複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 黒白円舞曲 力及ばず閉鎖 申し訳ありません!
- 日時: 2012/04/08 15:14
- 名前: 風(元;秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: r3A.OAyS)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11520
初めまして,風猫と申します。
この他にファジーで一作、シリアス・ダークで二作執筆しています。
題名変更しました……
参照に掲載されているURLの作品も是非★
〜作者状況〜
執筆中【】
申し訳ありませんが執筆中に〇が付いている時は書き込まないで下さい。
$$$来賓のお客様$$$
弥生様(初のお客様です)
みう様(二次小説の方の小説も読んでくださった良いお方ですvv)
白哉様(勘違いを申し訳有りません)
右左様(あだるとちるどれんと言う天才的小説の執筆者です★)
ゆn様(私を尊敬してくれる数少ない人です♪)
逆憑 緑茶様(ねこうさぎだと分らなくてすみません!)
アビス様(隠れた名作家さんです^^)
メフィントフェレス様(何と言うシンクロ率……こんな方が!?)
かりん様(紙文作者じゃなくて神文作者なので自分を卑下しないで!!)
霊夢様(凄く儚い綺麗な小説をお書きになる方です)
葵様(二次小説のほうで凄くお世話になってます!!)
帽子屋様(才能は分けるほど持っていないので御免なさい!名前間違えすいません!)
朔様(えっと,凄い人です!絵も小説も書ける凄い人!!)
リオン様(妖怪物書いてる子です♪テンション高い子?)
琴葉様(小説宣伝書いてくれました^^)
ひふみん様(シリダクの方では,凄い良いセンスのオリキャラを造ってくれました!)
ヴィオラ様(オリキャラ投稿の第一人者です!)
玖龍様(マブ達の一人! マセガキでもある!!)
コーダ様(コアなお方なんでしょうか? 男性だったり??)
琴月様(妖艶な日本風作品が素敵なお人です)
一人称様(名前のセンスが素敵だぜ!)
水瀬 うらら 様(可愛らしい名前ですね^^そして、真面目な感じがします♪)
朱雀様(コメディ・ライトのホープです^^)
よもぎ餅様(オリキャラありがとう!)
狒牙様(BLEACHの件でいつもお世話になってます!)
暮来月 夜道様(Neon様です! カキコでは、高名ですね♪)
陽様(久々の常連になってくださりそうなお客様です^^)
チキン様(オリキャラ有難うございました!)
羽風様(キリカの方も着て下さって有り難いです!)
来良様(えっと、沢山勉強しましょうね^^)
ゆぅ様(ゴールデンタイムラバーと言う小説を執筆してるお方です!)
小林様(ヴァンパイアって響きから素敵ですよね?)
如々様(素敵小説の執筆者様です! マジ素敵小説ナウ!)
桜板様(私などとは違う女性らしい綺麗な小説を書くお方です!)
以上35名のお客様です
私の小説を覗いて天津さえ書き込んで頂き真にありがとう御座います。
又のお越しをお待ちしております。
皆様から頂いたオリキャラ
アビス様より アルベルト・スターク(人間A) >>65
葵様より アリス・クイーン(悪魔) >>70
ヴィオラ様より フィリクス・グリモワル(人間T) >>72
リオン様より リオ・グレイシャ(霊族) >>75
コーダ様より ルテ・ルージュ(悪魔) >>102
逆憑 緑茶様より レノ・C・ラグルスI悪魔) >>113
朔様より ノルド・スティレイン(人間N) >>117
よもぎ餅様より ルロイセン・ル・ルー(人間X) >>118
狒牙様より メリー(霊族) >>128
暮来月 夜道様より オウィス・ナイトメア(人間M) >>137
チキン様より ファウスト=ギラ(悪魔) >>170
白月様より ディルス・ロンレッド(人間B)>>194
ゆぅ様より エギン・ナローズ(悪魔)>>195
◆◆◆Story◆◆◆
>>11 1曲目「神々の起した嵐」更新
>>14 2曲目「悪魔は闇?天使は光?」更新
>>18 3曲目「魔界ラヴァーズ」更新
>>29 4曲目「ニャンニャン冒険記」更新
>>39 5曲目「宵闇に紛れて踊れ…………」更新
>>44 6曲目「天使進撃 Part1」更新
>>53 7曲目「天使進撃 Part2(弱き者よ)」更新
>>81 8曲目「天使進撃 Part3(リガルドVSアンリ)」更新
>>101 9曲目「天使進撃 Part4(激震)」更新
此処から、記載の仕方を変更します。
第1章 10曲目「天使進撃 Part5(援軍)」
No1 >>121 No2 >>135 No3 >>142 No4 >>149 No5 >>162 The end
第一章 十一曲目「天使進撃 Part5(終幕)」
Part1 >>175 Part2 >>185 Part3 >>201 Part4 >>207
★★★キャラクタプロフィールや追加設定資料★★★
>>63 キャラクタプロフィール 掲載欄 S.24 3月2日更新
>>64 オリキャラ募集要項設置
>>148 朔様作 アンリ絵掲載!
>>164 長月様作 タピス絵掲載!
>>199 アンケート用紙掲載!
>>223 朔様作 セリス絵掲載!
###注意事項###
1.グロ要素やキャラクタの死亡等が多く入ると思います。苦手なお方は…
2.荒しや他者・私等への嫌がらせチェーンメールや宣伝等の小説と関係の無いレスは遠慮願います。
3.五つの小説を同時にこなしています。現実も社会人ですので何かと大変です。
更新が遅くなることはご了承下さい。
4.シリアス70% ライト30%位の割り合いにしようと思っています。
シリアス苦手な方は注意!
5.最後に作者状況の欄が執筆中の時は書き込まないで下さい。
決して感想を書いて貰うのが嫌だと言う事では無いですよ!!私寂しがりやです!!
以上です。
〜キャラクタ設定要項〜
名前【】
年齢【】
性別【】
種族【】
身長・体重【・】
容姿【】
性格【】
得意魔法属性【】
気術を有しているか【Yes/No】
気術名【】(有している場合)
気術の能力【】(有している場合)
詳細【】(過去や趣味など)
仮想CV【】
作者用です
_____//基本用語集
ⅰ.五大世界
天使と天神が支配する「天界」
悪魔と悪神が支配する「魔界」
他と隔絶した圧倒的な戦闘力を持つ生物「竜族」が住まう「竜獄」
肉体有る者達,世界と呼ばれる場所の者達が死んだ時逝く世界「霊界」
普通の人間や生物が住まう「世界」または「現世」
この五つを纏めて五界と呼ぶ。
ⅱ.バスターズ
主に生きた人間達が住まう世界で現世に現れた悪魔や迷い霊を調伏する魔法力及び気術を行使する戦士達。
彼等バスター達を束ねる組織を「アルティマニア」と呼称する。
アルティマニアの教主「ルーダー」は天界の神々と交信出来るとされる。
上位の存在として「十二星座」や「四天王」、「五亡星」と呼ばれる集団が居る。
ⅲ.魔法
天界では天力・魔界では魔力・人間界では自然力・霊界では霊力・竜獄では獄力を使う事により発動する。
詰り,世界に伝わる魔法により力の源泉が違う為使える魔法の性質等も多種多様である。
同じ炎の魔法などでも全く違う。
だが,全ての世界の魔法には基礎となる
「炎」「氷」「雷」「水」「風」「土」「光」「闇」と言う八大元素が有り
その元素と世界の者達個々の魔法力(霊力や自然力等)をそれに同調させて使うと言う
基本概念は同じ。
ⅳ.気術
魔法とは違う力。
武器や自らの体,他の生物や機械などに作用させる力だが魔法と違い決まった轍が無いのが特徴。
言わば戦士として力を得た者達が有する個々の特殊能力といえる。
ⅴ.特殊体
又の名をイレギュラー。
悪魔と人間のハーフ等本来交わらぬ地平に居るべき存在同志が交配して生まれる存在。
天使と悪魔のハーフはイレギュラーには含まれないのは本来天使と悪魔は同じだかららしい。
人間界「世界」には26人の特別指定イレギュラーが存在する。
それらのイレギュラーを悪魔達は「アルファベット」と呼んでいる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
黒白円舞曲 第1章 プロローグ
この世界は、五つの世界に大別されている。
人間の住まう世界と呼ばれる世界。
そして、人間が崇拝する天神達の住処、天界。
天使達と日夜地獄絵図に出てくるような残虐な殺戮劇を繰り広げているとされる悪魔達の住処、魔界。
そして、死した世界の霊達が集う霊界……
最後に,世界に住むべき住人でありながら、世界に住まうには圧倒的に強過ぎて、隔絶された竜族達の住まう竜獄。
この物語は人間達が闊歩する世界から始まる————
空は透き通る青、世界を飛び越え宇宙までも手で掴めそうなほどに晴れ渡っている。
そんな空を見下ろしたある草原、丈の低い草達が群生する野原。
ある男が、長大な剣を枕にして眠っている。
男は、黒のロングコートを着用していて黒の縮れた長髪で、顎は太めのガッシリとした感じだが、端整な目鼻立ちをしている。
男の名はイースレイ・ファルニカ。 アルティマニアに所属するバスターだ。
右と左の夫々の瞳の色が右は青…左は赤、その所謂オッドアイ故に、バスターになった当初は良く、周りから摘発されたらしい。 そんな事を無視して、前へ進んで此処まで来たと十年以上戦い続けて自負している。
空は青く澄み渡っていて宇宙まで届く様な気がした————
そよそよと頬を伝う冷たい風が気持ち良い。
男は左半眼を薄らと開く…その瞬間だった。
空の全てが深紅の赤となり彼の瞳に映る…
「やめろ」
イースレイは寝起き様に懇願するように必死に言う。
そしてまた目を瞑り嘘だと心の中で叫びながら再び目を開ける。
赤……赤…………——真っ赤!
大切な人の血の色————
脳内に過去がフラッシュバックする。
幸せだった過去,
祖父・祖母・両親・弟そして,あの日は多くの親戚が来ていて立食パーティを行っていた。
料理好きの母が元一流バスターだった父が狩りに出て魔法で仕留めた馬や猪の肉を捌き腕によりを掛けた料理を振舞う。
歌うのが好きな牧師の小太りの親戚の男の近くでイースレイは男の牧師の歌とは思えない歌声に酔う。
幸せな時間が……続くと思っていた。
酒が振舞われ皆が酔い痴れ大騒ぎになってきた頃だった。
突然,イースレイの目の前に居た老婆の首が吹き飛んだ。
それからだった。高速で移動しながら正体不明の存在は情け容赦なく親戚を家族を葬って行く。
美しい緑の草達が踊る外での立食パーティは一瞬にして血の朱に染まる地獄と化した。
——————俺はあの時、怖くて机の下に隠れていた
イースレイの大切な人々を全て切り刻み、惨殺した存在は生きた人間が視界に存在しないことを確認すると立ち止まった。
銀色の腰まで届く、長い髪、左目が白で右目が黒の左右不対象な瞳の色。
それにアシンメトリーするように、右が白で左が黒の双翼……
————天使なのか? 悪魔なのか……俺の存在に気づかないでくれ
人間ではない。
天使か悪魔であることはその姿から一目瞭然だった。
震える手を脈動する体を必死で押さえながら早鐘を鳴らす胸部を強く掴みながら念じた。
頼むから気付かないでくれ…大切な人全てを奪ったんだから自分だけは殺さないでくれ。
思えば唯,怖かったのだろう……唯、生き延びたのだろう。
誰だって、死にたくはない。大切な誰かが死んだって自分だけは生き延びたい。
「そこ……生存者が居るな」
抑揚に欠ける天使とも悪魔とも付かぬ白と黒を貴重にしたローブを着た声から察するに男。
察知された……そもそも、一流のバスターである父が反応も出来ない様な化物が気付かぬ筈がない。
怖い! 怖い……怖い怖い怖い! 心臓が更に強く限界近くの強さで鼓動する。
俺は 俺は 此処で死ぬ……いや,死んでも良いだろ…… 一瞬さ,痛くない……
大粒の涙が頬伝う。
一瞬で死ねるんだから痛くなんてないって、心に言い聞かせても生きたいと言う本能が、生きろと未練は無いのかと喚くのだ。
「人間……私が憎いか?」
——え?
「憎いか?」
————憎い 憎いに決まってる! 殺してやる……殺して!!!
「ならば、強くなって、私を殺して見せろ!」
何故、生かされたのかは、理解できない。
然し、イースレイは天使とも悪魔とも付かぬその存在の気紛れか……それとも気紛れに見えるだけで大いなる目的があるのかどちらにしろ生き延びた。
生かされた。 今もイースレイの胸の中に残る故郷の光景はあの血の海だけ。
「うおぉぉぉ!」
空すら引き裂くような雄叫びを上げ大地を割るほどの全力で長剣を振るい過去の赤き記憶を切裂く。
ハァハァと呼吸を荒げさせ深呼吸して心を落ち着かせ一頻り目を閉じ目を開く。
あの赤い空は消えている。 ホッと安堵の溜息を吐き荷物を背負い目的地へと歩き出す。
悪魔祓いとして……舞い込んだ依頼の場所へと———
今日中には依頼をくれた村に付く。
男は足早に悪鬼達に苦しむ者達を救いたいが故に歩く。
今は日の傾きから朝の十時位か。
今日の夕方には村に到着し明日には悪魔の根城に攻め込み調伏する。
刻一刻と被害は増える筈だ。
————村が見えてきた。
夕方,予定通り村へと到着する。
悪魔がそれも資料の上では上級悪魔が居る筈なのに村に行き着くまでに
使い魔一匹にも遭遇しないとは妙だと思いながらイースレイは村へと足を踏み入れた。
「迷い猫みぃ〜っけ」
そんなイースレイを遠く人間の視力では
存在を認識出来ないような場所から監視する何者かが居た。
Fin
Next⇒第1章 1曲目「神々の起した嵐」へ
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 2曲目執筆中! ( No.14 )
- 日時: 2011/05/04 19:41
- 名前: 風(元:秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
右左へ
あちらで呼びタメ許可出たので♪
そうでうすかぁ?私は理科大好きでしたけど?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お前が戦わなかったらお前の愛する世界が滅びるぜ————目の前の男は確かにそういった
高々一人の人間の為に世界が滅ぶ?
何を言っているんだ ありえない 有り得ない アリエナイ!!!有ってはならない…
彼,イースレイは真贋を見極める才能には秀でている方だと自負している。
コイツの言う事は嘘だ!悪魔の言う事など信用できるか!?
だが……其の言葉から月明かりの照らす表情から虚言は微塵も感じられなかった————
だがそれでも態々悪魔の手に落ちるなど許されてなる物か…イースレイは唇を強く噛み締めた。
黒白円舞曲 第1章 2曲目「悪魔は闇?天使は光?」
長い沈黙————
イースレイは疑い深い部類だが長い間悪魔を悪と断じ恨み続けてきた。
時々,耳にする事のある悪魔の一見善意のあるような行動も全て
穿った見方で見詰め糾弾してきた。疑い深いが元来一つの事に囚われがちでもあるのかも知れない。
相手の戦力は分っている。ガデッサと言う男と自らの戦力差は明白だ。
タピスと言う浅黒い肌の猫の様な顔立ちの少女と比べても圧倒的な戦力差が有るだろう。
断った所で無理矢理連れて行かれるか殺されるか……二つに一つだと理解出来る。
"必要としている"と言う言葉から考察するに断ったからと言って抹殺される可能性は低い。
ならば,例え誘拐紛いに無理矢理魔界に連れて行かれるにしてもそれなりの心の準備をしたかった。
『私は……運が悪いのか?』
今までの人生を思い出すと薄幸な自分の人生に思わず深い溜息が出る。
暫し瞑目し何から切り出そうか頭を整理するがとても直ぐには思い浮ばない。
だから少し時間稼ぎする事を決め悪魔を排除したのだから村が戻っている筈だ…村の様子を見たい
と,ガデッサに強請ってみた。ガデッサはニヒルな笑みを見せて了承する。
____村
トールライと言う人工500人に満たない村落だ。
主要産業は北東にある森林帯の木を使っての林業らしい。
悪魔によって生贄を強要され更には悲しみの感情を表す事を制御されている。
恐らくはカースの力も既に解除され彼等はあの気持ちの悪い笑みを浮かべないようになっているだろう
夜でも人はいる。具に確認すれば直ぐに分る筈だ。
だが,村の有った場所についてみると其処には驚愕の風景が有った。
「村が……無い!!?」
「場所は間違っていないよ…最初からトールライなんて村が無かっただけの話だ」
「何…だと!?」
有得ない…
確かに存在した筈なのに悪魔の討伐に出て本の数時間も立っていないのに
村が消滅している。イースレイは思わず腰を抜かし倒れ込んだ。
そんなイースレイの反応を繁々と見ながらガデッサは語る。
"トールライなど最初から存在しなかった''と…更なる衝撃の事実にイースレイは狼狽する。
脳内の情報の伝達が上手く行かないのが分る。頭の中の回線が混濁し困惑している。
思考が追い付かない。幻術系の気術か,いや…ならば何故村長の部屋の扉を開けた時感触が有った。
魔法と気術と言う並の人間を超絶した力を行使できるバスターズの一員であるイースレイにすら理解できなかった。
そんな困惑するイースレイをタピスは何でこんな事で驚くのと言う風情で楽しそうに唯々見詰め
ガデッサは暫く観察するようにイースレイを見詰めながら語りだす。
イースレイの今回の任務の真実を————
————悪魔カースはガデッサの部下であった事。カースはまだ組織に発見されていなかった事。
村の正体は実は唯の幻影だった事。音を使った術を行使できる者と感覚を多少操れる者とそして,幻術の行使者の計三名が関わっていた事。
この地方は,未だ未開の地の部類で組織の目が届き難いが故にガデッサが此処を指定した事————
薄々は悟っていた。
カースはこの男の部下で,自分は誘き寄せられたのだと……だが,信じたくは無かった。
イースレイは此処まで周到に事を運ぶと言う事は彼等にとって相応の重大事項だと悟る。
益々,生かして無理矢理魔界に引きずり込まれる可能性が上がった事を解し顔を引き攣らせる。
「分ったかな?俺は必死なんだよイースレイ____いや,アルファベットZ」
”アルファベットZ''その呼び名は久しく聞かない。
心の奥底に響き体が砕ける様に痛むからその呼び名は止めてくれと嘆願したからだ。
息が詰まる様に痛い。
「痛そうだな…お前は,お前の役目を理解している,その役目は英雄じゃない…苦しくて辛くて重い。
重圧から逃れたい…お前は特別だ。特別過ぎて特別で有る事を止めようとする程に」
「黙れ!!」
特殊体又の名をイレギュラー。主に人間の中に多く存在しそれらは通常の人間とは常軌を逸した魔力を有して産まれてくる。
悪魔や天使,竜族と言った人間より遥かな高みに居る存在と性をまじ合せる事により希に出現する存在だ。
そんなイレギュラーの中でも特別視されているのが“アルファベット”だ。彼等はAからZまでの二十六人と言う指定が有りイレギュラーのエリートだ。
そんな中にも無論等級は有りAがギリギリのアルファベットとするならZは最強のアルファベットと言える。
詰り,最初からイースレイと言う男は世界で最も特別な部類に位置する男だったと言う事だ。
通常この世界に存在する人間は全て母体から生まれると同時に
魔力の高さと血液のサンプルを取られる。それはその子供がイレギュラーの才を持つか否かを推断する為だ。
だが,イースレイはバスターズとして有名を馳せた父の力によりその検査を免れた。
何の因果か然し彼は悪魔と思しき存在の手により家族を失い戦いの世界へと手を伸ばし
アルティマニアの門戸を潜りバスターズとなった。
そして,始めて全てを見る目を持つと呼ばれるアルティマニアの教主"ルーダー"と対面する。
瞳と瞳が重なった瞬間に全てを見透かされた様な感覚に陥ったのを今でも覚えている。
彼と対面した全ての者達がそうだと言う。そう,対面した瞬間イースレイはルーダーに見抜かれた。アルファベットZの名を冠する者と…
「アルファベットZ 」
あの時だ。心臓の鼓動が突然音を大きくして爆発しそうになって倒れて嘔吐して…
ルーダーに涙ながらに懇願したんだ。そのアルファベットZと言うのを止めてくれ…
『あぁ,そうか…本能が悟っていたのか』
黙れ!猛然と吼えながらもイースレイは体の中の本能を理解した。
そして,目の前の男の言葉の重みも理解できた。苦痛に煩悶とするイースレイにガデッサは尚も言葉を続ける。
「黙らない…俺は必死だと言った筈だぜ?一つ聞きたい…
天使は“善”…悪魔は“悪”それは疑う余地の無い事だと思うか?」
理解している。彼が必死である事はもう…唯の悪魔の賢しい遊びではない事は。
そう,頭の中で考えているとガデッサは突然質問を投掛ける。
其の質問は詰り自分達が悪で天使が従うべき存在だからそれが垣根なのかと言う事だ。
イースレイは逡巡する。幾らこの男が嘘を付いていないとしても如何に郷愁故の行動としても
悪魔は悪,天使は善…その固定概念は拭えないし天使だって悪魔が気付く事なら気付く筈だ。
単純に悪魔の手を引く気には成れなかった。
「一つ下らない話をしよう。
悪魔がお前等の世界で言う一年で世界に到来する回数と天使が到来する回数は
実は天使の方が十倍以上多い…天使は人間達にとって有害なことをしていないのだろう?
そう,天使を信ずるお前は思うだろうが…天使は身勝手な神の欲望が生み出す正義の思うがままに神が邪魔と思う人間を殺しに来てるんだ」
「馬鹿な————」
「本当だニャ…君の真贋を見極める瞳で嘘だと思えた?第一,トールライって村は天使が滅ぼしたんだニャ!」
「な」
イースレイは理解出来ない。
天界の神々は実はエゴの赴くがままに天使を操り邪魔な人間を屠る為に天使を派遣する。
トールライの村は天使に殲滅された。馬鹿な,最もこの世界で情報に精通した組織アルティマニアに居る自分がそんな事に気付けない。
悪魔だって人間を殺す。無差別にだ…否,天使が人間を殺して回っているなど有得ない。凝固まったイースレイは唯瞠目して絶句した。
「俺達,悪魔は堕ちた存在?神々の余りの悪行に堪えられなくなって神々に反発したら翼を捥がれてこの様だ。
俺達は人間が愛しい……元来,天使には天使から出来た存在として人間を慈しむ情がある。
良心の呵責に限界を感じそんな事は間違っていると神々に反発した天使が堕ちた悪魔だ」
理解できるか?最初に現れた時の余裕綽々だったがデッサは今消えている。
唯,必死にイースレイを説得しているようだ。一刻を争う事だと言う様に。
"理解出来ない"イースレイは唇を噛み締める。血が出るほどに…
我欲に取り付かれた神々に天使は翻弄されていて其れを嫌った天使が神々に反逆したら神々は怒り其れを追放したと言う事だ。
今まで聞いた事も無い事実。考えた事も無い事実…何故事実とイースレイは考えるのか。
男の言葉に何一つとして嘘は無く全ての言葉に真実の響きが有ったからだ。
「私は如何すれば良いんだ」
どうせ,逃げる事は出来ない。
だが,世界が掛っている等と言う大それた事を出来るのか。そもそも話から察するに天使達が人間を滅ぼすと言う雰囲気だ。
全くその様な予兆を彼は感じて居ない。唯,何も考えずイースレイの口からは困惑の声がでるだけだった。
「多分,イースっちはさっきの言葉の真偽が分らないと思うんだニャ…
だからタピス達の世界に来ると良いニャ!世界では絶対に見えない真実が見えてくるから…」
「一つ聞きたい…悪魔だって人を殺すよな」
イースっちと言う渾名に反応する余裕も無く我慢できなくなったのか割って入ったタピスの言葉を聴く。
世界と天界や魔界は本来交わらざる遠い地平だ。存在は把握しているが何をしているのか等まるで知る由も無い。
彼女らの世界に行かなければ曇った眼鏡で見たい物を見ているに過ぎないのだろうとイースレイも危惧した。
だが,天使が人を殺そうとしているなら悪魔だって殺しているではないか。
現に,イースレイは人を殺し貪る悪魔を幾度も見て鉄槌を下してきた。
「それは後天的な悪魔だ……俺達は堕とされたがそれは天界で生きる権限を奪われただけだ。
俺達は魔界と言う空虚な世界に神々の目に映らぬ様にと閉じ込められた…
何故,殺さず閉じ込めたのかって質問は無しだぜ?神々はイカれてる…さて
此処からが本題だ。
人を殺すのは後天的な悪魔って言ったな…俺達,天使…世間一般にして堕落した天使である悪魔にも当然寿命はあり
交配もする…その交配によって産まれた道徳も正義も無いまっさらな赤子の頭には魔界に存在する魔気は毒なんだ。
上位に至ると大体がその魔気に打勝つがそれまでは大概が悪意の力を…衝動を止められない。
故にお前等の世界に来る悪魔は中級までが精々なんだ…」
其れに対してガデッサがイースレイの質問に答える。まず,神々により悪魔になった天使達は魔界へと追放された。
何故目障りなら殺さないのだろうかと言う疑念があったが其れはガデッサ自身も知らないらしい。
そして,魔界で堕ちた天使同士が交配すると魔界の魔気に充てられた性で歪んだ悪魔が生まれた。
正確には是が人間に本当に悪魔と呼ばれる存在な様だ。そして最初から悪魔として産まれると悪意の本能に抗えず殺戮衝動にかられるらしい。
然し,其れも上位まで至ると元来あった天使の力が魔気に耐性を持ち始め理性を有し道徳を学ぶ。
故に理性を手にした悪魔は人を襲わないと言うことだ。
「魔物と言うのはならばなんだ?」
だが,一つの疑念がある。
彼の言葉から察するに魔界は元々は何もない魔気に満ちた不毛の地。ならば魔物とは何故存在するのか。
悪魔が造った眷属か。
「俺達,天使から落ちた上位の悪魔でも魔気には恐怖する。それが要因となり魔気が具現化していったのが魔物とされる。
最も,その中にも自らの存在に抗い道徳と規律を手に入れようと人型になろうとする者が居るが…」
「タピスもそうなのニャ♪」
其れに対してもガデッサは細かく答えてくれた。
始めて魔界に送られたときは上位悪魔でも魔気に恐怖したらしい。その恐怖の感情と魔気がなぜか共鳴し彼等の中にある黒い存在たちを顕現したと言うことだ。
無論,元は天使だった存在の心の中から顕現した存在であるためか良心を秘める物も有るらしく人型の悪魔への特に上位悪魔への転身を望む物も居るらしい。
その成功例がタピスと聞いて道理で変な耳をしている訳だと諦めの入っているイースレイは一つの謎が解けたと言う清清しい気分になった。
イースレイは瞑目し是が気術により嘘を隠している可能性を考察しながらも一応の納得をする。
運命には敵わないのだと心に言い聞かせる。
「魔界,さっさと行こうか」
渋々ながら承諾したと言う言葉をイースレイは言う。
あのまま何の抵抗もなく魔界に行くよりは余程良かったと思う。
タピスが万歳して体全体で喜びを表しイースレイに抱きつく。イースレイは困った表情でガデッサを見る。
「良かったぁ…一応の納得はしてくれたみたいだな。諦めとも言うが…全然納得しないで嫌がる奴連れてくのも癪だし…仕方ねぇが」
ガデッサはと言うとイースレイが柔軟な対応を見せてくれた事に相当,安心していたようだ。
彼らにとってやはり重大事項らしく無理矢理でも連れて行く覚悟だった様だが…
一頻り喜んだ後,ガデッサは二回ほど手を叩く。
突然二人の影が現れる。どうやら隠遁していた仲間を呼ぶ合図だったらしい。
「お兄にゃん♪」
「よっ,良く僕の言付けを護れたね♪偉い偉いニャァ♪」
イースレイに抱き付いていたタピスは親しいのか現れた二人の一方に抱きかかる。
白の長髪で猫耳,スラッとした細い肢体で色白。モスグリーンの瞳で冷たそうな印象の顔立ちの男だ。
どうやらタピスと同じく猫の魔物から転身してきたらしい。兄弟の様な関係と見える。
そんなハンナハンナ兄妹を横目に
透き通るような白い肌が特徴的で儚げな水晶の様な青い瞳とエナメルの様な輝く青髪が特徴的な胸と腰を包帯で隠し靴を履いている程度の露出度の高い美女が悠然と通る。
どうやらガデッサと親しいようだ。
「ご苦労様ですガデッサ様」
「ん?まぁね…お〜ぃ,エルターニャもアンリもイースレイ君に自己紹介したって?」
女性はガデッサを労う様な言葉を掛けて跪く。
彼女の労いに対してガデッサはフランクに答えて彼女達に自己紹介をしろと命じる。
「私はガデッサ様の組織した「シルヴィア」の副司令官の一人であるエルターニャキューエルだ。馴れ合う積りはない」
ガデッサに命じられたから渋々と言う風情で女性が先ず自己紹介に応じる。
どうやら,ガデッサは自らの力で組織を築いているらしい。
次にタピスと抱擁しあっていた細身の男アンリと呼ばれた男が自己紹介に応じる。
「アンリ・ハンナハンナです。魔界の事で分らない事が有ったら聞いてくださいニャ♪」
彼もまたエルターニャと同様冷たそうな顔立ちだがどうやら,冷淡な雰囲気のエルターニャと比べて幾分友好的なようだ。
敬語が様になっているようだが猫だった頃の記憶が払拭しきれないのか矢張り語尾にニャを付ける事が有る様だ。
一頻り自己紹介も終わり腹も括った所で突然イースレイの立つ世界が鳴動する。
振り向くと空間が歪み異空間への扉が開かれていた。
タピスの手招きを見てイースレイは意を決して足を運べる。世界との離別を感じた気がして惜別の情が込み上げる。
そして,魔界への入り口へと遂には足が入る。
「魔気の心配はご無用ですニャ…シルヴィアのあるシャングリ・ラは魔界の中でも魔気の汚染を完全に洗浄した理想郷ですから」
魔気に対する怖れが有るのではないかと気を回したアンリが心配は無いと言う。
是から行く場所は人間に害のある魔気は存在しないと…
少しだけ心が軽くなった気がした————
気を許すな____真贋を確かめるまでは………
その親切心から来る言葉への感謝という甘えをイースレイは心の奥底へと無理矢理仕舞い込んだ。
この疑うと言う行為が何を産出すのだろうか…この頃のイースレイには想像も付かない。
Fin
Next⇒第1章 3曲目「魔界ラヴァーズ」へ
- Re: イースレイ〜第一章〜 第二話更新! コメ求む!! ( No.15 )
- 日時: 2011/03/22 18:35
- 名前: 逆憑 緑茶 (ID: ezn6wPAf)
サカツキツカサと申します
すごい面白いです
- Re: 黒白円舞曲〜第1章〜 3曲目更新 コメ求む!! ( No.18 )
- 日時: 2011/04/13 09:52
- 名前: 風(元;秋空 ◆jU80AwU6/. (ID: 4.ooa1lg)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
逆憑 緑茶様
コメント下さって有難う御座いますvv
その単純な一言が本当に心に響きます…また,暇が有ったら読みに来てやって下さい^^
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
父さん!!母さん!!命が引裂かれ自分の前で血の花を散らしていく
知っていた世界は……深緑の優しい世界は一面朱に染まった
血
血…血…血……夥しい血の嵐 鼻を突き刺す鉄臭さに咳込み喉から血が逆流するような感覚に襲われた。
嗅いだ事の無い其れは然し確実に体に恐怖を刻み拒絶反応を起させた……
怖い…嫌だ,血の花になりたくない。必死に祈ったさ神に!
あの時私は家族が死んで行く姿を見ながら家族が死ぬ事の辛さ以上に自分だけは生延びたいと言う感情に駆られていたんだ————
<全ては悪魔がやったのだ————>
そう断じてきた。
世界は無情で冷酷な朱色をしている————だが,其れを美しい優しい色で取繕っているだけだ。
そう,あの時悟った……悪魔と言う意思に人は抗えず悪意を隠し蹴落とし愉悦に嗤い進んで行く。
世界は汚い,悪魔が居るから……だが,そんな私の長年掛けて生まれた感情は今揺らいでいる。
本当は天使なのか?憎むべきは天使を使役する神々なのか!?
分らない……どうか,答を
黒白円舞曲 第1章 3曲目「魔界ラヴァーズ」
アンリ・ハンナハンナに理想郷と言わせた世界が扉を抜けた先には有った。
アンリの言う事など信じず魔気が充満してさぞ息苦しいのだろうと決込んでいた魔界の初めて空気は予想以上に綺麗で全く息苦しくなど無い。
どうやらアンリの言った事は真実らしい。元々天使だった者達にとっては矢張り魔界の空気は息苦しかったのだろうかと他人事ながらに考える。
そして,星明りによって映された眼下に広がる家々はイースレイの想像していた魔界とは掛け離れていた。
理路整然とした綺麗な左右対称をしていて毒々しい装飾など全く無い。人間が天使の家を模して造ったとされる家と何ら変らない。
視覚に訴える魔法の力によるものだろうかとも考えれるがまるでその様子は無い。
如何に自身が上級の魔族の真の力を分らないとしても大体出来うる事象の限界は想像が付く。
そもそも,是から何日も居る事になる筈である彼を一時的な懐柔の為に騙す理由は無いと推測する。
そんな時,ガデッサがくっくっと声を上げた。そして,突然腕を徐に広げて言う。
「ようこそおいでませ!魔界唯一の開拓地…俺達のシャングリ・ラへ♪」
此処は自分の街なのだと自分の愛する桃源郷なのだとガデッサは誇張するように言う。
其れと同時にガデッサは一度手を鳴らす。
すぐさま,巨大な青い鳥が現れ宙に浮いていた体に重力の力が戻る。
先程までは魔力の力により体が空に浮いている状態で妙な気分だった。
矢張り重力が有る方が体に馴染む。府と安堵の溜息が漏れる。
「オルゲロスゥ,早くするニャァ♪」
「タピス……此処にはオルゲロス初心者が居る事は忘れるなよ……もう遅いか」
この青い巨鳥はオルゲロスと言うらしい。
彼等「シルヴィア」が管轄する魔物の様だ。
それはタピスの明るい声に共鳴する様にして反応し羽を速く動かし始める。
どうやらオルゲロスの速度は相当速いらしい。
イースレイを慮るように抑揚に掛けるが心配しているような言葉をエルターニャが言う。
オルゲロスは既に移動態勢に入っている様でもう,減速は望めない様だが心の準備が出来た事は感謝しようと思うイースレイだった。
オルゲロスは一度旋回して目的地を目視した後に急加速する。
その加速は凄まじい物で体が軋むのを感じる。堪えきれず吹飛びそうになるとタピスが腕を引っ張り助けてくれた。
「ご免ニャァ……本拠地に着けば色々と伝えれる事が有るから遂」
腕を掴みながらこの風の壁による息苦しさにも慣れている風情でタピスはイースレイに謝った。
どうやら,シルヴィアの本拠地には口で説明するより遥かに鮮明な説明手段が有る様だ。
ハァハァと息を整えイースレイはタピスを見詰める。
それに気付いたタピスは顔を赤らめて目を逸らす。何故,目を逸らされたのか理解できず怪訝そうにイースレイは目を細めた。
「本拠地……見えてきましたよ」
アンリがタピスに目の行っているイースレイに優しい口調で知らせる。
其れを聞いたイースレイはアンリに向き直りアンリの指差す方向を見る。
どうやら,高さはそれ程無いが面積が広いと言う構造の建物らしい。
高さから見るに精々三階建てと言った所か。シルヴィアと言う組織の規模がどの程度なのか理解出来た気がした。
無論,地下室等あれば別だし人間の目では認識出来ないような隠れた空間がある可能性も有るが。
オルゲロスは颯爽と一点へと進む。其処はどうやら巨鳥の着地地点として決められた場所らしい。
其処に静かに減速しながらオルゲロスは足を付けた。
「オルゲロスゥ,今日もありがとニャ♪」
ジッとしているのは飽きたとばかりにタピスが元気一杯にオルゲロスから飛び降りる。
そして,オルゲロスの頭の当りを撫でながら労いの言葉を掛ける。
それに続いてアンリ・エルターニャと降り立ち夫々オルゲロスに労いの言葉を掛ける。
「何だ……降りねぇのか? あっ,それとも怖くて降りれないか!?大丈夫だってこの程度の」
「魔族が他者を労う……」
「おいおい,好い加減にそう言う固定観念は捨てろよ」
その光景にイースレイは瞠目していた。
此処,数時間彼は夢を見ているのでは無いかと問答していた。
魔族と言う存在が自らの想像と全く相反している。他者を心配し労い謝る事も出来る。
今迄の考えの全てが一瞬にして一変したらそれは心情が付いていかないだろう。
唖然として鳥から降りることを忘れる。
オルゲロスが煩わしそうに低く唸ると粗同時にガデッサが降りられないのかと馬鹿にした口調でイースレイに問いかける。
ガデッサの言葉等殆ど聞いていなかったイースレイは唯,驚愕し嘘だと否定するように言う。
其れに対してガデッサはやれやれと肩を竦める。
オルゲロスから降りて数時間がたった。
暫く本拠地内を歩いて応接室と書かれた札のある場所に居た。
応接室までの道程は長かったが整然としていて清楚な雰囲気だった。
所々に絵画があり其れは神々への敬意を完全に捨て切れては居ない堕ちた者達の複雑な感情が多少は分る様だった。
応接室の内装も綺麗なものだった。きちんと整理整頓されていて間取りも最も日の差し込み易い過ごし易い位置だ。
ソファーの座り心地が気持ち良い。
だが,応接室でガデッサから聞いた話は凄惨な魔族と天使の戦いと
そして,此処シャングリ・ラの開拓の歴史と開拓の理由だった。
天使の歴史が30億年以上と言う長い歴史なのに対し魔族の歴史は凡そ20万年程度と言う短い歴史と言う事実。
その20万年の間に天使により迫害され多くの天使から堕ちた魔族は死去した事。
そんな中,自らも1000年程前に多くの仲間を失ったガデッサは絶望の淵で神々の啓示を聞いたのだ。
天使や堕とされた悪魔達にとって親愛なる存在である人類の消滅を決定すると。
だが,それには多くの天使が反感を抱き暴動を起し神々は人間に1000年の猶予を与えた。
1000年の間に少しでも人間が学べば人間の殲滅の命令は廃除すると言う事になったのだ。
「待て……1000年の間に我々が学べば」
「先ず其処じゃないだろ疑問に思うと頃は……
何で俺が天使に発された筈の神の言葉を知っているのか?」
イースレイは至極最もな質問をしようとするがそれをガデッサにとめられる。
其れより前に聞くべき事,疑うべき事象が有るだろうと。
イースレイは瞠目する。態々自ら疑問に思うべき場所を掲示してくるとはと。
イースレイ自身気に成っていた事でも有るので素直に其れを聞くことにした。
其れによると多くの悪魔は堕ちても変らず天神の言葉を聞く力を色濃く残している。
全ての天使に伝える様な神の啓示の様な物は自然,堕天使の脳内にも響くのだと言う。
その神々の暴挙とも言える振舞いを黙視している事は出来なかった。
それまでバラバラに戦っていた仲間達を一箇所に終結させ彼等は,
来る戦いに備えて戦力を増強し続けた。それがシルヴィアの発起の理由だ。
質問に応えたガデッサは手を組み顎に当てながら今度はイースレイの質問に応える。
——神の本質は先刻も言ったが遊び好きな子供の様な物だ
一時は引いたが奴等は絶対に人間の殲滅を行うだろう
所詮は使い魔である天使の間に生まれた締約だ
奴等は容易く裏切る,そして天使に命じるだろう殺戮を
幾ら良い方向に変っていても神々が認めなければ同じだ——
イースレイは慟哭する様に喉を鳴らし顔を引き攣らせる。
この男の言う事に嘘はない。全く嘘が見えないのだ。言葉一つ一つに重みがある。
何が面白くないのか神々は確かに人間を邪魔と思い全滅させたいのだろう。
だが,だからと言ってそんな神々の使役する軍勢に自分如きがどうしろと言うのだとイースレイは沈黙する。
「お前は実は強い……アルファベットZ,お前の中には最強の魔族の血と竜族の血が流れているんだ」
「何?」
イースレイは自身の事を決して弱いと思った事は無い。
然し,この現状を収束させるのに足る力が有るとは思えないのも事実。
自らより遥か格上であろう多くの上位魔族を束ねることから最上位の魔族に属するこの男に強いと証明されると少し気が楽に成った。
其れと同時に語られるイースレイにとっては衝撃的な事実。
今迄全く,自分の出生の事など知りはしなかった。自分がまさか魔族の血だけではなくあの知的にして強大な肉体を誇る竜族の血まで引いていたとは。
怪訝に眉根を潜めながら成程,こうまでして懐柔しようとする訳だと得心が行った気がした。
「初耳か?当然だろうな……お前が本気で鍛えれば恐らく1年程度で上位魔族級の力を手に入れる」
「だが,それじゃ戦力が————」
ガデッサは訝るイースレイに聞いた事の無い事だったかと確認するように言うと当然の事かと瞑目し顎に手を当てて自らの見立てを語る。
精々1年で上位の魔族に至れるポテンシャルが有ると言う事実だ。
だが,それでは足りないだろうと言う懸念がイースレイの脳内を過る。
「タイムリミットまではもう少しある。神々は気紛れだが自分の提示した時間には真面目だ——
後5年だ……5年有ればお前は上位天使数体或いは10数体を相手に出来る実力を有する様になる
俺がお前を招きいれた理由は2つ……この戦い,魔族だけでは抑え切れない事
そして,お前がイレギュラーであり神々に匹敵或いは超える可能性のある存在である事」
取り乱すイースレイに全く動揺する事も無く当然の反応だと言う風情で言葉を続ける。
神々は自らが宣言した時間には真面目に従うという事とそれまでのタイムリミットは5年残っている事,
そして,その5年の間にイースレイは順調に成長すれば神々と渡り合う戦闘力を有する可能性が高いと言う事。
全てが雲を掴むような話でイースレイは唖然とする。
男の口調が緊迫感に溢れている故か事態が深刻に感じられるが事実,天使に滅ぼされるだろうと言う未来の事項に猜疑心が強くある。
「はぁ……幾ら言葉を並べてもそう簡単に払拭は出来ないよな。
まぁ,何れ天使が来るだろうからその時に真実を見て貰おうか」
イースレイの当惑する表情を見詰めながら何だか疲れたと言う様に嘆息してガデッサは立ち上がり退室するのだった。
ガデッサの退室と同時に表情の抜け落ちた感じの猫耳の男アンリが現れた。
トレイの上に紅茶の入ったマグカップが2つ並んでいる。
恐らくはガデッサとイースレイに振舞う物だったのだろう。
ガデッサが退室した事を確認した彼はソファに座り丁寧な所作でマグカップを配りイースレイを見詰める。
「唐突過ぎて信じていた世界が崩壊した感覚」
妙に詩人気取った口調で男は問いかけてくる。
其れに対しイースレイは頷く。
「全くだ——天使は正義,悪魔は悪……光は天使,闇は悪魔と断じてきた」
今までの自分の信じてきた全ての事が一瞬にして崩壊した事実。
当惑せずには居られない。脳内が警鐘上げ多くの取り止めの無い情報が周っている様な感覚。
其処に更に混乱材料を携えて来たのかとアンリに不審の目をイースレイは向ける。
「……まぁ,生きて行く上で構築された感情は簡単には拭えないですよね?
僕も貴方の立場なら分りますよ。然し,貴方は結果此処に来てしまった。
下手に疑念を抱き続けるよりは身を委ねる所は委ねた方が良い…そう言う風にしか出来ませんしニャ」
綺麗な所作で紅茶を啜りながら真剣な眼差しでアンリは言う。
慰めではない。迷っている仲間は彼にとっても邪魔なだけなのだと言うそう言う厳しい感情が窺えた。
そう,事実だ。自らが此処に居る事もそして此処から自ら程度の力では逃げられない事実も。
是が運命と言うべき物なのだろう。圧倒的な力に掌握され身動きを制限される。
「悪く考え過ぎない事ですニャ……僕達は何も貴方を食ったり殺したりする積りはないですから」
「それは 分るさ————」
アンリは最後に本心から慰めるように気楽に行きましょうと言う言葉を発し
安心させる為に悪い様に扱う気は無いのだと強く訴える。
その訴えにイースレイは其れを首肯する。
アンリは安心した様に不覚息を吐き紅茶を啜る。その所作に釣られてイースレイも紅茶を飲む。
その様を見てアンリはくすりと笑った。存外に美しい其の笑みにイースレイは動きを止める。
「どうかしましたかニャ?」
「いや……綺麗だと思ってな」
「それはどうも♪所で,タピスの事はどう思います」
それに気付いたのかアンリがイースレイに何かあったのかと尋ねる。
イースレイはアンリの視線から目を外し恥かしそうに思った事を正直に述べた。
其れを聞いたアンリは嬉しそうに顔を赤らめて褒められた事を素直に喜ぶ。
そして,気軽な風情で自らの妹はどう思うかと問う。
実はアンリにとって是が最もイースレイから聞き出したい事なのだ。
そうとも知れずイースレイは“五月蝿い女で好みじゃない”と断言した。
アンリの表情が曇る。
「僕の前でタピスを侮辱しない事だ————……ニャ」
ゾクゥ!!アンリの怒気の篭った言葉にあてられイースレイの体が言い知れぬ痛みに襲われる。
まるで針の筵の様なプレッシャーは確実な上位者の証だろう。
イースレイは唯,はいと答える事しか出来なかった。
語尾のニャすら恐ろしく感じた。
###########
アンリとの会話を終えてイースレイはアンリに薦められた通り館の中の散策をする事にした。
2時間ほど歩いたが存外に広くまだ,3分の1も歩き回っていないが疲れも有るので今日はもう寝る事にした。
ガデッサ達と会ったのは夜,9時過ぎでとうに朝の光が差し始めていた。
「よぉ,探したぜ……」
「あんたは?」
そろそろ寝たいと思ったが眠る場所が無い事に気付き逡巡する。
そうしていると前の方から オールバックの面長の悪人の様な目付きの茶色のフードを着用した体付きの良い男が現れた。
どうやら,気配の質からして上位の存在のようだ。
イースレイが問うと男はウルブス・サージェンスと名乗った。
「兎に角,お前の部屋は今掃除中だから少しの間,俺とタピスと雑魚寝状態になるとの事だ……宜しくな」
この男は兎も角,タピスと一緒に寝るというのは相当な不安が有った。
相手が体の成熟したとはまだ言えないがそれなりに体の出来た女性である事
そして,彼女のような性格の場合自らに抱きついて寝たりしそうで怖い。
『タピス————』
「あぁ,多分,俺達の席にアンタが割振られたのはガデッサの遊びだから気にするな!」
正直,エルターニャやアンリの様な分を弁えた真面目そうな者達の所に割振るべきだろう
そう,イースレイは思った。そんなイースレイの考えを読み取ったのかウルブスは言う。
是はガデッサの遊びだと……薄々は気づいていたがやっぱりかとイースレイは深く溜息を付いた。
「矢張りか!」
「まっ,慣れりゃ良い奴だと思うぜ♪楽しく行こうぜ兄弟!」
「兄弟じゃねぇ!!」
ウルブスの兄弟と言うフレーズにイースレイは過剰反応する。
気持ちが昂ぶっていていけないと反省しながらウルブスを見詰る。
「冗談通じねぇなぁ…まぁ,案内するから付いてきな」
ガデッサの言付けを破って他の部屋で寝ても大変な事になるのは明白なので
イースレイはウルブスに渋々と付いて行くのだった。
Fin
Next⇒第1章 4曲目「ニャンニャン冒険紀」
- Re: イースレイ〜第一章〜 第三話更新 コメ求む!! ( No.19 )
- 日時: 2011/04/02 13:14
- 名前: アビス (ID: dFf7cdwn)
こんにちは風s。相変わらず読み応え有りますね。
設定も凄く凝ってるし。少しは見習いたいものです。
- Re: イースレイ〜第一章〜 第四話執筆中 ( No.21 )
- 日時: 2011/04/08 08:35
- 名前: メフィストフェレス ◆ejQgvbRQiA (ID: xkqmATKo)
どうも、先日は私の小説にコメント有難う御座いました。
天使と悪魔だけでも大好物だと言うのに、まさか理想郷まで出てくるなんて……。ドストライクです(笑)
しかも声優さんにも詳しい様で……。此処まで趣味が似ている人は初めてです。
それに、とても面白くて次々読めちゃいました。凄いですね、見習いたいものです。
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