複雑・ファジー小説
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- また明日.
- 日時: 2012/02/18 22:53
- 名前: coco*. (ID: /u41yojS)
「じゃあね」
笑顔で手を振る君の姿を、俺は視界から見えなくなるまで目で追い続けた。
丈の短いあのスカートが、やっぱり君らしい。
やっぱり、君らしくて可愛い。
やっぱり、君らしくて、俺は好きだ。
——ずっと、君と、歩いていきたい。
**
こんにちは。cocoです。
小説カキコにも、何回も投稿した事ありますが、挫折が多いですm(_ _)m
また、複雑・ファジー小説に投稿するのは、初めてです。
そして、男性目線で小説を進めるのは、またまた初めてです。
趣味程度に書いているので、
まだまだ書き方は未熟です。
頑張って更新していきますので、
よろしくお願いします。
- Re: また明日. ( No.55 )
- 日時: 2012/09/03 20:16
- 名前: coco*. (ID: Ar0Lat0c)
二十四『初恋』
「何してんの?」
「うおっ、ビビったぁ」
俺が屋上のドアギリギリまで耳を近づけていると、森がいつもの崩れた制服のままこちらに向かってきた。
「お前ビビるからそういうのやめろって」
「何が」
「そういう、ニョキって出てくるやつ」
「だって……暇だったから。で、盗み聞きなんていい度胸してるね」
「な、違う!!」
森は少しえらそうに俺のことを見つめた。
言っちゃおうかな、とニヤリを口元を上げた。
「な〜んちゃって! なんか聞こえた?」
「いや、何にも」
実は、盗み聞きをしようとしたのは事実。だが、何も聞こえない。
だからと言って出て行くのはちょっと気が引ける。せっかくの恋人同士が会えたんだし、そっとしておいてやろうとは思う。
けど……。
やっぱ、気になんだよなぁ。
「日向ぁ」
「あ?」
「何も聞こえなかったなら、あたしの話を聞いてくれない?」
少し得意げで、でも少し寂しそうに。
今の森の表情は、俺では判断できないくらい、今まで見たことのない顔をしていた。
「……いいけど」
**
俺と森は今、教室にいる。
幸い授業には間に合った。幸い、と言っていいものなのか。
俺はこのままサボろうとしていたところなのに。
まぁ、いいか。最近サボってばっかりだったし。
いつもにぎやかに俺の隣でしゃべっている森の面影はどこにもなくて、静かだった。だから、先生もクラスメイトも驚いていた。
森は自分のスクールバッグから女子らしいメモ帳を取り出した。
一番書くスペースがある紙をピリピリと破くと、何かを一生懸命書いていた。
ずいぶんその姿を眺めていた。どうやら書き終わったようだが、俺に見せる気配がない。
手が、かすかに震えているような気がした。
やっと俺の方を向いた。
森と目が合う。
すがるような目で、森は書いたと思われる紙をすっと俺の机に置いた。
かさ、と紙を取ると、折られた紙を開いた。
思わず、目を見開いてしまった。
書いてあることが、俺の見間違いかと思うくらいだった。
[ あたし、中学の頃、先生との恋愛で転校したの…… ]
——
久々。
すいません。
- Re: また明日. ( No.56 )
- 日時: 2012/09/09 17:12
- 名前: coco*. (ID: Ar0Lat0c)
二十五『それぞれ』
「え……え?」
「……別に、その先生が好きだったわけじゃない。でも、なんか友達にはかっこいい彼氏ができてくるたびに、好きな人ができるたびに、焦っていたのかもしれない」
中学の頃、好きな人なんてできたことなかったから、と少し寂しそうに言う。
森は、学校の中で一番かっこいい先生に告白されて、断ったのにしつこくされて、無理矢理その関係を続けていたという。
誰にも相談できずに困っていたとき。
『え……藍子、何やってるの?』
この声が、まだ頭の中に焼きついているという。
キス、キス。見られた。
ただただ、真っ白な頭。首を振るだけで、特に何も意味はなかった。
最悪だった、中学時代。
親の関係も崩れて、噂を流されて。
その先生は、自分を守りたいために、森が悪いという。
自分の周りにあるもの全てが怖くて、消してしまいたかった。
わざわざ遠い中学に転校し、そのままこの高校に上がってきた。
……と、森は俺に話してくれた。
「だから、ほんとのほんとの初恋は日向だよ」
「……」
「軽蔑しても、いいよ」
そういった森が持っていたシャーペンは、かすかに震えているような気がした。
「……するわけないだろ」
初めて、森のことを意識した。
いつもは、おしゃべりな女子ばかりだと思っていたけど。
何故か、今日だけは守ってやりたいと、思ってしまった。
それは、今日は森が俺の好みの女子になったから、ではない。
——俺と、重なるから、かもしれない。
- Re: また明日. ( No.57 )
- 日時: 2012/09/12 22:16
- 名前: coco*. (ID: Ar0Lat0c)
二十六『交差』
辺りには、言葉がなかった。
沈黙。
さっきまで怖くなかったはずの沈黙が、今はとても怖かった。
「…………」
旭と陽斗は、うつむいたまま、同じ顔をして足をもぞもぞしていた。
やっと陽斗は言葉を決めたのか、うつむいていた顔を上げた。
「旭」
「え……」
「それは、俺とは付き合えないってことか?」
「……」
戸惑ったような顔で旭は陽斗の顔を見つめる。
少しだけ、下を向いて悩んだ。
せっかく、再会して初恋が分かったのに……。
しっかりと判断ができないなんて、自分はきっと情けない人間なんだ……。
旭は自分の額に手を置いた。
森にも、言ってしまった。
日向にも、言ってしまった。
日向のことは好きじゃない。
森と日向の方がお似合いだ、と。
「……ごめん、なさい」
それだけ言って、旭は屋上のドアを勢いよく開け、走り去った。
陽斗ははぁ〜、とため息をついて、うずくまった。
「なん、だよ……」
ここまで、やっとの思いで転校してきたのに。
「出会いと別れは、同じ場所か……」
そう言うと、陽斗は少し微笑んだ。
でも、何故か……何故か。ほんのちょっとだけ、涙がにじんだ。
授業が終わると、先生がこちらへ向かってきた。
「おい、渡辺。森」
「えっ?」
「飯室と渡辺と森、特にこの三人は授業参加日数が少なすぎる。もっと積極的に取り組むように」
「あー。……はい」
照れ笑いをしながら、森が答える。
先生が俺と森から離れてから、森は深いため息をついた。
そして、逃げるように友達のところへ走っていった。
帰り道。
俺はかったるそうに歩いていると、「おーい」と、森の声がした。
振り返ると、……案の定、森がいる。
「なんだ、森か」
「なんだってなんだよ! てか、いい加減藍子って呼べ!」
ぷんすか怒りながら、俺の歩幅に合わせて森は歩く。
「うん。……藍子」
何で。
何で藍子と呼んでしまったのか分からない。
ただ、呼びたかった、から。
森と呼ぶのをやめたかったから。
"藍子"は、俺の顔をまじまじ見ながら、顔を真っ赤にした。
「えっ、何!? どうしたの!?」
「え、何、何が?」
「だ、だって急に藍子って」
「お前が呼べって言ったんだろ?」
「そ、そうだけど」
藍子は相当戸惑って、あたりをキョロキョロした。
それに気づかないふりをして、俺は前を向いて歩いた。
当然のことながら、藍子はひょこひょことついてきた。
あれから何分かたって、まだ顔の赤色が抜けない藍子に、俺は藍子の頭を少し強くなでた。
後ろから、誰かが涙を流していると知らずに……。
- Re: また明日. ( No.58 )
- 日時: 2012/09/15 20:16
- 名前: coco*. (ID: Ar0Lat0c)
二十七『』
カーテンの隙間から、朝日がちらちらと輝いて見える。
俺はふあーっと伸びをすると、ベッドをおりた。
何もおかしなことはない、男子の部屋。
二年前と変わらない、あの場所に大きく掲げられてあるバスケットボールを、見上げてみる。色ペンで、汚く、……綺麗に文字が並んでいる。
その隣に、寄せ書きの色紙。
色紙は、中学生の頃の学年内で書いたものだ。
久々に、二つとも手に取ってみる。
「……」
俺は、こんなものを取っておいて良いのだろうか。
持っている資格なんて、俺には一ミリもないのに。
色紙を持つ手に力を加えて、折ってしまおうと思った。
ぐい、と色紙を曲げた。
「……っ」
だめだ。
やっぱり俺は、あんな醜い思い出、思い出したくない。
やっぱり俺は、あの頃の思い出に、すがるしか、できない……。
「日向ぁ〜〜〜! おっはよおおおお!」
「おはよ。朝からテンションマックスだな」
藍子は、俺の背中を、バンバンと叩きながら話しかける。
「そろそろ、バスケの時期だね。あたし、球技大好きなんだぁ」
ピクッと俺の体が反応するのが分かった。
自分では、反応していないつもりだった、のに。
「そう」
「うん。日向はバスケ好き?」
「……」
俺は少し長い間瞬きをしながら、
「嫌い」
と。
こう答えた。
「え〜!! なんか、いいじゃん。球技してると、仲間! 団結! ——そんな感じになる」
「……そうだな」
——仲間。
——団結。
どっちも、俺の大嫌いな言葉。
いや、そうじゃない。
大好きだった言葉。
「おはよう! 旭ちゃんっ」
「おはようございます」
旭はいつものようにやわらかい笑顔で微笑むと、俺の方を横目で見た。
無表情のまま、「はよ」と言うと、ぎこちない笑顔だが、「おはようございます」と返してくれた。
俺は席に座って、読みかけの本を読み始めた。
「旭ちゃんっ、昨日陽斗先輩と会ってきてどうだった?」
「え、えーと。別に何もありませんでしたよ?」
あ、あれ?
俺、なんでだろう? 前までは、旭のこと、気になって気になって仕方がなかったのに。
興味もないし、ドキドキもしない。
俺は思わず本から、旭の方へ視線をずらした。
旭は俺の方を見ていた、少しビックリしたような顔で、俺から視線をずらした。
「そんなことないでしょーっ。カレカノだったんでしょう?」
「ま、まあそうでしたけど。もう、終わっちゃったんです」
「……え」
すごい勢いで藍子は叫ぶ。
クラスのほとんどの人の視線を浴びる中、藍子は青ざめた顔で俺と旭の顔を見合わせる。
俺は理解不能で、首をかしげた。
「旭ちゃんって、も……」
「森さんっ!」
旭は声をかすらせて叫んだ。
かつて、旭のこんな叫んだ場面を俺は見たことがない。
クラスメイトは、空気をなごませるため、わざと教室内をうるさくしているに違いない。
「森さん。ごめんね、ごめん。私、……ごめん」
「旭ちゃ」
藍子の言葉を聞かないで、旭は前を向いた。
藍子はそのまま、俺の存在すら忘れているかのように、脱力していた。
「おい、どうしたんだよ」
「……」
口元が、かすかに震えているような気がした。
- Re: また明日. ( No.59 )
- 日時: 2012/09/15 20:51
- 名前: coco*. (ID: Ar0Lat0c)
二十八『噂』
「ねえ、旭ちゃん。さっきはどうしたの?」
授業の合間の休み時間、藍子がアスカとトイレに行っている間、クラスで不良ぶっている女子が旭に話しかけてきた。
あ、……俺と同中だ……。
同じ、クラス……。
俺は、思わず机にふせた。
ふせたというより、顔を隠した。
「いえ、別になんともありませんよ」
いつもの調子で、旭がさらりと答える。
「へー。っていうか、ウチのこと覚えてる? ホラ、同中だった」
「覚えてますよ。斉藤美帆ちゃん」
「きゃー! ありがとう! ……なんかさ、藍子ってでしゃばっててムカつかねぇ?」
「え?」
急に話題が変わったこと。
その話題が藍子の悪口だったこと。
机で顔を伏せている俺も、びっくりした。
旭は、もっとびっくりしたようだ。
「え……え?」
「ホラ、なんかさ。ウチ可愛いですよアピール」
悪口っていうのは、きっと共感してほしいだけ。
自分の考えを肯定してほしいだけ。
人より、優位に立ちたいだけ。
ただ輪の中心に立っていたいだけ。
悪口しかいえないのなら、そんな口取ってしまえばいいのに。
中学時代、ふとそんなことを思ったことがある。
「そんなところ、私はあんまり見たことないですけど……」
「まぁーじぃ? 表裏、激しいよ。猫かぶってるんじゃねェ?」
「……」
旭は、それ以後黙ってしまった。
それに気づいたのか、……その、女子は、話題を変えた。
俺の机から何かを取る音がして、少し顔を上げると、その女子は俺の読みかけの本を見ていた。
「……お、い」
「柄にもないモン読んでんなァ〜! 中学ン時、図書館なんて行ったことないだろ!」
気を、遣ってくれているのか?
分からないけど、俺は当然のことのように目をそらした。
旭は、少し心配そうな顔をしていた。
——そうか。旭も、同中か。
中一の頃の俺を、知ってるんだ。
「……まぁ、お前変わりすぎ」
静かにそういうと、本をどかっと机に投げ置くと、席に戻っていた。
旭は、少し苦笑いしながら、
「まぁ、誰でも変わりますよね。中一のときは、日向も無邪気だったような気がする」
と、そういった瞬間、藍子がトイレから帰って来た。
「あぁ〜、めっちゃ混んでた!」
「森さん」
「どうしたの? 旭ちゃん」
「あ、いや、別になんでもないですけど」
「そお」
俺は伏せていた顔を、……そのまま、上げられなかった。
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