BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 【銀魂】腐小説おきば
- 日時: 2014/03/25 23:22
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
銀魂の腐小説おきばです。
オリキャラも出ます。
長州寄りの話が多くなるかと思います。。。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.43 )
- 日時: 2014/07/21 23:06
- 名前: もるたん (ID: YWR4Zzw2)
***後日談***
「銀時!最近なんか皆の視線が熱いんだが、俺何かしたか?何か尊敬されている気がする」
「ん?そうなの??良かったじゃん」
「俺と接吻すると勝利が舞い込む的なアレらしいんだが、何か心当たりあるか?」
「いやー、無いな。いくら勝ちたくてもお前と接吻は嫌だなー」
「聞くところによると、松陽先生がそんな話をしたとか」
「あははは。あの人も困った人だねえ。文句言った方が良いよ、文句」
「で、文句と言うか、事の次第を聞きに行ったら、銀時に聞けと言われたのだが」
「……あー…」
「銀時が最近文武に身が入るようになったのは俺という恋人ができたからだとか言うのだが、なんのことか全く分からぬ」
「……うー…」
「最後に『ヨッ!あげまん!!』とかって誉められた感じなのだが、」
「……えーと、…」
「——あげまんって、何?」
「……」
「饅頭的な何かか?」
「……」
「ラッキィマンの仲間とか?」
「……」
「それともギン肉マン?」
「……」
「あ、分かった!爆漫か!!」
「違えよクソ馬鹿!てか一番気になるのはソコなの?もっと大事なトコあんだろうが!つーか何脚色してんのあの人!!??」
「——まあ、落ち着け銀時」
「落ち着くなヅラメガネ!名誉毀損で訴えろ鈍感金魚!!」
「——罵倒の意味はよく分からないが、俺としては不利益は無いし、銀時がそう言い出したなら万々歳だと思っている」
「不利益だらけだろッ————んん?“そう”?」
「銀時が、俺を恋人にしたのだと、そう思っているなら、俺に異存は無い」
「——い、いや、それは誤解と言うか妄想と言うか…」
「そんな妄想するまで思い詰めていたとは…。気付かなくてゴメンな!これからはお前を大事にするよ!4649、初カノ!!」
ウィンクが眩しいっつーかウザいっつーか……
「つーか俺はカノジョじゃねええええええ!!!」
・・・おしまい。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.44 )
- 日時: 2014/07/26 21:56
- 名前: もるたん (ID: 7Qg9ad9R)
ぐんッと踏み出した太股に、ぎゅッと筋肉が盛り上がり、腕はしなやかな鞭の様に、拳は大きく、ぱッと消える。首筋を掠めた切っ先は美しく輝き、鼻先に漂う汗は潮の香りがする。小太郎が突き出した刀柄は袷に微かに触れただけで、眼前に迫る肘を払い足払いを利用してくるりと後転し、蹴散らされた砂利が幾粒か口に入り、小太郎は飛び上がってから唾を吐いた。
『…なんでも有りだな』
『そうでもないよ』
銀時は先ほど小太郎が居た位置に立ったまま両手をだらりと下げ、
『罠も伏兵も無いし』
二歩、退がった。
『…剣術の仕合ではなかったのか』
正々堂々斬り結ぶのが武士道だと思っていたが…。
『違うよ』
銀時は頭を下げ腰を落とし恰も弓矢の如く——
『ヅラを半殺したかっただけ』
『——!?』
消えた、と思った次の瞬間頭に衝撃が走り、小太郎は横にぶっ飛ばされ着地と同時に肩が
『あツッ——!』
——小太郎渾身の居合いをかわし、銀時はまた、直前まで小太郎が居た位置に佇む。
頭と肩の負傷具合を痛覚で測りながら小太郎はゆっくりと立ち上がり、呼吸を調え、銀時を睨み付ける。
『そんな、邪な剣を振って恥ずかしくはないのか』
銀時はくす、と口の端を上げ、
『恥ずかしくないさ。お前が振るう剣の方がよっぽど恥ずかしい』
『——?』
『それを——』
頭を下げ腰を落とし——
『——教えてやるのさ』
再び消えた後、今度は足への攻撃を受け小太郎の刀は彼方へ飛び、後は腹だの背だのを
『…ふるぼっこされたのだ』
『…そんな事あったっけ?』
『あの時は傷が元で熱まで出て、大変だったなあ』
『そんな事あったっけ?』
『“半殺し”ってか、“全殺し”になりかけたよねー』
『そんな事あったっけ』
『銀時は見舞に来ないどころかその後半年くらい口きかなかったんじゃなかったっけ』
『そうかなあ。そんな事あったかなあ』
『ま、お陰で俺は、より剣を磨くことができて、こんなに長生きする事ができたわけだ…』
『そうかなあ。まだまだ生きられるよ100歳目指して頑張ろうよ』
『…はは…貴様は昔から、無茶を言うなあ…』
『無茶じゃねえよ。俺を置いて逝くなよぅ』
『……ぎんと…き…』
『ヅラ…』
『……』
『ヅラぁ…』
『……』
『ヅラアァァァァァ!!!』
——幕——。
「っていうのを、今度の全社キックオフの余興でやろうと思うのですけれど、どうですかね蔵七さん」
「いや、ダメだろうね」
俊介は某甘味所の看板娘の顔をして、頭を一つぽんと叩いた。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.45 )
- 日時: 2014/07/29 21:27
- 名前: もるたん (ID: dK6sJ/q3)
満月は嫌いだ、と、よく十四郎は言う。何故かと問うと
「犯罪が増えるじゃねーか」
と答えるので、なんだしっかり仕事してるじゃないかと、少し安心する。
「最近不穏な輩とつるんでるんで、取り締まりに身が入らないんじゃないかと心配してたんでさ」
からかい半分、そう言うと、十四郎は煙草を噛み潰して吐いた。
「テメエこそ、最近変な輩と仲良くしてるじゃねーか」
「あらら。ご存知でしたかィ」
総悟は月に向けて口笛を吹く。
「一人二人、見込みのある奴がいるんでさ。あと3年したらウチで働くよう言ってあります」
二月程前定食屋で知り合った男が江戸の外れで私塾を開いていて、読み書きはともかく剣術は滅茶苦茶だったので見かねて総悟が師範役を買って出た。生徒には宿無し親無しが多く、聞けば、飯を食わせてやるから勉強しろ鍛練しろと声を掛けまくっているらしい。出世払いで老後は悠々自適と哄笑するが、そうなる前に野垂れ死にしそうな生活だった。
「ま、3年後なんてどうなってるか分かりゃしませんがね」
それは男の私塾についても、そして真撰組についても言える事だ。
(俺も、生きてるやら死んでるやら…)
姉の死を見送ってから、総悟は、不思議と自分も長くは生きないと考えるようになった。それは仕事柄常に危険と隣り合わせだとかそういうのともまた少し違う、予感のような——願いのようなものである。
「テメエ、自分の仕事言ってやがるのか」
静かに、十四郎が訊ねる。
「別に隠しても仕方ねえですからね。元々知ってたかもしれねえし」
制服で街中をあれだけ闊歩していて内緒も何もあるまい、と思う。元来、腹に何か隠したまま行動するのは性に合わない。
「向こうの、正体は…」
「さてねえ。山崎辺りが調べてるんじゃねえですか」
最近山崎の仕事は敵組織への隠密活動より身内の身辺調査が主になっている。総悟の交際関係も、本人よりよく知っているかも知れない。
「何か報告受けましたか、土方さん」
十四郎は新しい煙草に火を点けると、夜空に煙を吐き出してから
「何も分からねえと言ってたな。堅気の男にゃ見えねえとも」
「俺もそう思いますよ」
くすりと総悟は笑う。
口振りもやることも立派だが、あの男にはどこか狂気がある。ただ、それが、古ぼけて色褪せつつある狂気なのか作意があって押し隠している狂気なのかが、今一つ見えない。
「——何か、ヒントでも出てきましたか」
わざわざ夜間警邏に誘ってきたのでこの話がしたいのかと思ったら、
「いや、」
そうではないらしく、
「…それは、いいんだ。お前のことだから下手を打ったりしねえだろう。そうじゃなくて、その、…」
十四郎は言い出し難そうにくわえた煙草を上下に揺らし、吐き出しかけてまだ点けたばかりと気付いて止め、手に取り、暫く迷ってから、握り潰して捨てた。
「土方さん、携帯灰皿は大人のマナーですぜ」
夜道に紛れてしまった吸殻をぼんやりと目で追いかけて、
「総悟」
やけに改まってこちらが笑ってしまうような呼び掛けに返事はせず、
「その、お前には言っておこうと思う」
総悟は満月に視線を移し、
「俺ぁ、その、交際しようと思っている奴がいる」
ふと、みつばの辛い煎餅を思い出す。
「別に祝福しろってンじゃねえけど、お前とは付き合いも長いから、その、…」
ストレートに“みつばに操立ては出来ない”くらいな台詞を吐けば笑ってやるのに随分と遠回しな言い方をしやがると、月を見つめたまま総悟は心中で毒づく。
「…相手は、お前もよく知ってる奴だし、」
好きな男と好き合いながら男と女の関係にもなれず、悪い男に捕まって命を縮めた姉はどうしようもなく馬鹿で愚かだけれど、
「向こうからお前に伝わっちまったら、なんかアレだし…」
(まあ、抱いてもいない女に義理立てようとするこいつも結構な馬鹿でィ)
死に顔は満更不幸そうでもなかった。
「……その、どうしても厭だってんなら、思い直すっつーか…」
総悟は月に笑う。
「………自分でもどうかと思うんだけどよ、奴は、なんつーか、その、」
「良いんじゃないですかィ」
「…やっぱもう少し冷静に……え?」
「万事屋の旦那でしょう。お似合いとは言いませんけど、路線は悪く無いと思いますぜ。まあ、件の男以上に食えない感じはしますがね」
「…………」
呆けた顔で総悟を見るので、
「さすがに祝福はしないですよ」
小首を傾げて言ってやると
「ばっ…!お前、誰がっ…!」
慌てふためき総悟は声を立てて笑い、
「精々振り回されておくんなさい」
もう一度、満月を見て、そこにみつばが笑っているかのような気がして、総悟は手を伸ばしかけて、
「——ああ、」
——止める。
「きれいでさァ」
うっとりと、総悟はそう言った。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.46 )
- 日時: 2014/08/02 21:57
- 名前: もるたん (ID: QVZFaWyg)
蔵七が小太郎達と出会ったのは攘夷戦争の始めの頃で、と言っても彼女は父親の小間使いとしてちょろちょろと働いているだけだった。その頃はまだ小太郎も銀時も晋助も若く、辰馬が加わる前で、好き勝手に戦をする若造共として幹部連の話題によく上っていた。父親は当時医者と戦略を兼務しているような立場だったから、傍にいる蔵七は自然と彼らの名前を覚えはしたけれど、直接関わるのは怪我の手当てくらいで名を呼びあった覚えも無かった。
“蔵七”は、父の名でもある。彼女の父親は偏屈な人で彼女が産まれた際に自分と同じ名前を名付けた後大坂に医学修行に行ってしまい、以来一度も帰って来なかった。母親が死ぬ直前に大坂で医者をやっていると教えてくれなかったら、ぼんやりと父は“ならず者”か“行きずり”のどちらかであると考えたままであったろう。ずっとはぐらかし続けていた母が何故今際に真実(の断片)を告げたのかは分からないが、彼女は四十九日が明けた後、世話になった人々に挨拶をして、大坂へと向かった。大坂で再会した父は特段歓迎も嫌悪もしなかったが、現地妻がいるわけでもなく、淡々と一緒に暮らしはじめ、ある日突然医家を畳み、娘を伴い攘夷戦争に加わった。当時、彼女は、戦も天人もそれほど恐ろしいとは思わなかった。
敗戦が滲み始め、死傷者が格段に増え始めた頃、父は彼女に戦場を離れるよう指示した。
「死んで益になるものでもなし」
短く、呟くように発せられた声は、最初で最後の父としての言葉であったと、今は思う。彼女は半ば不服を感じながら、けれども半分は少しほっとしながら、戦場から抜け出した。
——驚いたのは、数年後に再会した時、彼らが彼女を覚えていたこと。父の訃報と一緒に誘われて、なんとなしに一味に加わった時、大人になった小太郎が、大人の顔付きで
「ああ。蔵七か」
と言った。蔵七は、それで、落ちた。
高まる動悸を抑えつつ、知っていたのかと聞くと、小太郎は今度は静かに微笑み、
「達磨先生のご息女にしては随分素直で可愛らしいとよく噂されていたからな。戦場であの落ち着きは流石は達磨大師二世、とも噂されていたが…」
小太郎は一瞬だけ懐かしむような目色をしてから、
「折角ご父君が救った命だ。この様な場に戻ってきて良いのかい」
勧誘するでも拒否するでもなく、ただただ優しく、小太郎は問う。それが、何故か、大坂で初めて会った時の父を思い出させて、鼻の奥がツンとして、蔵七は勢いよく頷いた。
「お役に立てるよう、誠心誠意尽力致します」
畳に額を擦り付けて挨拶する蔵七に、小太郎は柔らかく、
「よろしく」
と応じた。
「それでヅラんに忠誠を誓ったの?馬鹿だね〜。見事にヅラの術中に嵌まってるじゃん。馬鹿だね〜〜」
タダ酒を上機嫌で煽りながら、銀時はしきりに馬鹿を連呼する。
「大体お前、子連れで戦場来る奴なんてそうそういないんだから目立つに決まってんじゃん。しかも女だよ?ぎりぎりだけど。自分の娘戦場に連れてくる馬鹿親も馬鹿親だし、ほいほい付いてくる馬鹿娘も馬鹿娘だよねってそういう噂だよ馬鹿」
ひとの金で飲んでるって事忘れてないか、この男。
「それを純情可憐な娘だとかナントカ言われてコロリと転がっちまうなんて、大馬鹿だよ大馬鹿。お、おっさーん、熱燗もう一本〜。あとビール、繋ぎでビール」
何が可笑しいのか銀時はげらげら笑い始めて、
「おっさん聞いてよこの馬鹿。自分が女だと思ってんだよこんなナリで。大体生理もまだの芋ガキ何の役に立つかっつーの。あ、ヅラが居たわヅラ。あいつは生理も乳も無ェのに役に立ったわ」
腹を抱えて大爆笑している。何がそんなに可笑しいのか皆目分からない——が、あんまり大声で話して欲しくない内容だとは分かるので、
「さ、坂田さんは、父の事よくご存知なんで?」
瓶ビールを注ぎつつ、精一杯愛想笑いを向けると、銀時は死んだ魚そのものの目を蔵七に向けて、ぷいと背けた。
「けっ。知らねえよあんなクソ親父。額で薪でも割ってりゃ良いんだ」
不味そうにビールを煽る。
「ははあ。仲はあまりよろしくなかったのですね」
ちびりと、蔵七はビールを飲んだ。
「あんなクソオヤジと仲良くできるのなんて人類皆穴兄弟のヅラくらいなもんだろ。人の事いつでも死んでくれて構わないとか言いやがって。自分が先に死んでんじゃねえか馬ァ鹿」
熱燗がやって来たので、猪口に持ち替えさせて、注ぐ。
「あはは。父が言いそうな台詞ですね」
すかさず銀時はぐい飲み、
「笑いこっちゃないよ全く。あのひょっとこ頭本当に人の事危ないトコに配置するからね。本当に死んじゃうからね!」
もう一杯注ぐとそれも飲み干し、蔵七は自分も猪口に持ち替えて、手酌で注ぎつつ
「父は冗談を言わない人でしたから」
うっすらと笑う。
父は、医者をやっていた割にと言うのか医者をやっていた為にと言うのか、とにかく、人の命と虫の命とを区別しないようなところがあった。敵味方の死者数は気にかけても誰が死んだかには興味が無いような、そういう考え方をする人だった。
(だからこそ、私を逃がしてくれた事に、)
蔵七は温かい情を感じる。不器用な父の不器用な愛情を、あの時初めて、蔵七は感じる事ができた(と、気付いたのは後になってからだが)。
「——でも、好きか嫌いかで言うと、好きだったと思いますよ」
銀時の器を満たし、燗を置く。ほんのり温かい器を掌で包み込み、
「私も、——」
——あの頃は、
「淀みなく刀を振るい続ける桂さんより、」
——美しく流れるように命を奪っていくあの人より、
「坂田さんの方が、」
——嵐のような剣捌きで敵を薙ぎ倒していく夜叉の方が、
「——憧れ…」
「ぐうううう」
「————…」
「ぐううううううううう」
「……」
蔵七は携帯電話を取り出す。着信履歴から目当ての宛先を見つけると、発信ボタンを押した。
暫くして、——
「もしもしでござる」
何度かテレビでも聞いているオカシイ侍語が電話口に出、
「坂田さん、酔い潰れましたよ。勝手に取りに来て下さい」
「でかしたでござる」
「桂さんは…」
「気持ちよく寝ているのを起こすのも忍びない。明日、帰るよう伝えよう」
「……分かりました」
これで後は、エリザベスが小太郎に頭を下げれば
(万事解け…)
「あ、そうそう。言い忘れてた。その携帯電話にはGPS機能があって、もうすぐそちらに着くのだが、本人たっての希望で…」
「よう、火吹きの娘」
「!!」
「…晋助が行くことになった」
(言うのが遅い!!)
晋助は空煙管を右手でくるくる回しながら、表面上とても上機嫌に笑いかけ、
「ここら辺で、オススメの宿はどこだィ」
目付きは早く連れてかねえとぶっ殺すと言っている。
「……は、はい…」
蔵七は脳内で攘夷系曖昧宿リストを5倍速再生しながら、心で思った。
(だ、誰か父のこと普通に呼んでくれないかなあァァ〜)
「良い夜になりそうだなァ、蔵七」
「は、…はいっ!はいっ!」
蛇に睨まれた蛙の気持ちになりながら、
(パパァ〜)
弱々しく、祈った。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.47 )
- 日時: 2014/11/20 22:38
- 名前: もるたん (ID: 1lVsdfsX)
授業中は大抵寝ているけれど、授業が終わった後の静かな教室から眺める外の景色は結構好きで、銀時はよく窓辺でぼんやりと日暮れまで過ごす。窓外の世界は真っ昼間だろうと夕暮れだろうとほとんど人通りもなく、人声も聞こえず、小さな鳥が行ったり来たりするだけの変化に乏しい淡々とした地味な光景だけれども、銀時はその光景にだけは愛着を感じていた。家族も故郷もあったかどうかすら定かでない銀時の、ただ一つ“ふるさと”と呼べるような代物が、その光景だった。
「ああ、やっぱりここだった」
(……)
軽やかな足音と共に遠慮なしに銀時の放課後の楽しみをぶち壊した級友は、
「松陽先生が足を挫いてしまって、今日はウチに泊まるんだ。多分骨は折れていないが一晩様子を見る」
銀時の様子などお構い無しに窓を端から閉めつつ
「貴様も来い」
話が唐突過ぎて要領を得ないのだが、
「先生は実家に世話になれと言っていたが、貴様、先生の実家とあまり上手くいっていないだろう」
銀時の寄りかかっている窓辺以外全て閉め終わって、小太郎ははじめて銀時を見つめた。銀時は小太郎に向けていた顔を再び外へ向けて、
「ガキじゃねえんだから留守番くらい出来る」
「それでは先生が心配する」
銀時のすぐ隣に正座し、
「俺は嘘は吐かないからな」
銀時の承諾を待っているらしい。
「…じゃあ、あの人の実家に行くよ」
「嘘と分かっていて見過ごせる訳がなかろう」
断定しやがった。
「…すぐバレるような嘘吐くかよ」
「では俺も一緒に行こう。事の次第は俺から話した方が良かろう」
立ち上がりかけたので、慌てて留める。
「——あ、いや、もう暗くなるし、テメエこそ早く帰った方が良いんじゃねえか。姉ちゃんが心配するだろう」
「ふむ」
小太郎は窓外に目をやる。夕暮れも大分終わりかけていて、外も教室内も薄暗い。松塾は城下でも外れにあるから、小太郎の家までは結構長く人気のない道が続く。
「そうだな」
小太郎は頷いて、真っ直ぐな瞳を銀時に戻し、
「では、やはり貴様も和田の家に来た方が良いだろう」
「——…な、」
「鬼が出ても蛇が出ても、貴様が一緒ならば安心だ」
美しく、微笑う。
「…………」
銀時が絶句している間に最後の窓が閉められて、室内は真闇となる。
「早く帰らねば飯にありつけぬぞ」
はしゃいだような声と共に他愛もなく握られた手は冷たく、想像以上に小さかった。