複雑・ファジー小説

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たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜
日時: 2015/06/02 14:15
名前: ゆかむらさき (ID: DdpclYlw)

 ※たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜を読んでくださる読者様へ
 この物語はコメディーよりの恋愛物語なのですが 性的に刺激的な文章が処々含まれております。
 12歳以下、または苦手な方はご遠慮頂く事をお勧めいたします。


 ☆あらすじ★
 冴えない女子中学生が体験するラブ・パラダイス。舞台はなんとお母さんに無理やり通わせられる事となってしまった“塾”である。 
『あの子が欲しい!』彼女を巡り、2人の男“たか”が火花を散らす!


 視点変更、裏ストーリー、凝ったキャラクター紹介などを織り交ぜた、そして“塾”を舞台にしてしまったニュータイプな恋愛ストーリーです!
 読者の方を飽きさせない自信はあります。
 楽しんで頂けると嬉しいです。


 ☆ドキドキ塾日記(目次)★
  >>2 宣伝文(秋原かざや様・作)
  >>3 はじめに『情けなさすぎる主人公』
 塾1日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>4-5 『塾になんかに行きたくない!』
  >>11-12 『いざ! 出陣!』
  >>13 『夢にオチそう』
 塾1日目(主人公・松浦鷹史くん)
  >>14-15 『忍び寄る疫病神』
  >>16-17 『もの好き男の宣戦布告!?』
 塾2日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>22-23 『初めての恋、そして初めての……』
  >>26-27 『王子様の暴走』
  >>31-32 『狙われちゃったくちびる』
  >>33-34 『なんてったって……バージン』
 塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>35-36 『キライ同士』
  >>37 『怪し過ぎ! 塾3階の部屋の謎』
  >>38-39 『一線越えのエスケープ』
  >>42 『美し過ぎるライバル』
 塾3日目(主人公・高樹純平くん)
  >>43 『女泣かせの色男』
  >>44-45 『恋に障害はつきもの!?』
  >>46-48 『歪んだ正義』
 塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>49 >>52-53 『ピンチ! IN THE BUS』
  >>54 『日曜日のあたしは誰のもの?』
  >>55 キャラクター紹介
  >>56-58 >>59 キャラクターイラスト(ゆかむらさき・作)
  >>60 >>61 キャラクターイラスト(ステ虎さん・作)
  >>62 キャラクターイラスト(秋原かざや様・作)
  >>74 キャラクターイラスト(萃香様・作)
  >>114 キャラクターイラスト(日向様・作)
 日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>63 『祝・ドキドキ初デート』
  >>64 『遅刻した罰は……みんなの見てる前で……』
  >>65 『少女漫画風ロマンチック』
  >>70-71 『ギャグ漫画風(?)ロマンチック』
  >>72 『ポケットの中に隠された愛情と……欲望』
 裏ストーリー(主人公・松浦鷹史くん)
  >>73 >>75-81 
 日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
  >>82 『残され者の足掻き(あがき)』
 日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>83-87 『王子様のお宅訪問レポート』
 日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
  >>88-89 『拳銃に込めたままの想い』
  >>90 『本当はずっと……』
 日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
  >>91-92 『闇の中の侍』
  >>93-94 『こんな娘でごめんなさい』
  >>95 『バスタオルで守り抜け!!』
  >>96-98 『裸の一本勝負』
  >>101-102 『繋がった真実』
  >>103-107 インタビュー(松浦鷹史くん・高樹純平くん・武藤なみこちゃん・蒲池五郎先生・黒岩大作先輩)
  >>108 宣伝文(日向様・作)
  >>109 キャラクター紹介(モンブラン様・作)
  >>110 たか☆たか★武藤なみこちゃんCV(月読愛様依頼)
 裏ストーリー(高樹純平くん・主人公)
  >>111
 日曜日(高樹純平くん・主人公)
  >>112

☆作者からのメッセージ★

 松浦くんの愛し方
 高樹くんの愛し方
 正反対の性格のふたり……。

 実はこの物語の原作は自作の漫画になっております。
 さて、次回からは波乱の塾4日目!
 王子様と侍の激しい戦いが!

たか☆たか★パニック(松浦鷹史くん・武藤なみこちゃんCV) ( No.110 )
日時: 2014/01/06 13:55
名前: ゆかむらさき (ID: siKnm0iV)
参照: http://koebu.com/koe/e2c9f0ae8776a883555cda5df4a33efe6c570926

月読愛様のスレッド“CVつけますわ☆”で武藤なみこちゃんのCVを依頼しました。
参照のサイトでなみこちゃんの声が聴けますわ(笑)
なみこちゃんが可愛いく見えてしまいますわ(笑)
愛ちゃんありがとう!

《セリフ》
「まるで夢みたい……。
 あたしね……こうやって男の子と自転車で楽しそうに二人乗りしてる女の子見て“いいなぁ”“うらやましいなぁ”って、ずっと思ってたんだ。
 あたしなんかが絶対こんな事経験できるわけないって諦めてた。
 でっ、でもねっ、男の子なら誰でもいい、ってワケじゃないんだよ。
 一番すきな人とできたらいいな……ってね。えへ」

裏ストーリー ( No.111 )
日時: 2014/01/06 15:37
名前: ゆかむらさき (ID: siKnm0iV)

 波乱の塾4日目……にいく前に、ちょっと一息。
 カキコの雑談掲示板で、わたしのお友達、風猫様の“SS大会”で、以前載せた、ぶっ壊れ紳士(笑)高樹純平くんが主人公をつとめた裏ストーリーを挟みますね。


———————————————————————————————————————————————


 ————僕の名は高樹純平。純平の純は“純粋”の『純』。
 女の子に全く興味が湧かない……なんて事はないけれど、生まれてからずっと今まで一度も“恋”というものをした事がない。
 やっぱりみんなにいつも言われてる様に理想が高過ぎるのかな……僕。


 僕の両親は下着会社を夫婦で経営していて、海外に出かける事が頻繁にあってめったに家に居る事がない。家政婦のおばさんを1人雇ってはいるが、住み込み勤務ではないので、夕ご飯の支度を済ませると帰っていってしまう。
 仕事接待用とプライベート用、それぞれ1部屋ずつある応接間。3人家族なのに5つも設置してあるトイレットルーム。こんな広い家に夜はポツンと僕1人。
 小さかった頃は淋しかったけれども、もう慣れた。
 先日父さんが久し振りに家に戻ってきた。
 父さんの横にもう1人……僕が多分初めて会う男の人がいた。
 父さん曰く彼は幼馴染で占い師らしい。
 一目、焦げ茶色の肌をしている土木作業員の様な風貌。とても黒いカーテンを閉め切った暗い部屋で毎日水晶玉に手をかざしている、というイメージは湧かないけれども、彼の占いはとてもよく当たるものだと言っていた。主に事業経営や景気の流れ等を占う人だった。おそらく父さんの傍ら、お世辞を言ったのだと思うけれども、僕の手相を見た彼に、『将来、父をも超えるほどの人間になる』と言われた。
 僕は“ついで”に彼にお願いをしてみた。


「恋愛面も占ってください」
 ————と。


 一瞬曇った彼の表情を僕は見逃さなかった。
 『恋愛占いはしたことがない』と彼は言っていたが、絶対にウソだと思った。
 彼には“僕の恋愛の良くない結果”が見えたんだ。
「自信はないが……」
 彼は父さんの隣で言いにくそうに答えた。


 タイトル『一晩かぎりの月下美人(シンデレラ)』


 今夜7時から花火大会、か。
 僕には“健”という幼少時代からのくされ縁の同級生の友達がいる。見た目だけではなく中身までも、今流行り(?)のチャラい男だ。
 彼には“由季ちゃん”という、誰がどう見ても釣り合いがとれないくらいの美人の彼女がいる。小学生時代に(もちろん)健の方からダメモトで告白したら奇跡的にOKをもらえた事がきっかけで二人は交際を始めた。小さな事でちょこちょこケンカは絶えないけれども、なんだかんだいっても長く続いている仲良しカップルだ。
 健と由季ちゃん。あいつらの事だからきっと今夜、花火と一緒に“フィーバー”でもするのだろう。


『高樹に彼女ができたらダブルデートしような!』


 自分には恋人がいるからって余裕な顔で健のやつはエラそうに言う。 そんな事言って僕の彼女も一緒に“ダブルフィーバー”でもする気————って、友達の事をこんなに悪く言っちゃイケナイ。
 なんかひがんでるみたいでカッコ悪いな、僕……。
 最近熱帯夜が続くからなのだろうか。身体が熱い。
 部屋の窓を開けて夜風を浴びた。
 暖かい風の味を感じながら目をつむる————


 今年の夜も僕一人寂しく花火の音をBGMに未来の僕の恋人とのラブラブデートを想像しながらくつろぐとするか……。
 僕はキングサイズのベッドの上にゴロンと横になり、枕元に置いてあるファッション雑誌を手に取り、パラパラとめくった。
「ん? そういえば健のやつ、最近やけに浮かれてたな……」
 彼曰く、由季ちゃんとデートなんて“お泊りデート”までもう何回もこなしているはずなのに……。
 あの健のテンションはまるで“初めてデートをする”様な感じ————


 “彼女にバレない浮気の方法”


 偶然にも読んでいる雑誌の中のこんなコーナーに目が止まった。
 もしかして健のやつ……。
「————なーんて、ね」
 だから友達の事、こんなに悪く言っちゃイケナイって。やっぱりひがんでるんだな、僕……。


「 !! 」
 外から女の子のすすり泣く声が聞こえる。しかもその声は僕のよく知っている女の子の声にとてもよく似ていた。
 窓からそっと顔を出して覗いてみると、やっぱり思った通り————由季ちゃんだった。


 浴衣姿の由季ちゃん。彼女は僕の部屋を見上げながらずっと泣いていたのだろうか。呼び鈴も押さずに……。
 僕の姿に気付いた彼女は慌てて走り去った。
 彼女は僕に助けを求めている————そんな気がして僕は部屋を飛び出した。
 ————放っておけない!!
 玄関を飛び出し、彼女の元へ向かった。


     ☆     ★     ☆


 僕の部屋のベッドの上に腰を掛けて……僕の淹れたジャスミンティーの入ったカップに口をつける由季ちゃん。
「やっぱり合わんかったんだぁ。わたしたち……」
 震えた声で大粒の涙をこぼしながらジャスミンティーをすする。
 もう何も話さなくて、いい……。
 ベッドの上のちょうど“彼女にバレない浮気の方法”のページで開かれっ放しになっている雑誌を慌てて閉じて、僕は彼女の小さな肩に手を乗せ……ようとして止めた。
 由季、ちゃん……。
 信じられない。
 衝動的に自分からこんな展開にしてしまったのだけれど、由季ちゃんが1人で……“健の付いていない”由季ちゃんが僕の部屋のベッドの上に————
 普段は細いウエストと長い脚を強調したスリムジーンズでクールにビシッとキメている彼女がしっとりと女の子らしい淡いブルーの浴衣姿で……。
 普段は下ろしている艶やかな腰まであるロングヘアーを今夜は一つにまとめておだんごにして。
 僕は視線でゆっくりと彼女の首すじを撫でた。
 少し着崩れた浴衣の後ろ衿の中からセクシーに覗く彼女の背中を見てつばを飲み込む。その奥はいったいどうなっているんだろう……。
 健が宝物を見せびらかすように僕に話していた“由季ちゃんの裏の顔”が僕の頭の中にぼんやりと浮かぶ。


『由季さぁ、普段ああだけど、ベッドの上では従順で、俺のお願い何でも聞ーてくれんのよ。
 感じやすいんか、俺のテクが上級レベルなんかは分からんけど喘ぎ声がまた……』


 な、何思い出してんだよ! 僕っ!!
 健のせいで余計に由季ちゃんの顔を見る事ができなくなってしまった。
 カタカタと由季ちゃんが手に持っているカップが震えている。
 僕はおそるおそる彼女の手から視線を上らせてゆく。
 普段はいつも……言っちゃ悪いけど“男らしい”、誰に対しても対等で媚びたりしない、さばけた強いはずの彼女が真っ赤な目で僕の顔をまっすぐ見て震えている。
 今ここで……僕が抱き締めたらバラバラに壊れてしまいそうに————


 ドドドドーン!
 夜空全体に響き渡る音と共に窓から降り注ぐ眩しい光。
 花火大会のオープニングが始まった。
「相手が“僕”じゃあ、全然物足りないかもしれないけれど……今夜は一緒に楽しんでみる?
 綺麗でしょ? ここからでも充分に見えるんだよ、花火」
 ————本当はこんな台詞を言いたいんじゃなかった。
 僕の本心は……。
 もしも由季ちゃんが健の彼女じゃなかったら————


「やさしくしないで!!」


 今度こそ彼女の肩に手を乗せようとしたら大きな声で思いっきり弾き返された。
「男なんて大ッ嫌い!! 健も! 高樹くんも! みんな大ッ嫌いッッ!!」


 そう言いながら由季ちゃんは————僕の胸に飛び込んできた。
 窓の外で1発ずつ上がるイタズラな花火が、僕が必死で眠らそうとしている欲望を覚まそうとする。
 震えている由季ちゃんの背中に手を回し、僕は彼女のくちびるを奪った。


「ねぇ、由季ちゃん……。
            この浴衣……自分で着たの?」


 由季ちゃんの浴衣の掛衿を掴んでいる僕の手も震えている。
「ごめん。これじゃ僕も健と同じだね。今、チャンスだって思ってる。
 “やられたなら、やりかえせばいいじゃないか”って。
 由季ちゃんが“いや”なら、僕すぐにやめるから……」


     ☆     ★     ☆


 僕は気まぐれで由季ちゃんを抱いた。
 嫉妬でも愛情でもない。ただの興味本位で。
 彼女には悪いけれど、アレはひと夏の過ちだと思っている。
 僕にとっては生まれて初めての盛大な“花火大会”が終わり、頬をピンクに染めて涙の跡を消した彼女はたった今家へと戻っていった。
 彼女は今、何を思っているのだろう。
 “何処へ”戻っていくのだろう。
 きっと彼女の心の宿り場、健の元に再び戻っていくのだろう。
 僕とは一切合財何もなかったのだと、そんな風に。


 ————そう。父さんの知り合いのおじさんの話……あの時は半信半疑でまともに聞いていなかった占いの結果を今頃になって思い出した。


「近いうちにあなたは恋に落ちるでしょう。
 落ちる……というか溺れる、と言った方がいいですね。
 純平くんの方から夢中になってしまうくらい、あなたの心を惑わす女性が現れます。
 しかし、その恋の前にはとても大きな障害の壁が立ちはだかっています。覚悟をしておいてください。
 欲望にまかせて突っ走らないように……」


《おわり》


————————————————————————————————————


高樹くん主人公の裏ストーリー『一晩かぎりの月下美人(シンデレラ)』はこれで終わりです。
次回から本編に入ります。

『もう誰にも渡さない』 ( No.112 )
日時: 2014/01/12 10:59
名前: ゆかむらさき (ID: siKnm0iV)

《ここからしばらく高樹純平くんが主人公になります》


 僕は、なみこちゃんを乗せたバスが見えなくなるまで見送っていた。


『おやすみ、純平』
『あっ、待って! お母さん! お願い。もう1冊だけでいいから読んで』
『ごめんね、純平。お母さん達ね、また明日仕事で朝早くから遠い国へ出掛けなくちゃいけないの。お土産に新しい絵本とおもちゃ、いっぱい買ってきてあげるから』
 新しい本もおもちゃなんかもいらないよ。
 僕はただ……もう少し一緒にいて欲しいだけなんだから。
 消さないで……。まだ消しちゃ————


 電気を消された部屋の様に周りの静けさと暗さにやっと気付いた僕。
 大好きな彼女と一緒にいるだけで……そう。彼女が、この寒く、小さな街灯がたった1つだけで照らしている暗いバス停を温かく、明るくしてくれていた。


 楽しかった……。


 今日、ついに叶った念願のデートをもう一度、日記に書き綴る様に初めから思い出してみる。
 自転車の後ろで小さく呟いていた彼女の告白。
 僕がいたずらでわざと大きめに切ったフルーツを小さな口を大きく開けて美味しそうにかぶりついていた愛らしい顔。
 どっちが長く我慢できるかな?
 ……って。すぐに“たべちゃう”のが、もったいなくって、焦らしてみたはいいけれど、結局先に折れたのは僕のほうだった。
 だって……彼女ったら、手の平に軽くキスをするだけであんな声をあげるんだから。……反則だよ。


 振っていた手を止め、胸に当てた。
 ドラマのセリフの様なキザったらしい飾り文句をこの僕が真剣に正直な気持ちで放出しながら、裸にした心と身体で彼女を抱き締めた感触が今もまだ体全体に残っている。


 思えば“愛してる”なんて感情を持った事など今まで無かった。
 この僕が……こんなに本気で誰かを愛するなんて————


     ☆     ★     ☆


 初めて彼女……なみこちゃんと出逢った日————
 そういえばその話は幼少時代から親友関係を築き続けている健にも聖夜にもまだ話していなかった。彼等に僕のなみこちゃんへの想いを告白したのは“彼女が塾に入ってきた日”の時だったから。
「暗いな……」
 黒い雲が空を早いスピードで飲みこんでゆく。
 今朝の予報では今日明日を通して良い天気が続くと言っていたのに。
 これは……今夜あたりから“崩れる”かもしれない。
 どうも嫌な予感がしてならない。
 足を止めた僕は空を睨みながら大きく深呼吸をした。
 何、弱気になっちゃってるんだよ……。
 まつ毛に掛かった前髪を手でかき上げて、再び家へ向かい歩き出した。


 なみこちゃんは帰っていく。
 松浦鷹史の隣の家に。
 明日の朝は登校する。
 松浦鷹史と同じ学校へ。
 次の塾の日は火曜日、か……。


     ☆     ★     ☆


 ————この話は今から3年前の話。僕がまだ小学5年生だった時の話だ。


「いい? 分かってるの? 純平。あなたは将来、お父さんの会社を背負っていく事になるのよ」


 長い間、仕事で滞在していた海外から久し振りに帰ってきたと思ったら、僕に『話がある』と母さんにリビングに呼ばれ、第一声で植え込まれた言葉。
『元気でいた?』とか、『淋しくなかった?』とか、親なら普通、こう言うだろう?
「母さんの言う事はあまり気にするな。お前なら大丈夫だ。父さんは信じているからな」
 優しくフォローしてくれたつもりだけれども、この父さんの言葉もずっしりときた。……期待込め過ぎ。
 まだ10歳だって、僕……。
 お土産に買ってきたテーブルの上のトリュフチョコレートを1つつまんで口の中に放り込んだ僕。呆れた笑顔とVサインを見せて応え、そのままリビングから逃げ出した。


 僕の将来は生まれた時からすでに決められていたんだ。
 親の敷いたレールの上を、受験だとか就職だとか悩んだりもしないで何気なしに歩き続けて、結婚適齢期になれば、『この方と結婚しなさい』と、結婚相手まで勝手に決められて家庭を築き、両親が健在ならば僕の子供も僕と同じ様に……。


「申し訳ありません、奥様! 今後は気を付けますので!」


 母さんが家政婦さんを叱っている。僕の背中にある扉の向こうからこんな声が。
 僕のせいだ……。
 唇の端に付いたチョコレートをシャツの袖口で拭い、僕は自分の部屋に籠った。
 土産のチョコ? こんなの全然美味しくないや。
 駄菓子屋で健達と一緒に買って食べる10円チョコの方が————!
 こんな家の中に居ても楽しくもなんともない。
 別に父さんと母さんが海外へ滞在している間、少しも淋しくなんかもなかったけれどね!
『すまないが年明けのおまえの誕生日に父さんたちは一緒に居られない。どうしても正月も仕事が忙しくてこっち(日本)に帰れなくてな……』
 さっき、そう言いながら父さんが僕の手に分厚い茶封筒を握らせた。
 ズボンのポケットにしまったそれを出し、封を開けると、中には1万円札が20枚入っていた。
 これで好きな物でも買いなさい……ってコトか。


 淋しくなんか……なんともない。
 これだけのお金があれば、当分の間ゲーセンで遊び放題、だもんね。
 茶封筒を勉強机に投げ放し、ベットの上にダイブした僕は枕を拳で叩いた。


 生まれてきた場所を間違えたのかもしれない。どうやら僕にはこの生活環境には慣れない様だ。
 金銭感覚だけじゃない。他の感覚までも、このままだと狂ってきそうだ。

Re: たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜 ( No.113 )
日時: 2014/09/01 09:41
名前: ゆかむらさき (ID: 5Zruy792)

久しぶりに上げます^^

武藤なみこちゃん ( No.114 )
日時: 2014/09/23 15:50
名前: ゆかむらさき (ID: dZI9QaVT)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode=view&no=8317

日向様に依頼して描いて頂いたなみこちゃんのイラストがURLの掲示板の>>8に載せてあります。

なみこちゃんにとってここが学校で一番一人で落ちつける場所……なのでしょうか。
今日も学校で何か嫌な事があったのかな?

誰か彼女を慰めてあげてください。


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