複雑・ファジー小説
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- また明日.
- 日時: 2012/02/18 22:53
- 名前: coco*. (ID: /u41yojS)
「じゃあね」
笑顔で手を振る君の姿を、俺は視界から見えなくなるまで目で追い続けた。
丈の短いあのスカートが、やっぱり君らしい。
やっぱり、君らしくて可愛い。
やっぱり、君らしくて、俺は好きだ。
——ずっと、君と、歩いていきたい。
**
こんにちは。cocoです。
小説カキコにも、何回も投稿した事ありますが、挫折が多いですm(_ _)m
また、複雑・ファジー小説に投稿するのは、初めてです。
そして、男性目線で小説を進めるのは、またまた初めてです。
趣味程度に書いているので、
まだまだ書き方は未熟です。
頑張って更新していきますので、
よろしくお願いします。
- Re: また明日. ( No.40 )
- 日時: 2012/04/08 17:54
- 名前: coco*. (ID: vGcQ1grn)
第二十八話【音】
俺らが騒いでいるのに、前にいる森は一向にこっちを見ようとしない。
気づかれてると思うんだが……俺なら、絶対振り返って睨むぐらいはすると思う。
「ぶえーっくしょい!」
「お、おい!」
アスカは花粉の季節なのか、風邪なのかよくわからないが、時々くしゃみをする。それも、とても大きな。
アスカは俺と旭が注意すると、すぐに舌をぺろんと出して「ごめんちょ」とわけのわからない言葉を連呼する。
「あっ! 森さんが曲がりましたよ!」
アスカと俺がぎゃあぎゃあ言い合ってるうちに、旭は曲がり角を指差して、俺とアスカに向けて言い放った。
俺はなんだか申し訳なくなって、潔く旭の後をついていった。
「……ごめん、旭」
「いえ、別に大丈夫ですよ」
アスカも特に何か言うわけでもなく、角の方をのぞいてみると、そこには何も言わず路上の端っこで立ちすくんでいる森の姿が。
「あい……っこ」
「黙れ、お前」
アスカが森の名前を言う前に、俺はアスカの口を腕でふさいだ。
不満げなアスカの顔を見て、俺は得意げな気分になった。
(俺の勝利だぜ!)そう思った瞬間、
ガブリ、と効果音をつけてもいいような勢いで、アスカは俺の腕をかぶりつく。
「ぎゃっ……いで……いだい……っ」
「へっへーん。あたしの勝ちだね」
「あ、アスカさん……。日向……」
旭は俺とアスカを交互に見比べてから、あー! と大きな声を出した。
「も、森さんが! 行っちゃいますよ?!」
「もう! 日向、早くしてよぉ!」
頬をふくらませ、アスカは俺の事をわざとらしく睨んだ。
なっ……。
「全部お前じゃボケーーィ!!」
「あははははっ」
久しぶりに、旭の笑顔を見た。
(旭って、みんな言うけどやっぱ笑顔似合うなぁ)
改めて、再認識。
ちょうど、三人とも落ち着いてきた所で、森は自宅と思われる建物の中へ入っていった。
建物は、ボロでもなく、高級というわけでもなく。
普通の家、と思われるもの。
でも多分、俺の家よりかは……、広いと思う。
「アスカは森の家、遊びに来たことあんのかよ」
「みくびらないでよ。あるに決まってんじゃん。ここだよ」
……どこまでコイツは憎まれ口をたたけば気が済むんだこの野郎……!
俺は少々気力をなくしつつも、腕を組みながら、アスカに聞いた。
「で? ここに来て、何をするって?」
「潜入調査」
「だから何するんだよ!」
思わず、ツッコミ。
旭は建物を見上げている。
チリンチリン、と小学生の男子達が、自転車で二、三台通る。
あたりはしらけた。
「んー……何しようか」
「殺すぞてめぇ」
「ここで待ってますか? 追い出されるとかあるかもしんないし」
建物から、俺達に視線を移した旭は、一番正当な意見を。
アスカは即、「それがいい」と言って、その場に座り込んでしまった。
「あは、はは……」
隣から、あきらかに愛想笑いをしている旭の声が聞こえる。
そのうち、何故か俺も笑えてきて、旭と顔を見合わせて、くすくすと笑ってしまった。
「あっ、ねぇ笑うのやめて」
「なんだよ」
アスカは急に耳に手をあてて、俺らの笑いを止めた。
真剣な顔つき。
俺は、じっと耳をすませる。
——何か聞こえる。
「なんか、……聞こえるでしょ」
「ああ。なんだろ。この家かな」
三人同時に、森の家を見つめる。
「きゃあぁっ」
——……森の声が、森の悲鳴が確かに聞こえた。
- Re: また明日. ( No.41 )
- 日時: 2012/04/08 18:38
- 名前: coco*. (ID: vGcQ1grn)
第二十九話【救助】
「藍子……」
拍子抜けた声で、アスカはつぶやく。
俺も旭も、声すら出ない。
森って……——?
次々に、森の母親と父親のような声が聞こえる。
声が似ているわけでもないが、青年のような声も。
「だま……あいこ…………」
今のは、母親らしき人の声だ。
合間に、殴るような、地面に体を打ち付けるような音が聞こえる。
「藍子お! 藍子おおおお?!」
「アスカッ! おい!」
狂ったように叫びだすアスカを、俺と旭は必死になだめる。
アスカは、俺達の腕を思いっきりひきはがすと、玄関の方へかけよった。
興奮気味で、玄関の柵すら越えられない。
「ちょっと待て! アスカ!」
「どうして?! なんでそんな正気でいられるの?! あれは藍子の声だよ?!」
涙をボロボロとこぼしながら、泣き出すアスカ。
俺も、それには何も反論することができなかった。
——俺はただ……様子を見ようと思っただけ。落ち着こうと思っただけ。
けど、アスカの行動も、友達として正しいはず……。
何が間違ってて、何が正しいかなんて、俺らにはわからない。
** **
さくを越え、その向こうに玄関の扉があるので、そこから聞くことにした。
アスカの涙は、一向にとまらない。
旭は、アスカをなだめるように頭をなでている。
「ぎゃ……いやあぁっお母さん! お父さん!」
今度は、家の中の声が柵の外よりもはっきりと聞き取ることができた。
これは、森の声。
「うるさい! 藍子! あんたがいなければ、もっと楽に生活ができたのに!」
「母さんやめろって!」
森の母親をなだめているのは、青年の声。
多分、森のお兄ちゃんか? 弟のようには聞こえない。
「いいわよねぇ……藍人みたいな秀才な子になれば。でも藍子には何もないじゃない」
一瞬、母親の声はおだやかで静かな声に戻ったが、今度は蹴るような音に切りかわった。
俺の隣にいる、アスカががたがたと震えだす。
「やめて……おばさん……藍子の事っ……」
旭も、自分の耳をふさいで、音を聞こえないようにしている。
やばい。このままじゃ、俺達は何にもできない。
変われない。ここまでの努力が、ゼロになってしまう。
「よし。家の中に突入するぞ」
「えっ?!」
旭とアスカの声が、同時に重なる。
もちろん、俺は真剣だ。
「仕方ねぇだろ。ここで悩んでても。俺がアドリブでなんちゃらやったる」
もちろん、そんな簡単な問題ではないという事を、重々承知だ。
虐待は、「やめてください」と言ったところでなくなる事はない。
アスカは濡れた頬を、しっかりとぬぐい、小さく、でもしっかりとうなずいた。
旭は手を自分の心臓に当てて、深呼吸してから、「はい」と小さく決心した。
「カギかかってんのかなぁ……」
「開けてみないとわかんなくね?」
旭は俺の代わりに、そっと玄関のドアノブを震える手でにぎりしめた。
ガチャ。
「あ」
三人の声が、同時に重なった。
え、何この家。
虐待中に、カギかけないでやってんの?
セキュリティ? え、何。
「ええい、好都合じゃん。早く森助けに行くぞ」
「あっ、そうだった」
こうしてる間も、森の悲鳴が聞こえる。
俺がドアノブに手をかけようとしたその時、アスカがすっとドアノブにてをかけた。
だが、そこから動けない。
怒りのこもった目で、涙をひとつぶこぼした。
俺も旭も、アスカを絶対にせかさなかった。
やっと、アスカはもう一回手の甲で涙をぬぐい、扉を思いっきりひらいた。
「藍子を助けに来ました!」
(俺は、大切な誰かのために変わりたいんです)
——
- Re: また明日. ( No.42 )
- 日時: 2012/04/08 21:03
- 名前: coco*. (ID: vGcQ1grn)
第三十話【両親】※流血表現有
「藍子を助けに来ましたっ!」
ドアを開けたアスカからでた一言。
よし、俺がフォローしてやんないとっ!!
「あ、うぃ……」
横目でチラリと目をやると、アスカは俺の事を睨んでいる。
゛ちゃんとやれ バカ゛と言いたいのだと、すぐに分かる。
「あ、あらっ、ア、アスカちゃんっ……」
森の母親は、苦笑いをしながら、両手を口に当てて、ぱっと森を踏んづけていた足を地面につけた。
「なんで藍子にそんな事するんですか?!」
「……」
森の家族は、黙ったままだ。
森に目をあてると、頭から血がどくどくと途切れることなく流れ、体のところどころにあざがある。
いつもの森とは、とてもいえない状態だった。
すると何も言わず森の兄貴らしい青年が、森を優しく立たせた。
「大丈夫、か……?」
「……う」
兄貴に肩を組まれて弱弱しく立っている森の顔は、涙でぐしゃぐしゃで足はあざだらけで、立っているのもやっとだった。
「なんでって、ねえ」
母親は、後ろにいる父親の顔を見た。
父親は、気味悪くニヤリと笑った。
「生まなきゃ良かったな、って思ってるんだよ」
「は?」
俺は思わず声を出してしまった。
自分の子供を……生まなきゃ良かった、だ? ふざけてんのか。
「……っ」
ボロボロの森は、声を出さないように、口を思い切り押さえて泣いていた。
やめろ。
やめろ。
やめろ。
俺は森の母親と父親に、殴りかかった。
「日向っ……」
俺の事を、しっかりとなだめるアスカ。
俺はアスカの腕の中で、もがいた。
「ひな……た。いいの……これくらい平気……っ」
兄貴に寄りかかりながら、森は俺に笑顔を作った。
アスカは、俺に抱きつきながら、背中でぼそりぼそりと何かをつぶやいていた。
「アドリブで、なんとかやっちゃおう」
「え……」
俺が返事をする前に、アスカは抱きつくのをやめて、森の両親に向かって、泣き叫んだ。
「藍子は生まれてきちゃいけなかった存在なんかじゃないっっ! あたし達は、藍子のいい所たくさん知ってます!」
「……どこがよ?! 秀才でもない、わがまま。おまけに仕事ではリストラされちゃうし……。藍子なんかいなければ、もっと楽に生きていけたのに!」
母親は、とうとう泣き出した。
「そんな事ない! 人一倍優しくて、人一倍仲間思いで。藍子みたいな人を、ただの秀才なんかと比べないでください!」
「うっ……う〜〜っ。アスッ……アスカア〜〜〜」
ヒックヒックと肩を震わせながら、泣き出した森。
もちろん、こんな言葉で虐待する人が元に戻るとは思わないけど。
ずっと聞いていた母親が、俺の事を睨みながら聞いた。
「あなた、誰? 藍子の彼氏?」
「えっ……?! ち……」
「ホントウノコトヲイエ」
アスカは、どんっ、と俺の背中をたたく。
やばい。アドリブでやるんだったっけ。
「あ、ハイ……そんな感じです」
げ。思いっきり嘘ついちゃった。
森の方をチラッと見ると、つらそうに、目を細めて俺の方を見ている。
ただ、一瞬だけニコ、と笑った気がする。
「どこを好きになったのよ……こんな子の」
「も……あ、いや。藍子の、どこを好きになったか。ですか?」
「ええ。そうよ」
どうしよ……。
森の事はいいと思ってるよ。そこらへんの女子よりいいやつだと。
- Re: また明日. ( No.43 )
- 日時: 2012/04/08 21:38
- 名前: coco*. (ID: vGcQ1grn)
第三十一話【彼氏】
「どこ……って聞かれると少し困ります」
「あら、どうして?」
「嫌いな所がないからです」
ふ〜ん、と母親が腕を組む。
「強いて言えば、仲間思いで、バカで、わがままな所です」
「は?」
「いつも笑顔で、勉強聞いてきたり、俺にわがまま言ってきたりするところが、可愛いなって思ってます」
あぁ〜。
真逆だけどね〜。あははは。
俺は、兄貴から森の手を取って、俺に寄りかからせた。
俺は、森の耳元で「ちょっと演技してて」とささやいた。
森の兄貴は、唇を噛んで、口を開いた。
「母さん。父さん。俺と一緒に相談所へ行こう」
「待って……。藍人っ?! 藍人……」
「それと。俺と藍子を比べても何もならない。今更言っても遅いけどね」
両親は、獣のように叫び、そのまま崩れてしまった。
「……森。大丈夫か?」
俺は腰が抜けそうなくらい安心した。
終わった……のか? よくわからないけど……。
森は、目に涙をいっぱい溜めて、俺に寄りかかりながら眠っていた。
森の兄貴は、俺に笑顔を向けて、手を差し出した。
「ありがとう。君のおかげで勇気が出た。親は相談所へつれてくよ」
「は、はい……」
「君のようないい男が藍子の彼氏でよかった」
あ゛……。
俺、ちが……っ?!
「あ、……」
「じゃあ、今日はありがとう。もう遅いから、帰って?」
「はーい! ありがとうございました!!」
バタン……。
アスカと俺と、旭は、同時に森の家を出た。
「はぁぁああぁぁぁ〜……」
三人ともほぼ同時に、ため息? 安心したのか、声をもらしてしまった。
もう、柵を越える気力もなくなった。
「最初、日向がちゃんと言ってくれなかったねェ……」
「すいませんねー……なんかあっけなくなかったぁ……?」
「うん……」
とぼとぼ歩きながら、俺らはそんな平凡な会話をしていた。
俺、森の兄貴に彼氏だと勘違いされちゃったし……?
俺は……
俺は……。
——
すいません。
gdgdになってしまい……、
今度からは平凡な生活に入ります。
- Re: また明日. ( No.44 )
- 日時: 2012/04/09 21:16
- 名前: coco*. (ID: vGcQ1grn)
第三十三話【森の笑顔】
「ふわ〜あ……」
俺は、いつもより大きなあくびをした。
昨日、その後三人は予想以上に眠くなり、家に帰って、何もせず、ひたすら、寝た。
……けど、もう疲れきっていた俺は、まだ寝不足だ。
肩を並べて歩く男子生徒を、不満げに見つめた。
「おはようございます。日向」
「……うん」
振り向くと、あきらかに眠そうな旭の姿。
まぶたが、うつろうつろとしている。
しばらくくだらない話をして、森の姿を探したが、やっぱり、来なかった。
旭は、何回も目をこすって、眠そうな顔をしていた。
そのたびに、俺と旭は微笑みあった。
「やっぱり、来ないんじゃね? 森」
「そうですか……ねぇ……」
「もう、行かないと遅刻だぜ」
俺は旭の前を通り過ぎ、歩き出した。
振り返ると、旭は一瞬ためらったが、俺の後ろをひょこひょことついてきた。
学校へつくと、玄関でアスカが突っ立っていた。
友達でも待ってんのか……?
俺らを見つけるとアスカは、笑顔に変わった。
……が、すぐに顔がくもった。
俺らのところに駆け寄って、心配そうな顔をした。
「藍子は?」
「ずっと待ってたけど、来なかった。遅刻しそうだから来た」
「そっかぁ……」
俺を責めることもせず、「じゃあ行こう」と俺と旭とアスカで玄関に向かった。
アスカは、寝不足なんて事はなさそうだ。
** **
席に着くと、俺はマッハで机に伏せた。
それは、旭も同じようだ。
旭の隣の男子が頬を赤くして、
「何? 何? どしたん?」
と聞いていたが、旭は答える気力すらなかったみたいで、無言だった。
哀れ、男子……。
うとうとしかけた所で、ドアが開いた。
先生かな……。もう、どうでもいいや……。
すると、俺の隣の席に、慣れた匂いが。
……なんだ、森か……。
「?!」
俺は一気に隣を見た。
すました顔の、森が。
「な〜に? 今日は寝不足かい?」
「あ……?」
あれ? なんで? なんか様子いつもと同じじゃね?
ちょっとくらい、変わっててもいいんじゃね?
別に、俺は謝れなんて鬼みたいなことは思ってないけども……。
「おい、お前……」
「ん?」
「……なんでもね」
「何よぉ」
俺は眠気に耐えて、森の方をじっと見る。
昨日の事、兄貴に聞いてねぇとか言わねぇよな?
教室はもう、HRを始めている。
「覚えてるよ。覚えてるに決まってるじゃん」
「え、え」
森の方を見ると、いつも話すくだらない話の時みたいに、いっぱい笑顔を作っていた。
俺は、フ、と笑った。
「両親はどうなった?」
精一杯の森の強がりを、俺は受け止めたかった。
「兄ちゃんと一緒に、相談所へ今日行く。驚いた。朝起きたらふらふら、ふらふら。朝ごはんもろくに食べないし」
「……悪いことしたかい? ごめんな」
「謝んないでよ。もともとあたしが悪いんだから」
さっきの満面の笑みと入れ替わり、少し、寂しそうな笑顔をした。
ズキ、と胸の痛みが動く。
「日向。怒られるかもしれないけどさ、話したいことあるの。旭ちゃんは呼ばないで。サボろう。怒られるなら、うちが何回でも変わるから」
「え……?」
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