
何となく2人の関係わかった気がする…
レイナとセブンは傍からみたらとても仲が悪く見える。けれど、あのレイナがあんな強気で出てる。お互い嫌いあっては居るものの認めてはいる感じかな。いや、正しくはお互い仲良くなりたいけど意地が邪魔して素直になれないって感じか…
学校にいた時は一人ぼっちだったのに、レイナ成長したなぁと、私は謎の親目線で思う。
「あっ、マオー!とレイナっ!トモバちゃーん!」
「あ、ヒユウにレイナちゃんじゃん。あとマオもいる。」
この声は…
ヒウンシティで会ったマツリちゃん!たしかレイナと人見知りだったっぽいけどどんな関係なんだろ?後で聞いてみよっと。
そしてもう1人は赤髪にゴーグルを下げて白衣を来ている…
誰だ?
「ツバキ」
ヒュウがその少年に向かう。少しヒュウから嫌悪感が溢れ出ているような気がする…
「やあやあ。相変わらずのハリケーン頭で安心したよヒユウ」
「あ"?」
「そんなカッカしないでよ〜」
と、ツバキと呼ばれた男がケラケラと笑う。ヒュウは怒ったら負けと分かっているのか煙が出そうな勢いで我慢をしている。
こんなヒュウを見るのも珍しい。
「あ、ツバキ」
「相変わらずだなツバキとヒュウは」
レイナとマオがくすくすと笑いながらその様子を眺める。
え?ツバキ知らないのって…
「「私だけ?」」
とマツリと声が被る。もしかしてマツリも?と思い、お互いガシッと手を掴み握手をする。
なんかマツリとは気が合いそうだなぁ。
「あっ、私トモバ!よろしく!」
「あっ、私マツリ!よろしく!」
自己紹介も全く同じだ。マツリとは仲良く慣れそうな気がする…!
「じゃあ、そろそろ中に入るか」
マオが疲れたように言う。皆も同意したのか次々と中へ入っていく。最後尾には私とレイナ、マツリである。
皆が中へ入って、私達が中へ入ろうとすると。
「キャーー!」
女性の悲鳴が聞こえたー
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