複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 黒白円舞曲 力及ばず閉鎖 申し訳ありません!
- 日時: 2012/04/08 15:14
- 名前: 風(元;秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: r3A.OAyS)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11520
初めまして,風猫と申します。
この他にファジーで一作、シリアス・ダークで二作執筆しています。
題名変更しました……
参照に掲載されているURLの作品も是非★
〜作者状況〜
執筆中【】
申し訳ありませんが執筆中に〇が付いている時は書き込まないで下さい。
$$$来賓のお客様$$$
弥生様(初のお客様です)
みう様(二次小説の方の小説も読んでくださった良いお方ですvv)
白哉様(勘違いを申し訳有りません)
右左様(あだるとちるどれんと言う天才的小説の執筆者です★)
ゆn様(私を尊敬してくれる数少ない人です♪)
逆憑 緑茶様(ねこうさぎだと分らなくてすみません!)
アビス様(隠れた名作家さんです^^)
メフィントフェレス様(何と言うシンクロ率……こんな方が!?)
かりん様(紙文作者じゃなくて神文作者なので自分を卑下しないで!!)
霊夢様(凄く儚い綺麗な小説をお書きになる方です)
葵様(二次小説のほうで凄くお世話になってます!!)
帽子屋様(才能は分けるほど持っていないので御免なさい!名前間違えすいません!)
朔様(えっと,凄い人です!絵も小説も書ける凄い人!!)
リオン様(妖怪物書いてる子です♪テンション高い子?)
琴葉様(小説宣伝書いてくれました^^)
ひふみん様(シリダクの方では,凄い良いセンスのオリキャラを造ってくれました!)
ヴィオラ様(オリキャラ投稿の第一人者です!)
玖龍様(マブ達の一人! マセガキでもある!!)
コーダ様(コアなお方なんでしょうか? 男性だったり??)
琴月様(妖艶な日本風作品が素敵なお人です)
一人称様(名前のセンスが素敵だぜ!)
水瀬 うらら 様(可愛らしい名前ですね^^そして、真面目な感じがします♪)
朱雀様(コメディ・ライトのホープです^^)
よもぎ餅様(オリキャラありがとう!)
狒牙様(BLEACHの件でいつもお世話になってます!)
暮来月 夜道様(Neon様です! カキコでは、高名ですね♪)
陽様(久々の常連になってくださりそうなお客様です^^)
チキン様(オリキャラ有難うございました!)
羽風様(キリカの方も着て下さって有り難いです!)
来良様(えっと、沢山勉強しましょうね^^)
ゆぅ様(ゴールデンタイムラバーと言う小説を執筆してるお方です!)
小林様(ヴァンパイアって響きから素敵ですよね?)
如々様(素敵小説の執筆者様です! マジ素敵小説ナウ!)
桜板様(私などとは違う女性らしい綺麗な小説を書くお方です!)
以上35名のお客様です
私の小説を覗いて天津さえ書き込んで頂き真にありがとう御座います。
又のお越しをお待ちしております。
皆様から頂いたオリキャラ
アビス様より アルベルト・スターク(人間A) >>65
葵様より アリス・クイーン(悪魔) >>70
ヴィオラ様より フィリクス・グリモワル(人間T) >>72
リオン様より リオ・グレイシャ(霊族) >>75
コーダ様より ルテ・ルージュ(悪魔) >>102
逆憑 緑茶様より レノ・C・ラグルスI悪魔) >>113
朔様より ノルド・スティレイン(人間N) >>117
よもぎ餅様より ルロイセン・ル・ルー(人間X) >>118
狒牙様より メリー(霊族) >>128
暮来月 夜道様より オウィス・ナイトメア(人間M) >>137
チキン様より ファウスト=ギラ(悪魔) >>170
白月様より ディルス・ロンレッド(人間B)>>194
ゆぅ様より エギン・ナローズ(悪魔)>>195
◆◆◆Story◆◆◆
>>11 1曲目「神々の起した嵐」更新
>>14 2曲目「悪魔は闇?天使は光?」更新
>>18 3曲目「魔界ラヴァーズ」更新
>>29 4曲目「ニャンニャン冒険記」更新
>>39 5曲目「宵闇に紛れて踊れ…………」更新
>>44 6曲目「天使進撃 Part1」更新
>>53 7曲目「天使進撃 Part2(弱き者よ)」更新
>>81 8曲目「天使進撃 Part3(リガルドVSアンリ)」更新
>>101 9曲目「天使進撃 Part4(激震)」更新
此処から、記載の仕方を変更します。
第1章 10曲目「天使進撃 Part5(援軍)」
No1 >>121 No2 >>135 No3 >>142 No4 >>149 No5 >>162 The end
第一章 十一曲目「天使進撃 Part5(終幕)」
Part1 >>175 Part2 >>185 Part3 >>201 Part4 >>207
★★★キャラクタプロフィールや追加設定資料★★★
>>63 キャラクタプロフィール 掲載欄 S.24 3月2日更新
>>64 オリキャラ募集要項設置
>>148 朔様作 アンリ絵掲載!
>>164 長月様作 タピス絵掲載!
>>199 アンケート用紙掲載!
>>223 朔様作 セリス絵掲載!
###注意事項###
1.グロ要素やキャラクタの死亡等が多く入ると思います。苦手なお方は…
2.荒しや他者・私等への嫌がらせチェーンメールや宣伝等の小説と関係の無いレスは遠慮願います。
3.五つの小説を同時にこなしています。現実も社会人ですので何かと大変です。
更新が遅くなることはご了承下さい。
4.シリアス70% ライト30%位の割り合いにしようと思っています。
シリアス苦手な方は注意!
5.最後に作者状況の欄が執筆中の時は書き込まないで下さい。
決して感想を書いて貰うのが嫌だと言う事では無いですよ!!私寂しがりやです!!
以上です。
〜キャラクタ設定要項〜
名前【】
年齢【】
性別【】
種族【】
身長・体重【・】
容姿【】
性格【】
得意魔法属性【】
気術を有しているか【Yes/No】
気術名【】(有している場合)
気術の能力【】(有している場合)
詳細【】(過去や趣味など)
仮想CV【】
作者用です
_____//基本用語集
ⅰ.五大世界
天使と天神が支配する「天界」
悪魔と悪神が支配する「魔界」
他と隔絶した圧倒的な戦闘力を持つ生物「竜族」が住まう「竜獄」
肉体有る者達,世界と呼ばれる場所の者達が死んだ時逝く世界「霊界」
普通の人間や生物が住まう「世界」または「現世」
この五つを纏めて五界と呼ぶ。
ⅱ.バスターズ
主に生きた人間達が住まう世界で現世に現れた悪魔や迷い霊を調伏する魔法力及び気術を行使する戦士達。
彼等バスター達を束ねる組織を「アルティマニア」と呼称する。
アルティマニアの教主「ルーダー」は天界の神々と交信出来るとされる。
上位の存在として「十二星座」や「四天王」、「五亡星」と呼ばれる集団が居る。
ⅲ.魔法
天界では天力・魔界では魔力・人間界では自然力・霊界では霊力・竜獄では獄力を使う事により発動する。
詰り,世界に伝わる魔法により力の源泉が違う為使える魔法の性質等も多種多様である。
同じ炎の魔法などでも全く違う。
だが,全ての世界の魔法には基礎となる
「炎」「氷」「雷」「水」「風」「土」「光」「闇」と言う八大元素が有り
その元素と世界の者達個々の魔法力(霊力や自然力等)をそれに同調させて使うと言う
基本概念は同じ。
ⅳ.気術
魔法とは違う力。
武器や自らの体,他の生物や機械などに作用させる力だが魔法と違い決まった轍が無いのが特徴。
言わば戦士として力を得た者達が有する個々の特殊能力といえる。
ⅴ.特殊体
又の名をイレギュラー。
悪魔と人間のハーフ等本来交わらぬ地平に居るべき存在同志が交配して生まれる存在。
天使と悪魔のハーフはイレギュラーには含まれないのは本来天使と悪魔は同じだかららしい。
人間界「世界」には26人の特別指定イレギュラーが存在する。
それらのイレギュラーを悪魔達は「アルファベット」と呼んでいる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒白円舞曲 第1章 プロローグ
この世界は、五つの世界に大別されている。
人間の住まう世界と呼ばれる世界。
そして、人間が崇拝する天神達の住処、天界。
天使達と日夜地獄絵図に出てくるような残虐な殺戮劇を繰り広げているとされる悪魔達の住処、魔界。
そして、死した世界の霊達が集う霊界……
最後に,世界に住むべき住人でありながら、世界に住まうには圧倒的に強過ぎて、隔絶された竜族達の住まう竜獄。
この物語は人間達が闊歩する世界から始まる————
空は透き通る青、世界を飛び越え宇宙までも手で掴めそうなほどに晴れ渡っている。
そんな空を見下ろしたある草原、丈の低い草達が群生する野原。
ある男が、長大な剣を枕にして眠っている。
男は、黒のロングコートを着用していて黒の縮れた長髪で、顎は太めのガッシリとした感じだが、端整な目鼻立ちをしている。
男の名はイースレイ・ファルニカ。 アルティマニアに所属するバスターだ。
右と左の夫々の瞳の色が右は青…左は赤、その所謂オッドアイ故に、バスターになった当初は良く、周りから摘発されたらしい。 そんな事を無視して、前へ進んで此処まで来たと十年以上戦い続けて自負している。
空は青く澄み渡っていて宇宙まで届く様な気がした————
そよそよと頬を伝う冷たい風が気持ち良い。
男は左半眼を薄らと開く…その瞬間だった。
空の全てが深紅の赤となり彼の瞳に映る…
「やめろ」
イースレイは寝起き様に懇願するように必死に言う。
そしてまた目を瞑り嘘だと心の中で叫びながら再び目を開ける。
赤……赤…………——真っ赤!
大切な人の血の色————
脳内に過去がフラッシュバックする。
幸せだった過去,
祖父・祖母・両親・弟そして,あの日は多くの親戚が来ていて立食パーティを行っていた。
料理好きの母が元一流バスターだった父が狩りに出て魔法で仕留めた馬や猪の肉を捌き腕によりを掛けた料理を振舞う。
歌うのが好きな牧師の小太りの親戚の男の近くでイースレイは男の牧師の歌とは思えない歌声に酔う。
幸せな時間が……続くと思っていた。
酒が振舞われ皆が酔い痴れ大騒ぎになってきた頃だった。
突然,イースレイの目の前に居た老婆の首が吹き飛んだ。
それからだった。高速で移動しながら正体不明の存在は情け容赦なく親戚を家族を葬って行く。
美しい緑の草達が踊る外での立食パーティは一瞬にして血の朱に染まる地獄と化した。
——————俺はあの時、怖くて机の下に隠れていた
イースレイの大切な人々を全て切り刻み、惨殺した存在は生きた人間が視界に存在しないことを確認すると立ち止まった。
銀色の腰まで届く、長い髪、左目が白で右目が黒の左右不対象な瞳の色。
それにアシンメトリーするように、右が白で左が黒の双翼……
————天使なのか? 悪魔なのか……俺の存在に気づかないでくれ
人間ではない。
天使か悪魔であることはその姿から一目瞭然だった。
震える手を脈動する体を必死で押さえながら早鐘を鳴らす胸部を強く掴みながら念じた。
頼むから気付かないでくれ…大切な人全てを奪ったんだから自分だけは殺さないでくれ。
思えば唯,怖かったのだろう……唯、生き延びたのだろう。
誰だって、死にたくはない。大切な誰かが死んだって自分だけは生き延びたい。
「そこ……生存者が居るな」
抑揚に欠ける天使とも悪魔とも付かぬ白と黒を貴重にしたローブを着た声から察するに男。
察知された……そもそも、一流のバスターである父が反応も出来ない様な化物が気付かぬ筈がない。
怖い! 怖い……怖い怖い怖い! 心臓が更に強く限界近くの強さで鼓動する。
俺は 俺は 此処で死ぬ……いや,死んでも良いだろ…… 一瞬さ,痛くない……
大粒の涙が頬伝う。
一瞬で死ねるんだから痛くなんてないって、心に言い聞かせても生きたいと言う本能が、生きろと未練は無いのかと喚くのだ。
「人間……私が憎いか?」
——え?
「憎いか?」
————憎い 憎いに決まってる! 殺してやる……殺して!!!
「ならば、強くなって、私を殺して見せろ!」
何故、生かされたのかは、理解できない。
然し、イースレイは天使とも悪魔とも付かぬその存在の気紛れか……それとも気紛れに見えるだけで大いなる目的があるのかどちらにしろ生き延びた。
生かされた。 今もイースレイの胸の中に残る故郷の光景はあの血の海だけ。
「うおぉぉぉ!」
空すら引き裂くような雄叫びを上げ大地を割るほどの全力で長剣を振るい過去の赤き記憶を切裂く。
ハァハァと呼吸を荒げさせ深呼吸して心を落ち着かせ一頻り目を閉じ目を開く。
あの赤い空は消えている。 ホッと安堵の溜息を吐き荷物を背負い目的地へと歩き出す。
悪魔祓いとして……舞い込んだ依頼の場所へと———
今日中には依頼をくれた村に付く。
男は足早に悪鬼達に苦しむ者達を救いたいが故に歩く。
今は日の傾きから朝の十時位か。
今日の夕方には村に到着し明日には悪魔の根城に攻め込み調伏する。
刻一刻と被害は増える筈だ。
————村が見えてきた。
夕方,予定通り村へと到着する。
悪魔がそれも資料の上では上級悪魔が居る筈なのに村に行き着くまでに
使い魔一匹にも遭遇しないとは妙だと思いながらイースレイは村へと足を踏み入れた。
「迷い猫みぃ〜っけ」
そんなイースレイを遠く人間の視力では
存在を認識出来ないような場所から監視する何者かが居た。
Fin
Next⇒第1章 1曲目「神々の起した嵐」へ
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 5曲目執筆中 ( No.32 )
- 日時: 2011/04/13 20:05
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
アビス様へ
まぁ,魔界で産まれた悪魔は魔界の空気に伝染してしまうんですよね……
上級になれば消えるみたいに書いてあるけどもう少し突っ込んで書いてみようかな(苦笑
イースレイは一応仮にも人を護る道を選んだ人間ですからね……
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 5曲目更新 コメ求む!!!! ( No.39 )
- 日時: 2011/04/19 16:38
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒い空が一面に広がっていた
青い……青い 青い! 青い!! 青い!!! 青い!!!! 澄み渡ってあの太陽までも手にする事が出来そうなあの青い空が恋しい。太陽と呼ばれる存在のあの圧倒的な存在感……始めて来た時はあの退廃した物悲しさも儚く神秘的な月と呼ばれる存在も悪くは無いと思っていた……
だが,此処は元々は俺達の様な存在の住む様な場所じゃなかったんだ……そう,神々の気紛れで弾圧され誇りと思っていた白き翼を黒く染められ俺達は堕落の調印を押された……
————————今や,唯……神々が憎い!! 神々の造りし人間も……また
何故だ? 何故,憎めない?? 理解出来ない————
神か? 神が俺を束縛するのか? 身勝手な……堕としておいて切捨てやがって…………
何と身勝手な輩だ————
黒白円舞曲 第1章 5曲目「宵闇に紛れて踊れ…………」
深夜,イースレイが魔界に来て2度目の夜が来た。実際は拉致同然だったが今後を考えると最終的には感謝されるだろうとガデッサは確信している。そんなガデッサはと言えば今,いびきを上げて自室の席で眠って居た。
そんな中,部屋の前に設置され呼び鈴が押されたのか呼び鈴の高い音が響き渡り夜の静寂を打ち壊す。そして,数秒後,返事の有無など関係ないという風情でドアノブが周る音がする。
その音に睡眠を害されたように呻き声を上げて一瞬,ドアの方をガデッサは頭を上げて確認する。確認するとエルターニャの姿が見える。ガデッサは無表情な彼女の顔を見て渋い顔をしてまたうつ伏せになる。
眠った振りをしてエルターニャを帰らせようと言う原だ。エルターニャと言う女性は生真面目で自室に来る時は何かしら案件を用意してくる。今は,眠くて真面目な話をする気力はガデッサには無かった。
「狸寝入りが相変わらず下手ですね? ガデッサ様?」
トーンの低いエルターニャの声にガデッサは今回は帰ってくれないのかと怯え一瞬体を脈動させる。だが,基本的にガデッサを立てようとするエルターニャの事だから粘れば或いはとガデッサはうつ伏せに成りながら神に願うかの様な表情で祈り続ける。彼女が退室することを——
然し,世の中は何と無情なのだろうか。エルターニャは溜息をつき寝た振りをしているガデッサへと近付いてくる。コツンコツンと足音が確実に大きくなってくるのが分る。ガデッサの顔が一層引き攣る。
「お起きになって下さいガデッサ様…………何時まで狸寝入りしてるんだ!? さっさと起きろ!」
ガデッサの体に手を伸ばして届く程度の距離でエルターニャは止まり暫し,ガデッサを観察するよう見詰め数秒後,ガデッサの体を揺すり出す。2〜3回揺すって優しい声で起床を促す。
しかし,ガデッサは我慢し続ける。その様にエルターニャは嘆息し大きく息を吸いドスの効いた低い声でガデッサを起しにかかる。
ガデッサはどうやら逃れられないらしいと悟り目を覚ます為に一度,強く机に頭を叩きつけ起上がる。
「おっはぁ〜★ 相変わらず仏頂面な俺の天使ちゃんね?」
ガデッサは頭から血を流したまま月明かりに浮き上がるエルターニャを見詰め,先ずは気の無い挨拶をする。そんな適当な返事に対して呆れた風情で普段は表情の写らない瞳を動かしエルターニャは嘆息する。
「ガデッサ様」
「おっかねぇなぁ……起きたんだから良いじゃねぇか!?
そう,ツンケンすんなって……俺チビッちゃうから」
そんな,緊張感のないガデッサにエルターニャの苛立ちは高まって行く。無意識に声に怒気がこもる。そんな彼女の声に肩をすくめてガデッサは何時までも過去の事を引き摺るなと渋面を造って言った。
「お言葉ながら貴方が率先して起きたのではなく私が起したのですが? それに,今を何時とご存知ですか? 今は,お早うの時間ではないでしょう?」
「何度言わせリャ分るんだ? シャングリラでは俺が起きた時からが朝なんだよ!! って言うか細かい事気にしてると皺ッ……ガハッ————」
そんな責任逃れしようとするガデッサに尚も厳しい語調で彼女は続ける。彼女の言い分は至極ごもっともで普通なら聞き逃すか謝る所だがガデッサにも一応,組織のリーダーとしてのプライドがあるのだろう。
身振り手振りを加えて激しい語調でまくし立てる。その言葉はまるで自己中心的な暴君の様な言い分だが事実,シャングリ・ラでは彼が朝だと言えばその時間が朝だと言う感覚が多少ながら有る。
それと是とは話が別だとしたり顔のガデッサを呆れた表情でエルターニャは見詰る。然し,その呆れたと言う顔の中に相変わらずだと嬉しそうな表情がチラリと見える。
そのエルターニャの表情の動きを見てガデッサは安堵したのか冗談めかして勝手にストレス感じてると良い事が無いのにと,皮肉をこめて皺と言う言葉を口にする。その瞬間,エルターニャの表情が曇る。
「皺とは……失言ではないですか?」
『あれ……今日,自棄に気が短く有りません……姉さん??』
それに対してエルターニャは,冷徹な色の無い瞳で睥睨しながら自棄に冷たい語調でガデッサに反論する。ガデッサは普段,この程度のことは受け流すはずなのにと目をしばたかせる。
そして,悟る。今は何が合ったのか彼女は機嫌が悪く下手な事を言うべきでは無いと……然し,出来るだろうかと其れと同時に逡巡する。彼の軽口は天性の物だからだ。僅かに冷や汗が流れているのが自分でも分る。いつも冷たい表情の彼女だが,自棄に冷たく見える。今,ガデッサには妙な重圧が掛かっていた。
男は,何度か深呼吸して真面目な顔を作り背筋を伸ばしエルターニャを見詰る。そして,案件が何かと促す。そのガデッサの態度にようやく満足が行ったのかエルターニャは微笑を浮かべる。
ガデッサはと言えば,微笑を浮かべてくれたからと言って直ぐに表情を緩めては,今度は厳しい罵倒を食らわせられるだろうと悟り努めて冷静な表情で彼女の報告を待つ。
エルターニャの話によればどうやら,天使が単騎でシャングリ・ラの南西区画に侵入したらしい。情報源はシャングリ・のラ情報通としてしられる猫族のリーダーである三毛猫のシャム,通称:ネコ番長,このシャングリ・ラで最も信頼できる情報屋である。
どうやら,天使がシャングリ・ラに進入したのは間違えない様だとガデッサは確信する。天使が堕天していないのは間違いないらい。下の上からは結界に阻まれて入る事が出来ないようになっている事から恐らくは対象は下位の中でも弱い部類の天使だろう。
良く,結界を内側から破壊する為に下位の天使は使われる。力が弱過ぎる天使に反応できる優秀な防壁を造る事が魔力では不可能なのだ。
情報通で鋭い感覚の持ち主であるネコ族は,そんな下位天使対策の為の監視役でもある。
「やれやれ……随分と間抜けな天使ちゃんみたいね?」
「さて,どうでしょうね……直接,対象とコンタクトするまでは何とも言えないかと?」
一部始終聞いて眠たくて下がりそうな瞼を頑張って上げているガデッサは欠伸をしながら対象を馬鹿にしたような風情で言った。それに対してどんな相手でも油断するなと言う風にガデッサに警告する。
「そうね——じゃぁ,さっさと行こうかエル?」
ガデッサはそんなエルターニャに対して,油断したって良い事は無いと納得したような風情で頷き,立ち上がり凝った肩をほぐす様に軽い運動をして,そろそろ行くかと促す。
一方,エルと呼ばれたエルターニャは,何か物申したそうな顔をしながらガデッサの後ろを随行した。ガデッサがエルターニャをエルと愛称で呼ぶのは2人で居る時だけだ。
実は,エルターニャはガデッサに惚れていた故に天の神々を裏切ったと言う経歴がある。
ガデッサ達は南西区画へと移動する為に,本拠地の南西玄関へと進む途中,妙な者を見付ける。それは,アンリに自室を追出されたウルブスだった。どうやら,涙を流して咆哮している様だ。
鬱陶しいと思ったガデッサはウルブスの後頭部を蹴り飛ばす。脳味噌が詰っていないのかウルブスの頭は綺麗な音を立てた。蹴り飛ばされ床に叩きつけられたウルブスは数秒間沈黙する。
「死んだか?」
「まさか?」
「勝手に殺すな!! って言うか何!? 何で俺は入っちゃいけないの!? 俺,自室アンリに追放されたんですけど!! って言うか,俺の寝場所!!」
長い沈黙が続く。余り強く蹴った積りは無かったのだがと反省気味に言いながら顔を歪めてエルターニャに返答を願うガデッサに対して,あくまで冷静な風情でエルターニャは有り得ないと断言した。
ホッと一息ついて,ガデッサは笑い出す。体の頑強さだけが長所の目の前の男があの程度の蹴りで,死ぬ訳がないと何だか限りなく無礼な敬意をガデッサはウルブスに送っていた。
しばしの沈黙の後,ウルブスは案の定,起上り先程と同じ様に五月蝿く吠え始める。ウルブスは混乱しているようで言葉が繋がっておらず伝えたい事の要領を得ないがガデッサ達は何となく状況を理解してウルブスを無視して歩き出した。ウルブスの嘆きの慟哭が廊下を木霊し続けた——
恐らく,ウルブスはアンリに無理矢理自室を追出され更に,仕方が無いからアンリの部屋で寝ようとしてアンリの部屋に着たら「入ったら殺す 僕のベッドを穢すな狼」と言う張り紙を発見したのだ。
理由の一端はアンリにウルブスの部屋で眠って良いと許可したガデッサにもあるのだが,アンリと話した時は半眠りだったガデッサは無論,その様な事は忘れていた。
————南西玄関,外に出ると清涼な風が頬を撫でる。ガデッサは実は夜の散歩が好きだ。魔界に来て何万年かして魔界の象徴である月が嫌いに成った時があった。
それは,元々は光と闇が交互に訪れる天国で生活してた物故だろう。恐らくは,ガデッサがこのシャングリ・ラを開拓したのも太陽を恋しいと思ったからだろう。魔界の魔気を長い年月をかけて,洗浄して青い空を作りシャングリ・ラを照らせる程度の擬似太陽を造ったのだ。
そうして,太陽を手にしてからだ。月への嫌悪が少しずつ消えて月への敬意が生まれてきたのは……そんな過去を,夜になるとガデッサはいつも思い出す。
「どうかなさいました?」
「今まで,付いてきてくれて有難うな……」
「何を今更?」
感慨にふけり震えるガデッサを心配するようにエルターニャが言うとガデッサは是からも宜しく頼むという本音を含んだ感謝の念をエルターニャに伝える。 エルターニャは顔を少し赤らめて溜息をつくように言った。いつもの会話だ。最近は良く,ガデッサがエルターニャに対して,長い間付き添ってくれて有難うと言う労いの言葉を言う様になった。
自分の意思で従っているエルターニャにとって,実はそんな感謝が余り嬉しくはなかった。自分にとって当然の事をしているのだから感謝される必要は無いと彼女は思うのだ。
「ネコ番長に挨拶してから接触するか」
「それは良い考えですね」
しばらくの間,沈黙し2人は寄り添い合い月を……満天の星空を見詰る。流れ星が流れる。ガデッサは人間を神々から救うことを流れ星に誓い,エルターニャはガデッサと結ばれる事を星に願った。
そんな中,先に言葉を発したのはガデッサだった。思い出したように天使の情報源の事を思い出し,天使に会う前に先ずは彼に挨拶をした方が良いかなと言う。
それに対しエルターニャは全面的に肯定してくれた。
ガデッサ達は移動を開始する。
その途中で,ネコ番長に遭遇し挨拶をしあって天使の現れたと言う現場へと向かう。其処は,少し前,天使によって襲撃され崩壊した家々が広がっていた。復興もそれなりに進んでいるが未だに爪痕は生々しい。
ガデッサは,すぐさま天使のエネルギー反応を補足する。随行しようとするエルターニャを制して全力で対象へと走り出す。直ぐに天使を視認出来る所まで移動する。
自らの巨大すぎる力を極力抑えて身を潜め,しばらくの間,天使の行動を監視する。天使は155cmそこそこで年齢は人間にして10代後半から20代前半と言う所で目の色は青と赤のオッドアイ……色白で少しおっとりした容姿をしている。
天使は,倒壊した家々を見詰ながら苦々しい表情をしている。どうやら,自らの一族がやった行為に驚愕し絶望している様だ。ガデッサは死した魔族を塵を見る様な瞳で一瞥する天使を何度も見てきた。どうやら演技と言う訳でも無さそうだ。兎に角今まで,子の様な反応をする天使を見た事が無い。
ガデッサは意を決して彼女の前に姿を現す。全く,監視されていた事に気付かなかった彼女は,心底驚いた表情で突然現れたガデッサに唖然としている。
「月が綺麗な夜ですねお嬢さん?」
「あっ………あははっ,そうですねっ,えっと……魔界の月も綺麗なんですね……」
驚き,逡巡する天使に颯爽とガデッサは挨拶する。それに対して,警戒しながらも笑いながら少女は挨拶する。あどけないその挨拶にガデッサは,自然に笑みが零れる。それにつられて彼女も微笑む。
「所で,お嬢さんはこんな所で何を?」
「言ったら僕の事を殺したりする?」
天使の緊張を少しでも和らげる為にガデッサは微笑を崩さず彼女に質問する。すると,彼女は至極当然の疑問を口にする。ガデッサも流石にこれ程,単純な問いかけでは答えてくれないかと思う。
「場合に寄るが言わなきゃ絶対死ぬ……
あ〜ぁ〜……俺だってアンタみたいなお嬢さん殺したく無いって!」
然し,理由も聞かないで殺すのは,大量虐殺を平気で行う腐った天使と同じ様な気がしてバツが悪い。仕方ないとばかりに嘆息して言えば助かる可能性も出ると示唆した。
「——————僕,聞いちゃったんだ? 神様達の世間話なんだけどさ……神様達は人間がどんなに,罪を悔い改めた所で殺す積りなんだ!! 嫌だよ……人間は僕達の家族みたいな存在なのに!」
そのガデッサの言葉を聞いて彼女は子供の様に目を丸くして,少し考えてから話し始める。どうやら,彼女は神々の会話をどの様にしたのか聞いてしまった様だ……神々は矢張り,1000年前の契約を破り人間を虐殺する積りらしい。ガデッサは怒る。
勝手に創造して気に入らなかったら直ぐに壊す。少し,自分の思い通りにならなかったら堕として虐待して破壊する。怒りが沸々と燃え上がる。鬼の様な形相に成り掛けている事を悟りガデッサは顔を覆う。
そんな時,嘆願するような彼女の声がガデッサの鼓膜をつんざく。ガデッサは大声を張上げ近くに有った建物に拳をぶつける。建物は砕け散り崩落した。訳が分らず天使の少女は倒れこむ。
「やっぱりか……あいつ等本当に気紛れなんだよなぁ。で,君……名前何て言うの??」
ガデッサは神を拒絶する様な声音で神々を気紛れと称し,しばらく沈黙して天使に向き直り名前を問う。
「えっ!? えっ……えっ!!? えっと,僕はカナリア・ハーレイ……カナリアって言います!」
『ハーレイ?』
天使の少女は,恐怖に弛緩するする体に力を入れて名前を名乗る。最後の名前を強調した言葉はカナリアと呼んで下さいという事だろう。ガデッサは,微笑ましげに目を細める。
然し,そんなガデッサの中にある疑念が走る。ハーレイ家と言えば天使の一族の中でも最上位に位置する天使を何人も輩出する武術に秀でた名家だ。天使の中でハーレイと言う苗字の者は皆,其処の出自だ。
詰り,目の前の弱弱しい彼女にもその武勇に優れた名家の血が流れていると言う事だ。今は,まだ力は無いが仲間にすれば強大な戦力になるのではないか。
然し,是は業とではないか。組織の内部から崩す積りか……ハーレイ家は神々に絶対遵守を誓った一族だ。いかに,神々が戯れをしようとそれに対して何も考えず平気で大量虐殺をして来た輩だ。
不意に,不安になる。無垢な瞳が痛い……こんな無垢な存在を疑っているのかと良心が痛む。然し,是すらも演技かも知れないのだ。ガデッサは意を決してカナリアの顎に手を当てる。
「えっ? なっ……何ですか?」
「悪いな……俺は汚い奴らしい。あんたの本心を知りたい」
カナリアはこんな風に異性に積極的に顔を触れられた事は無いのだろう。しばらく瞠目して,接吻でもされるのかと状況を勘違いして顔を真っ赤にする。それに対してガデッサは容赦なく気術を発動する。
ガデッサの気術はイマーシナリー,両目と両目が数秒間重なり合った対象に一回だけ絶対遵守の命令をする事が出来ると言う物だ。命令によって永続的な物である場合も有れば一時的な物も有る。
今回の,カナリアに掛けたイマーシナリーは一時的な物……彼女の胸の内をガデッサが知ればカナリアは解放される。然し,カナリアは嘘を付く事は出来ない。
カナリアは,取り付かれた様な空虚な瞳で自分の胸の内を言い続けた。天使として人間を殺したくないし元天使だったガデッサ達とも戦いたくない……
こんな事は間違っていると思う。兄達はしがらみに捕らわれているが自分は何とかして兄達を呪縛から解放したい……その為なら堕天使になっても構わない……ガデッサ達が人を救おうとしているのが分るから————彼女は,本心を吐き出すとゼェゼェと妙な息の仕方をしてガデッサに倒れ込んだ。
「お前,凄いよ……凄い! ようこそシャングリ・ラへ……カナリア」
「んっ!? うあぁっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『堕天が始まったか!』
カナリアの本心を無理矢理ながらに聞いたガデッサはカナリアを心底賛嘆した。彼女は,力の波動からするに力は弱い。しかし,自分の手で此処に来たのだ。 いかに弱いとは言え裏切れば殺される可能性が高い……それを恐らくは覚悟の上で逃げて来たのだ。気の弱そうな顔とは一致しない気の強さを持っている事をガデッサは理解した。
その瞬間だった。カナリアの体が震え出し震央に秘められていた潜在的な力が突然,奔流し地面を鳴動させる。この現象をガデッサは知っている。否,ガデッサは経験したことが有る。
堕天……そう,呼ばれる現象だ。神々が,自ら達に反発する腹立たしき尖兵達の誇りを踏み躙る為に考案した刑罰だ。そう,カナリア……彼女は神々の怒りを買い堕天使となったのだ————
堕天が終了したカナリアは,力の質が大きく変化したことに気付き喘ぎだす。そして,ガデッサの胸の中で大粒の涙を流す。そんな彼女をガデッサは優しく撫でた。
「…………名前を……名前を教えて下さい? 殿方様……僕は,貴方達の仲間にっ……」
「ガデッサだ……」
小さく震えながら彼女は,上目使いでガデッサを見上げ名前を問う。ガデッサは小さく名前を答えた。カナリアは決意した。シャングリ・ラの戦士として天使である兄達と戦う事を。
其処に何が有ったのかと愕然とした表情のエルターニャが駆けつけて来た。少女を抱きかかえるガデッサを見て一瞬,直立不動と成るが直ぐに,冷静を取り戻し状況を問いただす。
ガデッサはカナリアは堕天しシャングリ・ラへと入隊したと言う旨を簡潔に述べた。エルターニャは納得行った風情で頷き細かい経緯などは後に聞きますと断りを入れて状況が動いた事を報告する。
シャングリ・ラ南西部の門の前に上位天使と思しき天使が陣取っていると言う情報だった。上位天使なら同じ上位であるエルターニャでも何とか出来るが,ガデッサなら圧倒できる。
だから,ガデッサに報告に来たのだ。
「分った……直ぐ行く。カナリアを頼む」
「はっ」
「待って! その人は僕の知り合いです……だから,死に際位見せて……」
「……見掛けによらず芯の強いお嬢さんの様ですね?」
ガデッサはカナリアをエルターニャに頼みその場を移動しようとするが,その時,カナリアが声を上げる。それは,知り合いの死を見届けねば成らないと言う覚悟の様なものを感じられる言葉だった。
それに対しエルターニャは,怪訝そうに眉根を潜める。彼女の言動が可笑しいと言うわけではなく彼女が思った以上に勇ましい女性で驚いているのだ。その言葉を聞いたガデッサは,笑いながらエルターニャの言葉を肯定してエルターニャに,カナリアを連れて来てくれと言外に頼む。
南西の門がギギギギギと重い音を発しながら巨大な扉が開く。その先には銀の野生的な髪形をした壮年に差し掛かった堀の深い巨漢の天使が佇んでいた。
恐らくは,自らを遮断する結界に責めあぐねていたのだろう。天使の男は,エルターニャに抱えられたカナリアの羽が黒い事を確認すると悲しそうに眼を細め自らの獲物である巨大な鎌を振り翳した。
「お前名前は?」
「魔道に落ちた貴様に名乗る名など無い!」
「気高い事で……反吐が出るぜ?」
「ぬっ? ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
ガデッサの問い掛けに穢れた存在に名乗る名など無いと男は吐き捨て突進してくる。男の懐に入り込みガデッサはそっと手を添える。すると,男の大木の様な左腕がパンと音を立てて吹き飛んだ。
大柄な男は,大音量の雄叫びを上げながら左腕を庇い倒れこむ。通常,天使や悪魔と言った存在は,体を高速で再生させる力を持っているが,力の優劣により回復の速度が違う。詰り受けた損傷により傷の直り方に違いが出てくるのだ。ガデッサの攻撃力は目の前の男にとって圧倒的な攻撃力だった。
男は,ゼェゼェと荒い呼吸をしながら尚も殺気に満ちた瞳でガデッサを睨み続ける。そして,右手で鎌を奮い雷の魔法を発動させる。黒い無数の雷を顕現する上級呪文“エビルスネーク”だ。
然し,男の上級呪文にもガデッサは眉ね一つ動かさない。ガデッサが右手の掌を返す様な仕草をすると突然,淀んだ黒い防壁がガデッサを覆う。闇の防御壁の呪文“ヘルヴェルスト”を発動したのだ。
根本的な戦力差を象徴するかのように男の放った雷の力は全てかき消された。男の表情が引き攣る。だが,男は更に猛攻を続ける。鎌に雷を纏わせる……多くの種族が好んで使う武器に魔力を纏わせる技,魔法剣の類だ。それを見たガデッサは,遂に自らの獲物を異空間から顕現させる。
ズズズズズと蛇が這い蹲るような音を立てて世界を鳴動させながら槍が出現する。ガデッサの愛槍“キルビル”だ。ガデッサはそれを握り,久々の武器の感覚を確かめる様に軽く振るう。
すると,キルビルから発せられた風の力により突進していた天使は動きを封じられる。動く事が出来る戸惑う巨漢に一瞬で近付き槍を首筋に当てる。
「勝負有ったか?」
「流石は最上級の中でも最も強力な力を持っていたと称されるだけはある……私など」
勝負が決したことを悟った巨漢は武器を捨てる。そして,ガデッサを見詰め賛嘆する。
「ベルク……ゴメンね」
「お嬢様……その様な顔をしなさるな。貴女の選んだ道なのなら私は責めませぬ
生延びたのですから貴女の信念の元に戦うのですよ」
男の命の時間がもう直ぐ消えることを悟ったカナリアが叫ぶ。謝るという事はそれなりに近しい関係なのだろう。もしかしたら専属の執事だったのかも知れないとガデッサは推測する。
そんな,悲痛な叫び声を上げるカナリアにベルクと呼ばれた男は優しい笑みを浮かべて答える。自分の信じた道を進んでくれると従ってきた甲斐が有る物だと言っている様にガデッサには聞こえた。
ベルクは恐らく,彼女の気持ちを理解していたのだろう。然し,長く生きてしがらみがあって彼女と共には歩めなかったのだ。
「————悪いな……でかいの」
「頼……む」
ガデッサは小さな声で謝り槍に自らの闇の力の全てを乗せる。その力は大地を震撼させ,立ち込める巨大な魔力は空を黒く染める程だった。黒の嵐に飲まれてベルクは跡形も無く消えた。最後の言葉が,カナリアに何かしたら呪ってやると言う風に脅しているようでガデッサは寒気を覚えた。
カナリアはよろめく体を無理矢理動かしてエルターニャの腕から離れ涙を流しながらベルクの消えた場所へと行って倒れこみ泣き出した。余程近しい関係だったのだろう。
「…………ベルク……」
カナリアは,泣き続けた。大粒の涙が流れ続け目の下が腫れていた。ガデッサは彼女が泣き止むまで待った。待ち続けた。シャングリ・ラの外は殺意に支配された魔物が跋扈している。
彼女を1人にするのは危険なのだ……1時間近く経過しただろうか。シャングリ・ラの方を見ると空が白み始めていた。その朝の光に気付きカナリアは泣き止む。
いつまでも泣いていられないと心に言い聞かせているのが容易く読み取れる。ガデッサはエルターニャに先に戻るよう命令して,カナリアを抱きかかえた。カナリアは突然の事に驚き悲鳴を上げる。
然し,ガデッサはその様な事を意に介さず彼女を抱えたまま歩き出した。そして,歩きながら話し出す。自分の事は憎んで良いと,涙が枯れるまで泣き続けろと……その言葉にカナリアは,顔をクシャクシャにさせて情けない声を上げて泣き始めた。
「ふぅ……俺も涙脆くなったなぁ」
本拠地へと帰還すると同時にガデッサは泣き付かれて眠ってしまったカナリアを同性であるエルターニャの部屋へと預け自室へと向いベッドに横たわり小さくぼやいた。
悪魔に堕ちて,情が深くなるとは滑稽な事だとガデッサは冷笑を浮べる。カナリアを何処の部著に置くか等,今後の事を考えているとガデッサはしだいに睡魔に襲われていった。
そんな時だった。コンコンと控えめなノックの音が響く。ガデッサは小さく,起きているとノックの主に伝える。するとノックの主は,少し困った様な声音で自らの名を名乗り喋り始める。
「ガデッサ様,先程は無理矢理起してあまつさえ,上官である貴方にあのような罵倒……申し訳ありませんでした!深く反省しています。」
声の主であるエルターニャは,普段の冷淡な語調とは違う力の入った喋り方で無理矢理起したことへの反省を述べる。それに対してガデッサは,すっかり忘れていたと言う風情で鳩が豆鉄砲でも食らったような表情をする。一瞬,顔が強張るが直ぐに平静を取り戻しガデッサは言う。
「良いよ? 気にしてねぇから……それより,カナリアちゃんは頼むぜ?」
「所で……ウルブスはどうします?」
ガデッサの申し出にエルターニャは当然ですと言う風情で首肯する。そして,今度はエルターニャが話し掛ける。アンリに寝室を追放されたウルブスの件だ。 それに対しガデッサは,1日位寝なくたってどうって事無いだろうと欠伸をしながら言った。それを聞いたエルターニャは「それも,そうですね」と一言言って去っていった。
颯爽と自らの部屋へと向かう,エルターニャの耳に足音が響く。朝の日差しが刺し始めたとは言えまだ5時になった所だ。ほとんど,起きている者は居ない筈だ。エルターニャは反射的に身構える。
突き当たりの角を曲がると男の姿が確認できた。赤の縞模様と三角の瞳のお面をつけ,赤いフードと赤いマントで全身を覆い姿を隠している巨漢が,エルターニャの目に映る。
ゾッド・ラークローと言う名の同じ幹部に名を連ねる同胞だ。彼女はホッと一息ついてガデッサは今,睡眠を取っているから話は後にしろと忠告する。男は,仮面を上に動かし理解の念を示し踵を返す。
「オフィーリア様の件は上手く行きそうか?」
「行かなくては困る」
目の前の顔は愚か肌すら全て隠した巨漢ゾッドは,オフィーリアと言うガデッサと同格に位置する堕天使との交渉に向かっていた所だ。何かの進展が有ったのだろうとエルターニャはゾッドに問う。
ゾッドはエルターニャの言葉に対して冷たい声で答えた。その短い言葉に秘められた真意は無感情な口調の性で汲み取ることは出来なかった。
Fin
Next⇒第1章 6曲目「天使進撃 Part1」
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 6曲目執筆中 ( No.42 )
- 日時: 2011/05/01 23:15
- 名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
小説にご感想有難う御座います、帽子屋ですv
え、え、なんか、次元が違う・・・゜д゜ポカーン
すごい設定とかも凝ってて、一文一文だ凄く丁寧で、唖然としました!
その文才を私に分けてください^p^ 三分の一でいいので分けて((
また遊びに来させてください^^
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 6曲目執筆中 ( No.44 )
- 日時: 2011/12/20 18:06
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: rR8PsEnv)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何故,人は殺し合い血で血を洗うのか。 神はそれが悲しかった。 故に神々は,自分の造った過ちを壊す事を決めた。
違う。 創造と破壊,その両方の力を有している万能なる者達だから命の重みが分らないのだ。 唯,楽しければ良いのだ。
違う……ならば何だ? 何故,神々は人を殺そうとするのだ? 自ら,力をふるって創った存在を何故壊そうとするのか?
分らないのか……儚さが悲しいのでも唯,楽しむためでもない……彼等は,人間が自ら達にとっての脅威となる可能性を感じたのだ。
何故? 分らない……それは,分らないが彼等は——
————だが,私には神々が,人間を畏れていたのが理解できた
神々に謁見した私には分ったのだ……————
————謎の男の言葉より
黒白円舞曲 第1章 6曲目「天使進撃 Part1」
雲海を貫き,天をも貫く様な長大な柱が4本,その柱達に支えられる様にして巨大な,岩の塊が有った。 その岩塊は,半円状になっていてその平面の部分には多くの建物が立地されていた。 どの建物も趣向が凝らされていながらも周りの調和を乱さない芸術的な造りだ。
——この雲の上の世界,人間界とも魔界ともまた,違う空間にある天使達の住まう天上の世界——展開。 天界には,こう言った巨大な柱に支えられた半円状の岩の上に立地されたブロックが合計で,15個ある。 合計15人の神々が1ブロック事に1人ずつ居るのだ。
全てのブロックが,中央の巨大な塔を中心に街を造られていて,その中心の塔の天辺に自室を設けるのが神としては,普通だ。 ちなみに,中央の巨大な塔は,天使族でも戦闘力に優れた実動部隊達の本拠地となっている。 この,ブロックは第3ブロックとされ“アッサゲード”と呼ばる。 序列第3位の神である無限の神“チェルサ”が鎮座している場所だ。
そして,端座する神々を護る為にブロック事の巨塔には夫々,天使軍の六大師団に属する最上位及び最上位候補の天使達が,司令官として配属されている。 そして,今,天界の巨塔を統べる司令官達のほとんどは1つの一族から輩出されていた。 その一族の名をハーレイ一族。 天界で最も,戦闘に長けた血統とされている。
当然の様に,第3ブロック“アッサゲード”の司令官もまた,ハーレイ家の出自である。 青と赤の優しげな雰囲気のオッドアイで銀のサラサラとした腰まである長髪,年齢相応とは思えない20代位に見える顔立ちの男,サイアー・ハーレイである。 ハーレイ家の次期当主の筆頭として注目されている。
「リガルドですか? どうしたのです?」
「兄貴,カナリアが堕天してベルクが消えたってのは本当なのですか!?」
巨塔の会議室前の廊下を,サイアーが歩いていると妙な気配を感じる。 サイアーは怪訝に眉根をひそめ気配のする場所を睨み,相手の名前を呼ぶ。
サイアーが自分の名を呼んだと言う事は,周りには,話を聞かれて厄介になる相手は居ないのだと理解して,茶色の短髪の赤と青の切れ長のオッドアイの10代後半位の青年だ。
リガルド,彼もまた,ハーレイ家の出自である。 リガルドは声を張上げ,噂程度に聞いたのであろう事を問い掛ける。 サイアーは,顔面を蒼白とさせ,一瞬よろめく。
その反応だけで,リガルドには十分だった。 リガルドは大きく嘆息する。 カナリアは実は,リガルドの婚約者である。 ハーレイ家は,才能を絶やさぬ為,同じ血縁同士での結婚を認められている。
最も,リガルドが真にカナリアを愛している故でも有るが。
「忌々しい事だ……長年,我が一族に使え戦ってくれたベルクが死んだ事も受け入れ難いが何より……何よりは!!
おのれ,狡猾な悪魔共め……我が,愛しき妹にどの様な甘言を!!」
「兄貴……奴等からカナリアを取り返し“堕天返し”を!」
「あぁ……無論だよ。 私達の世界にカナリアの笑顔が消える事は,重大な事だ!」
サイアーは嘆くリガルドに,本当に嘆きたいのは自分だとばかりに強い語気で語りだす。 サイアーが生まれた頃から,ハーレイ家に仕えていたベルクが逝去した事。 最も近い兄妹の1人のカナリアの堕天。 サイアーにとって嘆くに余りある事だ。
リガルドの言葉に,サイアーは歪んだ笑みを浮かべ当然だと応える。 堕天返しとは堕天した天使,即ち堕天使を普通の天使に戻す儀式の事である。 魔素の洗浄や堕天した天使のエントロピーの関係……神々の思惟等が絡んでくるが,ハーレイ家の者なら戻ってこれるとサイアーは信じている様だ。
サイアーは,時計を一瞥し,会議の時間が近付いていることを確認して颯爽と歩き出す。 この事で揺さ振りを掛けてシャングリ・ラ襲撃作戦を決行すると言う情意で普段冷静な筈の男は動いていた。
「遅れてすみません」
「貴官が遅れるとは珍しいな? 何かの企てでもしていたか?」
「さてはて何の事やら……そもそも,そんな警戒して掛かっても誰も尻尾は見せませんよ? ハリー総司令? あぁ,勘違いなさらぬよう……私は,何も謀などしていませんよ?」
廊下の先に有る,荘厳な装飾の巨大な扉,その先に会議室がある。 会議室の取っ手に手を当てサイアーは天力を篭める。 すると,扉は勝手に,音を立てて開くのだった。
特定の天使の魔力に反応する仕掛けの扉である。 その扉の先には,欠席の4人の司令官以外は,全て揃っていた。 最後に入ったサイアーを入れて集まった司令官は11名。 内5名がハーレイ家だった。
サイアーが入室すると同時にある男が突然,睨みかかってくる。 警戒心の滲んだ目だ。
それは,目の色は青,壮年の深みが有る凹凸に富んだ顔立ちで,恰幅の良い浅黒い肌の筋肉質の巨漢。 ハーレイ家が戦闘部隊の中心になった100000000年の間は珍しいハーレイ家以外の出自の天使軍総司令官,ハリー・ディロードである。
その圧倒的な威圧感,殺気を出している訳でもないのに老いで力は,全盛期とは比べ物にならない程,落ちている筈なのに。 矢張り,この男は油断ならないと敬服と恐怖を感じるサイアーだった。
しかし,サイアーはハリーの質問に,平静を保ち,答えた。 ハリーは,その後何も喋ることはなかった。 唯,目で席に着けと促すだけだった。
「奴等は,悪魔だ!! 何時まで,元は天使だった等と甘い事を言うのだ!!?
あいつ等は,天使である我が妹を甘言で懐柔し,我等に牙向こうとしているのだ!!」
「カナリアを言葉巧みに勧誘し堕落させた……確かに,お前の言うような悪魔ならそうだろうが……
ガデッサはその様な男では無い。 分って居るだろう?」
「ならば,何故,奴等は堕ちたのだ! 堕ちたと言う事は奴等は,悪意により神々を軽蔑したのだ!!
そんな輩の肩を持つというのなら,貴様とて悪だぞ!?」
会議が始まり数時間,議題はシャングリ・ラ襲撃だった。 最初の間は,シャングリ・ラの危険性等を事例を交えて淡々と述べていたサイアーだったが,激情を抑えきれず声を張上げる。
ハリーは,短絡的過ぎるとガデッサの元師匠でも有った故に擁護しようとするが,派閥として結託しているハーレイ家の面々の威力を抑え切れる筈も無かった。
渋面を造るハリーの姿を見てサイアーは勝った……と,進撃は確実に行われると確信した。
一方,魔界シャングリ・ラでは,寝起きのガデッサが,ゾッドからの報告を眠気を我慢しながら聞いていた。
ガデッサが,ゾッドに頼んだ任務,それは,シャングリ・ラから東,魔界の東端に位置する場所にあるガデッサと同格とされる最上位天使出身の悪魔オフィーリアの軍勢との統合の成功である。
本来,オフィーリアもガデッサも人間を擁護して,魔界に追放された身であり人間の為に,命を賭けると言う意思は同じなのだが,天使だった頃の派閥の違いのせいで当初は,いがみ合っていたのだ。
しかし,神々は恐らくタイムリミットの1000年と同時に,天使達を率い世界へと現れ,蹂躙するだろう。 如何に,アルファベットZと言う切り札を手に入れることに成功しようと今の,シルヴィアの戦力では,神々の率いる軍勢から人間を護る等不可能だ。
時間と場所,役職としての関係からの脱出,今ならオフィーリアを懐柔できる,そう考えガデッサはゾッドを使者として送ったのだった。
「は〜ぃ,ガデッサちゃぁん! 元気してるうぅ? もしかしてエルターニャとウッハウハ? あ・た・しも! ブルスマンとウッハウハよおぉん? ブルスマンったらもう,本当良い男なんだからぁ!」
「飛ばして……中核の部分を読んでよ?」
ゾッドは全く恥かしげも無く,オフィーリアの言葉をそのまま話し始める。 自分自身の声をなるべく聞かれたくない男である彼が,覚えた術らしい。 実際,シャングリ・ラに居る殆どの面子は,彼の本当の声は余り知らない。
オフィーリアの挨拶と身辺の話から始まった様だ。 オフィーリアの鬱陶しいイントネーションと女性であるオフィーリアの声を見事に再現している。 普段は寡黙な男だが中々の演技派だ。
ガデッサは小さく欠伸をして,長引きそうだなと目を擦りながら余計な所は省けと命令する。
「…………下らない話は,終わりにしてえぇぇぇ本題入るわよ! あっ,あったしの最高な日常のが本題かぁっ!? あっは! じゃぁ,付け足し行くわね?
あったしにもそれ結構メリットあるし了承よおぉん?人間好きだしね! でもでもぉ,簡単に,軍門に下るんじゃ安い女って感じじゃな〜ぃ? ちょっと,条件付けるわよ?」
「そのオフィーリアっぽい鬱陶しい喋り方好い加減に止めて」
すると,ゾッドは一瞬沈黙する。 仮面を被っているので表情は分らないが普段,抑圧されている部類の彼にとっての解消行為なのか。 もしかすると仮面の先の表情は,怒りに満ちているのかも知れない。
ゾッドの気の短さを知る数少ない男であるガデッサはそんな事を考えるのだった。 ゾッドは,何処から話すかと一瞬,逡巡してからまた,流暢に話し出す。 そのゾッドの言葉からは,彼女の同意が感じられた。 ホッとするが余り嬉しくは無い。
何故なら,オフィーリアが断るメリットが実は無いのだ。 相手が,意地を張りさえしなければ十中八九成功すると踏んでいた。 しかし,ガデッサはついに,ゾッドのオフィーリアに我慢しかね止めろと命令する。 ゾッドは,小さく舌打ちをする。
「……オフィーリア様は猫が好き故か,自らの取り巻きに猫をご所望のようです」
「————はぁ,ネコ番長に交渉しないと」
そして,最後にオフィーリアの突きつけて来た条件を自分の意見を短く交えゾッドは告げた。 ガデッサは,奴らしい条件だと呆れながら面倒臭そうに嘆息するのだった。
カナリアが堕天してから,1日が過ぎた。 カナリアには,今の所エルターニャとアンリの寝室で寝るようにして貰っている。 イースレイの為にも,物置と化した幾つかの部屋の掃除をしているが,異臭立ち込める地獄のゴミの除去は思いの外,難しく難航しているのだった。
今の所,カナリアは血統からくる将来性を信じて,イースレイと同様に特別修行メニューを与える事にしてある。 しかし,アルファベットZであるイースレイは当初からその様に扱うと決めていたから良いとして,カナリアには問題が有った。
今まで,天使から堕天した者達は即座に全5分隊の内の1つに入隊させていた。 この対応の違いは,組織内での不信感を煽らないか,ガデッサは悩んでいた。 悩んだ結果,最初の内は,第5分隊に属する作戦立案及び状況把握部隊と言う最も,表舞台に出ない部隊に配属する事を決めた。 是なら,本部内に彼女は自然,居る時間が増えるから特別訓練も行い易くなる。 更に,作戦立案及び状況把握部隊はその任務の性格柄,基本的に所属構成員も察しが良いのだ。
普通なら,真実を見抜き情報を解析する彼等が最も疑うだろうと思う所だが,彼等は疑うべき場所を知っていて対象の嘘を見抜く眼力に優れたスペシャリスト達なのだ。
その日の早朝7時頃,イースレイとカナリアは初めて本部内の廊下で顔を合わせた。 イースレイはトイレから自室へと戻る途中だったようだ。 カナリアはと言えば,速くこの屋敷の造りを把握しようと必死だった様でトイレから出てきたイースレイにぶつかったのだった。
「ぐっ……大丈夫か?」
「あっ!! すいません,大丈夫……えっと,お名前は?」
「イースレイだ」
それなりに早足で歩いていたのか,カナリアは鼻を押さえて痛そうにする。 イースレイは,いきなりの事に一瞬呻くが,直ぐに平静を取り戻す。 そして,対象の安否を伺う。
其れに対し,女はアタフタと一瞬取り乱し,問題ない事を告げ,イースレイに名を問う。 イースレイの名を聞くと同時に,カナリアは瞠目する。 既に,エルターニャから特別な存在として聞き及んでいるのだ。
「僕は,カナリアって言うの……です」
「カナリア? お前が,堕天使の……」
「そう言う貴方も聞いてますよ? アルファベットZに指定されている特殊体だと」
「…………」
呆けているとイースレイが,言外に名を名乗ったのだからそちらも名乗れと言ってくる。 カナリアは,驚き背筋を伸ばし妙に声を張り上げて自分の名前を言うのだった。
カナリアの名をシルヴィアの幹部であるウルブスから事前に聞いていたイースレイは,顎に手をあてて確信した様な雰囲気で,カナリアに情報が事実かを問う。
其れに対して.カナリアはと言えば,今までのギクシャクした雰囲気を一変させ,目を細めてイースレイを自分も知っていると言うのだった。 イースレイは,間違いない事を悟る。
しばし,沈黙し見詰あい2人はすれ違った。 2人の部屋は逆の方向だから。
イースレイが彼女と2度目のコンタクトをしたのは,それから僅か,2時間後の事だった。 自室に戻り,イースレイは剣を見詰る。 此処に来て,何もしていない事を思い出す。 唯,寝て食べて,屋敷内を歩き回るだけ。 戦士としての自らの本分を忘れているような気がした。
イースレイは,今日は,任務が入ったと言う事でタピス達が居ない事を良い事に久しぶりに剣を振るってみた。 唯,剣を振り回すだけなら十分な広さの部屋だ。 思う存分に振るう。
1時間程度,剣を振るっていると突然,ノックの音が響きだす。 誰だ?と訝りながらイースレイは武器を鞘に納める。 そして,開けて良いと許可する。 扉が,丁寧に開けられる。
ウルブスもタピスも,何時も派手に壊すかのような勢いで開けるタイプなので少し,イースレイは驚いた。 ノックの主は,アンリだった。 何の様だとイースレイは,身構える。
「そう,殺気出さないで貰いたいですね? 僕は,君と殺し合いをしにきた訳じゃないんですよ?」
「何の用だ?」
「イースレイ……君は,僕達にとっての……いや,人類存亡のキーになりうる存在だとガデッサ様に聞かされていますね。 でも,今の君では,全くの足手まといなんですニャ」
「詰り,俺を鍛えると言うのか?」
「単刀直入に言えば,そうですね……」
アンリは,厳しい表情のイースレイに,あくまで飄々とした態度で落ち着くよう促す。 イースレイは,アンリの友好的な態度に歯軋りし,握手しようと差し伸べられた手を払った。 悪魔である彼等が,信じるに値するとは思えないのだ。 あくまで,距離を置いた雰囲気で無愛想にイースレイは問う。
イースレイの問いに,そう,急かさなくても答えるのにと溜息を吐いてアンリは答え出す。 神々は,900と数10年前に人間を滅亡させようとした。 しかし,その最中,多くの堕天使を出し多くの天使に批判され,1度,その人間殲滅戦を止めたのだ。
その時,1000年の間に,人間がより良い方向に進化すれば,殲滅戦を行わないとしたが,実は神々は1度決めた事を容易く変えるは事は無い。 天使達の反抗に折れたのも所詮は,演技だろうと言う意見が大勢だ。 例え,1000年の間に人間達が,進化したとしても恐らくは,嫌がる天使達を無理矢理,力で捻じ伏せて世界を蹂躙するだろう。
イースレイには,理解出来ない。 神々は善,天使は善と叩き込まれてきた。 そんな事を言ってこいつ等は,自らを手駒にして自らに人間を殺す道化を演じさせる気かも知れない。
しかし,彼等の目は,今まほんの1回も嘘を付いていない。 真摯な瞳で本気で,天使の手から人間を護りたいと思っている様に感じる。
兎に角,自らの力が,圧倒的に足りていない事は,事実だとイースレイは理解し修行を承服する事にした。 もし,彼等の言葉が真実だとしても彼等の言葉が嘘で,彼らを倒して逃げなければならない状況になったとしても,どちらにしても実力が足りない。 目の前の男にも,一捻りにされる程度の実力と理解している。
アンリに従い,アンリの後ろをイースレイは付いていく。 イースレイが今まで通った事無い道も既に何度か通った。 資料室や拷問室などと言う様に,区域事に余り区分はされていない様だ。
迷路の様な入組んだ区域を抜けると長い古びた廊下がひたすらに続いていた。 唯,目して10分以上歩き続けると。目の前に,巨大な扉が見えてきた。 高さにして10mは有りそうだ。
イースレイは,その扉の圧倒的な存在感に一瞬飲み込まれる。 そんなイースレイを他所に,アンリが扉の取っ手に手を差し伸べた。 そして,魔力を取っ手に流し込む様に発する。
その魔力に呼応する様に扉は,輝き自動的に開いた。 その先には,何も無い,広いだけの理路整然とした闘技場が有った。
「此処が修行の場所か?」
「あぁ,そうですよ。 おーぃ,カナリアちゃーん! 何時まで隠れているのかニャ?」
「すっすいません!!」
一応の確認のために,イースレイはアンリに問う。 そんな事を態々聞くのかと言われそうな物だが,アンリは全くその様な事は気にせず肯定する。 イースレイを一瞥して,アンリは周りを見回す。
イースレイは何を探しているのかと怪訝そうにするが,アンリに名前を呼ばれ,その対象は突然,何も無い場所からカナリアが,姿を現した。 性質から天術の類だろう。 堕天使だから天術も使えるのだろう。
カナリアは,怯えた表情をして大きな声で謝った。 そんなカナリアをアンリは撫で,謝らなくて良いんだよと優しい言葉を掛ける。 その時の表情が,善意に満ちていてイースレイは目を背けたかった。
「えっと,僕,アンリはタピスの兄であると同時に,このシルヴィアの第4分隊である敵地潜入及び情報収集部隊の統率者ですニャ。 ガデッサ様の命により今日から1週間,君達の特別訓練の師事をとるので宜しくお願いしますニャ!」
アンリは,イースレイにとってもアンリと同室に住まうカナリアにとっても何度目かになるだろう,挨拶を丁寧な口調で言う。 ふと,イースレイは,首を傾げカナリアを見る。
何故,彼女が,特別訓練を受ける事になっているのか。 通常,堕天使は,特別訓練を行うと言う義務でもあるのか……何故なのかと逡巡していると,アンリがイースレイの悩む様を見て疑問に答えた。
どうやら,彼女は,天界でも武術に長けた名家であるハーレイ家の血族らしい。 通常,彼女の年齢なら天使族の戦闘の才能は大体,伸び代の限界が見えるらしい。
ハーレイ家は,此処100000000年で生まれてきた女も男も関係なく最終的に,全ての血族が上級天使クラスの実力を有している。 詰り,ハーレイ家の血が流れている限り彼女の弱さは有り得ないのだ。
ガデッサが言うには,ハーレイ家には,才能の無い子供を出産と同時に殺すと言う因習が有るらしい。 そのお陰で一族の水準を保ち続けているのだ。 それが事実なら,彼女は上級天使クラスの才覚が少なくとも有る筈なのだ。 考えられる理由としては,彼女の力の大きさが膨大過ぎて,彼女の天力を放出する穴が放出を抑制していると言う事だ。 詰り,彼女のレベルに合せて力が制御されているのだと言う。 そして,この件には,前例がある様だ。 ガデッサの様な最上級天使は皆,そうだったらしい。
「あっ……あのアンリさんは1週間って何でですか?」
「あぁ,皆,暇って訳じゃないですから? イースレイが来た時は,彼の為もあって皆仕事を停止させてたんです。 だから,実は僕自身も仕事がかなり溜っているんだよ」
自分の事で重くなった雰囲気を和らげようとカナリアは恐る恐る気になっていた事を質問する。 質問に対して柔和な笑みを浮かべて自分達にも幹部として仕事が有るんだと言った。
修行が始まった。 最初から相当の実戦形式だ。 アンリと直接,戦闘を行うと言う物だった。 しかし,実力差が大きいのは分っているため矢張り,ハンディはある。 イースレイとカナリア2人係りで掛かってきて良いが,アンリは魔術は使用できない上に,利き腕である左手を使わないと言った。
イースレイにとっては,過剰とも思えたハンディだっが,いざ実践となると何も出来ないのだ。 イースレイが,今の地点で倒せる悪魔は,中の上程度の悪魔だと聞いた。
しかし,それなら上級とそれ程の大差は無いはずだと言う事になる。 上級のどの辺にアンリが居るのかは分らないが,仮に上級の中位としても2つしか差は無いと甘く見ていたのだ。
ガデッサの言葉により,自分の才覚が相当の物なのだと思っていたのだ。 疑って掛かっているのに言葉に酔っていた。 更に言えば,あくまで才覚なのだ。 現在の実力ではない。
圧倒的な,脚力による蹴りと目にも止らぬ速度,唯,防御術を使い防ぐので精一杯だった。 20分程度でカナリアとイースレイは,倒れこんだ。 アンリは,悲嘆する様子も無く柔和な笑顔を浮かべていた。
「期待外れじゃ……ないのか?」
「そうですニャ。 予想通りですよ? 大丈夫ですす……君達は,直ぐに強くなりますから」
タピスの事となると青筋を造り怒号する男だが,本来は本当に,温厚な男だ。 イースレイの苛立ちの篭った言葉に,全く怒る様子も無い。 イースレイは,小さく後退りした。
「1つ教えて欲しいんです。 あのっ! 悪魔である貴方が何故,人間を助けたいと言うガデッサさんに加担するんですか!? あの……凄く気になってたから」
呆然とするイースレイの横を通り抜け,カナリアはアンリの近くへと歩き出した。 その瞳には,何やら強い意志が有る様だった。 その瞳で何を語るんだろう,アンリは心の底で楽しみにしていた。
アンリと3m程度しか離れていない場所でカナリアは,立ち止まる。 カナリアは兼ねてより思っていた事を口にした。 心の底から何故かと疑問に思っていた。
悪魔は,人を喰らい人を差別し滅亡へと追込む事も平気な魔獣のはずだ。 人間の仲間をする悪魔は同族から異端視されるとカナリアは聞いていた。 それなのに,何故だ。 人間に対して彼は何を思っている。
一見弱気に見えるカナリアの真摯な瞳を見て,イースレイは一瞬,眩しくて瞑目する。
「君達は何で戦うんですか? 僕は,人間を護りたいんだ……人間が好きだからですニャ?」
「えっ? そんな理由??」
アンリの答えは単純だった。 屈託の無い笑みで人間を救う行為をまるで誇りに思っているかのように一瞬の迷いも無くアンリは言った。 思わずカナリアは,聞き返す。
「もっと,崇高な理由だと思いました 取り繕ったお堅い理由で,戦えるほど大人じゃないですニャ
生き物なんてのは本来,単純で理由が単純な方が強いもんなんですニャ……」
「えっ?」
「君も,護りたいって気持ちを強く持てば力を開花できます……僕は,そう思いますニャ」
呆けるカナリアの無垢な瞳を覗き込みながらアンリは続ける。 長ったらしく取り繕い誇張した所で,根幹は同じで短い言葉に纏められる言葉がほとんどだ。 長い言葉で取り繕っても逆に疲れて,本気になれないだろう。 アンリは,気楽な様子で言う。 カナリアは,唖然とする。 自分が,一族の同年代の中で圧倒的に実力が劣っているのは何故だろう。 長らく考えてきた。 考えるだけで思うだけで行動をしなかった事に気付き,何故だか心が痛くなった。
不意にカナリアの目から涙が流れる。 何故,涙が流れるのだと強がる様に彼女は,涙を拭う。 止らない事に苛立ちを覚え拭う力が強まる。 アンリは,彼女の手を止めハンカチを渡す。
そして,アンリは自分も誠心誠意,助力するから一緒に,強くなろうとエールを送った。
————4日が過ぎた。 朝,9時から夕方の5時まで修行は続いた。 しかし,一向に,アンリに近づける気配は無い。 傷をつける所か,目でアンリの動きを捉えることすら出来ない。 イースレイは何の成長も無いのではと焦燥感に焦がれていた。
「焦りすぎですよ……4日程度の修行で明瞭な変化を感じられる程,僕等は実力は拮抗していません」
「ガデッサの言った事は……」
「本当ですよ。 そう,急いだって何も良い事は無いですニャ……天使が大規模攻撃をするまでには絶対に覚醒するから,辛抱して欲しいですニャ」
怒気の篭った声で,全く強くなった気配が無いとイースレイは言う。 それに対して,実力は確実に上がっているという事を示唆した上で,彼我の実力差が大きいのだと最もな事を言う。
それに対して,ガデッサの言葉をイースレイは否定しようとする。 ガデッサの言葉の否定材料が欲しかっただけだと言う事を見抜いて,アンリは冷然とした声音で言う。
時間は,まだまだ有るだろうと……1週間も経過していないのに焦りすぎなのだと。 アンリにとってもイースレイの悪魔の言葉を否定したいと言う気持ちは,理解できるが余りに情けない様に顔を引き攣らせた。
その一瞬の表情の変化を察知し,温厚で誠実で完璧に見えたアンリも矢張り,怒ったりするのだとカナリアは親近感を感じるのだった。
その日の夜明け前,多くの下級天使達がシャングリ・ラの結界を擦り抜け内部へと侵入した。 彼等が現れた場所は,結界装置の設置されている街の4つの角にある建物だった。
結界は基本的に,中央から全てを包み込むようにするタイプと4つ角に夫々,装置を置き結界を張る形式の2つが存在する。 シャングリ・ラは長い間その結界の性質を中央式に見せかけて結界破壊戦略を取らせない様にしてきたのだ。 上級悪魔が数人居る本丸に入り装置を破壊するなど,下級天使には不可能だ。 だが,本拠地でもない普通の家屋の様な場所に置かれた結界装置なら下級天使たちでも破壊は出来る。
敵に怪しまれないように番兵も付けない様にしているのだから……
「サイアー様,17名の仲間が,トラップにより死去しましたが装置は破壊しました!」
「四隅全て陥落ですね? さぁ,是でシャングリ・ラは壊滅ですね」
最後の装置が破壊された。
四隅の全ての装置を破壊するのに下級天使107名が命を失った。 捨駒として志願した勇敢な下級天使達である。 その強靭な意志と神への敬意の強さには下級天使ながらに敬意に値した。
サイアーは,彼等に1度,黙祷を捧げ1筋の涙を流す。 黙祷を捧げた後,彼は剣を掲げ突撃の合図をする。 今回の戦いの司令官はハリーだが,サイアーはカナリアが心配だとカナリアは自分が取り戻すと,突撃隊を志願した。 妹思いのサイアーの事だ,カナリアを助けたいと言う気持ちは確かに強い——それは,ハリーも理解していた。
しかし,ハリーはサイアーの欲望の深さを知っている。 権力を手に入れる為には全てを利用する事を躊躇わない。 ハリーは,自らの部下にサイアーの監視を任せるのだった……
力が,蹂躙する。
悲鳴が,嵐の様に巻き起こる。 鮮血が舞い上がり悲痛な叫び声が響く。 助かりたいと祈る老人,子供だけは殺さないでくれと懇願する主婦。 母親を目の前で失い無きしゃくる子供……
全ての命が,悪魔だという理由だけでゴミの様に消されていく。 老人は,細切れにされ主婦は,子供を殺された後に火炙りにされた。 子供は,四肢を切断され頭を潰された。
悪魔への嫌悪と拒絶反応,それは凶暴な牙となり残虐な行為を天使と言う者達に易々と行わせた。
「やれやれだな……サイアー兄さん? どっちが悪魔だよ?」
「ウルブス!!」
何人もの力無き者達を圧倒的な武力で終焉へと追込んでいくサイアー。 その男の目の前に,ある男が現れた。 サイアーも良く知る男だ。 数時間ほど前に,任務を終えて帰宅し,酒屋で祝砲を挙げていた所だったらしく少し顔が赤い。 惨たらしく殺された住民達を見て憤然としている様だった。 面倒な相手の登場に,サイアーは,憤慨する。
サイアーがウルブスの名を叫ぶと同時に,2人は交錯する。 サイアーの左肩に装着された肩当が吹き飛び,ウルブスの右肩に浅い切り傷が出来る。 ウルブスとサイアーの火花散る戦いが幕を開けた。
Fin
Next⇒第1章 7曲目「天使進撃 Part2【弱き者よ】」
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 6曲目更新 コメ求む!!! ( No.45 )
- 日時: 2011/05/04 14:05
- 名前: 朔 ◆sZ.PMZVBhw (ID: rbVfLfD9)
- 参照: ゆっくり時間を過ごしたい(´・ω・`)
にゃ、にゃ…可愛い。
すみません。こちらではお初ですな(^ー^)ニヤニヤ
依頼を受けたアンリが好きになりそうな予感でなりませぬ。てか好きだ!!
てか本当神様ああああ!!!ボキャブラリーの豊富さが妬ましいッ(
とてつもなく上手い。てか…感動のあまり言葉が出ねええええええ((
兄貴の素敵なぐらいのシスコンぶり。にゃんにゃん。気付いたらイースレイ置き去りにしてソッチばっかり見てt(殴
タピスすわぁん…ww兄貴じゃないよ。そして純情BOYなんですな、イースレイは。たわわに実った果実がぽよーん( てか兄貴とどんなことしてんだ← 近親相姦には走らないでくだs((殴
いつの間にかずっとニャンニャン兄妹(ちゃんと呼べ)の事ばかりになってらぁー…。
天使とか悪魔ものはあんまり読まないんですけどね汗 いやあ、ハマったよ—ハマっちゃったよー((
……あ、コメント読み直したらなんか申し訳なくなってきた…。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31