複雑・ファジー小説

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また明日.
日時: 2012/02/18 22:53
名前: coco*. (ID: /u41yojS)



「じゃあね」

笑顔で手を振る君の姿を、俺は視界から見えなくなるまで目で追い続けた。
丈の短いあのスカートが、やっぱり君らしい。
やっぱり、君らしくて可愛い。
やっぱり、君らしくて、俺は好きだ。


——ずっと、君と、歩いていきたい。


**

こんにちは。cocoです。
小説カキコにも、何回も投稿した事ありますが、挫折が多いですm(_ _)m
また、複雑・ファジー小説に投稿するのは、初めてです。

そして、男性目線で小説を進めるのは、またまた初めてです。

趣味程度に書いているので、
まだまだ書き方は未熟です。

頑張って更新していきますので、
よろしくお願いします。

Re: また明日. ( No.50 )
日時: 2012/06/24 01:13
名前: coco*. (ID: Rsh8g3Di)

十九『揺れる』


学校に着くと、いつも通り四人とも同じ下駄箱に行って、同じ教室に入る。
けど、何かが違う。

いつもより、うるさい感じ。
なんか、……う〜ん、説明できないけど、いつもよりみんなのテンションがおかしい。

流行に敏感な森、アスカはすぐさま話題に飛びつく。
俺と旭は眠たそうに、自分の席についた。

すると森が走ってきて、興奮気味に旭を連れて行った。
去っていく二人を見ながら、俺は目を閉じた。

眠るのは嫌いだ。
好きじゃない。

あの記憶が、よみがえるから。


** **


「ねぇ、日向!」

俺は閉じていた瞳をゆっくりと開けた。
寝たりはしていない、意識はちゃんとあるんだが、目を閉じていたほうが楽だ。

「……なんだよ」

俺は森の方を見る。
旭もちら、と見たが、不安そうな顔をしている。

「なんかね、よくわかんないんだけど……」

森も、あわてて横目で旭を見る。
……どうしたんだ、いつもは能天気な森が。

「陽斗って人、知ってるでしょ? 旭ちゃんの……」

陽斗? ああ、確か、あの……彼氏の、人。

「ああ……、それがどうかしたか?」
「なんか、転入生らしいよ」
「そうなのか……」

一瞬、話の意味が分からず、そのまま流したが、言葉の意味を理解すると、やばい話になる。

「ほぁっ!?」
「変な声上げないでよ、日向。それで、イケメンイケメンって女子がいつも以上にうるさかったらしい」
「ほー……。……」

俺は、それ以上何も言えなかった。
旭に、良かったな、ともいえなかった。
会いに行って来い、ともいえなかった。

だって俺は……、


俺は…………。

俺だって、旭の事が好きだから。

旭はそのまま不安げな顔で、前を向いた。


** **


( 森 藍子 視点 )


「ほー……。……」

日向は、迷っている。
いつも見ているもん、癖くらい、分かる。

日向は迷っている時や、イヤな時はいつもまばたきをしない。

いつもなら、眠たそうに目をパチパチするのに。

どうして反応に困っているか、分かるよ。

旭ちゃんの事が、まだ好きだから。

当たってる、ひゃくぱー、当たってる。

だから、いかせたくない。
それを分かっているから、旭ちゃんも動かない。

だってあたしは知ってる。さっきまで、旭ちゃん行く気満々だったから。

女子に、「何組ですか?」とか、「今、時間ありますか」とか、すごく聞いていたから。


日向は、強がりだ。自分の弱さを人に見せたがらない。
バカだから、なんていったらいいのか分からないけど……、すごく、すごく優しい。

見せると、心配されるからって、多分思ってる。

結構、噂になってるんだよね。
日向と元中の女子とか。

日向を見るたび、いつも。

"やっぱり、渡辺ってさ、あの事があったから、あんな風になったんだよ"
"昔はあんなんじゃなかったよね"

小声で話しているのかわからないけど、あたしには聞こえている。

何? って聞くと、「勝手に言うと、あいつに怒られるからさ」。
そればっかり。

許可をもらおうと思っても、いくらあたしでも言葉につまる。

どっちにしろ、日向は結局、優しい人だって分かってるから。
どんな日向でも、好き。

旭ちゃんを好きでも、あたしは日向の事が好き。

もしこの恋が実らなかったとしても、あいつが笑ってくれれば、結局それでいいやって、あたしも笑顔になるから。




** **


( 渡辺 日向 視点 )

旭はさっきからそわそわしている。
授業を受けたことを、多分後悔しているんだと、思う……。

もし俺がさっき、
「行ってこいよ」
と言っていたら、どうなっていた?

ふぅ、と息をつく。



授業が終わっても、旭は席を動かずそわそわしている。
先輩に会いに行きたいんだ。

俺の方を、ちらりと見る。
俺が、旭の事を見ているのが、バレた。

旭は、悲しそうな顔をして、俺から顔をそむけた。

もしかしたら……、俺のせい?

俺が、いけなくしているのか?

それは、……そんなの、イヤだ。

会いに行かせるのもいやだ。
いやだけど……旭を困らせるのは、世界で一番イヤだ。

「旭」
「……?」

困った顔をして、こちらを向く。

「会いに行ってくれば。ずっと、待ってたんだろ。会いたかったんだろ。久々に、抱きついてくりゃーいいじゃん?」
「……っ」

笑顔でいられたかな、俺。

旭は、ガタ、とイスを鳴らして走っていった。

森は、心配そうに俺の顔をのぞく。

「あれで、よかったの?」
「別に、いいよ。あいつが幸せなら、俺はそれで」

なんて、かっこいいセリフを言ってみたが、似合わなかった。

Re: また明日. ( No.51 )
日時: 2012/06/28 21:02
名前: coco*. (ID: Rsh8g3Di)

二十『揺れるⅡ』


( 飯室 旭 視点 )


私は、迷っていました。
自分の気持ちが、どうなっているのか分からないんです。

陽斗が帰ってきた。

嬉しい、と感じています。
だって、大好きだったから。
いつも人の影に隠れていたあたしに、手を差し伸べてくれたのは、陽斗だったから。
だけど、今はそれが特別な想いなのかどうか分からない。


大体、私は陽斗に会って何を言おうと思っていたの?

私の足は、とまってしまいました。

授業をサボってまで、何をやっているんだろう。

陽斗は、私の事を忘れているのかもしれない。
もしかしたら、他に彼女なんかもいるかもしれない。

今にも零れ落ちそうな涙を、こぼれる前に、制服でぬぐいました。

廊下の隅っこに寄りかかっていると、男の人の笑い声が聞こえました。それと、足音。

私は、寄りかかるのをやめて、足を動かしました。
前を向くと、ちょうど角を曲がってきた、男の人が歩いてきました。
あの上履きの色は、赤。二年生でしょうか。

動かしていた足を、ふいにとめました。
再会というやつです。

不良っぽい、ガラの悪い男子生徒と、肩を組みながら。

「ウソ……」

陽斗。

ぬぐった涙が、また、あふれそうになる。

「あれ? あそこに誰かいる?」

陽斗の声じゃない。不良生徒の声。

陽斗が、私の方を向いたことが、分かる。
……。何故か、顔を上げてしまいました。

「……あ」

陽斗の口から、声が漏れました。
どうやら、私だってことが分かったようです。

「ひゅーっ! 結構、可愛くね?」
「あ、本当だ」

二人の不良生徒が、私の方に、静かに歩いてきます。
髪の毛を触られたとたん、陽斗が「あっ」と声をもらしました。

……?

「まーま。可愛いけど、どっか紹介してよ」

にっこりと微笑むと、不良生徒は、私の髪の毛を触るのをやめると、歩いていってしまった。

「あ、……あり、がと……」

私は、顔を真っ赤にさせながら、陽斗にそういうと、いつもの笑顔で微笑み、

「旭の好きな場所で、話がしたい」

と、言い残していった。



頬は火照ったまま、私は、どこかへ走り出していました。

Re: また明日. ( No.52 )
日時: 2012/06/28 23:10
名前: coco*. (ID: Rsh8g3Di)

二十一『揺れるⅢ』


私の好きな場所。


それは、屋上です。


中学二年生の秋。
私にとっては、一生の思い出……いえ、一生の傷です。

制服が違うだけで、軽蔑されて、無視されました。
教室にいることだけで、辛くて、息苦しくて、毎日が必死でした。

屋上が、私の教室と言ってもいいくらいだったもの。
きっと、屋上の事だ。

私は、屋上に走る。
高校だから、中学の頃とは、風景が変わっている。
けど、私はここが大好きだった。

風が好きだった。
自由な鳥達を見るのが好きだった。

ずっと、一人でも良いと思っていた。


** **


( 渡辺 日向 視点 )


「気をつけ、礼」
「ありがとうございましたー」

——結局、旭は授業に戻ってこなかった。

森は、俺の事を心配してか、そわそわして、ろくに話もしなかった。
しばらく、机に突っ伏していると、女子の悲鳴が聞こえる。

「……」

俺には、関係ねー。

「あの、あの、旭いる?」

俺は、バッと顔をあげた。

な……なんだ……。
森は、風のように俺のところへ戻ってくる。

「あのっ、あの人! 陽斗先輩だって!」
「ああ。だから女子が騒いでたのか」

陽斗先輩? その人の顔を見てみる。
俺とは正反対。
瞳がぱっちりしていて、肌が綺麗だし、優しそうなイメージ。

彼に見惚れていると、森は先輩の顔をじっと見て、俺の顔と見比べていた。

「何だよ、何見比べてんだ?」
「いや〜……」
「やめろよ、恥ずかしい」
「あたしは、日向の顔の方が好きだな」

当たり前のように、さらりと言う森。
俺は、思わず顔が赤くなってしまったというのに。

「旭ちゃんさぁ」
「は?」
「あの人の事、すきだったらしいけど」
「……」
「本当は、日向の事も好きだったとか?」
「は? なんでだよ!」

俺は思わず、声を荒らげた。
森は、ぺろ、と舌を出した。

「女の勘ってやつ」


** **


陽斗先輩は、いまだに女子に絡まれている。
アスカも、きゃーきゃー、きゃーきゃー。
旭を探していると必死に訴えているのだが、聞こえていないようだ。

森は、全く興味を示さず。

「言ってあげたほうがいいのか? ああいう場合は」
「そうかもね。でも、辛くなるだけでしょ? やめとけば?」

森は、見ていて飽きない。
くるくるとペン回しを始める。

「森、それ俺にも教えて」
「ペン回しのこと?」
「そう」
「んーじゃあまず、人差し指から、中指に後ろに回して」

森は、いつでも楽しそうだから……。
話やすい、というか、素でいられるっつーか。
俺にとって、森は太陽みたいな、そんな明るい感じ。


さて、うるさい女子どもの奥で、困ったような顔をしながら、それでも笑っている陽斗先輩。

陽斗先輩だから、教室にいないと分かった時点で、どこにいるか分かっているだろう。

俺は、我慢の限界だった。

「俺、陽斗先輩助けてくる」
「え、ちょっと助けるって……?」

俺はすごい勢いでイスから立ち上がると、陽斗先輩の方に向かって歩き出した。

「日向!」

俺のそでをつかむのは、森。
つらそうな顔をしていた。

「もう、やめなって。そんなの日向が傷つくだけだよ。助けたら、二人は会っちゃうんだよ?」
「……」

……それでも俺は……。

バッと森から手を離すと、「ごめん」とつぶやいた。


** **



「はあ、はぁっ」
「疲れたぁ〜」

俺は、なんとか女子の間をくぐって、陽斗先輩の手を引っ張って、屋上まで来た。
ここまで全速力で走ってきた俺と陽斗先輩は、少しの間、息切れが止まらなかった。
そして、息切れがとまると、二人で顔を見合わせて、笑った。

「お前、名前は?」
「渡辺日向です」
「日向……。そっか、覚えとくよ。あ、それで助けてくれてありがと」
「いえ。別に。旭から、陽斗先輩の事は、話聞いてますから……」

そういうと、陽斗先輩は、眉をひそめた。

「え? 日向って、旭と仲良いの?」

"日向"と呼び捨てにされた事が、嬉しかった。

「いえ、付き合ったりはしてないけど。ただ、中学一年の時、同じクラスで」
「あ、そうだったんだ。じゃあ、好きなの?」


…………。

陽斗先輩の質問に、固まってしまった。
「すきなの?」
——好きだ。だけど、彼氏にそんな事言えない。

しばらく間を空けると、陽斗先輩は、ははっ、と人懐こい笑顔で笑った。

「そうなのかぁ、まぁしょうがないな。旭って可愛いし」
「……」

こんな所を、旭は好きになったんだろうか。

「じゃあ、ライバルというやつですか〜?」
「え! 違います、ただの片思いなんで、別になんとも思ってません!」
「片思いって事は、両思いになりたいって事だろ?」
「そういうんじゃ……」

俺は、言葉を失ってしまった。
陽斗先輩は、相変わらず笑顔で、でも、真剣だ。

「じゃあ、お互い頑張ろうな!」
「……」

勝ち負けは、もう勝負はついていると思う。

陽斗先輩は、もう一度「ありがとう」と言い、屋上に入っていった。



——

テスト明けです。
すいません、gdgdです。

Re: また明日. ( No.53 )
日時: 2012/06/30 22:44
名前: coco*. (ID: Rsh8g3Di)

二十二『揺れるⅣ』


屋上のドアを開け、外に出た陽斗は、周りをきょろきょろと見回した。
旭を、探している。

「陽斗?」

可愛らしい声が聞こえる。
陽斗は、声のする方向を向いた。

陽斗は、ずっと、ずっとこの声を聞きたかった。

「陽斗!」

ずっと見たかった笑顔を、旭は見せてくれた。
陽斗も、微笑んだ。
旭も、微笑む。

「あは、やっと会えた」
「ほんと……」

なんだか、今日は沈黙が怖くない。
お互い、微笑んだまま、何も話さない。

話すことは、きっと……たくさんある、はずだった。
けど、口が重たくて開かないんだ、と二人は同じ事を思う。

「……あの、」

陽斗が、口を開いた。
さっき一緒に走ってきた、日向の存在を見ると、旭が自分を堂思っているか、確かめたくて、仕方なくなったのだ。

「俺らって、……元に、戻れるのかな?」
「……ぇ」

蚊の鳴くような声で、旭はつぶやいた。
困った顔をして、頬を染める。

旭も、その意味が分かる。

「てゆうか、俺はそうなりたいけど」
「……」

旭は、何も話さない。
陽斗は、背中に冷や汗をかきはじめる。

不安が、体の真ん中にどんと押し寄せる。

「(なんで、何も言わないんだ……?)」

きっと、戻りたいと思っているなら、すぐ口にするはずだ。
陽斗は、あせった。

「あ、旭はどう思ってんだ……?」

旭の事だ。
きっと、"戻ろう"と言ってくれるはずだ。

「私……私は……」

唇をかみ締めて、旭はうつむいた。
陽斗は、一歩、また一歩と旭に近づく。

「分からない……」
「え……?」
「自分の気持ちが、分からないんです……」

そう、静かに言った。

Re: また明日. ( No.54 )
日時: 2012/07/01 21:57
名前: coco*. (ID: Rsh8g3Di)

二十三『揺れるⅤ』


「旭?」

陽斗は、旭の肩をつかむ。
彼は優しく掴んだつもりだったが、旭にはそれがいたいと感じた。

「陽斗の事嫌いとかじゃ、ないんだ……だけど、何かおかしいの」
「おかしい? 俺がか?」

陽斗は、旭の肩をつかむのをやめる。
旭は、顔をゆがませた。
瞳に涙が、少しずつたまっていく。

陽斗は、こんな状況でも、中学校の頃よりも旭が、感情表現が豊かになったことを、嬉しく思った。

「私ね……陽斗が、初恋じゃないの」




** **



「え……?」


そんな話、陽斗も聞いたことがない。

「小学校とか?」

ふるふると、旭が首を振る。

「中、一です」
「そ、なのか……。もど、れないのか……?」

途切れ途切れに、一言ひとこと、慎重に言葉を選んで、旭に問いかける。

「中学一年生の頃の私には……、恋、なんてもの、分からなかったから……」
「……」
「陽斗とであって、この気持ちが、恋なんだって知った」
「……旭」

何の意味もないのに、陽斗はむなしく旭の名前を呼ぶ。

「けど、……ひ、日向が」
「日向……?」

日向の名前を発してから、旭はもう何もしゃべらなくなった。
瞳をうるうるさせていた涙が、旭の頬にほろほろとこぼれる。




——ただの、あこがれかと思っていたんです。

——ココロの裏側が、少しくすぐったくて、思い出すだけで、泣きそうになるこの気持ちが。

——揺れているのは、私の気持ち、でした。


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