複雑・ファジー小説

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××異能探偵社××   完結。
日時: 2014/12/11 19:32
名前: るみね (ID: kzWZEwhS)

____おやぁ、ここらでは見ない顔だね。



  ___昼間の事件?あぁ、”異能探偵社”の連中が片付けてたね



_______え、”異能探偵社”ってなんだってだって?








    _____あんたおのぼりさんかい。

          じゃあ、教えてあげるよ。この地区の”はぐれ者”たちの話をさ






              ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞



 いらっしゃいませ♪
 不定期更新、長期逃亡の常習犯のるみねです。

 【GRIM】執筆中のくせに性懲りもなくまた立ち上げました。
 もう一つの【鬼語】の方向性に完璧につまって、おそらく【鬼語】よりもこっちを【GRIM】と同時進行にやっていく事になりそうです。


   ×××注意事項×××
■更新不定期。今度こそ続けるつもりですが保証出来ません。
■自己満足の塊。
■登場人物はかなり多い(予定)です。
■【鬼語】からキャラを流用してます。
■荒らし禁止!
■とある漫画の設定から触発されてやってます。
■こんな感じです。わかる人は元ネタ分かると思いますが、日本を舞台にした能力ファンタジー物を目指します!


              ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

■オリキャラ募集用紙 


■用語&登場人物 >>005 ←更新しました!

   ×異能探偵社×
篝火創平   >>008   根岸太一   >>009
暮葉紅魅   >>015   能登潤    >>018
赤嶺徹    >>019

     ×軍警×
白縫喜八郎  >>007   八千草雨季  >>010
零蝉路ヱン  >>026   相沢詩音   >>027

   ×亡霊レムレース×
伊田隈路佑  >>035   姫路彩    >>036
陣刀焔    >>039   瀬良悠真   >>044
輪状斑    >>053   水無月小夜  >>060


第壱話 [出会い]  >>002.>>004
第弐話 [異能探偵社] >>014
第参話 [初仕事]  >>023.>>029.>>031
第肆話 ["大鴉"]   >>033.>>042
第伍話 [真実]   >>048.>>051.>>055.>>057
第陸話 [櫻]    >>058.>>062
第七話 [___]  >>066
第釟話 [墓地]   >>070.>>073
第玖話 [セイギノミカタ] >>077
第拾話 [桃矢と櫻] >>081.>>082.>>083
+後日談     >>084

 エピローグ   >>085


              ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

Re: ××異能探偵社×× 【9/3更新】 ( No.72 )
日時: 2014/09/09 20:55
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)

>>風死さん

お久しぶりです!そしてありがとうございます!
いや、書いてる本人からしたらまさかとしか思えませんよ(汗
オリキャラは申し訳ないです。
感想はお時間がある時にでもいつでも^^

また時間がある時にでもお越し下さい♪

Re: ××異能探偵社×× 【9/3更新】 ( No.73 )
日時: 2014/10/05 14:37
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)

  第釟話_弐


「ぼ、牡丹さん……」

 目の前に現れた女性を桃矢は呆気にとられて見上げた。
 もう二度と関わってはいけないと決めた探偵社の気の強い女性は、そんな桃矢の顔を面白そうに見下ろしていた。

「なにぼさっとしてんだい。それともこれが夢だと思ってんの?」
「いえ……」
「ならさっさと立ち上がってこの部屋でな」
 倒れている見張りの向こうに開いているドアを顎でさす。
「でも、俺手錠……」
「それなら大丈夫」
 そういうと牡丹はおもむろに倒れている男の腰にあったナイフを取り上げた。
 大振りの軍用ナイフだ。
 それを手にすると笑みを浮かべて桃矢に近づく牡丹を見て桃矢の背筋に鳥肌が立った。
「え、え?」
「動くんじゃないよ?」
 振り上げられた腕を見て桃矢は思わず目を瞑ったが部屋に響いたのは金属の砕ける破壊音だけだった。
 おそるおそる目を開けると床と繋がっていた手錠の鎖が途中で見事に破壊されていた。

「やっぱ上手く切れないもんだね」
 刃こぼれしたナイフを一瞥して部屋の隅に投げる牡丹を見て改めて桃矢は恐怖を感じた。
 今牡丹はナイフを使ってほぼ自分の腕力のみで頑丈な鎖を叩き壊したのだ。
「……」
「なにぼーっとしてんだい!さっさと立つ!また捕まりたいのかい?」
 その言葉で桃矢は少し黙った。
 【亡霊】も間抜けではない。【亡霊】に楯突いてまでこのアジトに潜入し、あっさりと見張りを制圧出来るような人間がこの地区にいない事は知っている。
 そこで桃矢がいないとなれば確実に相手に気づくだろう。そして牡丹に助けられる事は即ち、【亡霊】と【異能探偵社】を完璧に対立させる事を意味する。
 しかし、躊躇していたのも牡丹の何の迷いも躊躇いも無い瞳を見るまでだった。

____この人は本気だ。

「いいえ!ないです」
 桃矢の言葉に牡丹は満足そうに笑った。
「なら動く!」
「ただ、牡丹さん。これ、肝心の手錠が繋がったままなんですけど……」
 確かに床には繋がっていないが両手は相変わらず手錠に拘束されて自由に動かせない。
「あぁ、それは無理」
「は!?」
「ナイフ欠けちゃったし……、か弱い乙女は物騒な武器とは無縁なんだよ」
 か弱い乙女の部分に激しい疑問を覚えるが突っ込む事は出来なかった。
 外廊下から爆発を聞きつけた構成員がやってきたからだ。

「桃矢のせいで時間がずれた……」
 理不尽な怒りを向けながら牡丹は鋭い目で足音の方を睨んだ。
「桃矢はすぐにこの部屋抜けて階段を下りな」
「え、ちょっと!これは?」
 ジャラっと音をたてて手錠を見せるが、
「それは下いきゃどうにかなるから」
「おい!てめぇら!」
 丁度部屋にたどり着いた男が目の前の光景に慌てて銃を向ける。
「急ぎな」
 牡丹はそれだけ言うと瞬間に体全体が黒い羽根に覆われ、その身体が弾けるように崩れると無数の小型の鴉に変化した。
「!?」
 目の前の光景に怯んだ男の横を牡丹であった鴉にまぎれて桃矢も驚きつつも急いで飛び出す。そして再びやってきた足音を避けるように人気のない階段を駆け下りた。
 小型の鴉は桃矢のそばをすり抜けるようにバサバサと飛んでいく。
 鴉に気づいた構成員達の喧噪や銃声が微かに聞こえてきた。

 この混乱のスキに逃げ出せってのか……。

 なんとなく察しがつきはじめたがそこで致命的な事に気づく。

「どこだ。ここ……」

 閉じ込められていた【墓地】から何も考えられずに必死に階段を駆け下りたので、桃矢は完全に現在地を見失っていた。
 元々このアジトは侵入者用に複雑な建物を更に複雑に建て増ししている。
 窓はあっても人は通れないような小さい物でとてもじゃないが出られない。
 しかも、この手錠だ。
 たとえ桃矢の事を知らない構成員がいたとしてもこの手錠を見られればすぐに怪しまれる。
 あせる桃矢に畳み掛けるように誰もいないはずの廊下に気の抜けた声が響いた。

「あれ?そこにいるのわ……」
「!!」
 桃矢が振り返るとそこには灰色の髪に厚着の少女が立っていた。

「輪状……」

 そう呟く桃矢に対して彼女、輪状斑は冷静だった。
「あんた、黒尾さんに【墓地】入れられたんじゃなかった?」
「……」
「なんかさっきから騒がしいし……、これもあんたのせい?」
 周囲から聞こえてくる銃声に斑は顔をしかめた。

「で、あんたはここから逃げるの?そう簡単にいけると————

 斑の言葉は不意に現れた気配の頭への強烈な回し蹴りで強制的に中断させられた。
 斑の身体が横に吹き飛び頭から壁に激突した。
 悲鳴も無く頭蓋骨から血を流す斑を目で追ったが、その回し蹴りの主に気づいた桃矢は固まった。

 不機嫌そうな鋭い深緑色の瞳で桃矢を睨んでいるのはのぶ子だったのだ。
「ったく、危なっかしいったらない」

「のぶ子……さん? なんで」
 桃矢の疑問の言葉に対してのぶ子はキッと睨みつけた。

「とりあえずこっち来い!」
 桃矢の疑問には答えずのぶ子は昏倒している斑をほうっておくと廊下の影になっている場所へ桃矢を引っ張った。
 そうすると桃矢の腕を強引に掴みポケットから取り出した鍵で手錠を外してくれた。
「な、なんで助けてくれるんですか……」
 見ず知らずの彼女に助けられ訳が分からない桃矢だったがのぶ子はイライラした声でかえしただけだった。
「仮にも古巣だろ!?道ぐらい覚えとけ。」
「す、すいません」
 容赦のない言葉に思わず謝る。のぶ子は桃矢の言葉にもあまり答えず呟くように愚痴る。
「ったく、バカヒトがお前を拾った時から厄介事になると思ってたんだ……」
「すいませ…………」
 謝りかけてとまる。桃矢にとってその単語は聞き覚えがありすぎた。
「もしかして……」
 その言葉にハッとのぶ子は桃矢を見た。
 桃矢の脳内でそののぶ子の鋭い深緑色の目にある人物が重なった。




「のぶ子さんって修兵さんの……?」
「…………違う」
 驚きで震える桃矢をのぶ子はイラッとしたように一瞥したのだが、次の瞬間その体つきが変化し始めた。桃矢と同じぐらいだった身長は伸びると骨格すら変わり、数回瞬きをすればそこに立っているのはいつものイライラした表情を浮かべている園村修兵その人だった。
 緩い服装をしていたためにそれほど服が窮屈というわけではないがそれでも落ち着かないようだ。
 しかし、それよりも桃矢の脳内は混乱しかなかった。

「あ、え!?え!!!なんで!?あぇ?」


 その様子に修兵は更に不機嫌そうに顔をしかめた。

「軍警の仕事で潜入捜査だ。文句あるか」
 確かに修兵は軍警から依頼を受けていた。
 その内容がこれか、と納得する一方でどうしても納得出来ないのは……

「さ、さっきの。あの、のぶ子さんは——」
 その名前に修兵はギロッと桃矢を睨んだ。しかし、すぐに深くため息をつく。
「……だから俺は嫌だったんだ」


「笑うなよ」
 殺気さえ感じる念押しに桃矢は愕愕と頷いた。
 修兵は少しためらうように黙っていたが決心を固めるとぼそっと呟いた。






「俺の異能の”男耕女織”は…………異能者の性別を入れ替える能力だ」
 


 少しの沈黙の後、桃矢は盛大に吹き出した。
「て、てめぇ。笑ッ——!!」
「わ、笑ってません!笑ってませんって!!」
 必死に取り繕うが修兵の殺気は収まらない。
 しかし、
 普段こんな様子で男っぽい修兵が異能でとはいえ女に変わるなど……
 必死に笑いを堪える桃矢の前で修兵は一人で後悔し続けていた。
「……だから嫌だったんだよ。俺は」

「敵のアジトで随分暢気ですね。あんた達」
 冷めた声でハッと桃矢も我にかえった。
 そこには先ほど修兵が吹き飛ばした斑がケロッとした顔で立っていた。
「いったいなぁ……、仲良くしてたのにいきなり頭蓋骨砕くとか非常識にもほどがあるよ?」
「殺すつもりの蹴りで平然としてるような奴に常識語られたくないんだよ」
 修兵は眉をひそめながら言った。

「無駄ですよ。修兵さん。輪状は殺せないんです」
「あ?」

「元のぶ子はそんなことも気づいてなかったの?」
 軽い言葉にあからさまに修兵の周囲の空気が冷え込んだ。
「私の”輪廻転生”の前で私に攻撃しても無駄なんだよー」


____ならその大事な異能が使えないならどうなるんだろうな


 不意に脳内に聞き覚えのある声が響いてきた。斑にまで聞こえているのかその顔色が変わる。
「徹!?」
 思わず叫ぶと脳内で徹の含み笑いが聞こえた。

「遅いぞ、徹!」
 ムッとしたように修兵が言った。


____姐さんが鍵開けるの遅れたんですよ


「あぁ……」
 確か予定が狂ったとか言ってたな……と桃矢は思い返す。

「ねぇ、何なの!?」
 唐突の謎の声に斑が混乱する。


____可愛い依頼人からそこの冬月桃矢くんを助けてほしいって言われちゃったもんでね

「依頼って……」

____桃矢が助けたあの子だよ

「……」
 
 数日前にチンピラに絡まれていた少女の事を思い出す。
 同時に少し離れた位置で派手な爆破音と衝撃が響いてきた。

「何!?」
 慌てる斑をよそ目に徹はわざとらしくため息をついた。






____ったく、感謝しろよ?探偵社の人間総出で動くなんて滅多に無いんだからな

Re: ××異能探偵社×× 【9/10更新】 ( No.74 )
日時: 2014/09/20 15:30
名前: リグル (ID: axyUFRPa)

*゜Д゜)*゜д゜)(*゜Д゜)オォォ...
とても白熱した展開ですね!
続き待ってます

Re: ××異能探偵社×× 【執筆中】 ( No.76 )
日時: 2014/10/01 22:20
名前: リグル (ID: Qx4JmDlZ)

*゜Д゜)*゜д゜)(*゜Д゜)オォォ...
文化祭の予定だとかでなかなか来れませんでしたが、ここまで進んでいたんですね
探偵社のみんなの余裕のある感じがとても好きですww

頑張ってください!

Re: ××異能探偵社×× 【執筆中】 ( No.77 )
日時: 2014/10/05 14:39
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)
参照: お久しぶりです。更新出来なくてごめんなさい!

  第仇話


 唐突な襲撃者にアジトは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
 派手な爆発と土煙ののち建物内に侵入した面々はその土煙に顔をしかめた。

「おぉ、派手にやったねぇ」
 潤が楽しそうに騒ぎを見る。
 そのすぐそばで無数の鴉が集まり巨大な翼に包まれると一瞬で牡丹が現れた。
 牡丹の鴉は身体の一部であり幻影だ。実態を持つ影の鴉と牡丹の身体そのものを鴉それぞれに変化させることができ、現在は身体の鴉は牡丹に姿を戻しているが周囲ではまだ影の鴉がアジトを飛び回っている。
 周囲にいるのは潤、創平。まだ本調子じゃない大地と連絡係の徹、太一は建物から少し離れた場所にいる。
 で、先に侵入し内部を混乱させ守りが崩れた隙に牡丹がアジトの入り口を破壊したのだが、

「爆弾なんて何処隠してたんすか」

 あまりに強引で派手な潜入方法にさすがの創平も顔をしかめた。
「軍警の手伝いした時にちょっとねぇ」
「……軍警がそんなもん一探偵社にくれる訳ないだろ」
「ぱ、パクったんすか!?」
____創平。姐さんに常識当てはめちゃ駄目。
「いいじゃない、こういう時のためでしょ」

「また随分堂々と侵入してくれたもんだな」
 苛立たしい声と共に三人の目の前に赤茶の髪を振り乱した陣刀焔が立っていた。
 混乱したと言ってもそこは裏街を仕切る有力組織だ。
 牡丹が影として放っていた鴉はほぼ狩られ、焔の背後にも数人の武器を構える男が立っている。
「お前らを裏切った犯罪者のために随分と大喪な事してくれんじゃねぇか」

「なぁに、あたしらは仕事してるだけだよ。その上でちょっとここのボスってのが気に喰わないから一発殴ろうと思ってさ」
 不敵な笑みと共に拳を固める牡丹に背後に立っていた創平や潤もつられて笑った。
「そんな事でちっぽけな帝都の探偵社が裏街トップの【亡霊レムレース】に喧嘩売るってのか?」
 呆れた声に創平は肩をすくめた。

「いやいやぁ、そんなの。あんたら潰しちゃえばいいだけのことっすよ、【ね】!!!」

 語尾の言葉とともに狭い通路を強烈な音の衝撃波が抜けた。
「ッ!」
 不意の圧に思わず焔が目を細めたがその風に押されるように飛んできた気配に気づいて急いで防御構えをとった。

 刃同士がぶつかる軋んだ音と同時に目の前に迫っていた潤と視線がぶつかった。

「あ〜ん、もうちょっとだったのに♪」
「可愛い子ぶっても全然惹かれネェんだよ」
 潤の異能”快刀乱麻”で刃に変化した爪を自らの腕から出現させた刃で受け止めた焔は薙ぎ払うようにして距離をとった。
 再び変化した牡丹の鴉にまぎれ創平も姿を消していて、焔の背後にいた男達も通り過ぎ様に吹き飛ばされたり、壁に叩き付けられたりして意識を失っていた。

「ったくよぉ、マジでなんのつもりだ」
「だから、さっき創平が言ってたじゃない♪」

「【亡霊レムレース】を潰してやるの」

 その声には相手にしている組織の危険性などまるで感じていないようで、思わず焔は吹き出した。

「OK、OK。お前らが冗談半分じゃなくて、たった一人の犯罪者のためにがちなのは分かった。でもよぉ、知ってんのか?」
「……なにを?」
 きょとんとする潤に焔は猟奇的な殺気を向けた。

「俺らの邪魔した野郎はタダじゃすまないんだぜ?」

「望むところ」


 不敵な笑みを浮かべ二人の刃が交錯した。











「で、桃矢は?」
 焔を潤にまかせ、牡丹と一緒に廊下を走った創平は少し開けた場所に出ていた。
「知らないよ。あんたが適当に走るから」
「ちょっと!」
 投げやりな態度に思わず抗議の声をあげるがその声で近くにいた構成員が集まってきた。
「おっとぉ、さっそくピンチ」
 予想外の人数にさすがに冷や汗が流れるが、
「あれあれ、あなたが侵入者さんですか?」
 殺伐とした空気に似合わない暢気な言葉。
 驚いて見るとそこには腰近くまである長い茶色の髪を垂らした女が立っていた。
 年齢はもしかしたら創平と同い年程かもしれない。その天然感が漂う少女と周囲の男達の殺気にどうもつながりが持てずとまどう創平だったが、次の彼女の言葉で顔を引きつらせた。

「ええっと、私姫路彩っていいます。さっそくですけど、死んでください!」

 同時に周囲の男達が取り出した拳銃が火を噴いた。

「ちょ、【わ】【わッ】【わ】!」
 悲鳴と同時に周囲に空気の塊を放ちその圧で弾丸の軌道のずらし直撃を免れる。
 そして牡丹をひきづるように逃げ出した。
「ちょっと、戦わないのかい?」
「ナイフ程度なら複数相手でもいいですけど拳銃はちょっとまってほしいっすよ!」
「情けないねぇ」
「じゃあ、姐さんがやってくださいよっ!」
「パス」
 そう言うと同時に牡丹の身体を羽が覆い、散けると十数話程の鴉に変化した。
「せいぜい掻き回しといで」
「【姐さん】!」
 抗議の言葉は塊となって壁を抉ったが虚しく牡丹は廊下を弾丸のような素早さで飛んでいった。
 あっけにとられる創平の耳が背後の怒号を捕らえる。
 明らかに先ほどよりも人数を増している声に創平はため息をついた。

「ここは戦術的撤退っすね……」

 時折飛んでくる弾丸の軌道をそらせながら創平の鬼ごっこが始まった。











「まさか、探偵社全員で!?」

 唐突に告げられた事実に桃矢は困惑する。
「なんで。俺にはもう関わるなって」


____あのな、お前が思ってる以上に俺らはタフなんだよ。いっただろ、昔は関係ないって


 徹の”以心伝心”を通して聞こえてきた大地の穏やかな声に桃矢の目頭が熱くなった。

____修兵もそうだよな?
「黙れ、怪我人が」
 おもしろがってる大地の声に修兵がイライラと言うが、
「……まぁ、依頼分は働くさ」
 突き放しているようでそっぽをむいている修兵の方を見る。

「とにかく、【亡霊レムレース】の連中には元から迷惑かけられてんだ。当麻といい軍警といい……。このさいだから【亡霊レムレース】ごと潰そうと思ってな」

「潰ッ……!?」
 あまりにあっさり紡がれた物騒な言葉に逆に桃矢は呆気にとられた。
「おぉ、うちの新人もらっていくしてもちゃんとけじめはつけないとな」
「…………」

「修兵さん……」
「あ?」
「……ありがとうございます!!!」
 深々と下げられる頭に修兵は慌てたようにそっぽを向いた。
「ば、馬鹿!礼はここ無事に出てからにしろ」
 あわてて桃矢を先導するように歩き出すがその耳が赤い。
「はいっ!!!」


「今は創平達がアジト中混乱させてる。幹部連中もおさえてるだろう」
「でも、ホントに潰すつもりなんですか」
「俺らは陽動だよ」
「?」
 意味深な言葉に首を傾げるがその疑問を口にするよりも前に背後から感じた殺気にあわてて振り返った。

「好き勝手やってるね、桃矢」

 氷のように冷たい言葉と少し離れた位置に立つ青い目の女性が言葉を吐き出した。普段は冷静にしている彼女だが今は桃矢と修兵に対して明確な殺意を向けている。

「水無月さん」

 トウヤにそう呼ばれて水無月小夜は薄い笑みを浮かべた。

「あんたの事はずっと嫌いだったよ。だから戻す事にも反対したのにね……」

 淡々と紡がれる言葉に桃矢は数歩後ずさった。
「まぁ、禅さんの決定は絶対だからね。それでもこの事態は許せない」
 サッと手を振ると小夜の両手がまるでクリスタルのような透明なガラス質なものに変化した。
 その様子を見て修兵が銃をかまえる。

「裏切り者は汚らわしい……!」


 小夜の重心が下がり、弾丸のような勢いで桃矢にむかって飛び出してきた。
「ッ!」
 必死にのけぞり、ナイフのように突き出してきた小夜の手刀を躱す。
 攻撃を躱され小夜の動きが一瞬鈍る。そこを狙い修兵の銃弾が小夜の足の関節を狙った。
 しかし、放たれた弾丸は小夜の足を貫通する事無く小夜の蹴りによってひしゃげた。
「おいおい、マジかよ……」
 平然としている小夜に思わず突っ込む。

 小夜はフッと笑うと身をひこうとしていた桃矢に容赦なく蹴りを叩き込んだ。
 肺を潰されたような衝撃で息を一瞬とまる。しかし咳き込む余裕も無く小夜の足払いで体制を崩されうつぶせに倒れた。
「ぐっ!」
「桃矢ッ!」
 修兵が助けに入ろうとするが小夜の靴が桃矢の頭にのせられたのを見て思わず足を止めた。
 肝心の桃矢も倒された衝撃で軽い脳震盪でも起こしたのか気を失っている。
 修兵の弾丸も正確に小夜を狙うが小夜の急所は全てクリスタルに変化され弾丸はヒビを入れる事すら出来ない。
「弾丸なんかじゃ効かない」

「あなた女に変わる以外の能力ないのね」
 小夜の言葉に修兵のこめかみに青筋が浮かぶが桃矢の頭にのせられた足でうかつに動く事が出来ない。

 微かな笑みを浮かべた小夜に気づいた修兵が防ごうと動くが、小夜の方が速かった。

「裏切り者には死を」
 桃矢の頸椎を狙った強力な蹴りが狙う。が、


 その足を小夜の足が離れた隙を狙って体制を直した桃矢の腕が抑えた。
「ッ!!!」
 想定外の動きに小夜の顔に始めて焦りの色が浮かぶ。




「はぁ、あんたのおかげで桃矢が寝てくれて、ようやくオレが出て来れた」
 違和感を感じる言い回しに小夜の表情が変わった。

「あんた………………」





「冬月……櫻……!」


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