複雑・ファジー小説
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- たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜
- 日時: 2015/06/02 14:15
- 名前: ゆかむらさき (ID: DdpclYlw)
※たか☆たか★パニック〜ひと塾の経験〜を読んでくださる読者様へ
この物語はコメディーよりの恋愛物語なのですが 性的に刺激的な文章が処々含まれております。
12歳以下、または苦手な方はご遠慮頂く事をお勧めいたします。
☆あらすじ★
冴えない女子中学生が体験するラブ・パラダイス。舞台はなんとお母さんに無理やり通わせられる事となってしまった“塾”である。
『あの子が欲しい!』彼女を巡り、2人の男“たか”が火花を散らす!
視点変更、裏ストーリー、凝ったキャラクター紹介などを織り交ぜた、そして“塾”を舞台にしてしまったニュータイプな恋愛ストーリーです!
読者の方を飽きさせない自信はあります。
楽しんで頂けると嬉しいです。
☆ドキドキ塾日記(目次)★
>>2 宣伝文(秋原かざや様・作)
>>3 はじめに『情けなさすぎる主人公』
塾1日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>4-5 『塾になんかに行きたくない!』
>>11-12 『いざ! 出陣!』
>>13 『夢にオチそう』
塾1日目(主人公・松浦鷹史くん)
>>14-15 『忍び寄る疫病神』
>>16-17 『もの好き男の宣戦布告!?』
塾2日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>22-23 『初めての恋、そして初めての……』
>>26-27 『王子様の暴走』
>>31-32 『狙われちゃったくちびる』
>>33-34 『なんてったって……バージン』
塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>35-36 『キライ同士』
>>37 『怪し過ぎ! 塾3階の部屋の謎』
>>38-39 『一線越えのエスケープ』
>>42 『美し過ぎるライバル』
塾3日目(主人公・高樹純平くん)
>>43 『女泣かせの色男』
>>44-45 『恋に障害はつきもの!?』
>>46-48 『歪んだ正義』
塾3日目(主人公・武藤なみこちゃん)
>>49 >>52-53 『ピンチ! IN THE BUS』
>>54 『日曜日のあたしは誰のもの?』
>>55 キャラクター紹介
>>56-58 >>59 キャラクターイラスト(ゆかむらさき・作)
>>60 >>61 キャラクターイラスト(ステ虎さん・作)
>>62 キャラクターイラスト(秋原かざや様・作)
>>74 キャラクターイラスト(萃香様・作)
>>114 キャラクターイラスト(日向様・作)
日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
>>63 『祝・ドキドキ初デート』
>>64 『遅刻した罰は……みんなの見てる前で……』
>>65 『少女漫画風ロマンチック』
>>70-71 『ギャグ漫画風(?)ロマンチック』
>>72 『ポケットの中に隠された愛情と……欲望』
裏ストーリー(主人公・松浦鷹史くん)
>>73 >>75-81
日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
>>82 『残され者の足掻き(あがき)』
日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
>>83-87 『王子様のお宅訪問レポート』
日曜日(主人公・松浦鷹史くん)
>>88-89 『拳銃に込めたままの想い』
>>90 『本当はずっと……』
日曜日(主人公・武藤なみこちゃん)
>>91-92 『闇の中の侍』
>>93-94 『こんな娘でごめんなさい』
>>95 『バスタオルで守り抜け!!』
>>96-98 『裸の一本勝負』
>>101-102 『繋がった真実』
>>103-107 インタビュー(松浦鷹史くん・高樹純平くん・武藤なみこちゃん・蒲池五郎先生・黒岩大作先輩)
>>108 宣伝文(日向様・作)
>>109 キャラクター紹介(モンブラン様・作)
>>110 たか☆たか★武藤なみこちゃんCV(月読愛様依頼)
裏ストーリー(高樹純平くん・主人公)
>>111
日曜日(高樹純平くん・主人公)
>>112
☆作者からのメッセージ★
松浦くんの愛し方
高樹くんの愛し方
正反対の性格のふたり……。
実はこの物語の原作は自作の漫画になっております。
さて、次回からは波乱の塾4日目!
王子様と侍の激しい戦いが!
- 忍び寄る疫病神 ( No.15 )
- 日時: 2014/11/11 11:40
- 名前: ゆかむらさき (ID: dZI9QaVT)
平和な日々に“ひび”が入る。
不吉な予感。
“こいつ”のせいで、何かいやな事が起こる気が————
☆ ★ ☆
……くそ。何だ、この妙な胸騒ぎ。
鞄の中から出したミント味のチューイングガムを一枚口に含み、天井を見上げて深呼吸。
バスの中、俺の隣の席で石の様に固まっている武藤がいる。
今日から俺と同じ塾に通う事になる彼女。
脳ミソスッカスカの……ちょっと蹴っただけでこっぱみじんに砕けちまいそうな情けないくらいに脆い武藤石。
『続いて明日の天気をお知らせします』
暖房の温風と共に、ラジオから何気なしにサラサラと流れ出てくる天気予報。
おいおい、天気予報士のおっさんよ。頼むからついでに俺のこれからの塾生活も予報してくれ。
ああ。ますます頭痛が痛ぇや。
同じ学校で隣同士の家に住んでいる武藤と俺がバスに一緒に乗って塾へ。
こんな状況をはたから見たらどう映るんだ。
————恋人?
……ざけんな。クソ。
塾生活だけじゃなく学校生活にも悪影響を及ぼすぜ。
こんな事誰かに知られちまったら俺は————
頼むから母さん達には、この話を他の奴らには漏らさないで欲しい。
こんな奴なんかとヘンな噂になるのは、ゴメンだからな。
ガムの味が無くなり出した頃、塾に着いた。
多分、同じ学校に通っていて、住んでいる家が隣同士だから仲がいいのかと思われたのだろう。先生に“武藤の面倒をみてやれ”みたいな事を頼まれたけれども、まっぴら御免だ。
フン! 自分で何とかしやがれ。
そんな事したら俺が面倒な事になる。
武藤の事は一切構わずバスを降り、俺は早歩きで逃げ出した。
☆ ★ ☆
何事も無かった様に、いつも通りの顔に切り替えるんだ。
いつも通りの俺になれ。
教室のドアを開けて自分のクラスの教室に入り、席に着く。
「よォ、鷹史」
「はぁーい、鷹っち」
「来たな、鷹殿」
わざわざ自分(こっち)から動いたりなんかしなくたっても周りの奴等の気持ちがこんな風に自然に集まってくる。こんな事を自分で言うのもなんだが、俺には人を惹きつけるオーラが出ているのかもしれない。
違う学校なのに何かと親しくしてくれる彼らに、俺は軽く手を上げ笑顔で応える。
今頃Bクラスの教室で武藤はどうしているだろう。
周りにいるのは違う学校の知らない人だらけ。
負のオーラしか出てないあいつの事だから、きっと教室のドアの前で立ち止まって泣きそうな顔してるだろうな。
ごめんな。“優しく守って”あげられなくて。……ククッ。
まァ、とにかく武藤と違うクラスで良かった。
————と、なんだよ全く。
今日武藤がこの塾に通う様になってから、気が付くと無意識で彼女の事ばかり考えてる気がする。
極力、俺の視界と脳内に連れてきたくはない女なのに。
いち早く強力な殺虫剤でも撒いて追い出さなくては気分が悪くなる。
俺はカバンの中に手を入れて、講習が始まる時間までの暇潰しのためにと家からちゃっかり持ってきていた小説本を出して読み始めた。
実は今読んでいる場面が、スゴくイイとこだったりする。
断じてエッチな小説ではない。
俺に限ってそんな事などあるわけない。
ただ……最新ベストセラーとなっている恋愛小説だから、俺がこんなの読んでるなんて誰にも知られたくない。
他の奴等に絶対にタイトルを見られない様にしっかりと深紫色のカバーを付けて隠した本を読んでいると、俺の大嫌いなくさい香水の臭いが近付いてきた。
「たーかし、クンっ」
チッ! こいつか。
まだ読み始めたばっかりなトコなのにとんだジャマが入りやがった。
同じクラスのこの彼女の名は、徳永静香。
“静香”のくせに、全くもってうるせー奴。
こんなののドコがいーのか分かんねーけど、さっき俺の事を呼んだ釜斗々中のちょっと変わりモンの友人の一人が、どうやら彼女にのぼせ上がっててるらしくマーメイドやら妖精とやら言ってた。……どっからどう見ても俺には蠅にしか見えねぇが。
迷惑っちゃ迷惑なオンナだが、俺の前でだけ人格を変えられる、という結構ウケる得意技を持っている。
「なに、よんでルのぉ?」
さらに彼女は声のトーンを普段よりも1オクターブ上げた見事な作り声で話す事ができる、という高度な裏技まで持ち合わせている。
先生とか女と話す時は標準語喋ってるくせにな。
天ぷらに思いっ切りがぶりついてきました、みたいにギットギトに光っている深紅の唇。それだけでも吐き気をもよおしそうなのに、さらにその唇を尖らせながら俺の顔を上目遣いで見つめている徳永さん。
視線を俺にロックオンしたままで、インド人のパフォーマンスとかによく見るアレ……そう、アレだ。笛を吹いたら壺の中から出てくる蛇の様に体をくねらせながら、俺の手元を覗き込んできた。
「本……」
こんな女と話したくないのに。
香水の臭いが鼻にまとわりついてむせ込みそうだ。武藤にだけじゃなく、ついでにこいつの顔面にも殺虫剤をぶっ掛けて追い返してやりたい。
本を閉じ、『さっさとどっかへ行きやがれ』と念じたが、今度は俺の顔に顔を近付けてきやがった。
はぁ。
近くで見ると思ったよりも……かなりゴテゴテしててケバイ顔。
こいつは塾を何だと思ってるんだ。
「ねェ。今日、鷹史クンと一緒にバスに乗ってきたコって、ナニ?」
彼女はいきなりイヤな事を聞いてきやがった。
武藤の事は話したくない。
「アハハ……」
……なんて笑ってごまかそうとしたけれど————ダメだった。
「あのコ、鷹史クンと同じ中学で家が隣同士なんだって、さっき蒲池(かばいけ)センセイに聞いて。
ねェ、どんな関係なの? 幼馴染み?
————もしかしてコイビト……なんてコト、ナイよね?」
「——ッ!」
くそッ! 早速“恋人”出やがった!
蒲池のやつ、余計な事言いやがって!!
ムンムンとたちこめるくさい香水の臭いが、さらに俺をムカつかせる。
我慢ができなくなって、右手の拳で机の上をドン! と叩いた俺。
塾のバスの時から溜まりに溜まった怒りのオーラで教室の中全体が一瞬シーンと静まりかえる。
やはり“あいつ”のせいで————
コレはマズった。ミスった。トチった。
俺とあろうものが、こんな女に言われたバカバカしい話に対してこんなに腹立てちまうとは。
「フッ」と小さく笑って椅子にのけ反り返った俺は、
「関係ない……」
と呟いた。
“武藤と俺は何の関係も無い”
“徳永さんには関係の無い話”
両方の意味を込めて————
「よかったァー。コイビトじゃなかったのネー。じゃあ静香、まだ脈アリなんだねェー」
スキップしながら自分の席へと去ってゆく懲りない女。
風の噂で耳に飛びこんできた事だが、確かこいつ最近————
そんな憐れな彼女に向け、心の中で“フェイク・ポーズ”をおみまいしてやった。
- 『もの好き男の宣戦布告!? 』 ( No.16 )
- 日時: 2014/12/12 15:39
- 名前: ゆかむらさき (ID: dZI9QaVT)
☆ ★ ☆
講習が終わり、俺は教室のドアを開けて廊下に出た。
はぁ……。あとは帰るだけか。
帰る“だけ”。
Bクラスの教室の前を通ると、武藤のバカ顔が頭に浮かんだ。
そういえば、この塾は、他の所に比べるとレベルが高かったんだ。
学校のレベルにさえ全くついていけてないあいつが、どう考えてもここで続けていけるわけがねぇんだ。
一体あいつの母さんは何を考えてんのか分かんねぇけど、あんなのを塾なんかに通わせるなんて、はっきり言って金をドブに捨ててる様なものだ。ああいう勉強の仕方から分かっていない様な奴には、せめて家庭教師の先生を頼むとかにしとかねぇと。
確かに、あんなにヒドすぎる成績じゃあ、親が心配する気持ちがイタいほど解るけれども、イヤイヤ勉強なんてさせたって頭に入るわけがない。
好きなものに熱中する意欲がねぇと、力を発揮できねぇから。まじで。
親の心子知らず……なんて昔の人はよく言ったものだ。
俺も俺で母さんに『なみちゃんと仲良くしてあげなさい』とか、しょっちゅううるさく言われてるから。
————死んでも嫌だが。
そうやってやりたくない事をムリヤリ押しつけられて、あいつもまぁ可哀そうっちゃあ、可哀そう……って! か、かわいそう!? はあっ!? なに考えてんだ、俺っ!!
武藤と一緒にバスに乗ってきたもんだから、頭がおかしくなっちまったんだろうか。
週に二回といえども、これから俺の傍にあいつにいられたりしたら俺のステータスが悪化しかねない。
妙な危機感。
階段を降りる足が一瞬もつれてコケそうになっちまった。
意外にアイツ……ああ見えてゴキブリよりもしぶとい奴なのかもしれねぇ。
塾の外に出て空を見上げると、まるで疲れた俺をお出迎えしていたという様に暗い雲をかきわけて現れ出した月が。
降り注ぐ月光を浴びながら長く深呼吸。
フン! いい気味だぜ。
あんな奴、すぐに追い出してやる。
駐車場の脇にある自転車置き場から、俺に向かって大きく手を振っている徳永さんがいる。
いらない愛情をムリヤリ押しつけられている俺の気持ちと武藤の気持ちがなんとなく似ている気がして、「ふっ」と思わず笑ってしまった。
さてと、あいつの疲れきって青ざめた顔をバスの中でじっくり見てやるかな。
わざと徳永さんに気付ていないフリをして、俺はバスへと向かって歩いた。
「松浦くん」
バスに乗ろうとしたら、背後から誰かに声を掛けられた。
足を止め振り返ると、上品な顔をした男が近付いてくる。
ああ、こいつは確か……。
「高樹ー、早く来いよー」
そうだ、高樹だ。見覚えがある。
今、自転車置き場の方からこの男をを呼んだ、俺と同じクラスの結構仲のいい友達の“健”っていうやつと、よくつるんでいるBクラスの奴だ。
クラスが違うから挨拶程度だけで、こうやってサシで話した事はまだ一度もないが————
「いーよ、健。先行ってて」
夜風に乱された柔らかそうな髪の毛。それを男のわりに繊細な長い指でかき上げる。
なんだこのキザ野郎。
ニコッと紳士的な笑みを浮かべながら彼はゆっくりと話し出す。
「どうも。僕、2年生Bクラスの高樹純平です」
堂々とした口調で律儀にまず自分の名を名乗り、ニコリと微笑む“高樹”とやらいう男。誰にでも好かれるような甘い声。そして優しい瞳をしている男だが、なんとなく感じる。
まるで俺に対して挑発をしているかの様に。
どうも、うさん臭い。
健の友達だから、あまり悪くは言いたくないのだが。
こいつが俺に一体何の用なのか。
どうやら俺と高樹のツーショットが珍しいらしく、徳永さんを含め、1年生から3年生までの塾の女生徒達の野次馬軍団が興味を示した顔をして続々と集まってきやがる。
言いたい事があるんなら、さっさと言いやがれ。
厄介事はもうこれ以上ごめんだ。
ジャケットのポケットから出した右手を腰にあてて目を細めると、高樹は俺の顔色を探りながら、こう聞いてきた。
「今日、君と一緒にバスに乗ってきた女の子の事、聞かせてくれない?」
- 『もの好き男の宣戦布告!? 』 ( No.17 )
- 日時: 2014/11/11 11:10
- 名前: ゆかむらさき (ID: dZI9QaVT)
☆ ★ ☆
帰りのバスで、また俺はわざと武藤の隣の席に座ってやった。
さてと、今度はどんな攻撃カマしてやろうか。
武藤の泣きっ面。
武藤の怒りっ面。
どれもこれも最高……っと。
この塾からおまえを追い出すために、この俺様がじわじわといたぶってやるから覚悟しろ。
ワクワクする気持ちが抑えきれず、思わず笑みがこぼれてしまう。
思った通り、隣でとても疲れた様子で口を半開きにして窓の外を見ている武藤。
「綺麗な月だなァ、武藤」
「…………」
いきなり俺にこんな事を言われて驚いているのだろう。彼女は何も返してこない。
手応えのある反応だ。
この調子で次の俺の発する言葉に毒を盛る。
「このバスから、おまえと一緒にこの月を何回見れるんだろうな。もしかしたら今夜で最後、だったりしてな! ハハッ!」
さあ、どんな反応くれるかな?
「…………」
彼女はまたもや何も返してこない。
「!」
もしかしたらこいつは生意気に俺の事無視しやがる気なのか!! クッ!
予想外の彼女の反応に迂闊にもカッときた俺。
じょ、上等じゃねーか、コイツ……。まさかそうきやがるとはなあ!!
首を伸ばして俺は窓の外を見ている彼女の顔を覗き込んだ。
「チッ!」
舌打ちをして俺は鼻でため息をついた。
彼女は見事に寝ていやがったんだ。
俺と同い年とはとても思えない、幼少時代からまるっきり成長していない様な顔をして。
楽しい夢でも見ているのだろうか。
現実とは正反対の空想の中で。
俺の居ない……温かいものばかりに囲まれた癒しの世界のなかで。
瞳を閉じながら、時折幸せそうに笑みを浮かべている彼女のくちびるを思いっ切りつまんで現実に引っぱり出してやりたくなる。無性に————
「可愛いお友達ですねぇ。松浦くん」
か、かわいい?
だッ、誰が? どこの誰がだ!?
ハンドルを操作しながら俺に話を振ってきやがる蒲池の言葉に『どう見たって“友達”になんか見えねぇだろうが!!』と心の中でツッコミを入れながら武藤の寝顔にそっと視線を流す。
可愛く……ねぇよ。こんなの……。
確か高樹、といった。
さっきバスに乗る時に、こいつの名前とか俺との関係とか色々聞いてきた男の事を思い出した。
ゴツッ!
いきなり俺の傍ですごい音がした。
武藤が寝ぼけて窓に思いっ切り顔をぶつけた様だ。
「プッ!」……バーカ。
……なんて笑ってる場合なんかじゃない。その後、彼女は俺の二の腕に寄り掛かってきた。
小さな白い額に、ほんのりと痛々しく赤い跡が付いている。
痛い、のか?
……っつーか、こんななっても起きねぇんだが。
こいつ、やっぱり相当、鈍————
「……ん。んぅ」
小さく動かしたくちびるからふわりと漏れる武藤の声。
「く、来んなよ、バーカ」
俺はひじを使って彼女を押し返した。
すると一昔前のコントの様に、再び寄り掛かってきやがった。
「はーっ! ……クソッ!」
俺は諦めて腕を組み、後ろにのけ反った。
俺の腕を図々しくも枕にして鼻の音をピーピーさせて寝ている武藤を見ながら思った。
こんな奴のどこがいいんだ……。
高樹の気持ちが分からない。
待てよ、もしかしたら————
高樹の奴は、誰でもいいからただ単に女とヤリたいだけなんじゃないか?
こいつバカだから、なんとか上手いこと騙して、思う存分弄んで終いにはポイするって魂胆か。
考えてみれば、あの紳士的な態度といい、純粋“そうに”見える顔つきといい、あんなのに限って意外に“そーゆーやつ”が多いんだ。
だがしかし、なんでよりにもよって、こんな女をターゲットにしたんだ? もっとましな奴がいたんじゃねぇのか?
ますます彼の気持ちが分からなくなった。
俺だったら金をしこたま積まれて土下座で頼まれたって、こんな女はお断りだ。
お断……ん?
俺の手の甲に何か変なものが落ちた。
生温かい様な、でも少し冷たい様な……液体?
ふと手元に目をやると、半開きの武藤の口からよだれが滴り落ちている。
「!」
こっ! こいつッ————!!
慌てた俺はポケットの中に入っているハンカチを出そうと思って右腕を少し動かした。
ズルリ。
そのせいで武藤の頭が俺の腕から滑り落ち、今度は膝の上にやってきた。
「おい、マジかよ……」
こーゆーシチュエーションは普通なら男女逆だろう、。
つーか、武藤の膝枕を頂くなんてのは俺のプライドが許さねーがな。
こいつの膝枕……か。
膝の上の武藤の顔からゆっくりと彼女の下半身へと視線でなぞる。
俺の二の腕くらいの太さしかない細い太もも。
この左右の細い太ももの間に頭をうずめてみたら、ふんわり柔らかくて気持ちーのかな……って! 何考えてんだ、俺ッ!
と、とにかく武藤のよだれをどうにかして止めなければ、と自分の手よりも先に彼女の口をハンカチで拭いた。
その時、俺の指がかすかに彼女のくちびるに触れた。
小さくてプルンとした柔らかいくちびるだった。
彼女の着ている黄緑色のVネックのカットソーの脇から右の鎖骨がちらりと覗いている。
シャワーを浴びたらお湯が溜まりそうな深く窪んだ鎖骨が。
「ゴクリ」
俺は無意識で生つばを飲み込んでいた。
「痛い! ダメッ! そんなコトしないで! 松浦くんッ!」
「!」
武藤が、いきなり寝言でとんでもない言葉を叫びやがった。
————キーッ!
バスが急ブレーキをかけて止まった。
何故こうしたのかは自分でも分からないが、俺は反射的に膝の上の彼女を落ちない様に手で押さえ守っていた。……っつーか、よっぽど勉強に疲れたのか、武藤はまだ目を覚まさない。
いーかげん起きろって……。
蒲池が、運転席から首を出して心配そうに振り向き、俺たちの事を見ている。
「なッ! ななな何もしてませんッッ!!」
俺は(不自然に動揺しながら)必死で訴えた。
こいつは確かに、はっきりと俺の名前を叫んでいた。
痛い、ってドコが? そんなコト、って……どんなコトだ?
————夢の中で俺がおまえにナニをシタんだ?
塾に行く前に見た武藤の下着姿とさっきの叫び声が、頭の中で合成されて一つの映像になる。
『松浦くんの……エッチ……』
モンモンと俺の中で勝手にエスカレートしてゆく武藤のエッチな映像。
『……あうっ!
だめだよ、松浦くんっ。いきなりそんな風にしたら壊れちゃうっ!
あたしの方まだ準備できてないの……』
『初めてだから……お願い。
優しく……して』
俺が今何を考えているのかも知らずに、彼女はまだ俺の膝の上でのん気に寝ている。
俺は武藤の口をハンカチで押さえながら、ため息をついた。
なんでこんな奴のために、俺がこんなに……。
彼女のよだれのせいで俺のズボンは今大変なコトになっている。
大変になっているトコロが“股間”じゃなくて良かったが。
蒲池がバックミラーを俺たちが映る位置に合わせて、さっきから何回もチラチラと見てくる。
「も、もうすぐ着きますよー」
- Re: たか★たか☆パニック〜ひと塾の経験〜【リメイク版】 ( No.18 )
- 日時: 2013/10/07 22:41
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=20413
はじめまして^^
雑談掲示板のほうでは書きこみありがとうございます! 雑談のほうでは雛乃っていう名前で投稿してます、友桃(ともも)と申します。
『たか★たか☆パニック〜ひと塾の経験〜』は以前からずっと気になっていた小説だったのでわくわくしながら読み始めたんですが、
お世辞ではなく、ここ最近読んだ小説の中で一番面白かったです……!!
こんなにおもしろい小説紹介してくださって本当にありがとうございます(*^^*)
文才があるってこういうことを言うんだなぁと思いながら読んでました^^
特に心理描写がすごくて、なみちゃんや松浦くんの性格がとてもよく伝わりました。ほんとにすごいなぁ^^
あと現時点、松浦くんが1番好きですv あの上から目線といじわるさがたまらん(笑)←
続きも楽しみにしてます!
更新頑張ってください。
- Re: たか★たか☆パニック〜ひと塾の経験〜【リメイク版】 ( No.19 )
- 日時: 2013/10/08 16:46
- 名前: ゆかむらさき (ID: bIwZIXjR)
友桃さん>
小説大会のコメディー部門でで金賞をとられた方ですね^^
最近一番おもしろい(笑)
……ありがとうございまっす!(めっちゃ、嬉しい♪)
次から次へと恋愛事件が発生する、現実にはありえんって、ってつっこまれちゃう内容でございます。
心理描写は主要人物になりきって書いております。
真の主人公、なみこちゃんよりも、松浦くんになるのが一番楽しいです♪
高樹くんの心理描写もこの後、出て来ますので楽しみにしていてください。
前書いていたよりももっとえろさをパワーアップさせるつもりですので(笑)
松浦くんの不器用なところ、可愛いですよね^^
それとは正反対の性格の高樹くんも同じくらい人気があります。
なみこちゃん、幸せ者ですよね^^
続きじゃんじゃん更新していきますのでよろしくお願いしますですー
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