複雑・ファジー小説

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〜闇の系譜〜(外伝)
日時: 2021/04/16 00:38
名前: 狐 (ID: WZc7rJV3)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16085

 皆さん、こんにちは!銀竹と申します。

 ここでは、『〜闇の系譜〜』の小話をちょこちょこ書いていきたいと思います。
完全に狐の遊び場と化していますが。ご容赦下さい(笑)

 もし物語に関するご要望等あれば、ぜひ仰って頂けると嬉しいです(*´▽`*)

〜闇の系譜〜シリーズの順番としては
ミストリア編(上記URLの最後の番号五桁が16085)
サーフェリア編・上(17224)
サーフェリア編・下(19508)
アルファノル編(18825)
ツインテルグ編
となっております。
外伝はどのタイミングでも大丈夫です(16159)。
よろしくお願いいたします!

…………………………

ぜーんぶ一気に読みたい方→ >>1-300

†登場人物紹介・用語解説† >>1←随時更新中……。

『三つ編みの』 >>2-3 >>5-11
──トワリスの三つ編みの秘密に迫る……!
『おまじない』 >>12-13 >>15 >>17-21
──なんとかは風邪を引かないと言いますが、ユーリッドは引きましたね。意外です。
『忘却と想起の狭間で』 >>22-27 >>30-31 
──外伝ですが、結構暗い内容です。しょんぼりアドラさん。
『悪魔の愛し子』取り下げ
──なんとかは風邪を引かないと言いますが、ルーフェンは(略)。
『ずるい人/卑怯な人』取り下げ
──ファフリもトワリスも、物好きだなとよく思いますw
『赤ずきん』 >>94-95
──ずっとやりたかったパロディーもの。とにかく下らないです。ただの狐の自己満足です。
『酩酊』取り下げ
──真面目な人ほど、酔うと面倒くさいよねっていうお話です。
『とある魔女の独白』 >>116-118
──サーフェリア編を最後まで書いて、そのあとにこれを読んだら、また見方が変わるんじゃないかな……という願望(笑)
『桃太郎』 >>126-128 >>130-132 >>135-137
──これまたすごくどうでもいいパロディーもの。ちょっと汚らしいので注意ですw
『シンデレラ』 >>138-140 >>142-156
——リリアナさん初出演のパロディーもの。本編とは全くの別物です!(笑)
『光』 >>157 >>159-170
——オーラントとその妻、ティアの出会いから別れまでを描いた物語。
『不思議の国のアーヴィス』 >>172-184
——ツインテルグ編の主人公、アーヴィス初出演のパロディもの。
本編には出てきていない登場人物ばっかりなので、完全に作者の自己満です。

『〜闇の系譜〜座談会』
──ひっどい内容です(笑)世界観をぶち壊す発言、登場人物のキャラ崩壊が満載ですので、閲覧注意。
【第一回】オーラント×トワリス
「アドラ生存ルートの可能性について」 取り下げ
【第二回】ルーフェン×ハインツ
「ミス・闇の系譜は誰だ」 取り下げ
【第三回】ジークハルト×リリアナ
「応援歌を作ろう」 取り下げ
【第四回】ユーリッド×半本とどろき(ゲスト)
「世界線を越えて」 >>141
【第五回】カイル×ロクアンズ・エポール(ゲスト)
「世界線を越えてⅡ」 >>158
【第六回】サミル×クラウス(ゲスト)
「世界線を超えてⅢ」 >>171
【第七回】リリアナ(+α)×成葉&慶司(ゲスト)
「世界線を超えてⅣ」 >>185

登場人物の掘り下げ
ジークハルト・バーンズ >>187
サミル・レーシアス >>188

……………………

【完結作品】
・〜闇の系譜〜(ミストリア編)《複ファ》
ミストリアの次期召喚師、ファフリの物語。
国を追われ、ミストリアの在り方を目の当たりにした彼女は、何を思い、決断するのか。

・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)上《複ファ》
サーフェリアの次期召喚師、ルーフェンを巡る物語。
運命に翻弄されながらも、召喚師としての生に抗い続けた彼の存在は、やがて、サーフェリアの歴史を大きく変えることとなる──。

・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下《複ファ》
三街による統治体制を敷き、サーフェリアを背負うこととなったサミルとルーフェン。
新たな時代の流れの陰で、揺れ動くものとは──。

【現在の執筆もの】

・〜闇の系譜〜(外伝)《複ファ》
完全に狐の遊び場。〜闇の系譜〜の小話を載せております。

・〜闇の系譜〜(アルファノル編)《複ファ》
ミストリア編後の物語。
闇精霊の統治者、エイリーンとの繋がりを明かし、突如姿を消したルーフェン。
召喚師一族への不信感が一層強まる中、トワリスは、ルーフェンの後を追うことを決意するが……。
憎悪と怨恨に染まった、アルファノル盛衰の真実とは──?

【執筆予定のもの】

・〜闇の系譜〜(ツインテルグ編)《複ファ》
アルファノル編後の物語。
世界の流転を見守るツインテルグの召喚師、グレアフォール。
彼の娘である精霊族のビビは、ある日、サーフェリアから来たという不思議な青年、アーヴィスに出会うが……。


…………………

基本的にイラストはTwitterにあげておりますので、もし見たい!って方がいらっしゃいましたらこちらにお願いします。→@icicles_fantasy

【頂き物】 >>16 >>53 >>98 >>99

……お客様……

夕陽さん
ヨモツカミさん
蓮佳さん
まきゅうさん
亜咲りんさん
ゴマ猫さん

【お知らせ】
・ミストリア編が、2014年の冬の大会で次点頂きました!
・サーフェリア編・上が、2016年の夏の大会で銅賞を頂きました!
・2017年8月18日、ミストリア編が完結しました!
・ミストリア編が2017年夏の大会で金賞を頂きました!
・サーフェリア編・上が、2017年冬の大会で次点頂きました!
・2018年2月18日、サーフェリア編・上が完結しました!
・サーフェリア編・下が、2019年夏の大会で銀賞頂きました!
・外伝が、2019年冬の大会で銅賞頂きました!
いつも応援して下さってる方、ありがとうございます(*^▽^*)

Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.168 )
日時: 2018/11/27 18:41
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: wC6kuYOD)




  *  *  *


「ジークハルト……?」

 不意に、弱々しい声が聞こえた。
ティアが、目を覚ましたのだろう。
オーラントは、座っていた椅子から立ち上がると、彼女の身体にかかった毛布を、かけ直してやった。

「……おはようさん。つっても、今は夕方だけどな。うちのやんちゃ坊主なら、爆睡してんぞ。ほれ」

 そう言って、腕に抱えていたジークハルトを、そっとティアの隣に下ろすと、ティアは、嬉しそうに笑った。
そして、枯れ枝のような指先を、探るように動かして、優しく我が子の手を握った。

 結局ティアは、宣言した通り治療を受けず、無事に子供を生んだ。
生まれた子は、オーラントと同じ黒髪の男の子で、『ジークハルト』と名付けられた。
この名はかつて、子供が出来たと聞いて舞い上がったオーラントが、玄関口で咄嗟に並び立てた候補の中から選んだものだ。
ティアには気が早いと呆れられたので、そんな走り書きはどこかにいったと思っていたが、ティアが、ちゃんと拾って保存していたようだった。

 生まれたジークハルトが、元気に育っていくのとは反対に、ティアは、日に日に衰弱していった。
妊娠していた頃は、一生懸命食べていたが、出産後は、食事が喉を通らなくなり、みるみる痩せて、よく吐血するようになった。
やがてティアは、夢と現実の間を彷徨いながら、譫言(うわごと)のように、昔のことを語るようになった。
シュミレット家での父との思い出から、オーラントとの思い出まで、ぽつぽつと話しては、楽しそうに微笑んでいた。

 それから、三人で帰りたい、と頻繁に言うようになった。
どこに、とは言わないので、試しに、カナンの村に戻りたいのか、と問うてみたが、ティアはただ、懐かしいわ、と答えるだけであった。

 一瞬、カナンの村に行こうかと思った。
彼女の本当の故郷は、ネール山脈の麓にほど近い、小さな街であったが、叔父夫婦から追い出された土地よりも、カナンの村の方が、思い出深いだろう。
しかし、一歳にもならないジークハルトと、寝台から動けないティアを連れて、北端まで旅をするのは、無謀なことだ。
最終的に、医師と相談して、三人は、シュベルテの郊外にあるオーラントの家に、やってきたのだった。

「……また、夢を見ていたわ」

 寝台の上で、ジークハルトの手を握りながら、ティアがぽつりと言った。

「貴方と、初めて会ったときの夢。……すごく、素敵な夢だった。また見たいな」

「…………」

 オーラントは、息を吸った。
普段通りの声が出るように、何度も呼吸してから、口を開いた。

「夢もいいが、そこのやんちゃ坊主の面倒も、見てやってくれよ。泣かないのは有り難いが、どうも俺には反抗的なんだ。この前なんか、俺の目に指を突っ込んできたんだぜ? とんでもない息子だぞ」

 ティアが、ふふ、と吐息のような笑みをこぼす。
それから、オーラントの方に顔を向けると、ティアは言った。

「ジークハルトは、将来、どんな大人になるのかな。貴方に似て、心も身体も、強い人になったらいいね」

 オーラントは、肩をすくめた。

「……そんなん、分からんだろ。まだ赤ん坊なんだから」

 他にも言いたいことがあったのに、声が震えないようにしなければと思うと、あまり多くは喋れなかった。
やっと押し出した声ですら、なんだかぶっきらぼうになってしまう。
対してティアの声は、いつもより少しだけ、明るいような感じがした。

「それから、やっぱり、いろんな人の気持ちを理解できる、優しい人になってほしいわ。貴方と同じように、魔導師になりたいって言い出したら、ちょっと心配だけど、それはそれで、応援してあげたいね」

「……そうだな」

 か細い、けれど、生き生きとした口調だった。
こんなに饒舌なティアと話したのは、一体いつぶりだろう。
暮らした時間は長くなかったが、久々に家に帰れて、ティアも喜んでいるのかもしれない。
しかし、彼女を蝕むものが、決してその勢いを無くしていないことは、なんとなく分かっていた。

Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.169 )
日時: 2018/12/02 18:57
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: hjs3.iQ/)



「そういえばね、私、ジークハルトに手紙を書いたのよ。私たちのところに、生まれてきてくれてありがとうって、書いたの。あと、ごめんねって」

「……そうか」

「病院の、寝台横の棚のね、二番目の引き出しに入っているから。いつか、ジークハルトが文字を読めるようになったら、渡してあげてね」

「……わかった」

 返事をしてから、何度か瞬きをして、オーラントが下を向く。
でも、と言葉を継ぐと、ティアは続けた。

「私、全盲になってから、文字を書いたの久しぶりだったから、多分、上手に書けていないと思うの。だから、もし全然読めなかったら、捨てちゃっていいわ。その代わり、今の言葉、伝えてね。お母さんは、ジークハルトのことが大好きよって」

「…………ああ」

 さらさらと、命の流れる音がする。
その流れを塞き止められないことが、悔しくて、悔しくて。

 不意に、ティアが、手を伸ばしてきた。
その手は、宙を彷徨った末に、オーラントの前髪を、すっとかすって、止まった。

 ティアが、悲しそうに目元を歪めた。

「……オーラントさん、泣かないで」

「…………」

 はっと、息をこぼす。
オーラントは、首を横に振った。

「泣いてねえよ」

「……泣いてるよ」

「……お前、見えないだろ」

「……見えるよ」

 滅多に動かない亜麻色の睫毛が、すっと持ち上がった。
真っ暗な、その瞳の奥に──。
オーラントの顔を映して、ティアは、ふわりと微笑んだ。

「私、貴方に出会ってから、いろんなものが見えるようになったの」

 彼女の瞳が、一瞬だけ、光を灯す。
オーラントは、その瞳に宿った光を、じっと見つめていた。

「今も、光が沢山見えるわ。オーラントさんと、ジークハルトの周りに、光が、沢山……」

 ティアは、重たそうな瞼を、ゆっくりと瞬いた。

「……まだ、その光を、見ていたかったなぁ」

「…………」

 じゃあ、逝くなよ。
そう言おうとして、オーラントは、口を閉じた。
言えなかった。
喉が熱くなって、声を出そうとしても、嗚咽しか漏れなかった。

「──ねえ、オーラントさん」

 ティアの唇が、一瞬、震えた。

「……ジークハルトと、一緒に……どうか、幸せになってね」

 伸ばされていた彼女の腕が、ゆるゆると下がっていく。
咄嗟にその手を掴むと、オーラントは、ようやく言葉を押し出した。

「……待ってくれ。そんなの、お前が、いないと……」

 ちゃんと届いたか、分からなかった。
他にも、色々なことを伝えたくて、オーラントは必死に口を動かしたが、不明瞭な喘ぎ声になるばかりで、自分でも聞き取れなかった。

 それでもティアは、どこか幸せそうに、薄く笑った。

「嬉しい……ありがとう。……ごめんね」

 ティアの腕の力が、徐々に抜けていく。
押し上がっていた睫毛が、ゆるゆると下りてきて、つむればきっと、もう二度と持ち上がらないような気がした。

「…………」

 オーラントは、祈るように、ティアの手を額につけた。
お願いだから、待ってくれと。
一緒にやりたいことも、見たい景色も、まだまだ沢山あったのに。

「……幸せ、だったなぁ」

 ティアの、囁くような声が聞こえた。

「……すごく、幸せだった。……あのね、私ね、やっぱり、貴方のことが──……」

 その言葉の続きが、声になる前に、ティアの瞳の光が、ゆっくりと消えた。
安心したように、ふうっと吐息をこぼして。
握っていた彼女の腕が、ぱたりと落ちたとき。
目の前のものが、何も見えなくなった。

 自分はずっと、こうなることを恐れていたのだ。
一人残されるのが怖くて、怖くて、ずっと、尻込みしていた。
あるいは、自分が死んで、最愛の誰かにこんな思いをさせることが、嫌で嫌で、たまらなかった。
独り身のままであったなら、このような絶望を味わうことはなかったのに──。

 やはりあの時、ティアを引き留めなければ良かった。
彼女からの好意を、はっきりと拒んで、一人で、カナンの村から去れば良かった。

 そんな後悔が、一瞬だけ頭をよぎった瞬間。
ティアの側に横たわっていたジークハルトが、突然、声をあげて泣き始めた。

「おいおい、どうした、急に……」

 息子の目から、大粒の涙がこぼれ落ちていく。
抱き上げて、その背をあやすように撫でながら、オーラントは呟いた。

「泣くな、泣くな……悪かったよ。今のは、冗談だって。……後悔なんて、してないから……」

 立っていられなくて、後ろに倒れこむようにして、椅子に座る。
ジークハルトの背を叩きながら、オーラントは、何度も何度も、言い聞かせた。

「……男の子だろ。頼むから、泣くな……」

 もはや、どちらに言い聞かせているのかも、わからない。
ただひたすら、泣くな、泣くなと、オーラントは呟いていた。

「なあ、泣くな、ジークハルト。お願いだから……」

 溢れ出した涙は、後から後からこぼれて、一向に止まらない。
オーラントが、再び足に力を込めて、立ち上がるまで。
二人は、ずっと泣き続けていた。

Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.170 )
日時: 2018/12/06 18:18
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: wC6kuYOD)



  *  *  *


 どん、と身体に衝撃が走って、オーラントは、はっと顔をあげた。
頭の芯に、まだ痺れるような眠気が残っている。
椅子の背もたれを支えに上体を起こして、寝ぼけ眼を擦ると、視界の端に、久しく見る息子の姿が映った。

「……おお。帰ってたのか、珍しいな」

「着替えを取りに来ただけだ。すぐに出る」

 そう言ってジークハルトは、自分の箪笥から衣服を何着かとると、手早く荷に詰め込んでいく。
久々に会ったと言うのに、この無愛想さ。
一体誰に似たのか、皆目見当もつかない。

 オーラントは、呆れ半分に苦笑すると、座っていた椅子から立ち上がった。
そして、強張った首をこきこきと鳴らすと、一つあくびをした。

「ていうか、俺、寝てたのか。なんかさっき、誰かに勢いよく蹴られた気がする……」

「俺だ」

「お前かよ!」

 悪びれもなく自首してきたジークハルトに、びしっと突っ込みを入れる。
ジークハルトは、外出準備を進めながら、淡々と返した。

「そんなところで、鼾(いびき)かいて寝ているからだ。寝るなら寝室に行け。邪魔だ」

「お前、ほんと口悪いな……」

 オーラントは、はあっとため息をついた。

 そういえば昨夜は、書き物をしていて、それ以降の記憶がない。
どうやら、文机で作業している途中に、疲れて寝てしまっていたようだ。

 五十近くにもなって、椅子の上で長時間寝ていたら、起きたときに全身を痛めていただろう。
加えて、風邪も引いていたかもしれない。
そう思うと、起こしてくれたジークハルトには、一応感謝しておこうと思った。
蹴っ飛ばしてきたことに関しては、毛頭許す気などないが。

 聞く耳を持たない息子を見つめながら、オーラントは、痛む左手首を回した。

 サーフェリアの前召喚師、シルヴィア・シェイルハートに右腕を奪われてから、約六年。
片腕のない生活には大分慣れたが、左手で文字を書くときなんかは、やはり不便を感じることが多い。
練習を重ねてきたので、最初の頃に比べればすらすら書けるようにはなったが、どうしても、利き手で書いていた頃に比べると、神経を使ってしまうのだ。

 オーラントは、散らかしていた文机を簡単に片付けると、やれやれと肩をすくめた。

「色々と気に食わない年頃なのは分かるが、減らず口叩きまくって、あちこちに敵作るのはやめておけよ。お前もいい大人なんだし、嘘でもいいから、にこにこしとけ。な?」

「うるさい。にこにこなんかするか、気色悪い」

 人生の先輩として助言してやっても、この様だ。
華麗に一刀両断されて、オーラントは、大袈裟に嘆息した。

「はぁー……今の言葉、母ちゃんが聞いたら泣くぜ? お前の名前はなぁ、強くて優しい……いいか、もう一度言うぞ。や、さ、し、い! 未来の明るい男になれという意味を込めて、『光』って意味のジークハルトと──」

「その下り、百回は聞いた」

 オーラントの言葉を遮るように、ジークハルトが、どかっと荷を地面に転がす。
それから、魔導師用のローブを羽織ると、ジークハルトは、作った荷を背負いこんだ。

 息子の背は、もうほとんど父と変わらない。
目線の変わらなくなったジークハルトの目を見て、オーラントは、困ったように苦笑した。

「ったく、しょうがねえ奴だなぁ。言っても無駄ってわけか。もういい、さっさと行け。へまやらかして、死ぬんじゃないぞ」

「当たり前だ」

 しっしっと追い払うように手を動かせば、こちらには一瞥もくれずに、ジークハルトは扉の方に向かった。
しかし、取っ手に手をかけたとき。
何かを思い出したように振り返ると、ジークハルトは、ついでのように言った。

「ああ、そういや俺、宮廷魔導師になった」

「……は? なんだって?」

 思わず聞き返して、硬直する。
言われたことが理解できず、しばらく反芻してから瞠目すると、オーラントは、恐る恐る尋ねた。

「……お前、今、二十歳だよな?」

「そうだ」

 短く返事をして、オーラントの顔を見る。
その驚愕の表情に、勝ち誇ったように口端を上げると、ジークハルトは、憎らしく言った。

「歴代最年少、二十六歳にして宮廷魔導師にまで上り詰めた若き天才。飆風(ひょうふう)のオーラント、だったか?」

「…………」

 ジークハルトは、ふっと鼻で笑った。

「悪いな、親父」

 それだけ言うと、さっさと家を出ていってしまう。
扉の外の光に、ジークハルトが吸い込まれていくのを見ながら、オーラントは、しばらくぽかんとしていた。
しかし、ふと脱力したように椅子に座り込むと、がしがしと頭を掻いた。

「あーあ、とんでもねぇクソガキになったもんだ。……なあ?」

 開いた窓の隙間から、爽やかな初夏の風が、そよそよと入り込んでくる。
目を閉じると、記憶のどこかで、柔らかな亜麻色が、ふわりと揺れたような気がした。



………………



 オーラントの妻、ティアの『光』のお話でした(^^)
いかがだったでしょうか?
個人的には、闇の系譜らしからぬ純愛ものになったなぁと思っています(笑)
あのくだらない『桃太郎』と『シンデレラ』の後に書いた話がこれかい、っていうw

 ティアさんは、本編には出てきません。
でも、オーラントとジークハルトに大きな影響を与えた登場人物の一人です。
ジークハルトについては、まだそんなに出してないので何とも言えませんが、オーラントに関しては、それがかなり如実に表れているかなと思います。
「これからも、私みたいな独りぼっちがいたら、見つけて、助けてあげてね」
このティアの台詞、オーラントさんの中に、生涯残り続けたんじゃないでしょうか。
だからこそオーラントさんは、本編で最初のルーフェンの理解者になったのかなぁと思います。

 ルーフェンママのシルヴィアに殺されちゃいましたが、前国王エルディオも、ティアの言う通り賢王だったんだろうと私は考えています。
本編だと、シルヴィアを騙して、ルーフェンに対して「召喚師やだ? 殺すぞクソガキ」みたいな感じで脅迫していたエルディオさんですが、それも、王として持つべき非情さだったのかなと。

 飄々としているけど、実は歴代最年少で宮廷魔導師になっていたオーラントさん。
彼はどちらかというと、ルーフェンと同じ天才タイプですが、息子のジークハルトの方は、秀才タイプです(もちろん才能もあったんでしょうが)。
だから秀才の息子が、天才の父親の最年少記録を六年も塗り替えて宮廷魔導師になったときは、すごく気分が良かったんじゃないかなぁ(笑)
既にサーフェリア編の下巻で少し描写していますが、ジークハルトは、ルーフェンのライバルになり得る才覚の持ち主です。
国を護りたいという思いが誰よりも強いジークハルトは、ルーフェンの危なげな部分を気にかけている一方で、生まれながらにして守護者という称号を有し、絶対的な力を持っている召喚師という立場を、どこか羨ましく思っている節があると思います。
対してルーフェンは、ジークハルトの強い志とか、オーラントさんの存在とか、そういった部分をやはり羨ましく思っているんじゃないでしょうか。
お互い、ないものを持っている存在。
そんなライバルとして、今後二人を本編で描いていきたいですね。

 さて、あとがきが長くなってしまったので、そろそろ切り上げます(笑)
読んで下さった方、ありがとうございました!
次はジークハルト&アレクシアの話か、ギャグを書きたいと思います(?)
それではまたー!

Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.171 )
日時: 2018/12/18 20:49
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: qToThS8B)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18787

サミル「皆さん、こんにちは。サミル・レーシアスです。最近、寒くなってきましたね」

ダナ「全く、老体には堪えるな。これから更に寒くなっていくと思うと、気が滅入るわい。若い頃は、寒さなんてそう気にならなかったものだが……」

サミル「本当ですね。こんな寒空の中でも、薄着で走り回っている子供たちを見ると、自分も年をとったものだと改めて思います」

ダナ「ほほほ、子供の体力っちゅうもんは、底なしじゃからのう。わしも、心だけは若いんだがなぁ」

サミル「またそんなこと言って。ダナさん、もう七十越えてるんですから、無茶しては駄目ですよ」

ダナ「何を言っとる、お前ももう立派なじじいじゃろうが。それに、闇の系譜には、じじいが多く登場しておるからの。わしが特別年寄りってこともなかろう」

サミル「まあ、それはそうかもしれませんが……」

ダナ「とは言っても、流石に、七回目の座談会にして、じじい二人が並んでいるというのは、絵面的に地味じゃな。今回のゲストには、ちゃんと若い坊が来てくれるんじゃろう?」

サミル「ええ、そう伺っていますよ。今日は、銀竹とも付き合いが長いヨモツカミさんの作品から、男の子が一人、来てくれるようです」

ダナ「ほう、そいつは楽しみじゃの。では、早く本番に入った方がよいじゃろうて。わしはさっさと退散するとしよう」



〜闇の系譜〜座談会⑦
『世界線を超えてⅢ』



サミル「それでは早速、座談会を始めていきましょうか。本日のゲストは、複ファ板で連載中の『継ぎ接ぎバーコード』から来てくれています。どうぞ、お入りください」

クラウス「こんにちはー!」

サミル「とっても元気ですね、こんにちは。はじめまして、私はサミルと言います。君の名前を教えてもらって良いですか?」

クラウス「サミル! ……さん! はじめまして、オレはクラウスって言う……言いまーす!」

サミル「クラウスくんと言うのですね。今日はよろしくお願いします。あ、無理に敬語を使わなくても大丈夫ですよ。どうぞやりやすいように、楽しんでいって下さい」

クラウス「あはは、無理してんのバレたな。目上の人には敬語使いなさいって言われてたからやってみたけど、やっぱよくわかんねーや!」

サミル「確かに敬語が使えるのも大事ですが、ここはそんなに畏まった場でもないですしね。お互い気楽にいきましょう。クラウスくんは、甘いものとかお好きですか? お菓子でもどうです?」

クラウス「えっ甘いの超好き。チョコとか! いやでも待て、知らないヒトに食べ物貰っちゃ駄目って言われてるし、サミルも食べ物で釣っちゃ駄目だぞ!」

サミル「知らない人だなんて、そんな寂しいこと言わないで下さいな。私達、たった今、知り合いになったではありませんか。それにほら、今日はクラウスくんが来ると思って、お菓子を沢山用意したんですよ。食べてあげないと可哀想だと思いませんか?」

クラウス「そっか、今知り合ったから知り合いか。確かにお菓子が可哀想だ、食べるー!」

サミル「はい、どうぞ。好きなだけ食べて大丈夫ですよ。ところでクラウスくん、昨日の夜はちゃんと眠れましたか? 目の下の隈が気になりますが……」

クラウス「昨日の夜っていうかいつも眠れてないぜ! だからこの隈はもうファッションみたいな? あいでんててー的なものなんだ!」

サミル「あ、あいでんててー? は分かりませんが、あまり寝れてないのは良くないですね。クラウスくん、まだ若いですし、沢山寝たら、身長もまだ伸びるかもしれません。温めた牛乳など飲むと、よく眠れますよ」

クラウス「ホントか!? 流石にもう伸びないと思ってたけど、温めた牛乳か……! ちゃんと寝ればトゥールよりも高くなれるかもしれないな。頑張るぜ!」

サミル「ふふ、寝る子は育つ、と言いますからね。トゥールさんというのは、お友達ですか?」

クラウス「友達というか、仲間かな? トゥールは凄いんだぜ。人間とトカゲの中間みたいな変な見た目してるけど、背高いし、強くてかっけーんだ!」

サミル「人間とトカゲの中間……獣人みたいなものでしょうか? いいですね、背が高いとかかっこいいとか、男としてはやはり憧れてしまいますよね」

クラウス「獣人? ていうか、そういう〈能力〉なんだけど。見た目はジッと見てるとキモいけど、爪がシャキンってなってて、めっちゃ強いんだぜ。まあ、別に憧れはしないけど」

サミル「そうなのですか? 私なんかは、子供の頃、そういう普通の人にはない強さ、みたいなものに憧れたりしましたけどね。私は運動音痴だったので」

クラウス「サミル運動できなかったのか。でも、運動駄目でも他ができたタイプってぽいよな。今、すごいちゃんとした人って感じだし」

サミル「大人になってからは、身長も人並みになりましたが、小さい頃は背が低くて、運動も全然できなかったんですよ。だから、『鈍臭い』と『サミル』をかけて『どんくサミル』などと呼ばれて、同年代の子供たちにからかわれていたものです。兄がなんでもそつなくこなすタイプだったので、それと比較されたりして、余計にね」

クラウス「どんくサミルウケるな! そっかー、オレ兄弟いなかったけど、いても比べられちゃうんだなあ」

サミル「まあ、兄も自分の能力を鼻にかけるような人ではなかったので、劣等感みたいなものは抱いてなかったんですけれどね。クラウスくんとそのトゥールさんは、いつ知り合ったのですか?」

クラウス「もう六年前だから、オレが十二の頃だなー。あの頃のトゥールは今よりもっと荒んでたから、なんか怖いって思ってたけど、ずっと一緒にいるうちに、あいつただの陰キャで、明るいオレのノリについてこれなかっただけだったってことに気付いたから、たまにだる絡みしてやってたけど、上手くあしらえなくて困ってんのが面白かった!」

サミル「トゥールさんは、恥ずかしがり屋で人見知りだったのですね。気の合う友人というのも良いものですが、自分とは全く正反対の人と付き合ってみるというのも、面白いものです。もう六年も一緒にいるのですから、きっとクラウスくんとトゥールさんは、これからもずっと仲良くいられますね」

クラウス「六年なあ。考えてみるともうそんなに経つんだな……。これからも一緒だといいな。うーん、やっぱサミルはオレの知ってるジジイとは言う事も違うな。ちゃんとした大人って感じ!」

サミル「クラウスくんの周りには、どんな大人がいるんですか?」

クラウス「大人っていうか……多分、年齢だけはサミルより年上なんだけど、見た目は子供で、頭も子供で、年だけ取ってるから目上に対する態度がどうとか言ってくるし、そのくせ殴りかかったら子供に手を上げるなんてサイテーとか言ってきて、都合よくジジイと子供のふりをしてくる、害悪ジジイ系主人公、ジン。あとは人が嫌がることをするのが大好きな三十路のババアとか」

サミル「それは随分と個性的な方々ですね。見た目も頭も子供なら、それはもはや子供なような気がしてしまいますが……なんと、私より年上なのですか。クラウスくんの世界には、不思議な現象が沢山あるのですね。まあでも、お話に出た二人とも、きっとクラウスくんのことが好きなのですよ。好きな相手だからこそ、突っかかってみたり、意地悪したくなってしまうものです」

クラウス「えー。アイツらに好かれてんの気持ち悪ーっ! オレのこと好きになっちゃうのはわかるけど、好きなら普通に優しくしてほしいわ」

サミル「ほら、クラウスくんも、トゥールさんに絡んでみたりしたわけでしょう? それと一緒ですよ。本当に興味がなければ、そもそも関わらないわけですから、皆さん、クラウスくんとお話してみたかったんですよ。きっと素直じゃないだけです」

クラウス「てことは皆素直じゃない奴ってことか! なんだよもー面倒くさい奴らだな! まあ、オレも含めてそうか……。サミルの周りはそういう素直じゃない面倒な奴っているか? 面倒なあいつらへの対策を考えねーとだから、参考にしたい」

サミル「そうですね……私の周りには、素直じゃないというより、単純に不器用な人が多いかもしれませんね。心の内を上手く表に出せなかったり、誰かを頼ったりするのが下手だったり。まあ、それも素直じゃないという表現に当てはまるといえば、当てはまりますけれど。
対策になるかは分かりませんが、まずはこちらが素直になって接すれば、相手も心を開いてくれると思いますよ。裏表がなくて、自分に対して好意的な相手は、なかなか突っぱねる気にならないでしょう?」

クラウス「不器用なやつか。なんか、こっちにも心当たりあるなあ。そしたら、あいつらも不器用なのかもな。だからこそ、オレが素直に……。いや、オレは十分素直にあいつらのこと嫌ってるはずだから、やっぱあいつらが変わるべきだな!」

サミル「ふふ、クラウスくんには、気心の知れたお仲間が沢山いらっしゃるようですね。言葉にしなくても、通じあっているような。色々と質問してしまったのですが、実を言うと、クラウスくんとトゥールさん、そしてジンくんの三人が、仲良しだということは、銀竹から聞いていたのですよ」

クラウス「あっ、出たなぎんたけめ! 誰が仲良しだし! トゥールはともかく、ジンは嫌いだってのに!」

サミル「おや、本当にそうなのですか? ジンくんのほうは、クラウスくんのこと、好きだと思うのですけどね。クラウスくん、雰囲気を盛り上げるのお上手ですし、一緒にいると楽しいんじゃないでしょうか」

クラウス「うーん、まあ、オレといたら楽しいのはそうだろうけど、オレはジンのこと好きになれねーし、どう足掻いても仲良くなれない奴っているじゃん? けんえんの仲、的なやつ! 多分オレたちソレなんだよ」

サミル「なるほど、そうだったのですね。一緒にいることが多いと聞いていたので、てっきり仲が良いものだと思っていたのですが……。ジンくんは、どんな方なんですか?」

クラウス「えー、オレもジンのことはよくわからないけど……多分、あいつも不器用な奴なんじゃねーかな。一人で色々抱えてんだろなあって感じ。元から表情暗いのかもしんないけど、しょっちゅう暗い顔してるし。なんか、トゥールに似てるとこある気がする。両方根暗だ、多分!」

サミル「ジンくんも、トゥールさんも、きっと色んな背景がある子なのでしょうね。……って、先程からジンくんと呼んでしまっていますが、私より年上なんでしたね。ジンさんとお呼びするべきでしょうか。なんというか、子供の見た目だと、こう……つい可愛がりたくなってしまいますね」

クラウス「あんな奴の何が可愛いんだよ。ジンなんかくんとかちゃんとかさんなんてつける必要ねーよ。オレのオススメの呼び方はジジイのジンで“ジジン”だぜ! こう呼ぶと普通に怒られる!」

サミル「ジジンって、それはそれで呼びやすい気がしてきましたね。でもご本人は嫌がっているようですから……うーん、そうですね。もう少し言い方を丁寧にして、ジンおじいさん、略して“ジンジイ”なんていうのもどうですか?」

クラウス「やー、言い方丁寧にしても意味変わらない限り、あいつキレるぞ! てかなんだよ、その、トイレのことお手洗いって言うくらいの差。いっそのことジイとかジイくんて呼んだほうが『ちょっと呼び方に違和感あるけど多分気のせい』って流してくれそうじゃね?」

サミル「あはは、戦法を練るほど、ジイくんと呼びたいんですね。実際に呼んでみて、何回目でジンくんが気づくか、少し気になってしまいます。ジンくんって、怒ると怖いんですか?」

クラウス「んー、別に……。ガキがキレてても、あー、怒ってるなーって感じだし。でも、マジギレするとナイフ投げつけてきたりするから、めっちゃ危ない。ほら、オレの服の裾見てみ? こないだ飛んできたナイフが刺さってちょっと破けたんだぜ。多分、体には刺さらないように上手く投げてんだと思うけど、超危ない!」

サミル「ええっ、それは危ないですね……。喧嘩に暴力……しかも武器を持ち込むのは、やりすぎですよ。せめて殴り合い程度に留めないと、命に関わっちゃいますからね」

クラウス「ホントだよなー! まあ、ギリギリ怪我はしないように投げてるみたいだし、別にいいけど。サミルが誰かと喧嘩するときはどうしてんだ?」

サミル「私ですか? 私は、戦ったりは出来ませんので、喧嘩になったとしても、口喧嘩ですね。こう見えても私、屁理屈をこねるのは得意なんですよ。自慢することでもないですが、口喧嘩だったら、あまり負けた覚えもないんです、なんて」

クラウス「うわあ。確かにサミル相手だと言い負かされそうだな。なんか、言い方はやんわりしてるけど、言い返す隙を与えない感じ? そっちの方が怖いなー!」

サミル「まあ、誰かと喧嘩すること自体、滅多にないんですけどね。私も、気が強いほうではないですし……。仲良くいられるなら、それが一番です。クラウスくんも、そうは思いませんか?」

クラウス「んー、オレは嫌いな奴は嫌い、好きな奴は好きって思うから、好きでもないやつと無理に仲良くするとかは無理だけど……。確かに仲良くいられるんならそのほうがいいかもなー」

サミル「それはもちろん、そうですね。無理に仲良くされたところで、お互い良い気はしませんし……。どうでしょう、クラウスくんは、私とリラックスして話せましたか?」

クラウスの「サミルと話すのはスゲー楽しかったぜ! 普段言わないようなことも色々言った気がするし、普段聞けないことも聞けた感じする!」

サミル「それは良かった。こういう場でないと、なかなか聞けない話ってありますものね。私も、クラウスくんと話せて、とても楽しかったですよ。ですから、大変名残惜しいのですが……そろそろお時間なので、座談会を終わらせなければなりません。クラウスくん、良かったら、最後に一言、お願いできますか?」

クラウス「ヒトコト……!? 一言って、何言えばいいんだ? あ、宣伝とか?」

サミル「宣伝でもなんでも良いですよ。今この座談会をご覧になっている読者の皆さんへ、言いたいことをどうぞ」

クラウス「いや、オレがいるって時点でつぎばが面白いってのは証明されてるから必要ないな!
んー、読者に向けてか。今めっちゃ寒い時期だろうから、風邪とか気を付けろよ! 作者(ヨモツカミ)は年中無休鼻炎のせいで、鼻風邪との区別つかなくて、むしろ年中無休鼻風邪してて辛いらしいから、そうならないように帰ったら手洗いうがいだぞ! こんな感じでいーか?」

サミル「ええ、十分です。どうもありがとう。それでは皆さん、今日のところは、これで失礼しますね。銀竹がお遊びで始めたコーナーですが、是非またお時間のあるときに覗きに来てやってください。それでは、またどこかで」


………………


 ノリで開いたコーナーでしたが、だんだんシリーズ化してきましたね(笑)
今回は、『継ぎ接ぎバーコード』から、クラウスくんに来て頂きました!

 継ぎ接ぎバーコード、略してつぎばは、荒廃した世界で紡がれる能力者(バーコード)たちの物語です。
殺伐としたシリアスな雰囲気の異世界ファンタジーがお好きな方なら、きっと楽しめる作品になってると思います(^^)
というか、今この闇の系譜のスレをご覧になって下さっている方は、絶対好きだと思いますね(笑)
もう読んでいるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 悲しい運命に苛まれながらも、確かに繋がっている登場人物たちの絆、そしてヨモツカミさんのリアルな残酷描写に注目ですb

 それでは、ここまで読んでくださった方、ありがとうございましたー(^^)
本編共々、今後ともよろしくお願い致します!

 

Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.172 )
日時: 2019/01/16 17:57
名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: 59tDAuIV)


『不思議の国のアーヴィス』



 地図にも載っていない、小さな世捨て人の村。
そこには、アーヴィスという、心優しい牛飼いの青年が住んでおりました。
山々に囲まれたこの村での生活は、退屈だという者もおりましたが、アーヴィスは、穏やかでのんびりとした今の暮らしが、とても気に入っていました。

 いつものように、放牧地に牛を連れていったアーヴィスは、牛達が草を食む姿を眺めている内に、いつの間にか、草地に寝転がって眠っていました。
しかし、何かが脚に当たった衝撃で、ふと目を覚ましました。
どうやら誰かが、アーヴィスの脚に蹴躓(けつまず)いて、転んでしまったようです。

 慌てて謝ろうとしたアーヴィスは、目の前で倒れている男の姿を見て、驚きました。
男は、見た目は四、五十代に見えるのですが、全体的に小さく、アーヴィスの腰くらいまでしか身長がなかったのです。
しかも、頭には、兎の耳が生えています。
こんな奇妙な人間は、見たことがありませんでした。

 絶句するアーヴィスをよそに、男は、むくりと立ち上がりました。

「失敬。前方不注意でした」

 それだけ言って、男は、勢いよく走っていってしまいます。
呆然としていたアーヴィスでしたが、男が、金の懐中時計を落としていったことに気づくと、急いで後を追いかけました。

「ちょっと待って! これ、落とし物!」

 大きな声で叫んで、小さな男を追跡します。
しかし男は、短い脚をくるくると動かして、あっという間に森の中に姿を消してしまいました。
男を見失ったアーヴィスは、どうにか男を見つけ出そうと、しばらく森の中をさまよっていました。
見る限り、この金の懐中時計は、かなり高価な代物です。
これを無くしたとあれば、男はきっと困ってしまうでしょう。

 木々の合間を縫って、見通しの良い道に出ようと藪を掻き分けた、そのときでした。
踏み出した足が、がくりと落ち込んだかと思うと、アーヴィスは、足元に大きな穴が開いていることに気づきました。

「……!」

 しまったと思う間もなく、アーヴィスは、穴の中に吸い込まれていきます。
その穴はどこまでも深く、真っ暗で、アーヴィスは、成す術もなく落ちていったのでした。



 目が覚めると、アーヴィスは、鬱蒼とした森の中にいました。
しかしその森は、先程までいた森とは、明らかに違います。
アーヴィスが見たこともない、摩訶不思議な植物が沢山生えた、奇妙な森だったのです。

 周囲に蔓延る草の蔓は、まるでアーヴィスの様子を伺うように、うねうねと蠢き、高く聳える木々は、風もないのに、ざわざわと揺れています。
動物が潜んでいる様子もないのに、誰かに見張られているような鋭い気配を感じるし、鼻をつく泥臭さは、地面に一面咲いている、真っ青な花から発せられているようでした。

(……ここは、どこなんだろう?)

 眩しい日光に目を細めて、アーヴィスは、木々の隙間から青空を見上げました。
穴に落ちたはずなのに、上を見ても青空しかないなんて、おかしな話です。
アーヴィスは、この状況に違和感を抱きながらも、再びゆっくりと歩き出しました。

 うねる蔦や蔓に足をとられないよう、進んでいくと、不意に、視界が開けました。
日当たりのよい広場で、大きな切り株の食卓を囲み、若い男女が、お茶会をしています。

(よかった、人がいた……)

 話せる相手が見つかったことに安堵したアーヴィスでしたが、しかし、その男女の姿がはっきりと見え始めたとき、ぎょっとしました。
二人は、とても人間とは思えない姿形をしていたのです。

「あら、どなた?」

 茂みから現れたアーヴィスに気づくと、女が声をあげました。
女は、蛾のようなふさふさとした触角と羽根、そして透き通った青緑の長髪を揺らしながら、アーヴィスに近づいてきます。
驚くべきなのは、その女が全裸で、しかも宙に浮かんでいることでした。


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