二次創作小説(紙ほか)

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ポケモン二次創作 裏の陰謀
日時: 2022/09/29 16:23
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 5VUvCs/q)
プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12800

ここはは地球。
この星の不思議な不思議な生き物、ポケットモンスター
ちぢめて「ポケモン」
彼らは、海に大地に空に森に、至るところに生息している。

この世界には『表』『裏』があり、どちらを潰しても作っても、必ず表裏は現れてしまう。5年前それを無くそうとした哀れな小さき人は、結局世界に絶望し、失望し、仲間だけを助けようとしたが、仲間も、自分自身も失い、体を溶かした。これは、そんな世界で旅を始めた4人の少年少女達が『裏』に巻き込まれ、時には巻き込み牙を向け向かれる。そんな誰かを救おうとする哀れな人の物語。

※注意
〇これはポケモン二次創作です。原作とはなんの関係もございません。
〇微グロ注意です。
〇二次創作キャラもいます。殆どがオリキャラ、リクキャラです。
〇こんなのポケモンじゃねぇ!という方は閉じていただいて…
〇総合リクにて連載されているsidestory『最期の足掻き』も見てもらえれば更に楽しめると思います。

【目次】
〇第1部 ~イッシュ編~
始まりの始まり。いや、もう本当は始まっていた。その始まりを活発化させるレイナ、ヒュウ、トモバ、マオが四苦八苦しながら自分に向き合い、自分なりの答えを探す旅。

「登場人物紹介」

ホドモエシティ※ネタバレ注意
(トモバ~私~)時点の紹介 >>86

《プロローグ》 >>1-8
【第一章】レイナ 
〜旅に出る〜  >>10-21
【第二章】ヒュウ 
〜ジム戦と成し遂げないといけないこと〜 >>24-28
【第三章】トモバ 
〜逃げる責任感〜 >>29-34
【第四章】マオ  
~目的~ >>35-42
【第五章】レイナ 
~信じる~ >>43-51
《第5.5章》レイナ 
~進歩~ >>52
【第六章】ヒュウ 
〜強さ〜 >>57-73
《6.6章》ヒュウ 
〜俺のち俺〜 >>74
【第七章】トモバ 
〜私〜 >>75-90
【第八章】マオ  
〜PWT〜 >>92-102
【第九章】レイナ 
〜過去と仲間と霊 麗菜〜 >>104-111
【第十章】ヒュウ 
~海だ!春だ!夏じゃねぇのかよッ!〜 >>112-118
【第十一章】トモバ マオ 
〜1歩先へ踏み出すために〜 >>120-124
【第十二章】〜終わりの始まり〜
>>125-

ーーーーーーーーーー
【短編集】
イッシュ編
マオとレイナのバレンタインデー >>96

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.117 )
日時: 2022/06/05 09:03
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: AuOiXVj/)

俺が近くの自動販売機に行くと、紫がかった白髪の青年が自動販売機の前でウロウロしていた。手にはお金が握ってある。自動販売機で何かを買おうとしてるようだが…何してんだ?
 声かけるか?いや、若干コミュ障の俺が赤の他人に話しかけるなんてできる訳が無い。どうしよう…どうしよう…

「あの、少しいいか?」

「あ"?」

 すると相手から話しかけられた。俺はビクッとするも、失礼と思い平穏を装うが、なんせ目付きが悪いから睨みつけてるように見える…し、『あ"?』と言ってしまった!故意ではないのだ!びっくりして状況反射で声が出てしまったのだ!どうしよう、これで怖がらせてしまったら申し訳ない。

「実は、自動販売機の使い方が分からないんだ。」

 白髪の青年は俺の心配を他所にそう言った。よかった、あまり気にされてないようである。というかその歳で自動販売機の使い方を知らないって…おぼっちゃまか?
 昔親に無理やり連れていかれたセレブの集まりで大体の金持ち、権力者は頭に入ってるつもりだが、なんせ途中から探偵志望に切り替えて家に引きこもってたからな。情報が古い。
 もしかしたら新しく食いこんできた金持ちか、権力者かもしれない。にしては服はラフだがな。

「えっと…これ…を、こう…」

 俺は自分のお金でカシワとセブンに押し付けられた分の飲み物と、俺の分の飲み物を買う。
 青年は関心したように俺の事を見る。

「面目ない。ありがとう。」

 そう言って青年は自動販売機にコインを入れ始める。俺は少しいいことをしたと鼻をならし、みなの所へ戻って行った。

ーーーーーーーーーーー

「なんだよ…これ。」

 俺は皆が取っ組み合いをしている所へ戻り早々絶句していた。土表(?)の中にも外にもレイナに挑んだ奴が伸びていた。ミツキさんでさえもだ。その中央に立っているのは無傷で汚れひとつないマリンスーツを着ているレイナだ。

「お!マオ遅かったな。あっ、サイコソーダもーらいっ」

「俺も頂く。」

 するとカシワとセブンが俺の腕の中にあるサイコソーダとおいしい水を取り、飲み始めた。その横では苦笑いしたヒュウが座っていた。

「状況説明を頼む。」

 俺はこの地獄絵図のような様子の説明を求めた。それはいつの間にか外野に混ざっていたヒュウが説明した。

「いや、レイナ強すぎてさ。見たまんま皆伸びちまって…俺は端からレイナに勝てるなんて思ってなかったから途中退場した。」

 さすがヒュウだ。幼馴染のなかで1番投げ飛ばされたり蹴られたり止められたりしてるだけある。するとレイナがこちらに近づいて来た。待て待て待て!俺とレイナは今かなり険悪な関係だ。ここで顔を合わせる訳にはいかない。
 それに、レイ 麗菜レイナは、誰もが許せない程の大罪を犯している。俺はまだ弱い。だからレイナなんかに敵わないが、精神的攻撃だけはできる。俺とレイナは幼馴染。きっと俺に少なからず情があるはずだ。それを…それを利用して。

「あっ、レイナ!俺様のサイコソーダいるか?あの人数相手はきつかったろ。」

「…遠慮なく。」

 基本こんな親切をレイナは受けたら無視するものなんだがな。短時間でも一緒に旅をしていたからか、または学校にいた頃、俺たちの知らない所で一緒に遊んでいたからか、どちらでもいい。レイナはカシワに心を少しだけ開いてるようだ。
 レイナは飲みかけのカシワのサイコソーダを荒々しく受け取ると一気に飲み干す。

「おいおいおい!全部やるとは言ってないぞ!」

「こっちは運動して喉乾いてるの。」

 カシワが半笑いしながら怒る。レイナはそれを軽く受け流しサイコソーダの残り1粒まで飲み干す。お互い満更でも無いようだ。で、なんで横のヒュウは固まってるんだ。

「どうしたんだヒュウ」

「…関節…キス…」

ヒュウが
 ……?
本当だ関節キスじゃねぇか!いやっ、違う。別に関節キスしようがレイナの勝手だ。いや、幼馴染というか、レイナの保護者的立ち位置からして許し難いというか、というか俺は幼馴染という立ち位置を利用してレイナに精神攻撃をしようとしたわけで…!いやっ、なんで俺が慌ててるんだ!思春期真っ盛りのトレーナーか!いや、思春期真っ盛りのトレーナーだったわ!
 落ち着け…俺、落ち着つけ。レイナが誰と関節キスしようがキスしようが‪‪✕‬✕✕をしようが俺には関係ない…関係ないはずなのに。なんだ、この心二残る違和感。不快感。

「お前らそれ関節キスだろ。」

 セブンが涼しい顔でレイナとカシワに言う。2人は一瞬ピタッと止まりセブンのことを見る。ヒュウはなにか後ろからゴゴゴと音が出ているようなおどろおどろしい雰囲気が出ている。ヒュウってレイナの色恋になるとめちゃくちゃ怖くなるよな。

「いつもしてるから気にならなかったな。」

「言われてみれば。」

 レイナとカシワは意識していなかったようでキョトンとした顔をしている。セブンはその様子を見て呆れ、ヒュウが物凄いオーラを纏っている。今ならミツキさんに勝てるんじゃないか?雰囲気だけ。
その様子をみてセブンはニヤリと笑う。

「カシワとレイナは良く遊んでたらしいからな。キスもっそれ以上も…フフッしてるんじゃ…ブフッないか?」

セブンが笑いを堪え、所々吹きながらそう言った。全然笑えねぇ。確かにレイナは学校1の美少女と謳われ、カシワもモテキングと言われるほどのイケメンだ。お似合いではあるが、何故かとても不服である。

「ABCどこまで進んだ。」

 俺は不意にそう言った。知識がネットと親からのものしか無いため古い知識が不意に出てしまうところがあるが。もうなんでもいい。この消化できない感情をどうにかしたい。

「お前…なんでジェネレーションギャップある単語知ってんだよ。」

 ヒュウが俺の発言で頭で冷えたのか冷静に俺にツっこむ。いや、ツッコミどころはそこじゃないだろうという気持ちもあったが抑えた。

「待て待て待て俺らはそういう関係じゃねぇぞ?!」

「まずABCってなんだよ。」

 カシワが慌てて取り消し、セブンが疑問を抱く。そうだよなその歳で普通はABC以前にキス以上の事なんて知らねぇよなっ!そうだよなチッシショウ!
あとカシワとレイナはそういう関係では無いらしい。ってことは…

「レイナは本命じゃないってことか…?」

「いやいやいや?!俺様彼女居たこと無いし!レイナも友達だって!怖いんだよマオ!」

 いつの間にか俺もヒュウのようにカシワを睨みつけていたようだ。やはり人生の6割を一緒に過ごしている幼馴染の色恋沙汰には敏感になってしまうようだ。
 というかイケメンのカシワが彼女居たことないなんて意外だな。女の1つや2つ引っ掛けてると思ってた。

「…10歳とは思えない言動よマオ、カシワ、ヒュウ」

 レイナが呆れたように言った。確かに、俺らは10歳にしては性の知識に関して敏感で博識かもしれない。けど仕方ないだろう!俺ら思春期だぜ?!他のやつみたいにsixって単語聞いて後ろ向いてニヤニヤするような底辺じゃないだけマシだろ!てか、なんでそれを聞いて慌てないでいるんだよレイナとセブンは?!
 いや、セブンはキョトンとしてるから知識はあまり無いのだろう。性格は悪いが純粋でいいと思うぞ。俺は。

「…レイナもだろう。なんでそんな知識あるんだよ…」

 俺は少し恥ずかしくそう言った。だってそうだろ?異性にこういう話をするのはとても恥ずかしい。しかも家族と似たような幼馴染にだ。それにしても俺の心臓活発過ぎやしないか?トモバ相手ならこんな話呆れながら相手をできるが、レイナには何故か小っ恥ずかしくなる。

「…まあ仕事で。」

「嘘言え!お前仕事なんてポケモントレーナー意外やった事ねぇだろ!」

 俺はいつもの調子でレイナにツッコんだ。そして、話が話であるためいつもより大きな声でいってしまう。一見したら不良が美少女に悪絡みしてる様子だろうが、俺自身頬が照ってるのが分かるためレイナ達からみたら滑稽だろう。

「…ヒュウのベットの下にそういう本が…」

「待て待て待て!」

 レイナが少し考えるとヒュウを指さして涼しく言った。ヒュウは完全外野だと思い込んでいたようでいきなり自分に矛先が来て焦っているようだ。

「お前俺様ほどでは無いがモテるよなと思ってたんだが…マジか。」

「…え。」

 カシワが本気で引き、ようやく話を察す事が出来たセブンも引いている。かく言う俺も引いている。いや、思春期健全男子なら誰でも有り得る話だが、ヒュウがそんなことするイメージがなかったため引いてしまった。

「まてっ!待て待て!違う!違うからなぁッ!」

 ヒュウがめちゃくちゃ焦って訂正を始めるが、その焦りが余計言い訳っぽく感じてしまう。

「まあまあ、健全男子には誰にでもある事なんですから」

 そんな落ち着いた声が聞こえるとヒュウよりも背の高い誰かがヒュウの頭に肘を着いてニヤニヤしていた。
 ミツキさんだ。他のみんなはまだ伸びてるのに…さすが国際警察。体も頑丈なようで、他の人より早く意識を取り戻している。

「ミツキさんもう大丈夫なのか?」

「えぇ。お陰様で。久々に体を動かしてつりそうですよ…」

 カシワが聞くとミツキさんは体をグルグルと回す。大丈夫…じゃなさそうだが、大した怪我はしてないようで良かった。それよりレイナの怪力が怖い。

「さて、マオ君。レイナとの仲直りのチャンスだよ」

 するとミツキさんが俺の耳に囁く。
レイナとの仲直りって…コミュ障の俺がどうしろと?!それに感情に任せてあんな暴言も吐いちまったし、レイナと話すのが怖い…
 怒られるのが怖い。暴力を振るわれるのが怖い。冷めた目で見られるのが怖い。


 ー嫌われるのが怖いー


 あぁ。そっか。俺はレイナが昔どんな残酷非道なことをしようと、俺はレイナの事が好きなんだな。レイナとずっと一緒にいたかったんだな…
そりゃそうだよな。ずっとレイナと過ごしてきたんだ。レイナに救われて、レイナが居るからここに俺が居るんだ。

「さて、ヒュウ、セブン、カシワ。用事があるから来てくれませんか?」

「え、良いですよ。」

「え、なんで俺が…」

 ミツキさんが不服なセブンを半強制的に連れていきカシワとヒュウもそれに続いた。しかし、そんな事は気にならなかった。
 まず、レイナへの好きは『Love』ではなく『like』の方であって、別に付き合いたいとかそういう感情じゃなくてだな…そう、家族と似たような感情で好きなんだ!まず大前提としてな…

「…マオ?」

 不意に声をかけられハッと元に戻る。横を見るとレイナが下から俺の顔を覗くのうに見る。
…可愛い。まつ毛が長くぱっちりとした目。ぷるぷるな唇にあどけない堂顔。目にハイライトがない部分が不気味に感じるが、それが逆に魅力的に見える。

「あっ、いや…えっと…」

 俺はどもった。何を言えばいいか分からない。そしてとても気まづい。俺はこの前レイナに何といっただろうか、『お前なんて死んでしまえばいいのにっ!俺たちを...ずっとずっと騙してた!皆思ってる。お前のことが嫌いと。死ねばいいと思ってる!』今思い返すとひっでぇ内容である。ずっと騙してた…レイナは騙してた訳ではないがずっと一緒にいた幼馴染にずっと隠し事をされていたのは不服である。『皆思ってる。お前のことが嫌いと。死ねばいいのに。』か。レイナの過去は本当に酷いものだった。世界中を敵に回すような事だ。けど、俺は知っている。今のレイナを。不器用で人を見下し、冷たい言葉を放っている。セブンに似通っている部分ばかりだが、本当は誰よりも人を見ていて、誰よりも人を思う気持ちがある。冷酷な性格になりたいのだろうが、人を思う気持ちが透けて見えてしまっている。実際昔俺とトモバの事を何回も助けたのだから。
 言うことは決まった。いや、最初から分かっていた。言うのが怖かったんだ。

「…私のどこまでを知ったかは知らない。けど、それを知って私のことを嫌いになるのはマオの自由。私を殺したって構いやしない。」

 レイナが俯いてただ砂浜を見つめている。その様子は絵になるように美しかった。しかし、口が一の字になり、少々シワが寄っている。一見無表情に見えるが俺には分かる。すごく、辛そうである。

「俺は、レイナがどんな残酷非道なことをしていたとしても、レイナの味方だ。」

 俺はそうレイナに向かって言った。レイナは俯いているため目なんて合わせられない。けれど、俺はレイナの目を見たかった。レイナに向き合いたかった。30秒ほど、沈黙が続く。なんか恥ずかしいことを言った気がして少しづつレイナから目線を逸らしていく。少しカッコつけすぎたか…?

「これから。私がどんなことをしても、私の味方?」

「それは無い。お前がこの先悪いことをしたら探偵見習として敵となる。」

 俺はそこはキッパリと断った。流石に探偵を目指す者として犯罪は見逃せない。レイナは俺がそう言うとパッと俺の顔を見る。

「…そこは、マオっぽいわね。」

 レイナが少し口角を上げた。あ、笑ってる。レイナが口角をあげるなんて年に数回見れればいい方だ。その顔をみて俺はかなり高揚する。いや、今は見とれてる場合じゃない。

「レイナが今までやった事は変えれないし戻せない。けど、俺が聞いたレイナと今のレイナは全く違う。だから、だから、お前が犯罪まがいのことをしない限りずっと、レイナの味方だ。例えレイナ以外が敵になろうと、ずっと、ずっと。」

 少しブルーな気持ちになりながらも、レイナのくすんだ瞳を見つめた。その瞳は俺の顔が綺麗に映っており、俺の事をちゃんと見てくれてるんだということが分かる。そうなると照れくさい。その前に…

「…ちょ!今のなし!なしなし!」

 俺は赤面しながら腕をブンブンと振るう。なんか長文過ぎてかっこよくなかった気がする。すごく恥ずかしくて何も無かったようにしようとするがこれ以上言葉が出てこない。なぜならレイナが犯罪を犯したら敵になるのだから。あれ、味方って言ってるのに矛盾してないか?余計かっこ悪いじゃねぇか!

「…それでも嬉しいから。ありがとう。」
 
 レイナは笑わない。しかし、その顔はとても美しく、清々しく見えた。レイナは悪いことをした。その事は紛れもない事実である。しかし、俺はそれを許したい。誰もが敵になろうと味方になりたい。これが探偵志望だなんて笑えるよな。けど、俺はレイナに笑顔になって欲しいんだ。朗らかに笑うような。昔は冷酷非道って聞いて笑うかなんて知らないけどな。俺もレイナの過去の全てを知ってるわけじゃない。いつかそれを知る時が来ても、俺は、レイナの味方でいたい。
 俺らは沈みかけてもう濃い青色になりかけている空を見上げそれからは他愛もない話を始めたのだ。
 旅で何があったか、どんなことをしたか。主に俺からのカシワについての質問だったがな。それでも。楽しかった。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.118 )
日時: 2022/06/08 15:44
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: iXLvOGMO)

ー裏施設ー
《ドク》

 疲れた。本当に疲れた。精神的に。まさかあのレイ 麗菜レイナと話すことになるとは…その上トウチに絡まれ…本当に休んだ気が無い。
 俺はいつもの図書室に帰りいつもの日記帳を開いた。いつもの不格好な文字に見るだけで気分が悪くなるような内容。それを黙々と読み進める。

「休暇は楽しめたかい?ドク君っ」

 俺の目の前には俺と同じ紫がかった白髪に、ポニーテールをした少年が立っていた。こう見るとレイ 麗菜レイナと髪型が似ている。

「…お前は誰だ。」

「皆大好きダミ君だよー?」

 ダミはニッコリとして両頬に指を当てる。可愛いとでも思っているのだろうか。シュウほどではないが可愛いとは思うがな。さすがダミだ。そこまで計算してるとは。
 今はそんなことを考えてる場合ではない。ダミと面を合わせるなど中々出来ることじゃないため少し緊張しているようだ。

「そういうことじゃない。成功作か失敗作かを聞いているんだ。」

「ダミ君が生きている選択肢は?」

「ない。」

 ダミはむすーっとした顔で俺の事を見る。こういうめんどくさい性格も修正して欲しかったものだ。しかし流石にダミ相手に手帳を読む事はできないため手帳を閉じる。まあ考えると成功作は"あの部屋"から出る訳が無いため消去法で失敗作の方であろう。外見が似すぎていて分からなくなる。

「……で、何の用だ。」

「休暇の感想を聞きに来たよ」

 俺はそこで読めてしまった。今回休暇を出したのはアクロマでなくダミだということが。
 一体ダミは何をしたかったのだろうか。いや、多分霊レイ 麗菜レイナと対面させて困らせたかっただけに見える。この、愉快犯が。

「疲れた。」

「けど満更でもなさそうじゃないか。」

 俺は俺の本当の気持ちにすぐ気づくダミに嫌気がさす。確かに満更でもなければ、レイ 麗菜レイナと話せる機会が出来てラッキーとまで思っている。

「まあ、スイやアーボ、ダミへの良い土産になりそうだよ。」

 俺は空を見上げた。見上げても天井しか見えなければ、ここは地下であるため青い澄んだ空なんて見えっこない。ダミ、スイ、アーボ。あの世で元気にやっているだろうか。

「何もうすぐ死にますみたいなこと言ってるのさ。」

「実際その通りだろう。今回のプラズマ団からの依頼が失敗すればダミが俺の首を切るだろう。物理的に」

 俺がはぁとため息を吐きながらダミをジト目で見てやった。ダミはさっきまで薄い感情が顔から滲み出ていたが今やすっかりテンプレのような微笑みを浮かべる。肯定も否定も来ない。

「なに依頼の失敗前提なのさ。」

「相手は統治家と、ムスカリー、シアン、ミツキだぞ。殺すことなら出来るが守る事になると無理だ。」

「それでもドクなら出来そうな気がするけどねぇ〜」

 ダミはニヤニヤとしながら俺の事を見る。コイツはどこまで俺の事を見透かしているのだろうか。その通りである。守るだけならば多分…出来る。けどな。

「あと、レイ 麗菜レイナがいるんだぞ。」

「はっははは!確かに、それは無理ゲーだね!」

 ダミはお腹を抱えながら笑い始める。最初から知っていたくせにわざとらしい笑いは癪に障る。さっきからダミの手のひらで転がされてばかりに感じていい気分でない。

「まあ、ご愁傷さまだよドク君。昔の仲間がまた居なくなるのは寂しいものだね。」

「スイにもフジにもアーボにもレイにも、お前会ったことないだろ」

「記憶はあるから良いんだよっ!」

 ダミは最後の最後まで俺の事をからかいニヤニヤとしていた。全く…俺はピラミッドの一兵卒であってお前の玩具じゃないっての。

「リーダーァァァァ!またタツナとミソウとレイがぁぁぁぁぁ!」

 すると廊下からシュウの泣き叫ぶ声が聞こえる。またか…3日に1回はレイと双子がドンパチやり始め、こうやってシュウからヘルプがやってくる。他の3柱は大人しいのに何故レイはこうも好戦的で沸点が低いのだろうか…なまじ力があるため止めるのにも一苦労である。

「という訳だ。俺は仕事してくる 」

「リーダーも大変だねぇ」

 ダミはケラケラと笑いながら俺の事をからかう。もう何言われようと今は何も考えたくない。とにかくレイが施設を壊す前に止めることが先決だ。

「…レイに比べたら全然楽な仕事だよ。」

 俺はそう言うとフードコートを図書室にかけ、本気でダッシュをし始めた。シュウが来てから本当にヒヤヒヤされてばかりである。表ではトウチが旅をし始めてから仕事が山盛りである。本当に…休む暇なんて無い。

「レイ…か。僕はあんな聖人にはなれないね。」

 ダミがボソッと呟く。その声は誰にも届くことは無かった。


       終

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.119 )
日時: 2022/06/13 03:09
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: YAHQda9A)

今回はお知らせになりますm(_ _)m

本日17時頃にポケモン二次創作裏の陰謀第2部外伝予告MVを公開致します。
因みにこの『最期の足掻き』は裏の陰謀第1部外伝となっております。
『第2部外伝?そんなの最期の足掻き関係なくない?』
と思った方も居るでしょう…!

第2部外伝は最期の足掻きと裏の陰謀を混ぜた2つの続編のような物になっております。ですので最期の足掻きキャラ、裏の陰謀キャラが主要人物になったり、ゲストとして出てきたりするので待っててください…!

第2部外伝は最期の足掻き完結後、裏の陰謀第1部完結後に始動する予定です。キャラが圧倒的に少ないため今後リク板でオリキャラを募集すると思いますので、よろしくお願いします。

余談
因みに予告PVでは『妄想税』という曲を私がカバーした上、初めて自分でMIXしました。情報量多いね☆

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.120 )
日時: 2022/06/18 09:02
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: KqRHiSU0)

第十一章 トモバ マオ 〜1歩先へ踏み出すために〜
 
初めて出会った時は"気味が悪い"その一言に尽きていた。頬がぷっくりと桃色に染まりパーツの位置も綺麗で可愛い。実際。そいつの周りには俺が関わってコネを作る予定だった偉い人々が集まっていた。
 けど、俺はコイツを好きになれない。黒い髪にシワシワで古血を連想させてしまう赤いタオル。そして瞳が奥深くまで濁っていて不気味だ。極めつけは何も喋らない。まるでフランス人形のように喋らず動かずただ虚空を認めていた。
 気味が悪い、怖い彼女を見るとそれしか考えられなくなり、本能的に逃げたくなってしまっていたのだ。

ーーーーーーーーーーー

「えっ、出会い最悪じゃん! 」

 シイナが俺の話を聞いて驚いたように叫ぶ。
俺ことマオ。今はサザナミタウンを抜け、カゴメタウンで一休みし、ソリュウシティまでの道路で野宿をしていた。
 パチパチと鳴る炎を中心に俺らはシチューを食べていた。

「確かに、そんな悪い印象なのに今に至ったのが不思議だねぇ」

 リンドウはニコニコしながらシチューを飲む。俺も不思議である。最初は恐怖の対象だったのに今や幼馴染の1人として迎え入れている。そして、レイナは俺の人生を変えてくれた教師のような存在だった。同い年だけど。

「お偉いさんとのコネを集める…ということは、マオが社長候補だった時の話なんですか?」

 ミツキさんが俺の話を興味深そうに聞く。あの少しの情報で頭が回るのは流石としか言いようがない。

「……まあそうですね。その頃はあまり思い出したくないんですけど。」

 俺はそう言いながら少ししか残ってない冷めたシチューを掻き回しながら、躊躇いながら言った。7歳ぐらいまでの俺は黒歴史のようなものであった。

「そうなんですね。それならあまり詮索はしません……」

「僕は聞きたいよぉ。昔のマオって新鮮そうでワクワクするもん」

 この話を振ったのはミツキさんだ。だからこそ俺の黒歴史の話に発展しそうになっている所で中断しようとした。しかし、リンドウはそんなのお構い無しにグイグイ来る。こういう所だぞ嫌われるのは。
 しかし、黒歴史と言っても半分はいい思い出であることには変わらない。

「長くなるぞ」

 俺はニヤッと笑いリンドウに言った。リンドウほ能天気に『ヤッター! 』と両手を上げて喜んでいる。

「えっ良いの? マオ」

「心配すんなシイナ。俺にとっては半分良い思い出だからさ。」

 そう言って、俺は自然とニヤケながら昔の出来事に思いを馳せていた。

ーーーーーーーーーーー

 初めての出会いはパーティだった。レイ 結香ユカさん……今のレイナの母親だな。その人が世界的な女優の大きな賞を取ったのを祝うパーティであった。その頃俺の親とユカさんには関わりなんてなかったが、間接的な繋がりによって参加することになった。
 ユカさんのマネージャーである赤白セキシロ カナエさん……今のヒュウのお母さんも参加していてな。レイナとヒュウ、ヒュウの妹のメイも参加してたんだ。

「あっ、統治さんの息子さんと娘さんじゃない! ほら、カナエ、ヒユウ君、メイちゃん、レイナ!」

 ある程度顔見知りの他企業の人や財閥の人と挨拶を終えた後、タイミングを見計らったようにユカさんが朗らかにレイナ達を連れて俺たちの元へ来た。今回のパーティはユカさんが主役だが、権力は俺とトモバの方が高かったため、殆ど統治家とのコネを作るチャンスのようなパーティで、俺達も疲れていた。

「チッ、なんだよ。俺らはもう疲れてるんだっつの。」

 当時の俺は激しく荒れており、まあグレていた。今の俺は見た目は不良、中身は普通のつもりでいるが、当時は見た目は不良、中身も不良であった。そのため誰も近づきずらく、殆どトモバに人が集まっていた。そんなトモバを見捨てるわけでもなく、俺はトモバと行動を共にしていた。
 そんな中俺達に話しかけたということはよっぽどユカさんは酔っ払っていたのだろう。

「あっ、こんばんわ。本日はこのようなパーティに及び頂き誠にありがとうございます。我々一族も誇りに思いますわ。」
 
 そしてトモバは逆で、今よりかなり落ち着いた性格であった。目付きは生まれつき悪いが、ストレートロングに片目を隠して俯いている事が多い引っ込み思案なお嬢様だった。
 
 そこで俺とトモバは社交辞令しただけだがそれがレイナ、ヒュウとの初対面だった。

 その後あったのは、俺が旅に出る前に通っていた学校であった。俺たちの学校はイッシュで1番偏差値が高く、お嬢様お坊ちゃまのようなボンボンが集まる私立学校で、大学付属幼等部から高等部まである名のある学校だった。
 俺は元々幼等部からこの学校に通っていたが、レイナとヒュウが幼等部に転入してきた。転入理由はレイナを良い学校に行かせたいユカさんの希望と、それに着いていきたいヒュウの意向であった。編入試験は受験と比べると難易度が跳ね上がる。それを突破して転入してきた2人は良い意味でも悪い意味でも注目が集まった。
 かく言う俺とトモバも興味を持っており、統治家の人間として全生徒を把握しなければならない。という理由を作りヒュウに近づいた。

「俺はマオ、前会っただろ。統治家の長男だ。だから無礼なことしたら家を丸ごと潰してやるからな。」

 と言っても当時の俺は幼く、プライドが無駄に高い不良であったため、かなり高圧的な態度を取ってしまぅた。

「それは困るな! 俺はセキシロ ヒユウ! よろしく頼むゼッ! 」

 大抵の人は俺のその言葉で俺から離れてしまう。けど、ヒュウは違った。この頃のヒュウは今の柏やトモバのようなはっちゃけて明るい性格だった。ヒュウの後ろの席では心ここにあらずと言ったような表情を浮かべ外を見ていたレイナが居た。やはり不気味である。最近生徒内の噂ではレイナが不気味すぎて『呪いの子』というあだ名がつきかけている。だからあまり関わりたくはない。

「えっと、私はトモバと言いますわ。今後ともよろしくなさって?」

 トモバは言葉の節々に照れが垣間見えながらも、レイナに近づく。当時の俺はレイナに近づいた理由等分からなかった。確かに編入試験を通ってきたという珍しさがあるがそれ以上にいじめの対象になりかけてるやつと関わるとろくな事は無い。メリットとデメリットを天秤に置くことすら出来ないのか家の愚妹は。
 そんなことを当時は思っていたが今考えるとトモバの美少女、美少年大好きセンサーが反応したからかもしれない。推測の域からでないが……

「……」

 レイナはチラッとトモバの方を見るとすぐ目線を窓の外に向けた。無視されてると思ったのかトモバはみるみるうちに真っ青になっていき半泣きになり俺の後ろにくっつき始めた。

「あ、あぁ! コイツシャイなだけなんだよ! だから、仲良くやってくれ……」

 ヒュウは苦笑いしながらレイナの頭をがしがしとかく。それをジト目でヒュウをみつめる。何考えてるのかほんっとうにわからない。それ故に怖い。しかしトモバはヒュウの言葉を真に受けて明らかに顔が明るくなる。
そんなんで統治家のご令嬢が務まるのかよ……
俺は単純に不安だった。

ーーーーーーーーーー

レイナ達と出会って数か月。俺とレイナは関係は知り合い以上、友達未満のような微妙な関係だった。ヒュウは不良のようであった俺に対して差別などして遠巻きにせず、逆にいつも1人の俺を心配してくれた。俺もヒュウには心を開いていきいつの間にか俺の寮に誘ってゲームする仲になっていた。
 トモバはレイナとは友達にはなっていないものの、レイナにちょこちょこと着いていくようになった。俺から離れて独り立ちできたのはありがたいが相手が悪い。俺はいつも口酸っぱく『レイナには近づくな』と言っていた。トモバは静かにコクリと頷くも、すぐレイナの元へ向かった。馬の耳に念仏である。

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《トモバ》

「へぇ、意外だな。今回の旅メンバーも幼馴染4人組と俺、ミツキ、ムスカリー中心で構成される程仲がいいのに。昔はそんなんだったのか。」

 微かなランプの明かりの元私ことトモバと、シアン、マツリ、サツキは恋バナに花を咲かせていたのだが、私の恋バナをするうちにレイナとの出会いの話になったのだ。
 シアンは驚きながら私を見つめ、そう言う。他の皆もそうだった。

「最初から皆仲良しだと思ってた!」

「私も……けど、レイナは昔から変わらないんですね……」

  マツリが思ったことをそのまま口に出す。サツキはレイナの親戚だからなのか、レイナの話題に敏感である。

「無い無い! 確かに話してたら変わらないように聞こえるけど、当時のレイナ本っ当に怖かったんだからね?! 」

 私は全力で否定した。6歳児であんな雰囲気やオーラを出せるのは権力を持っている凄い大人を見てきた私でも初めての事だった。

「怖い?! 俺はそう思ったことは無いんだがなぁ」

「目の奥を見ると私も奥底まで引っ張られそうで……それ以外は完璧美少女なんどけど、雰囲気とかオーラがどす黒くて怖かったの! 」

 シアンがうーんと唸ると私は全力でレイナがいかに怖かったかを説明した。今でも覚えている。何も映らない、何も見えないくすみ切った原石のような瞳、何を言っても喋らなく、顔は整ってるため日本人形のような不気味さがあった。

「あー、分かるかも。私も昔……4年前に会った時ね、凄く怖かったの! なんというか雰囲気が、ぶぁぁぁっ! て! 」

「私も、親戚の集まりで毎年会うのですが4年前は本当に怖くて近づけませんでした。」

 1度レイナと会ったことがあるマツリと、親戚のサツキが深々と私に同情する。

「じゃあ、なんでトモバはレイナにベッタリ張り付いてたんだ?」

 シアンが私に質問する。そんなの答えは一つに決まっている。


「あぁ〜んな1万年に1人の美少女が物憂げに居たら危険を承知で近づきあわよくばペロペロさせてもらうのが世の摂理でしょうがいっ!」

「いつかハニートラップとかにかかるなよ……」

 私は立ち上がり熱弁すると3人が呆れたように私を見た。そしてシアンには釘を刺された。

「大丈夫大丈夫私レズビアンだから美少年も好きだけどかかったりはしないよ」

「そういう問題じゃねぇんだけどなぁ」

 私が自慢げにそう言うとシアンは更に呆れて額に手を添えた。私はそろそろ寝袋に入る。

「それでそれで?どうしてトモバ達は今みたいに仲良くなったの?」

 マツリがワクワクしながら聞いてくる。私は最近のようで、古い。懐かしい思い出を振り返る。
 
「それはね……」

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.121 )
日時: 2022/07/01 16:52
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: .HplywZJ)

入学して3ヶ月たった頃、校外学習があった。タチワキコンビナートを見学する行事で、皆バスに乗って見学にしに行き、草むらの横に作られた道路を通りバスは走る予定だった。
 バスの席は組ごとにわかれており、レイナと同じ組だった私は、レイナの隣へ座ろうとすると、ヒュウもレイナの隣へ座ろうとしており、私とヒュウは立ち止まった。

「ごめんな。レイナは俺が着いていないとダメなんだ。だから隣に座らせてくれ」

ヒュウがアハハと言いながらサラッとレイナの隣に座ろうとするが私はレイナの隣の席に片手を置き、ヒュウが座れないようにする。大体、レイナは6歳とは思えないほど大人びている。そのためヒュウがいる必要性が分からなかった私は一生懸命ヒュウを睨みつける。
 当時は自分の鋭い目はコンプレックスで、シアンメトリーで隠していたが今回ばかりは自分のこの悪い目付きに感謝している。

「私……レイナの隣にすわる。」

 が、私は当時……というか今もか。背が高く圧が凄かったヒュウにそれぐらいしか言えなかった。レイナは気にすることも無くずっと外を見ている。その様子を見て先生がやってきた。ショートヘアの40代位の女性の先生である。

「ねぇ何でこんなことで喧嘩してるの? 特に統治さん? 貴方将来の自覚あるのかしら? そして赤白さんも転入出来たからって調子に乗っては行けませんよ。そして霊さん。貴方の話なのに何故無視してるのかしら? 」

 この先生は嫌いだ。嫌味と皮肉をか弱い幼稚園児に吐いてくる。その通りのため反論は出来ないが不快感が半端ではない。今では他の学校に行ってるため何も思うまい。
 ……え?どこに行ったって? 昔の私も子供でね。権力が暴れちゃったのよ。

「すみません。では責任をとってわたくしが霊さんの隣に座らせて頂きますわ」

 私はこれを好機と思いすぐさまレイナの隣に座った。この先生は嫌いだけど今回ばかりはナイスです。そんなことを思いながら自慢げに私はレイナの隣へ座った。ヒュウは不満そうであったが、権力的に私より下で、先生もいたため、反対側の窓側の席へ座った。すかさずそこへマオが座る。
 あぁ、マオとヒュウは仲良かったわね。これで忌々しいヒュウをレイナから話すことが出来たわ!
 私の心は天に昇る程嬉しかったが、冷静に考えると何を喋ろうか分からなかった。いつもちょこちょこレイナに着いて行くだけで喋ることなどしなかった。
 どうしよう、どうしよう。コミュ力はかなりある方だと思うが好きな人の前になると何を言おうか分からなくなってしまう。
 レイナは特に何も思っていないようでずーっと外を見ている。
 バスが発進した。私とレイナの間には沈黙が続く。対して向かい側の席のヒュウとマオは最近のゲームで盛り上がっている。私も何か話さなければ、女の子が好きな話……ファッション? アイドル? いや、違うだろうな。そうだ、レイナが膝に乗せているイーブイに話を降ったらどうだろうか。大体の人は相棒ポケモン等持っていないし、持っていたとしても学校にいる時はボールの中にいるためレイナは珍しい部類である。

「レイナは何でイーブイをいつも出してるのかしら? 」

 私は勇気を出してレイナに話しかける。レイナはその言葉で私の方を見る。ぷっくりとした頬にクリクリっとした大きなお目目、長いまつ毛に赤く染まったほお。深くまで引き込まれそうな瞳はあれど美少女大好き人間の私はその顔に見とれてしまったのである。
 多分私が女の子が好きなのはレイナの影響なのかもしれない。
 レイナは目を閉じてイーブイの頭を撫でる。イーブイは何も反応せずジト目で私のことをずっと見てる。

「……色々あったから、外の世界に出してあげたいの。極力。」

 レイナはそう表情を変えることなくイーブイを撫で続けた。その様子が美しいし可愛い! 話なんて頭に入ってこなかったわ! 高嶺の花と言うよりは自分のペットのようで可愛い見た目! その裏腹で性格は高嶺の花のようなクールで冷徹。このギャップが堪らないのよ……!
 そう私は1人で悶えていたら、バスが大きく揺れた。揺れたというか、急ブレーキをかけた。周りがザワザワし始め私も何があったのか前を見ようとするも背が低いため前が見えない。
 するとドアが開く音がして、色んな人が乗り込んでくる音が聞こえる。

「えー。皆さん。初めまして、今回はVIPの皆様を人質にさせていただきます。」

「オラァ!今すぐ進路変更しろやぁ!」

 何人居るかは分からないし見えないし、見たくもない。極力目立ってこの人達に目をつけられたくない。
 この時が初めて犯罪に巻き込まれた時だったため、疑問よりも恐怖の方が勝っていて、涙目になっていた。

「何なんですか貴方た……ち……」

 先生の威勢が無くなってく。もう何が起こってるのか分からない。チラッと好奇心でジャンプして前を見ると、先生にキリキザンが刃物を突きつけていた。
 思ったより不味い状態だ。
 私は今更そう思った。どうすれば良いのだろうか?電子機器で助けを求めるか?いや、電子機器は先生達に貴重品として預けている。
 そうだ、ボディーガードの人達は? その人たちはこのバスの中に乗っていない。どうしよう、どうしよう。そうガクガクしているとバスジャック犯の1人が私の席にやってくる。そして、私とマオを見る。

「お前らが統治家の人間だな。着いてきてもらうぜ。」

 最初に進路変更を要求した荒々しい人が私とマオの襟を掴み、最前席に座らせる。キリキザンにはジロっと見られ、まるで「いつでも殺せる」と言われてるようで怖い。怖すぎて何も出来ないし、何も言えない。
 ここで動き出したバカは…

「お前ら!いい加減にしろよッ!」

 正義バカのヒュウである。ヒュウは相棒のポカブを繰り出してキリキザンとポケモンバトルをしようとするが…

「おぼっちゃん。ここはバス内ですよ? ここでポケモンバトルをしたら他のVIPも怪我する恐れがあります。」

「あぁ、お前らの娘息子は預かった! 今すぐ5億用意しろ! 」

 冷静な人をが丁寧な口調でヒュウに言う。その横でもう1人は私達の親に身代金の用意を促していた。どうやら金目当てのバスジャックのようである。

「……クソッ!」

 ヒュウは為す術なくそこでドンッと片足を地面に叩きつけ歯ぎしりをしていた。
 私がここでできる最大の事。今までそれをずっと考えていたがようやく踏ん切りが着いた。私は無断で立ち、バスジャック犯達に聞こえるように堂々としたつもりで言った。

わたくし統治トウチ 共羽トモバ。統治グループの一人娘にして統治トウチ 陽炎カゲロウが溺愛する立派な人質です! 統治グループの大きさはご存知でしょう! ですから、私だけを人質にして、他の方は逃がしてください! 」

 その時人生で初めて自分の意見を言った気がした。私は確かにお父様に溺愛されてる統治家の一人娘にして立派な人質である。何も嘘はついてない。ただ、私は時期会長になるほどの立場には無いし、統治家では弱い立場に居ることを言っていないだけである。
 どうせ私に価値なんてないのだから、ここで犠牲になるのが得策でしょう。
 マオが隣で何か講義をしていますが今は関係ありません。
 当時はそんなことを考えてたっけ。我ながら素晴らしいと思ったけどさ、その後、人生を変えるようなことを言われたのよね。本当に、美しかった。

ーーーーーーーーーーー
《レイナ》

 ふと昔の事を思い出してた。トモバとマオが豹変した事件、バスジャック事件についてだ。
 私はモモンの実の缶詰を食べながらフワフワと思い出していた。

 たしかトモバが人質として名乗りを上げたんだっけ。それまでのトモバは私の後ろを黙ってちょこちょこ着いてきてウザったらしくて鬱陶しかったんだけど、その時は少し見直したのよね。
 それと同時に、トモバの心情も分かってしまっていた。私は勘が鋭い方のため分かってしまった。
 トモバは自分に価値等ないと思っている。
 実際統治家の人間だから価値はあるんだけど、この学校の前では霞む、統治家内では価値なんてない。政治利用されるだけと思っていたと思う。まあ、この憶測というか勘は外れてはないでしょうね。外れてたら今は無いもの。
 そして、当時私が思っていたことは……
『気持ちは分かる。けど、それは愚かな事だ。』
 昔の自分と照らし合わせていた。共感してしまっていた。私もトモバの立場ならそうしていたと思う。だけど、だからこそ、自己犠牲は必ずしも誰かを救えることでは無いということも分かっていた。
 極力目立たず、ヒュウ以外関わろうとしなかった私はその時初めて統治トウチ 共羽トモバと関わりたい。そう思った。
 興味があった、というよりは昔の自分を見ているようでいても立っても居られなかったのだ。

「イブイッ! 」

 イーブイが私に鋭い事を言う。私はイーブイを見るが、無視した。『ダメッ!』そんな事言われても、私のからだは勝手に動いていたのだ。これでも昔と比べたら無感情な方だったのに、お人好しなのは変わらなくて今でも反吐が出る。

「……っ! 」

 私は軽い身のこなしと特有の小柄な体型で座席の上を走り、まずキリキザンの首筋を指で突いた。するとキリキザンは糸が切れた操り人形のようにガクッと倒れた。そしてあとは適当にジャック犯達も捌いた。
 一時的にその場はシーンとしたが、我に返った運転手がジュンサーさんに連絡し始める。先生も幼児達のケアをし始めた。

「レッ……レイナ? 」

 すると横の1人用の座席からトモバが私の顔を覗く。私は、言いたいことが沢山ありすぎて何を言おうか悩んだ。1歩間違えればトモバは道を踏み外すかもしれないと不安があった。

「貴方は素晴らしい人間よ。」

 最初に出た言葉はこれだった。そう言うとトモバは苦笑いをしながら私を見つめた。聞き慣れてるのだろうか、それとも……

「えぇ、私は"家柄だけ"は素晴らしい人間ですわ。」

 やはりそう捉えられるか。言葉というものは難しいものである。私は前へ踏み込みトモバの横に両手を付ける。

「違う。統治トウチ 共羽トモバというものに価値がある。人と必死に仲良くなろうとして、本当は美少女、美少年が大好きで、人に不快になって貰わないよう必死で気遣って。それだけで素晴らしい人間何じゃないかしら。」

 トモバは私にちょこちょこといつも張り付いて剥がれなかった。言葉もどこか1歩引いてるようであった。そして、人のことをよく見ている。イーブイの事を話された時もだ。
 それだけ価値のある人間が、こんなことを言っていては洒落にならない。
 
 トモバは私の方を見てただ唖然として、口をパクパクしている。何を言ったらいいのか分からないのだろうか。それでも私は言葉を続ける。

統治トウチ 共羽トモバ。もっと自信を持ちなさい。統治家の1人としても、トモバという1人の人間としても。」

ーーーーーーーーーーー
《トモバ》

 私は長女だが、マオのほうが先に生まれており、男だった。そのため私は産まれてこの方誰にも期待されたことなど無かったのだ。何故なら、時期会長は、マオであったから。統治家の人間として最低限振る舞えるようにするだけの教育を施されてきた。マオ以外、私に近づくのは私の権力かマオの権力目当てで、使用人達にも舐められていた。
 ─あぁ、私に価値なんてなかったんだな─
 その時ようやく私は気づいた。気づいた瞬間。泣き崩れてしまった。少しでも期待されてるとでも思っていたのだろうか。少しでも"トモバ"を見てくれる人が居たと思っていたのだろうか。
 そう思うと自分が滑稽で滑稽で仕方なかった。

 そんな中、レイナに壁ドンをされて、目を見て言われた。『私に価値はあると。』
 私が統治家の名誉を汚さないために隠していた趣味も私に価値が無いと思っていたことも、何もかもレイナにはお見通しで、それを踏まえた上で『私には価値がある。』と言われた。
 嘘だろうか? 統治グループに媚びを売るためのお世辞だろうか?
 そんなことは思ったが、レイナの目を見るとそうでも無いことが分かった。レイナの霞んだ目が、少しだけ輝いていたのだ。霞が少し取れて、"トモバ"に喋ってると目で訴えてくれて。
 ─1人でも私に価値があると言ってくれて─

 私はそこで泣いてしまった。泣き崩れてしまった。
 バスジャック犯達から助かった安心感に自分を肯定してくれる言葉。統治トウチ 共羽トモバでなく、"トモバ"として見てくれた。
 嬉しくて安心して温められて、泪が止まらなかった。それをレイナはそっと私を抱きしめる。

「だから、自己犠牲なんて辞めて……」

 そう言われた。美少女にこんなこと言われたら、従うしかないじゃない……!
 私はそんなことを思いながらずっと泣いていた。鼻水をだらしなくだして、がなり声をバス中に響かせて。

 それこらかな。自分の素で行動し始めたのは。まず髪を切って、お洒落したくてウェーブボブの髪型にして、カチューシャを付けて。人に気を使いながらもフレンドリーで誰でも引っ掻き回すような今のようになったのは。
 そこまで自分の素をだすのは中々難しいとは私も思う。けど、レイナが守ってくれるから大丈夫。っていう根拠もない理由で私ははしゃぎまくった。楽しかった。今も凄く楽しい。
 本当に、レイナには感謝しか無かった。


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