複雑・ファジー小説

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黒白円舞曲  力及ばず閉鎖 申し訳ありません!
日時: 2012/04/08 15:14
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: r3A.OAyS)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11520

初めまして,風猫と申します。
この他にファジーで一作、シリアス・ダークで二作執筆しています。
題名変更しました……
参照に掲載されているURLの作品も是非★


〜作者状況〜

執筆中【】
申し訳ありませんが執筆中に〇が付いている時は書き込まないで下さい。

$$$来賓のお客様$$$

弥生様(初のお客様です)
みう様(二次小説の方の小説も読んでくださった良いお方ですvv)
白哉様(勘違いを申し訳有りません)
右左様(あだるとちるどれんと言う天才的小説の執筆者です★)
ゆn様(私を尊敬してくれる数少ない人です♪)
逆憑 緑茶様(ねこうさぎだと分らなくてすみません!)
アビス様(隠れた名作家さんです^^)
メフィントフェレス様(何と言うシンクロ率……こんな方が!?)
かりん様(紙文作者じゃなくて神文作者なので自分を卑下しないで!!)
霊夢様(凄く儚い綺麗な小説をお書きになる方です)
葵様(二次小説のほうで凄くお世話になってます!!)
帽子屋様(才能は分けるほど持っていないので御免なさい!名前間違えすいません!)
朔様(えっと,凄い人です!絵も小説も書ける凄い人!!)
リオン様(妖怪物書いてる子です♪テンション高い子?)
琴葉様(小説宣伝書いてくれました^^)
ひふみん様(シリダクの方では,凄い良いセンスのオリキャラを造ってくれました!)
ヴィオラ様(オリキャラ投稿の第一人者です!)
玖龍様(マブ達の一人! マセガキでもある!!)
コーダ様(コアなお方なんでしょうか? 男性だったり??)
琴月様(妖艶な日本風作品が素敵なお人です)
一人称様(名前のセンスが素敵だぜ!)
水瀬 うらら 様(可愛らしい名前ですね^^そして、真面目な感じがします♪)
朱雀様(コメディ・ライトのホープです^^)
よもぎ餅様(オリキャラありがとう!)
狒牙様(BLEACHの件でいつもお世話になってます!)
暮来月 夜道様(Neon様です! カキコでは、高名ですね♪)
陽様(久々の常連になってくださりそうなお客様です^^)
チキン様(オリキャラ有難うございました!)
羽風様(キリカの方も着て下さって有り難いです!)
来良様(えっと、沢山勉強しましょうね^^)
ゆぅ様(ゴールデンタイムラバーと言う小説を執筆してるお方です!)
小林様(ヴァンパイアって響きから素敵ですよね?)
如々様(素敵小説の執筆者様です! マジ素敵小説ナウ!)
桜板様(私などとは違う女性らしい綺麗な小説を書くお方です!)


以上35名のお客様です

私の小説を覗いて天津さえ書き込んで頂き真にありがとう御座います。
又のお越しをお待ちしております。


皆様から頂いたオリキャラ


アビス様より アルベルト・スターク(人間A) >>65
葵様より アリス・クイーン(悪魔) >>70
ヴィオラ様より フィリクス・グリモワル(人間T)  >>72
リオン様より リオ・グレイシャ(霊族) >>75
コーダ様より ルテ・ルージュ(悪魔) >>102
逆憑 緑茶様より レノ・C・ラグルスI悪魔) >>113
朔様より ノルド・スティレイン(人間N) >>117
よもぎ餅様より ルロイセン・ル・ルー(人間X) >>118
狒牙様より メリー(霊族) >>128
暮来月 夜道様より オウィス・ナイトメア(人間M) >>137
チキン様より ファウスト=ギラ(悪魔) >>170
白月様より ディルス・ロンレッド(人間B)>>194
ゆぅ様より エギン・ナローズ(悪魔)>>195 


◆◆◆Story◆◆◆

>>11  1曲目「神々の起した嵐」更新
>>14  2曲目「悪魔は闇?天使は光?」更新
>>18  3曲目「魔界ラヴァーズ」更新
>>29  4曲目「ニャンニャン冒険記」更新
>>39  5曲目「宵闇に紛れて踊れ…………」更新
>>44  6曲目「天使進撃 Part1」更新
>>53  7曲目「天使進撃 Part2(弱き者よ)」更新
>>81  8曲目「天使進撃 Part3(リガルドVSアンリ)」更新
>>101 9曲目「天使進撃 Part4(激震)」更新

此処から、記載の仕方を変更します。
第1章 10曲目「天使進撃 Part5(援軍)」
No1 >>121 No2 >>135 No3 >>142 No4 >>149 No5 >>162 The end
第一章 十一曲目「天使進撃 Part5(終幕)」
Part1 >>175 Part2 >>185 Part3 >>201 Part4 >>207


★★★キャラクタプロフィールや追加設定資料★★★

>>63  キャラクタプロフィール 掲載欄 S.24 3月2日更新
>>64  オリキャラ募集要項設置
>>148 朔様作 アンリ絵掲載!
>>164 長月様作 タピス絵掲載!
>>199 アンケート用紙掲載!
>>223 朔様作 セリス絵掲載!



###注意事項###
1.グロ要素やキャラクタの死亡等が多く入ると思います。苦手なお方は…
2.荒しや他者・私等への嫌がらせチェーンメールや宣伝等の小説と関係の無いレスは遠慮願います。
3.五つの小説を同時にこなしています。現実も社会人ですので何かと大変です。
更新が遅くなることはご了承下さい。
4.シリアス70% ライト30%位の割り合いにしようと思っています。
シリアス苦手な方は注意!
5.最後に作者状況の欄が執筆中の時は書き込まないで下さい。
決して感想を書いて貰うのが嫌だと言う事では無いですよ!!私寂しがりやです!!

以上です。


〜キャラクタ設定要項〜
名前【】
年齢【】
性別【】
種族【】
身長・体重【・】
容姿【】
性格【】
得意魔法属性【】
気術を有しているか【Yes/No】
気術名【】(有している場合)
気術の能力【】(有している場合)
詳細【】(過去や趣味など)
仮想CV【】

作者用です






_____//基本用語集

ⅰ.五大世界
天使と天神が支配する「天界」
悪魔と悪神が支配する「魔界」
他と隔絶した圧倒的な戦闘力を持つ生物「竜族」が住まう「竜獄」
肉体有る者達,世界と呼ばれる場所の者達が死んだ時逝く世界「霊界」
普通の人間や生物が住まう「世界」または「現世」
この五つを纏めて五界と呼ぶ。

ⅱ.バスターズ
主に生きた人間達が住まう世界で現世に現れた悪魔や迷い霊を調伏する魔法力及び気術を行使する戦士達。
彼等バスター達を束ねる組織を「アルティマニア」と呼称する。
アルティマニアの教主「ルーダー」は天界の神々と交信出来るとされる。
上位の存在として「十二星座」や「四天王」、「五亡星」と呼ばれる集団が居る。

ⅲ.魔法
天界では天力・魔界では魔力・人間界では自然力・霊界では霊力・竜獄では獄力を使う事により発動する。
詰り,世界に伝わる魔法により力の源泉が違う為使える魔法の性質等も多種多様である。
同じ炎の魔法などでも全く違う。
だが,全ての世界の魔法には基礎となる
「炎」「氷」「雷」「水」「風」「土」「光」「闇」と言う八大元素が有り
その元素と世界の者達個々の魔法力(霊力や自然力等)をそれに同調させて使うと言う
基本概念は同じ。


ⅳ.気術
魔法とは違う力。
武器や自らの体,他の生物や機械などに作用させる力だが魔法と違い決まった轍が無いのが特徴。
言わば戦士として力を得た者達が有する個々の特殊能力といえる。

ⅴ.特殊体
又の名をイレギュラー。
悪魔と人間のハーフ等本来交わらぬ地平に居るべき存在同志が交配して生まれる存在。
天使と悪魔のハーフはイレギュラーには含まれないのは本来天使と悪魔は同じだかららしい。
人間界「世界」には26人の特別指定イレギュラーが存在する。
それらのイレギュラーを悪魔達は「アルファベット」と呼んでいる。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜黒白円舞曲〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







黒白円舞曲 第1章 プロローグ


この世界は、五つの世界に大別されている。
人間の住まう世界と呼ばれる世界。
そして、人間が崇拝する天神達の住処、天界。
天使達と日夜地獄絵図に出てくるような残虐な殺戮劇を繰り広げているとされる悪魔達の住処、魔界。
そして、死した世界の霊達が集う霊界……
最後に,世界に住むべき住人でありながら、世界に住まうには圧倒的に強過ぎて、隔絶された竜族達の住まう竜獄。

この物語は人間達が闊歩する世界から始まる————





空は透き通る青、世界を飛び越え宇宙までも手で掴めそうなほどに晴れ渡っている。
そんな空を見下ろしたある草原、丈の低い草達が群生する野原。
ある男が、長大な剣を枕にして眠っている。
男は、黒のロングコートを着用していて黒の縮れた長髪で、顎は太めのガッシリとした感じだが、端整な目鼻立ちをしている。
男の名はイースレイ・ファルニカ。 アルティマニアに所属するバスターだ。
右と左の夫々の瞳の色が右は青…左は赤、その所謂オッドアイ故に、バスターになった当初は良く、周りから摘発されたらしい。 そんな事を無視して、前へ進んで此処まで来たと十年以上戦い続けて自負している。


空は青く澄み渡っていて宇宙まで届く様な気がした————


そよそよと頬を伝う冷たい風が気持ち良い。
男は左半眼を薄らと開く…その瞬間だった。
空の全てが深紅の赤となり彼の瞳に映る…


「やめろ」
イースレイは寝起き様に懇願するように必死に言う。
そしてまた目を瞑り嘘だと心の中で叫びながら再び目を開ける。
赤……赤…………——真っ赤!
大切な人の血の色————


脳内に過去がフラッシュバックする。

幸せだった過去,
祖父・祖母・両親・弟そして,あの日は多くの親戚が来ていて立食パーティを行っていた。
料理好きの母が元一流バスターだった父が狩りに出て魔法で仕留めた馬や猪の肉を捌き腕によりを掛けた料理を振舞う。
歌うのが好きな牧師の小太りの親戚の男の近くでイースレイは男の牧師の歌とは思えない歌声に酔う。
幸せな時間が……続くと思っていた。


酒が振舞われ皆が酔い痴れ大騒ぎになってきた頃だった。
突然,イースレイの目の前に居た老婆の首が吹き飛んだ。
それからだった。高速で移動しながら正体不明の存在は情け容赦なく親戚を家族を葬って行く。
美しい緑の草達が踊る外での立食パーティは一瞬にして血の朱に染まる地獄と化した。



——————俺はあの時、怖くて机の下に隠れていた


イースレイの大切な人々を全て切り刻み、惨殺した存在は生きた人間が視界に存在しないことを確認すると立ち止まった。


銀色の腰まで届く、長い髪、左目が白で右目が黒の左右不対象な瞳の色。
それにアシンメトリーするように、右が白で左が黒の双翼……


————天使なのか? 悪魔なのか……俺の存在に気づかないでくれ


人間ではない。
天使か悪魔であることはその姿から一目瞭然だった。
震える手を脈動する体を必死で押さえながら早鐘を鳴らす胸部を強く掴みながら念じた。
頼むから気付かないでくれ…大切な人全てを奪ったんだから自分だけは殺さないでくれ。
思えば唯,怖かったのだろう……唯、生き延びたのだろう。
誰だって、死にたくはない。大切な誰かが死んだって自分だけは生き延びたい。

「そこ……生存者が居るな」


抑揚に欠ける天使とも悪魔とも付かぬ白と黒を貴重にしたローブを着た声から察するに男。
察知された……そもそも、一流のバスターである父が反応も出来ない様な化物が気付かぬ筈がない。
 怖い! 怖い……怖い怖い怖い! 心臓が更に強く限界近くの強さで鼓動する。


 俺は  俺は   此処で死ぬ……いや,死んでも良いだろ……  一瞬さ,痛くない……


 大粒の涙が頬伝う。
 一瞬で死ねるんだから痛くなんてないって、心に言い聞かせても生きたいと言う本能が、生きろと未練は無いのかと喚くのだ。


「人間……私が憎いか?」

——え?

「憎いか?」


————憎い  憎いに決まってる! 殺してやる……殺して!!!


「ならば、強くなって、私を殺して見せろ!」


 何故、生かされたのかは、理解できない。
 然し、イースレイは天使とも悪魔とも付かぬその存在の気紛れか……それとも気紛れに見えるだけで大いなる目的があるのかどちらにしろ生き延びた。
 生かされた。 今もイースレイの胸の中に残る故郷の光景はあの血の海だけ。




「うおぉぉぉ!」


 空すら引き裂くような雄叫びを上げ大地を割るほどの全力で長剣を振るい過去の赤き記憶を切裂く。
 ハァハァと呼吸を荒げさせ深呼吸して心を落ち着かせ一頻り目を閉じ目を開く。
あの赤い空は消えている。 ホッと安堵の溜息を吐き荷物を背負い目的地へと歩き出す。


悪魔祓いとして……舞い込んだ依頼の場所へと———



今日中には依頼をくれた村に付く。
男は足早に悪鬼達に苦しむ者達を救いたいが故に歩く。
今は日の傾きから朝の十時位か。
今日の夕方には村に到着し明日には悪魔の根城に攻め込み調伏する。
刻一刻と被害は増える筈だ。



————村が見えてきた。



夕方,予定通り村へと到着する。
悪魔がそれも資料の上では上級悪魔が居る筈なのに村に行き着くまでに
使い魔一匹にも遭遇しないとは妙だと思いながらイースレイは村へと足を踏み入れた。



「迷い猫みぃ〜っけ」

そんなイースレイを遠く人間の視力では
存在を認識出来ないような場所から監視する何者かが居た。




Fin


Next⇒第1章 1曲目「神々の起した嵐」へ

Re: 黒白円舞曲  Ep1 11-1 1月10日に更新 コメ求む! ( No.183 )
日時: 2012/01/17 18:46
名前: ゆぅ (ID: HgCKMcvF)

はじめましてq。

えぇっと早速ですがぉ話詠ませて頂きました。
ぃやぁ〜・・・、変わったぉ話でとても詠み応えがあり、かなり面白かったです。
何かこういったジャンルのお話しにこんなに見入ったのはじめてです@

これからも詠ませて頂きますので更新頑張って下さい=

Re: 黒白円舞曲  Ep1 11-1 1月10日に更新 コメ求む! ( No.184 )
日時: 2012/01/17 23:38
名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: G9VjDVfn)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

葵へ



なっ何だってぇー!?
忘れている? 申し訳ない!!

テッサイア長いですよ♪ 闇シハ(闇の支配者は血の海で嗤う!の略)の前では、一度死んでます(オイ
いやぁ、あの時のテッサイアは滅茶苦茶格好良かった!
愛した女のために命を懸けた男ですからね^^

ありがたき幸せ! そして、貴方らしいですな!



ゆぅ様へ



此方こそ初めまして。
お褒め頂き有り難い限りです^^
はい、更新頑張りますね♪

Re: 黒白円舞曲  Ep1 11-1 1月10日に更新 コメ求む! ( No.185 )
日時: 2012/01/18 00:46
名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: G9VjDVfn)
参照: アンリ好きな人には辛い話かも?

第一章 十一曲目「天使進撃 Part5(終幕)」Part2

  「……あぁ、こんなに死に溢れていやがったのか……」
  「狼ィ! お前の馬鹿げた嗅覚なら死臭も感じていただろう? 何を今更言っているのだ?」  

  天使軍とシルヴィアの戦い。
  夫々の面々の戦いは続いていた。
  命が爆ぜる。降り注ぐ光は、悪夢の残光。
  夜と言う壁に隠された凄惨なる全ての死を照らし出す。
  是だけの数が死んだのだと、嘆くには充分な死者の数。命を懸けて護ると誓った者達の亡骸は限りない。
  オールバックの堀の深い男、ウルブス・サージェンスは咆える。
  目の前の男の卑劣な戦い方に憎しみを顕にして。
  銀の手入れの行き届いた長髪の若々しい顔立ちの男だ。気品に満ち溢れた振る舞いに対して実に卑劣な戦法を取る。
  彼は知将、サイアー・ハーレイ。
  仲間思いで志願し自警団の隊長となったウルブス。
  そんな彼の弱みを理解し戦線から遠い悪魔を殺して彼の精神に損傷を与えながら戦ってきた。

  そんあ男の卑劣な行為の歯牙に掛かり死んだ者達の数は、予想を大きく上回っている。
  確かに男の言うとおりウルブスは、嗅覚ガ鋭く夜目も利く。
  だが、嗅覚では死体の数は把握できないし流石に朝ほど目は鮮明に物を映さない。
  梟のように夜すらも支配する高度な瞳が欲しかったなどと舌打ちをしながらウルブスは、十字を切り祈りを捧げ構え直す。
  その瞬間をサイアーは逃さない。人差し指を彼をと向け魔力を指に集中させレーザーのように解き放つ。
  放たれたのは、風属性の魔法“ランクウォルス(疾風の残光)”だ。
  不可視の宝刀が、直線状に有る全ての物体を豆腐を斬るようにあっさりと引き裂いていく。
  
  しかし、彼はそれを全く意に介さない。手を思い切り振いその刃を掻き消す。
  彼の気術。圧倒的な身体能力強化を旨とした、シルヴィア内最強の格闘能力を有する者に相応しい能力だ。
  衝撃の余波で舞った大量の土砂。少しずつ霧が晴れるように散会していく。
  その先に有るのは、ウルブス・サージェンスの信念に萌えた炎の瞳。 
  この男は、まだ、護ると言う信念を持ち続けている。否、多くの同胞の仇と更に強く自分を憎む。
  サイアーは、僅かに汗を滲ませた。精神的に追い詰めて優位に立つつもりが相手を吹っ切れさせてしまったのだ。

「歯を食い縛れ……容赦はしねぇぞ?」
「ガッ……ブアァッ!? 馬鹿力がァッ!」

  サイアーは焦り、下級呪文フレイダム(炎槍)を放つも圧倒的な瞬発力と反射能力を備えたウルブスに当るはずも無い。
  知将であると同時に戦闘にも優れている彼だが、今のウルブスの動きを目で捉えるのは困難だ。
  残像を見ていた頃には、危険区域にまで入り込まれ。
  鬼の如き形相のウルブスの怒りの篭った一撃を打ち込まれる。
  彼は、その美しい顔を歪ませて絞られた雑巾の様に体を捩じらせて吹き飛ぶ。
  その直線上にあった建物が十数旨吹飛ばされた。
  無論、それでも彼ほどの実力者は死なない。ウルブスは、油断することなく次の攻撃を彼に食わせんと疾走する。
  巻き上げられて舞い踊る粉塵は、ウルブスの勝利を祝福するシルフのよう。
  彼は、その美しい風情に感慨深げな表情をしながら損傷の回復をしながら悶絶しているサイアーに、鉄拳を降す。

「まっ待て……!」
「ド三流の悪党みたいなリアクションー! してんじゃぁねぇよぉ!」

  瞬間、拳を上げた風圧で舞い上がっていた微粒子たちが吹き飛びサイアーの姿が浮ぶ。
  手を前に出し何とも情けない格好だ。一編の容赦も無く目の前の男に彼は拳を降した。
  下された拳は空気を震撼させ周囲にあったまだ、無事な家屋の硝子を粉砕させて。
  そして、岩盤を砕き巨大なクレーターを穿つ。地面には、歪なひびが数百メートルに渡り発生し多くの建物が倒壊していく。
  その苛烈な一撃を受けたサイアー・ハーレイは、盛大に血を吐き出しす。

  一撃を受けた腹部は、グチャグチャで再生不可能なほどのようだ。
  苦痛が極限過ぎて悶絶する事もできずサイアーは、沈黙する。四肢を時々痙攣させながら虚ろな瞳で勝者を見詰める。
  身下れてすら居ない。敗者として地面に横たわるのは久し振りだ。
  勝つためなら何でもして泥臭く生延びてきた。
  厳しい闘争の世界だ。神も生きたいと足掻くその姿を悪評はしない。
  だが、強運と実力と……。誇りをかなぐり捨てた上で手にしてきたこの地位も終わりか。
  一滴の涙が頬を伝う。ウルブスの最後の攻撃は、恐らくは最大の急所である心臓か脳の破壊だ。
  大事に思ってきた家族の姿が、鮮明に浮ぶ。子煩悩で教育熱心な良い父親になるだろうと言ってくれたヴァネッサの微笑み。
  日溜りのような笑みで沈鬱な雰囲気のときもいつも安らぎを与えてくれたカナリア。
  それを全力で護ると豪語して練磨絶やさない実直で熱いリガルド。
  多くの者達の姿が駆け巡る。

「終りにしようぜ……アンタは、俺の大切なものを壊しすぎた!」
「生憎とお前の言う通りなんてにしてやる気はない! 頼む! 残っている事を願うぞ、我が天力よ」
  
  耳障りな狼の遠吠えが聞こえるが、そんな男の戯言はどうでもいい。
  死ねない。まだ、死ぬ訳には行かない。ハーレイ家の永久の繁栄と幸福のためには。
  その強い意志が、何ら骸と変わらない状態のはずのサイアー・ハーレイを動かす。
  残り僅かな天力の貯蓄分を全て回復に傾け出来うる限りの治癒をする。
  そして、激痛に晒される全身を省みず最後の魔力を発動させた。
  彼の全身が、光に包まれて消滅する。
  それは、極大移動魔法と呼称される魔法だ。全ての種族の共通の数少ない魔法だが、全種族の中でも使えるの極僅か。
  効果は、本来なら幾つもの道具や甚大な量の魔力を使って可能になる世界間移動の魔法を一人で遣って退けるのだ。
  習得した者は須らく神の庇護を受け神々しい天使の羽根に包まれるようにしてサラサラと消えて行く。
  その美しさから、この魔法はヴィーナスと呼称される。

「ヴィーナス!? チッ! 味な真似をしやがる!」

  止めを刺し損ねたウルブスは、堀の深い顔を歪めた。そして、舌を打ち逃げられた物は仕方ないと次の戦場を目指す。
  
 
————————



  ウルブス対サイアーと言う一つの大きな戦いが終焉を向かえた。
  それは、多くの者達に大きな影響を与える。サイアーは、今回の強襲の首謀者だ。
  それが居なくなれば当然、結束は弱まる。
  特にそれが如実だったのが雑兵たちだ。
  一体多に特化した強力な戦士であるゾッドとエルターニャ。
  彼らの前に戦意喪失し逃走する様は、正に肉食動物相手に逃げ惑う生物的弱者のそれだ。
  辛うじて戦意を繋ぎとめていた戦況の拮抗。それは、大きな戦力であり司令官であるサイアーの脱落で脆くも崩れさる。
 
  未だに戦意を失い輪ない者達は、数少ない。
  サイアーを兄と慕うヴァネッサ。そして、天使軍の総司令官であるハリー。最後に戦闘狂セリス、柱となるのはこの三名だ。
  一気に戦況は、シルヴィアの戦士たちの優位に成ったと言えるだろう。

  最も大きな動きがあったのはハンナハンナ兄妹と対峙するヴァネッサだ。
  彼の戦線離脱を強く嘆く彼女は今までの冷淡さを失い狂騒し制御不能の諸刃の刃を開放する。
  露出度の高い服装をした色白の妖艶な美女である彼女は、常に目を包帯で隠す奇抜な女性だ。
  だが、それには理由がある。彼女の気術スパニッシュは、危険でかつ制御不能なのだ。
  圧倒的な禁忌の力が薄皮一枚の向こうに眠っている。それを理解する対峙者アンリは、包帯をはずさせまいと急ぐ。
  しかし、どんなに急いでも間に合わない。目測でそう悟った彼は、ヴォルビノーチェ(氷神鉄槌)を発射させる。
  
「間に合え……間に……合えぇぇぇぇぇぇッッ!」

  どんな時でも冷静さを失わない今回ばかりは、低く呻く。大きく口を開き怒号する。
  それほどに解放してはいけない物なのだ。パンドラの箱のように。
  だが、幾ら叫んでも祈っても届かない時は届かない物だ。
  願いと言うのは……
  根源的な恐怖を催すに値する圧倒的な力。今まで見聞きしてきた全ての気術の中で最悪の力。
  それが、解放される。その名もスパニッシュ。
  目と目の重なり合った生命体を砕き、そして目で見た魔法の力を崩壊させる比類なき力。
  彼の解き放ったヴォルビノーチェは、無残にも砕け散り飛散していく。それらは、破片の雨となって台地に降り注ぐ。
  全てが隕石のような攻撃力を持ち墜落しアンリ達の率いる戦士達は捲き込まれ息絶えていった。

「あぁ……解放されてしまった」
「お兄ニャん……」
  
  多くの戦友たちの命が、読みの世界へと流されていくビジョン。
  頭の中が真っ白になりアンリは嗚咽する。
  そんな兄を見詰めタピスは苦しそうな声で嘆く。
  だが、嘆いてばかりも居られない。彼は、絶望を振り切り絶望を刃に乗せて戦うことを誓う。
  自分の持つ最強の武器、炎の装飾の施された爪“ヴェルファイア”を手の甲に装着する。
  そして、目の前の最悪の瞳を持つ女ヴァネッサと目を合わせないように相手の側面に回るように旋回し始めた。
  視界に入らなければ魔法も有効なのだ。高速で移動しながら魔法で遠距離から攻撃するのが定石。
  そして、魔法が命中したら最大攻撃力を誇るヴェルファイアで後ろから刺す。それで止め。

「なっ!? そんな正気か……!?」
「正気? この目を解放させる時、私は正気など保っていた事が無いよ?」
  
  そう、自分に言い聞かせる。文字通り彼はその戦法を実行する。
  低火力ながら連射の可能な下級魔法で攻め倒す。
  しかし、そのセオリーは、直ぐに粉砕された。彼女は形振り構わず爆撃を受けながら彼の懐に入り込む。
  そして、強引に頭を掴み目を瞑る前に彼の瞳を見詰めた。
  その瞬間、時が止まった。
  タピスは、口を覆い大粒の涙を流す。大きな天力のうねりを感じて救援に来た猫番長は、現実を目の前にして放心し立ち尽くす。
  アンリ・ハンナハンナは愛されている。シルヴィアの面々に、否シャングリ・ラの全ての人々にだ。
  タピスは理解できない。目の前のありのままの現実を。受け入れられず頭の中で反芻される映像を否定する。

「嘘……嘘だよ? お兄ニャんは死なないもん……絶対、死なないもん!」
「タピス……タピスタピスタピス! うおあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁッッッッッッ!」

  時間にして僅かコンマ数秒。
  それは、周りに居た者達にとって数時間にも似た長い刹那。
  悲痛な少女の声を飲み込むように怒号が、天空をつんざきヴァネッサの体が吹き飛ぶ。そして、地面に彼女は叩きつけられる。
  アンリは、肩で息をして自分の体を見詰めた。体中の至る所にある亀裂が目立つ。
  力の強い戦士ほど砕け散るまでの時間は長引くらしい。最も、どんな治癒魔法も効果は無いので死は免れないだろう。
  冷静に分析し反吐が出そうになりクシャリと彼は、破顔した。
  そして、恐らく生涯最後の戦いになるだろう相手を睨む。
  死は怖い。自分が死んだら誰がタピスを護ると言うのか。不安だ。
  だが、免れない現実は受け入れるしかない。
  死ぬ前に何を言おうか頭の中で考える。幾つも幾つも思い浮ぶ。切が無いほどにだ。全く親馬鹿だなと一人ゴチる。
  だが、まだ戦えるのは事実。シルヴィアのために最後まで貢献したい。そして、自分が死ぬまでは何が何でもタピスを護る。
  彼の信念の全てがマグマのように煮え滾った。

「お兄ニャん?」
「ネコ番長……タピス。相手は手強いようだ。力を貸して欲しい! 勝って生延びて笑おう!」

  目の前には体中ヒビだらけの兄が居る。
  きっともう、助からないだろうと現実を理解しタピスは泣きながら頷く。
  最後に、義兄であるアンリの役に立ちたいと。
  いつもいつも迷惑ばかり掛けてきたから彼の願いを受け入れようと、強く切望する。
  もう、涙は見せない。目の前の愛する人は言ってくれたから。
  笑っているほうが好きだと。そう、言ってくれたから。

「……タピス?」
「何かニャお兄ニャん?」

  不意にアンリから零れた言葉。名前を呼ばないといけないから呼んだわけではない。
  しかし、親身になってタピスは聞き返す。

「タピスは、本当に……笑っていると可愛いニャァ」
「あっありがとうニャお兄ニャんにそう言われると照れるニャァ」

  その時の彼の笑顔は、最高に眩しくて優しくて。
  タピスは、その優しい表情を何時までも眺めて居たくなった。
  アンリの言葉に彼女は頬を赤らめる。彼の大好きな最高に愛らしい彼女がそこには居た。
  しばらく二人は見詰め合っていた。だが、幸せな時間は続かない。
  轟音が鳴り響く。ヴァネッサが活動を再開したようだ。
  空を見上げ臨戦体勢に入る。普段の無邪気な笑みは其処には無い。アンリは、その引き締まった表情を見詰め呟く。

「本当に成長したんだニャァ……」
『もう、心配ないかも知れないニャ……』

  今日で親馬鹿も卒業だなと胸中でアンリは寂しげに呟いた……
  


⇒Part3へ
  
   
  
  

Re: 黒白円舞曲  Ep1 11-2 1月18日に更新 コメ求む! ( No.186 )
日時: 2012/01/18 06:50
名前: 小林 (ID: rsOn.58k)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11943


おはようございます!

やってまいりました←

—精神ヴァンパイア—の小林です。

『黒白円舞曲』まだちょっとしか読んでませんが、
暇を見つけて読んでいきたいと思います♪

ではノシ


Re: 黒白円舞曲  Ep1 11-2 1月18日に更新 コメ求む! ( No.188 )
日時: 2012/01/26 22:35
名前: 如々 (ID: 7ufWM2y7)

風猫様

この間は、小説にコメントありがとうございました。
空き時間を見つけてちまちま読み進め、ようやっと、
第一章 八曲目「天使進撃 Part2(リガルドVSアンリ)」まで来ました。
のめりこんじゃいました。
描写がとても丁寧で、まるでその場に自分がいるようでした。
自分は読むのがとても遅いので、今書いている場所まで追いつくのはもう少しかかりそうです。
全部読んでからコメントしようと思いましたが、これはすごいです!
え、売ってる小説? と思ってしまいました。
一話一話、完成させられていて、起承転結まで一話ごとに収めているのはすごいです。
自分の好きなキャラクターはガデッサですね。
かっこいいです。そんな大人になってみたい。

今書かれている場所まで読み進めたら、またコメントしにきますー! ではでは。


追記
読み終わりました。
ボキャブラリーが少なく、ありきたりなコメントしかできませんが、すごいです。
ガデッサは何故力を弱めているのか……。
とっても気になるところです。

そしてアンリー。タピスと同調して少し瞳が潤んだのは内緒です。
ここまで物語に入れ込めるなんて、素晴らしいです。
続きとても楽しみに待っています。


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