複雑・ファジー小説
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- 〜闇の系譜〜(外伝)
- 日時: 2021/04/16 00:38
- 名前: 狐 (ID: WZc7rJV3)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16085
皆さん、こんにちは!銀竹と申します。
ここでは、『〜闇の系譜〜』の小話をちょこちょこ書いていきたいと思います。
完全に狐の遊び場と化していますが。ご容赦下さい(笑)
もし物語に関するご要望等あれば、ぜひ仰って頂けると嬉しいです(*´▽`*)
〜闇の系譜〜シリーズの順番としては
ミストリア編(上記URLの最後の番号五桁が16085)
サーフェリア編・上(17224)
サーフェリア編・下(19508)
アルファノル編(18825)
ツインテルグ編
となっております。
外伝はどのタイミングでも大丈夫です(16159)。
よろしくお願いいたします!
…………………………
ぜーんぶ一気に読みたい方→ >>1-300
†登場人物紹介・用語解説† >>1←随時更新中……。
『三つ編みの』 >>2-3 >>5-11
──トワリスの三つ編みの秘密に迫る……!
『おまじない』 >>12-13 >>15 >>17-21
──なんとかは風邪を引かないと言いますが、ユーリッドは引きましたね。意外です。
『忘却と想起の狭間で』 >>22-27 >>30-31
──外伝ですが、結構暗い内容です。しょんぼりアドラさん。
『悪魔の愛し子』取り下げ
──なんとかは風邪を引かないと言いますが、ルーフェンは(略)。
『ずるい人/卑怯な人』取り下げ
──ファフリもトワリスも、物好きだなとよく思いますw
『赤ずきん』 >>94-95
──ずっとやりたかったパロディーもの。とにかく下らないです。ただの狐の自己満足です。
『酩酊』取り下げ
──真面目な人ほど、酔うと面倒くさいよねっていうお話です。
『とある魔女の独白』 >>116-118
──サーフェリア編を最後まで書いて、そのあとにこれを読んだら、また見方が変わるんじゃないかな……という願望(笑)
『桃太郎』 >>126-128 >>130-132 >>135-137
──これまたすごくどうでもいいパロディーもの。ちょっと汚らしいので注意ですw
『シンデレラ』 >>138-140 >>142-156
——リリアナさん初出演のパロディーもの。本編とは全くの別物です!(笑)
『光』 >>157 >>159-170
——オーラントとその妻、ティアの出会いから別れまでを描いた物語。
『不思議の国のアーヴィス』 >>172-184
——ツインテルグ編の主人公、アーヴィス初出演のパロディもの。
本編には出てきていない登場人物ばっかりなので、完全に作者の自己満です。
『〜闇の系譜〜座談会』
──ひっどい内容です(笑)世界観をぶち壊す発言、登場人物のキャラ崩壊が満載ですので、閲覧注意。
【第一回】オーラント×トワリス
「アドラ生存ルートの可能性について」 取り下げ
【第二回】ルーフェン×ハインツ
「ミス・闇の系譜は誰だ」 取り下げ
【第三回】ジークハルト×リリアナ
「応援歌を作ろう」 取り下げ
【第四回】ユーリッド×半本とどろき(ゲスト)
「世界線を越えて」 >>141
【第五回】カイル×ロクアンズ・エポール(ゲスト)
「世界線を越えてⅡ」 >>158
【第六回】サミル×クラウス(ゲスト)
「世界線を超えてⅢ」 >>171
【第七回】リリアナ(+α)×成葉&慶司(ゲスト)
「世界線を超えてⅣ」 >>185
登場人物の掘り下げ
ジークハルト・バーンズ >>187
サミル・レーシアス >>188
……………………
【完結作品】
・〜闇の系譜〜(ミストリア編)《複ファ》
ミストリアの次期召喚師、ファフリの物語。
国を追われ、ミストリアの在り方を目の当たりにした彼女は、何を思い、決断するのか。
・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)上《複ファ》
サーフェリアの次期召喚師、ルーフェンを巡る物語。
運命に翻弄されながらも、召喚師としての生に抗い続けた彼の存在は、やがて、サーフェリアの歴史を大きく変えることとなる──。
・〜闇の系譜〜(サーフェリア編)下《複ファ》
三街による統治体制を敷き、サーフェリアを背負うこととなったサミルとルーフェン。
新たな時代の流れの陰で、揺れ動くものとは──。
【現在の執筆もの】
・〜闇の系譜〜(外伝)《複ファ》
完全に狐の遊び場。〜闇の系譜〜の小話を載せております。
・〜闇の系譜〜(アルファノル編)《複ファ》
ミストリア編後の物語。
闇精霊の統治者、エイリーンとの繋がりを明かし、突如姿を消したルーフェン。
召喚師一族への不信感が一層強まる中、トワリスは、ルーフェンの後を追うことを決意するが……。
憎悪と怨恨に染まった、アルファノル盛衰の真実とは──?
【執筆予定のもの】
・〜闇の系譜〜(ツインテルグ編)《複ファ》
アルファノル編後の物語。
世界の流転を見守るツインテルグの召喚師、グレアフォール。
彼の娘である精霊族のビビは、ある日、サーフェリアから来たという不思議な青年、アーヴィスに出会うが……。
…………………
基本的にイラストはTwitterにあげておりますので、もし見たい!って方がいらっしゃいましたらこちらにお願いします。→@icicles_fantasy
【頂き物】 >>16 >>53 >>98 >>99
……お客様……
夕陽さん
ヨモツカミさん
蓮佳さん
まきゅうさん
亜咲りんさん
ゴマ猫さん
【お知らせ】
・ミストリア編が、2014年の冬の大会で次点頂きました!
・サーフェリア編・上が、2016年の夏の大会で銅賞を頂きました!
・2017年8月18日、ミストリア編が完結しました!
・ミストリア編が2017年夏の大会で金賞を頂きました!
・サーフェリア編・上が、2017年冬の大会で次点頂きました!
・2018年2月18日、サーフェリア編・上が完結しました!
・サーフェリア編・下が、2019年夏の大会で銀賞頂きました!
・外伝が、2019年冬の大会で銅賞頂きました!
いつも応援して下さってる方、ありがとうございます(*^▽^*)
- Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.158 )
- 日時: 2018/07/31 23:31
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: ktklDelg)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=11117
カイル「……どうも。カイル・マルシェです。座談会やるっつーことで、呼ばれました」
リリアナ「きゃー! カイル頑張ってー!」
カイル「姉さんうるさい。……っていうか、俺のことなんて、読者さん覚えてるわけ? まだそんなに本編に出てないし、正直、こういう場が向いてる性格でもないんだけど」
リリアナ「そんなことないわよ。カイルはミストリア編にも外伝にも出演してるし、今後サーフェリア編にだって出る予定なんだもの。主役勢とも沢山関わりがあるし、十分重要な登場人物と言えるんじゃないかしら。だから自信もって!」
カイル「……いや、別に自信ないとか、そういう話じゃなくてさ。性格的に、こういう賑やかな場に出るのは向かないと思うんだよ。特に今回は、コメディ・ライト小説板で連載中の『最強次元師!!』から、ゲストが来るんだろ? 俺、無愛想だし、初対面の相手に気遣ったりとか出来ないよ」
リリアナ「うーん、その点は問題ないんじゃないかしら? そもそも、この座談会って銀竹の思い付きで作ったすっごい適当なコーナーだしね! それに、今回ゲストで来てくれる子は、とても元気な子だって聞いてるから、きっとうまく場を盛り上げてくれるわよ」
カイル「ふーん……まあ盛り上げてくれるんなら、任せたいくらいだけど。俺、そういうの苦手だし」
リリアナ「とにかく、早くゲストの子を呼びましょ! 私は物陰から応援してるから、二人とも、頑張ってね!」
〜闇の系譜〜座談会⑤
『世界線を越えてⅡ』
カイル「じゃあ、とりあえず今日のゲストを呼ぶよ。どうぞー」
ロク「はいはあい! おっじゃましまーす! コメディ・ライトの『最強次元師!!』から来ましたっ、ロクアンズ・エポールだよ! よろしくねー!」
カイル「うわ、なんか本当にテンション高いのが来たな……。えーっと、改めてカイルです。よろしく。じゃあ、エポールさん? とりあえず、簡単に自己紹介してくれる?」
ロク「ちょっとー! なんだかテンション低くない? あ、気軽にロクって呼んでいいからねっ! ええっとーなんだっけ? 自己紹介? 名前はロクアンズ・エポールで、年齢は十二! 食べることと動くことと、人とおしゃべりするのも大好きだよ!」
カイル「十二? なんだ、じゃあ年下か。それなら、ロクって呼ばせてもらうよ」
ロク「えっ、カイル年上なんだ!」
カイル「うん、俺は十三だからね。ま、一つしか変わんないけど」
ロク「なーんだ一つだけか! って、十三歳!? すごーい! あたしのお義兄ちゃんも十三歳なんだよ! ぐーぜんっ!」
カイル「へえ、お義兄さんがいるんだ。あんたに似た義兄だったら、二人そろうと騒がしそうだな……」
ロク「ううん、義兄はね、レトヴェールって名前なんだけど、すんごい静かで落ち着いてて、物知りなんだよー。自慢のお義兄ちゃん! ねっ、君は兄弟とかいる?」
カイル「俺? 俺には、姉さんが一人いるよ。ただ、ロクんとこと同じで、性格は全然違うな。うちの姉さんは、すっごい騒がしい感じ」
ロク「お姉ちゃんいるんだー! いいなー! しかもおしゃべり好きなんでしょ!? ねえねえ、お姉ちゃんはどんな感じの人? 名前は? もっと教えて!」
カイル「名前はリリアナだよ。リリアナ・マルシェ。やたら明るいところとか、結構あんたと似てるかも。おっちょこちょいだけど、料理はうまいよ。喫茶店やってるから。会ってみたら、案外仲良くなれるかもね」
ロク「すごい楽しそうな人だね! しゃべってみたいなー! 喫茶店でお料理してるの!? あたし食べるの大好きだから、いつか行きたいな! ねっカイル、今度連れてってよ!」
カイル「喫茶店つっても、すごいこじんまりしたところだけどね。まあ、連れていくくらい構わないよ、姉さんも喜ぶだろうし」
ロク「やった! 約束だよ、絶対連れてってねっ!」
カイル「はいはい。ところで、食べるのが好きって言ってたけど、ロクは料理したりはしないの?」
ロク「料理はねえ……実はこの前、よその国で焼き菓子にチャレンジしてみたんだけど、真っ黒コゲになってね。『これは食べ物じゃない』って言われちゃった……」
カイル「ま、真っ黒コゲって……一体どんな火加減で焼いたのさ。焼き菓子なんて、大抵材料混ぜて焼けばいいだけなんだから、そんな難しいものでもないだろ?」
ロク「えっ、だってだって、火を強くしたらすぐに出来上がるのかなーって思って……そしたら黒コゲになっちゃった。タイミングが大事だったのかなあー……料理は難しいよ!」
カイル「タイミングの問題じゃなくて、火加減の問題だって。一気に火力強くしたら、そりゃあ焦げるだろ」
ロク「ええー火加減かあ。やっぱりあたしには向いてないかも……」
カイル「まあ、料理が簡単じゃないってのは、否定しないけどな。だけど、練習すればある程度はできるようになるんじゃない? 今度会えたら、うちの姉さんに教えてもらいなよ」
ロク「えっ、いいの! ありがとー! ね、あたしお義兄ちゃんしかいないからわかんないんだけど、お姉ちゃんっていたらどんな感じなの? 弟には優しい?」
カイル「優しいっていうか、お節介だよ」
ロク「へえ! お節介しちゃうくらいカイルのこと大切にしてるんだね! いいなーお姉ちゃん!」
カイル「まあ、二歳の時に両親死んでから、なんだかんだ姉さんが俺を育ててくれたしね。感謝はしてるよ……ちょっとうるさいけど」
ロク「そっかそっか。私も拾い子だから両親のことはよくわからないし、代わりに育ててくれたおばさんも亡くなっちゃったから、なんかわかる気がするな」
カイル「なるほどね。俺たち、案外似たような境遇なのかもな。俺も両親のことなんて覚えてないし、まあ、姉さんがいたから、特別自分が不幸だとは思ったことないけど」
ロク「へへっ。そう考えるとなんだか嬉しいな! あたしも、お義兄ちゃんがいてくれるから寂しくないんだ。いっしょだね!」
カイル「ロクのところも、義兄とは仲良さそうだな」
ロク「もちろん仲良しだよー! よくバカかお前はって言われるけど! あっお兄ちゃんって言っても血が繋がってないから義理の兄なんだけどね!」
カイル「血が繋がってなくても、一緒に育てば兄妹みたいなもんだろ。拾われたってことは、育ててくれたそのおばさんとやらの息子が、レトだったの?」
ロク「そうそう! 二人とも顔がそっくりでねー、髪型もいっしょなんだよ! 金髪の一つ結び!」
カイル「親子なんだから顔は似てるの分かるけど、髪型まで一緒なんて、仲良いな……。ロクもかなり髪の毛長いけど、結んだりしないの?」
ロク「仲良しだったねえ、そういえば! あたし? あたしはね、むしろ長すぎて結ぶの大変になっちゃった……」
カイル「結ぶのが大変になるくらい長いって……髪洗ったりするのも、面倒にならないわけ? 俺の姉さんも、二つ結びをほどくと肩甲骨につくくらいの髪の長さなんだけど、なんで女子ってあんな髪伸ばしたがるのかすごい疑問。そう言ったら、だから女心が分からないんだって叱られたけど」
ロク「ちっちゃいころからずっとこれだしねーっ。あ、でもいっつも髪の毛が乾かないうちに寝ちゃうかな! そりゃ、伸ばしたほうがかわいいからじゃない!? 二つ結びなんてかわいいじゃんかー! まったく、あたしより年上なのに女心がわかってないなあカイルは! これだから十三歳男子は!」
カイル「えー、髪なんて、別に長くても短くてもどっちでも良いだろ。いちいち結び方にこだわるのもめんどくさそうだし、女ってよくわかんないや。レトも女の髪型なんて気にしないんじゃないか? 男はそんなもんだと思うけど」
ロク「……こ、これだから男子はー……。ま、まあたしかにレトは気にしてないと思うけど……洋服とかも適当だし。もしかして男子ってみんなそうなの!?」
カイル「どうだろ。男でも自分の髪型や服装にこだわる奴はいると思うけど、女の髪型をいちいち気にしてる奴はいるのかなぁ? ……あ、でも、俺の知り合いでルーフェンって奴がいるけど、そいつは細かく気づきそう」
ロク「女の子の髪型に気づく人が身近にいるの!? じゃあ参考にするといいよー! その人は、男のカガミだね! ……レトにも教えてあげてほしいよ」
カイル「そんなもんなのかね? けどさぁ、女の格好とか髪型を気にするのって、恥ずかしいっつーか……男はどんと構えてる方がかっこよくない?」
ロク「どんと構えるって……まあそれもそうだけどさ、さらっと、ねっ! さりげなーく言ってあげたらさ、すごくかっこいいと思わない?」
カイル「さらっと、『可愛いね?』とか言うの? うへぇ、俺には無理だな……。ああ、でもロクほど髪長い人は見たことないから、ロクが髪型変えたら、見てみたい気はするよ」
ロク「ほんと!? それならあたしも髪型変えてみよっかな!」
カイル「じゃあ、折角ならレトと同じ一つ結びにしなよ。そしたら、俺たちの喫茶店があるサーフェリアのヘンリ村集合な」
ロク「それいいねー! レトめっちゃ嫌がりそうだけど! 楽しみだなー!」
カイル「ああ、レトってあんまりそういうの好きじゃないんだっけ? まあ、記念だしいいんじゃないか。折角こうやってクロスオーバーしたしな」
ロク「そうなんだよぅ、ノリ悪いからなーレト。でも記念だからって駄々こねてみたらいけるかも……」
カイル「ノリが悪い、か……どっちかっていうと、俺はレトの方と気が合いそうだな」
ロク「ええー!? さびしいこと言わないでよー! ぜったい、あたしの方が気が合うって言わせてやる、覚悟しててね!」
カイル「いや、俺とロクは全然性格違うだろ……。まあでも、他作品の奴と話したのなんて初めてだったから、それなりに面白かったよ。今日はわざわざ来てくれてありがとな」
ロク「むぅ……まあ、そうだけど、対局にいるからね、むしろいいバランスだよそうだよ! あたしは諦めないからあっ! って、こんなに仲良くしたいって思えるくらい、あたしも楽しかったよ! こちらこそ、呼んでくれてどうもありがとう!」
カイル「そろそろ時間だから終わりにするけど、後日、なんとか義兄さん連れてきてよね。ヘンリ村で待ってるから」
ロク「うんっ、ぜったいレトも連れてくね! 楽しみにしてるっ!」
カイル「ああ。俺も、楽しみにしてるよ」
……………
今回は、コメライ板で連載中の『最強次元師!!』から、ロクアンズちゃんに来て頂きました(^^)
この作品、なんと七年以上もかけて完結した、ハイファンタジー超大作!
作者である瑚雲さんは、他にも色んな作品を書いてらっしゃいますが、やはり最強次元師!!が代表作なんだろうなと個人的には思っています。
作風が違うとはいえ、同じハイファンタジーを書いている身ですので、本格的な異世界ものをしっかり筋を通して書き続ける大変さはよーく分かります(笑)
だからこそ、瑚雲さんの作品は是非おすすめさせて頂きたいですねb
最強次元師!!はとにかくアツい、それでいてしっかり内容も練られた作品です。
少年漫画とか好きな方なら、絶対面白いと思うんじゃないかな(*^^*)
ちなみに私の推しは、キールアちゃんというキャラです……!
現在リメイク版が連載されていますので、読んでみてくださいね!(上記URL)
それでは、読んでくださった皆さん、瑚雲さん、ありがとうございました!
- Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.159 )
- 日時: 2018/12/06 08:30
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: wC6kuYOD)
* * *
寝室の扉が開く音がして、オーラントは、反射的に立ち上がった。
居間に出てきた医師は、憔悴しきったようなオーラントの顔を見ると、穏やかに笑った。
「……大丈夫ですよ。痛み止めも効いて、今は眠っています。やっぱり、家に帰ってきて、落ち着いたんでしょう」
穏やかだが、悲しみも孕んだような声。
オーラントは、詰めていた息を吐くと、ゆっくりと長椅子に座り直した。
「家っつっても、俺の家ですけどね……。出来ることなら、カナンの村に帰してやりたかった……」
ため息混じりに言うと、医師は、小さく首を振った。
「カナンは、ネール山脈の方でしょう。今の状態のティアさんと、まだ一歳にも満たないジークハルトくんを連れて、あの地方まで旅をするのは、流石に……」
言葉を濁してから、医師は、オーラントの隣に横たわる赤ん坊──ジークハルトを見つめた。
ジークハルトは、長椅子に広げた寝具の上で、すやすやと寝息を立てている。
普段から、心配になるほど泣かない子であったが、今は、その落ち着き様を眺めているおかげで、オーラントも、かろうじて冷静さを保てているような気がした。
「……カナンの村まで行かなくったって、きっとティアさんは喜びますよ。最期は家に帰って、オーラントさんとジークハルトくん、三人で迎えたいって言い出したのは、ティアさんなんですから。貴方の家である以上、シュベルテのこの家だって、立派なティアさんの家じゃないですか」
「…………」
何を言われても、前向きな返事などできる気がしなかった。
この医師は、かれこれ一年以上、治る見込みのないティアの治療に、手を尽くしてくれた男だ。
せめて、嘘でもいいから笑って、礼を言うべきなのだろうと思ったが、それでも、うまく言葉が出てこなかった。
医師は、部屋の隅にまとめていた荷物を持つと、静かに言った。
「それでは、私は、これで。もし、ティアさんが痛みを訴えるようなら、その時は、呼んでください」
「……ああ。ありがとう」
低い声で礼を言って、頭を下げる。
医師は、最後に何か言いたげに口を開いたが、結局なにも言わず、後ろ手に扉を閉めて、家から出ていった。
ジークハルトを抱き、物音を立てないように寝室に入ると、妻のティアは、寝息も立てずに、寝台に横たわっていた。
微かに開いた窓の隙間から、物悲しげな蜩(ひぐらし)の鳴き声が聞こえてきて、身体の芯に染み込んでくる。
射し込む夕暮れの光が、骨の浮いたティアの輪郭をなぞると、刺されたような痛みが、胸の奥に走った。
ティアは、この闘病生活の中で、何度も死の淵をさまよってきた。
その度に、生気のない彼女の青白い横顔を見てきたから、分かる。
今度こそ本当に、ティアの命の灯火は、消えて無くなってしまうのだろう。
(あの時、引き留めなければ……)
彼女からの好意を、はっきりと拒んでいれば。
何かが、変わっていたのだろうか。
──私ね、やっぱり、オーラントさんのことが好きよ。
光の映らぬ目でこちらを見上げ、どこか戸惑ったように、ティアがそう告げてきたのは、もう二年前のことだ。
叙任式で、オーラントが宮廷魔導師に任命された年──。
当時、オーラントは二十六歳、ティアは二十二歳であった。
- Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.160 )
- 日時: 2018/10/27 19:31
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: a4Z8mItP)
ティア・シュミレットは、北方のネール山脈の麓、その地域一帯を治める資産家の娘であった。
生まれつき身体が弱く、重度の夜盲(やもう)で、成人する頃には、完全に視力を失っていた。
それ故に──いや、おそらくそれ以外の理由もあったのだろうが、当主であった父親の亡き後、彼女は、家督を継がなかった。
病弱な身体では、次期当主を勤めるのは難しいだろうと、ティアの叔父が、代わりにシュミレット家を継ぐと申し出てきたのである。
叔父夫婦が、シュミレット家の資産を狙っていたことは、火を見るより明らかであった。
しかし、そのことに気づいた上で、ティアは当主の座を叔父夫婦に譲った。
財産への執着も、勢力争いをするほどの気力も、ティアにはなかったからだ。
ティアは、生まれてから父と暮らした屋敷を出て、カナンという北端の小さな村に、移ることになったのだった。
遠征を言い渡され、カナンの村に駐在することになったオーラントが、初めてティアと出会ったのは、ある冬の日のことであった。
身が凍るほど寒いのに、二階の窓を全開にして顔を出すティアを、自殺志願者と勘違いしたオーラントが、「飛び降りなんてやめろ」と、声をかけたのがきっかけであった。
聞けば、目の見えないティアは、外界の物音を聴くくらいしか楽しみがないから、窓を開けていたのだと言う。
屋敷から厄介払いされ、使用人とたった二人。
日がな一日、寝台の上で過ごしているから、どうにも退屈なのだ。
だから、雨の日でも雪の日でも、こうして窓を開けて、村人たちの生活に耳を澄ましているのだ、と。
共に暮らしている使用人だって、世間体を気にした叔父夫婦が雇っただけの者であったから、身の回りの世話をしてくれるだけで、私的に話しかけてくることはほとんどないのだという。
村人たちも、突然よそから来た貴族出の娘を警戒して、なかなか近寄って来ない。
引っ込み思案な自分の性格も災いして、いよいよ孤独になってしまったと、ティアは、寂しそうに語っていた。
そんな哀れな娘を、オーラントが気にし始めたのは、魔導師としての正義感からだったと思う。
いつしか、村を巡回する際、ふらりとティアの元に立ち寄っては、話し相手をするのが日課になっていた。
その頃は、オーラントもまだ新人に分類されるくらいの年齢で、仕事にも熱が入っていたから、魔導師たる者、村の平和だけでなく、村人たちの生活も守らねばと息込んでいた。
だから、自分が訪ねることで、本当に嬉しげに笑うようになったティアを、好ましく思っているのも事実であった。
- Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.161 )
- 日時: 2018/12/06 08:35
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: wC6kuYOD)
引っ込み思案だという言葉通り、控えめな性格ではあったが、いざ話してみると、ティアは決して、言葉数の少ない娘ではなかった。
まだ目が見えていた頃に、しっかりとした教育や作法を身に付けていたこともあって、学問の知識も深かったし、一つ一つの仕草も淑やかで、品がある。
上層階級の出であることを鼻にかけることもなかったし、案外、外に出てみれば、村の奴等とも仲良くなれると思うぜ、と言うと、ティアは、どこか困った様子で言った。
「でも私、一人で歩けるかどうかも、分からないもの。村の人達に会っても、なんて話しかけたら良いか……」
オーラントは、ティアの華奢な肩を、ぱしぱしと叩いた。
「そんなもん、俺が連れていってやるさ。誰かに会ったら、こんにちは、今日も寒いですね、とかなんとか、適当なこと言っときゃいいんだよ。あとは、そうだなぁ。湯浴みのあと、ろくに乾かさずに出歩いて、髪も鼻毛もばきばきに凍った話とか、そういうよくある世間話をしておけば、大体どうにかなるもんだって」
「……そんなの、オーラントさんくらいよ」
おかしそうに微笑んで、ティアが肩をすくめる。
にっと笑みを返すと、オーラントは、座っていた椅子の背もたれに寄りかかった。
「実際、そんなに心配しなくても、ちょっと外に出てみりゃ、向こうから話しかけてくるだろ。カナンの村は、こんな北端でもたくましく生活してるだけあって、陽気な奴が多いしな。警戒してるっていうより、お前が家から出てこないから、話しかけられないだけさ」
「……そう、なのかな」
オーラントは、力強く頷いた。
「そうそう。少なくとも俺は、こんな美人が出てきたら、絶対話しかけに行くな」
「…………」
閉じられていたティアの睫毛が、一瞬だけ震える。
垂らした亜麻色の長髪で、顔を隠すようにうつむくと、ティアは、小声で答えた。
「そんな風に言ってくれるの、オーラントさんだけよ。……お世辞でも、嬉しい。ありがとう」
恥ずかしそうに礼を言ってきたティアに、オーラントはその時、ぎくりとした。
美人だなんて言葉、ティアは、これまでも言われたことがあるのではないかと思う。
実際、ティアは綺麗な女性だった。
目を引く派手さはなかったが、線が細く、儚げで、絵に描いたような箱入りのご令嬢だ。
流れる髪は美しい亜麻色で、病的なほどの白い肌は、見ていて心配になったが、それを好む男も多いだろう。
お世辞ではないが、他意があったわけでもない。
ただ、客観的にみて、ティアは男が放っておくような容姿じゃないと元気付けたかったから、褒めただけだ。
そう言い聞かせている自分に、心のどこかで、恐れのようなものを感じていた。
オーラントが突然黙ったので、不思議に思ったのだろう。
ティアは、相手の声からしか、感情を汲み取れない。
少し戸惑ったように顔をあげると、ティアは、膝にかかっていた毛布をぎゅっと握って、躊躇いがちに尋ねてきた。
「……あの、オーラントさんは……どんな女の人が好き?」
絞り出した声が、微かに上擦っていた。
思えばこの時から、ティアが自分に好意を持ち始めていることには、なんとなく気づいていたのだろう。
気づいていて、見て見ぬふりをしていた。
「はは、なんだよ急に。そりゃあ、男だったら、出るとこ出てて、引っ込むとこは引っ込んだ、積極的な美女が好きだろ」
だから、咄嗟に出た適当な答えが、ティアとは正反対の女性像だったとき、内心驚いた。
思ったよりも、自分に余裕がないのだと分かったのは、この時だった。
自分がこの娘に抱いていたのは、恋情などではなかったと思う。
だが時折、自分とは違う、ティアの細い首筋や、柔らかな指先が目につくようになってから、焦燥感のようなものは感じていた。
独りぼっちの可哀想な娘に、自分は手を差し伸べているだけだ。
そう思い込んで、懸命に、距離を置こうとしていたのだ。
叔父夫婦が建ててくれたのだというティアの一軒家は、小さな村に建つには豪勢で、頑丈な石造りだった。
けれど、若い娘が住むには寂しく、まるで牢獄のような、殺風景な空間であった。
ティアはいつも、自室の寝台に座って、二階の窓から外を眺めている。
大気が裂くような冷たさを孕んでいても、彼女の周りだけは、いつも暖かい空気が流れているようだった。
目を閉じて、外界に耳を澄ませる彼女の姿が、繰り返し心に浮かぶようになったのは、いつからだったろうか。
- Re: 〜闇の系譜〜(外伝) ( No.162 )
- 日時: 2018/11/04 18:27
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: wC6kuYOD)
月日が流れ、二十六を迎えた年──オーラントは、宮廷魔導師に抜擢された。
自分でも、何故こんなに早く出世できたのか分からない、などと言ったら同期に睨まれたが、本当に、どうして自分が選ばれたのか、そのときは見当もつかなかった。
言われるままに各地を巡って、任務をこなしてきた。
しかし本当のところ、自分には、魔導師になった大層な理由など、なかったのだ。
例えば、かつて逆賊に妻子を殺されたから、憎むべき悪を滅ぼしたいのだとか、代々仕えてきた主君を守り、報いるために魔導師になったのだとか、そういった熱い動機が、自分にはなかった。
ただ漠然と、子供の頃に正義の味方を夢見て、他にやりたいことが見つからなかったから、魔導師になったのだ。
我ながら、笑ってしまうくらい、薄っぺらくて稚拙な理由だった。
だからこそ、宮廷魔導師に抜擢されたとき、正直困惑した。
宮廷魔導師は、ただ才能があるからというだけではなれない、最高峰の役職だ。
浅い覚悟で魔導師になった自分が、軽々しい気持ちで就いて良いような地位ではない。
早い話が、今更になって、怖じ気づいたのである。
魔導師という職は、子供の頃に描いていたものとは、全く違うものだった。
言わば、死ぬまで国にこき使われる、動ける武器のようなものだ。
人を助けるとは、人を殺すことであり、正義を守るとは、相反する正義を滅ぼすことだ。
宮廷魔導師になれば、きっと、もう抜け出せなくなる。
これからずっと、自分は魔導師として、一生この殺伐とした世界を生きなければならないのかと思うと、急に恐ろしくなったのだった。
そんな蟠(わだかま)りを抱えての就任であったが、歴代最年少で宮廷魔導師になったと聞くと、周囲は手放しで喜んでくれた。
かつて、流行り病で呆気なく死んだ両親も、農作業をさぼって駆けずり回っていたどら息子が、まさか貴族と同等の地位を得たなんて知ったら、飛び上がって驚いただろう。
ティアも、宮廷魔導師になったと言うと、おめでとうと、素直に賞賛してくれた。
「まあ、なんで俺が選ばれたのか、さっぱり分かんねえんだけどな。別に魔導師になった特別な理由があるわけでもないし、魔術の腕だって、俺より上のやつは沢山いる。よく考えてみりゃあ、上司の言うことを聞かなかったこともしょっちゅうあるし、本当、なんで俺なんだか。王様ってのは、気まぐれなのかねえ」
笑いながら言うと、ティアは、あっさりと答えた。
「そういうところじゃないかな」
「そういうところ?」
言っている意味が分からなくて、オーラントが首をひねる。
ティアは、にこりと微笑んだ。
「そういう、どんなときでも、ちゃんと周りが見えているところ」
照れ臭そうに下を向くと、ティアは続けた。
「普通、立派な役職に選ばれたら、自分はすごいんだって、誇らしい気分になるものでしょう? それも事実なのだから、良いと思うのだけど、オーラントさんはそれだけじゃなくて、色々考えてるみたい。本当に自分で良かったのかな、とか、他にふさわしい人がいたんじゃないかな、とか……。自分では気づいていないのかもしれないけれど、オーラントさんって、実はものすごく視野が広くて、自分のこと以上に、いろんな人のことを考えてるの。自分とは正反対の意見を持っている人のことも、全然違う立場の人のことも、ちゃんと見て、考えてる」
肩掛けをきゅっと掴んで引き寄せると、ティアは言い募った。
「国のために頑張ってくれているのに、失礼かもしれないけれど、魔導師や騎士の人達って、なんだかぎらぎらしていて、私、少し怖いの。でも、オーラントさんは違う。優しくて、話しやすいし、それぞれに合わせた接し方をしてくれる。どんな人の考え方でも、立場でも、とりあえず理解しようって気持ちで、話しかけてくれるの。きっと、そんなオーラントさんに救われた人は、沢山いると思うわ。私だって、そう。……戦うだけじゃなくて、気持ちも助けてくれる魔導師なんて、稀有よ。そんな貴方を宮廷魔導師に選んだのだから、エルディオ陛下は、見る目があるのね」
「…………」
「これからも、私みたいな独りぼっちがいたら、見つけて、助けてあげてね。……これは、誰にだって出来ることじゃ、ないと思うから」
眉を下げて微笑み、ティアは言った。
それを聞いたとき、オーラントは、しばらく何も返せなかった。
ティアは、純粋な気持ちで褒めてくれただけだったのかもしれないが、彼女の言葉は、彼女が思っている以上に、オーラントの胸を突いてきたからだ。
自分は元来、単純な男だったのかもしれない。
正義の味方に憧れていた、などという子供じみた動機で魔導師になって、ティアの言葉一つで、そんな自分の在り方を、肯定されたような気になった。
皆、心に秘めた信条があるから、血塗られた道を、歯を食い縛って走っている。
自分には、そんな大層な信条などないけれど。
──これからも、私みたいな独りぼっちがいたら、見つけて、助けてあげてね。
それが、自分が魔導師になった理由だったような気がした。
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