複雑・ファジー小説

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××異能探偵社××   完結。
日時: 2014/12/11 19:32
名前: るみね (ID: kzWZEwhS)

____おやぁ、ここらでは見ない顔だね。



  ___昼間の事件?あぁ、”異能探偵社”の連中が片付けてたね



_______え、”異能探偵社”ってなんだってだって?








    _____あんたおのぼりさんかい。

          じゃあ、教えてあげるよ。この地区の”はぐれ者”たちの話をさ






              ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞



 いらっしゃいませ♪
 不定期更新、長期逃亡の常習犯のるみねです。

 【GRIM】執筆中のくせに性懲りもなくまた立ち上げました。
 もう一つの【鬼語】の方向性に完璧につまって、おそらく【鬼語】よりもこっちを【GRIM】と同時進行にやっていく事になりそうです。


   ×××注意事項×××
■更新不定期。今度こそ続けるつもりですが保証出来ません。
■自己満足の塊。
■登場人物はかなり多い(予定)です。
■【鬼語】からキャラを流用してます。
■荒らし禁止!
■とある漫画の設定から触発されてやってます。
■こんな感じです。わかる人は元ネタ分かると思いますが、日本を舞台にした能力ファンタジー物を目指します!


              ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

■オリキャラ募集用紙 


■用語&登場人物 >>005 ←更新しました!

   ×異能探偵社×
篝火創平   >>008   根岸太一   >>009
暮葉紅魅   >>015   能登潤    >>018
赤嶺徹    >>019

     ×軍警×
白縫喜八郎  >>007   八千草雨季  >>010
零蝉路ヱン  >>026   相沢詩音   >>027

   ×亡霊レムレース×
伊田隈路佑  >>035   姫路彩    >>036
陣刀焔    >>039   瀬良悠真   >>044
輪状斑    >>053   水無月小夜  >>060


第壱話 [出会い]  >>002.>>004
第弐話 [異能探偵社] >>014
第参話 [初仕事]  >>023.>>029.>>031
第肆話 ["大鴉"]   >>033.>>042
第伍話 [真実]   >>048.>>051.>>055.>>057
第陸話 [櫻]    >>058.>>062
第七話 [___]  >>066
第釟話 [墓地]   >>070.>>073
第玖話 [セイギノミカタ] >>077
第拾話 [桃矢と櫻] >>081.>>082.>>083
+後日談     >>084

 エピローグ   >>085


              ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞

Re: ××異能探偵社×× 【8/23更新】オリキャラ募集〆切。 ( No.66 )
日時: 2014/08/30 18:30
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)
参照: 久しぶりで文がとっちらかってます。そして強引です。

   第質話  [____]


 桃矢がいなくなって二日目。
 桃矢に関する事も【亡霊レムレース】に関するニュースもなく、探偵社の朝はあまり変わらなかった。

 いつものように潤と太一は仕事に出払い、大地も今日は仕事の予定だったが怪我のせいで出来ないため事務仕事に回っている。幸い当麻の能力もあって出血多量で若干の貧血気味ではあるが命に別状は無い。
 そうして桃矢がいなくなっても年長者は表立って顔には出さず仕事をこなしているが、それでも創平や徹といった面々はどこか集中力を欠いていた。

「創平、ぼけっとすんじゃない」
 なにか考え込んでいた創平に向かって牡丹の書類の束が飛んでいった。
「姐さん。一応それ依頼書なんで乱暴に扱わないでくださいよ」
「あぁ、悪いね」
 徹が諌めて、そう言うがまったく悪いと思っていない口調だ。やはり牡丹もどこかイライラしているらしい。


「それより、また狗木先輩いませんよ」

「あいつ、仕事入ってたか?」
「今日は無いはずですよ」
 紅魅が依頼書をめくりながら確認する。
「ならサボリか……」
 いつもなら溜息ぐらいだが、今日は珍しく大地のこめかみに浮かんだ青筋を見て近くに座っている徹はあわてて少し距離をとった。

「狗木ならここにいるぞ」
 驚いて皆がドアを見るとムスッとしている鷹人と一緒に軍警の大貫、詩音と、同じく軍警らしい若い男が立っていた。

「あらぁ、軍警の方が直接なんて珍しいですね。探偵社に来るなんて、また天下の軍警様には手の終えない事件依頼でしょうか?」
「てめ……」
 いつもとは違う敬語に笑顔を張り付かせて牡丹が言うがその笑顔に若干引く。大貫は牡丹の事が苦手なのだ。
 それでも気を取り直すと鷹人を指差した。

「この馬鹿が昨日から軍警に潜り込んでいろいろ探ってやがったからな。引き渡しに来たんだよ」
「なに言ってんです。俺は【亡霊レムレース】のアジトこと聞こうとしただけじゃないですか」
 鷹人の言葉に探偵社の面々の顔が変わった。

「それが問題なんですよ」
 詩音が嘆くが鷹人は全く聞き耳を持たないので大貫が助け舟を出した。

「ったく、いいか。【亡霊レムレース】は今俺らが追ってる獲物だ。てめぇら街の探偵風情が手を出していい組織じゃネェんだよ」
「そりゃ、聞き捨てならないね」
 牡丹の口調がガラリといつもの快活な物に変わった。

「その街の探偵風情に頼ってるのはどこのどいつだい?軍警さん?」
 挑発的な言葉に大貫よりもそばで詩音と立っていた男の顔が不愉快そうに歪んだ。
「あら、言ってる事間違ってる?白縫喜八郎さん」
 牡丹に名前を言われて男、喜八郎は更に不愉快な表情を浮かべたがすぐに温和な笑みを見せた。
「そんなことないですよ。”大鴉”の縁さんに知って頂けてるとは光栄ですね」
「心にも無いお世辞は結構よ?”諸行無常”のお巡りさん?」
 意味有りげに笑う牡丹の顔をみて、二人の間でただならぬ殺気が流れたが徹があわてて牡丹を遠ざけた。
 大貫も軽く喜八郎の頭を小突いて下げさせた。そして改めて鷹人を睨みつける。

「とりあえず、今回は【亡霊レムレース】に一切関わるな。分かったな?」
「園村先輩だけ借りといてよく言えるわね」
 紅魅がボソッといい、その言葉にさすがに大貫もたじろぐが聞こえなかった事にしたようだ。
「とにかく!俺は釘は指したからな!!」
 なんとも歯切れの悪い言葉だった。

「注意だけ言った。いいな、言ったからな?」
 よくわからない念押しに皆首をかしげ、あっけにとられて帰っていく大貫を見送った。

 




「大貫さん。いいんですか?あれ。あの狗木って人勝手に帰しちゃうし」
 喜八郎は不服そうだ。
「いいんだよ」
「それより早く【亡霊】の情報集めないと」
 詩音がそう言ってエレベーターのボタンを押したが、ふと大貫が足を止めた。
「どうしました?大貫さん」
「白縫。相沢ちょっと先行っててくれ」
「……はい」
 大貫の様子に少し首を傾げる。





 再び事務所のドアが開いた。
「今度はなんですか、軍警さん」
 創平が皮肉まじりに言うがその身体を牡丹が押しのけた。
 その表情は先ほどの表情とは違う好奇心と面白そうな笑みが浮かんでいた。
    、、、
「創平。依頼主さんに失礼だよ」
 牡丹の言葉に大貫は苦笑した。

 だからこの女は苦手なんだ____

「____ここからは俺個人としてなんだが……。嫌、俺でもないな」
 その言葉を合図にしたように三度事務所のドアがあき、そこには10歳ほどの少女が立っていた。
 みな知らない少女に首を傾げたが牡丹が思い出したように言った。
「あなた、病院に入院してた子だね」
 コクッと頷く。
「この子は?」
「……数日前に陸区で暴行事件があったの知ってるか」
 大地が暴れた次の日のニュースで確かそんな事を言っていた気がする。
「犯人はまだ捕まってないって言う奴ですね」
「【陸区】の路地裏で複数の男が重傷で倒れていた事件。この子はその事件の被害者で目撃者だ」
「被害者?」
 その事件の被害者はその男達だ。
「男達は彼女を攫おうとしていた人買い組織【黒足】の下っ端構成員だった。彼女は奴らに攫われそうになったところをちょっと前までここにいた餓鬼に助けられた。その時は逃げるのに必死でそいつらや冬月がどうなったかまでは分からなかったらしいが、結果はあれだ」
 男達は全員重傷。
 桃矢か__櫻がやったに間違いない。
「必死で逃げ切ったとか言ってたやつか……」
「逃げるどころか半殺しね」

「で、なんだ。この子だ」
 大貫の言いづらそうな言葉に首を傾げた。
 その言葉を補うように少女は息を吸い込むと牡丹に近づいた。
「ここはお願いすればなんでもしてくれるんですよね?」
 その台詞に探偵社の面々は反応した。

「七瀬ちゃんに聞いたの。アタシを助けてくれたお兄ちゃんの事。お兄ちゃんアタシが攫われそうになった時助けてくれたの。前に今の仲間の人に助けてもらったからって、見ず知らずの私を」
 その言葉に鷹人が唇を噛んだ。
「お兄ちゃん、仲間って言った時すごく嬉しそうだった。目の前に怖い人がいるのに。それになにかあったら探偵社を頼れって言ってくれて。なのに七瀬ちゃんがお兄ちゃんは悪い人たちといっちゃったって」
「自分でだけどな」
 創平が投げるように言ったが大地に睨まれて黙った。
 皆心の底では分かっているのだ。
「あの馬鹿の思考は分かりやすいんだよ……」
 徹がぼそっと呟いた。




「だから、あのお兄ちゃんを助けてあげて!」

 黙っている鷹人達に向かってしびれを切らした大貫が叫んだ。


「聞こえないのか? 依頼だ!」
 その言葉に創平が呆気にとられたように大貫を見た。

「大貫さん……さっき関わるなっていったじゃないっすか」

「言った。けどそれはお前ら個人としてだ」
「……」
「これはお前らの仕事だ」

 その言葉に皆フッと吹き出した。

「よし、仕事だ!」
 大地の言葉で静かだった事務所が動き始めた。

「じゃあ、くれぐれも軍の邪魔はするなよ。あ、あと。これ修兵の仕事先だ。役立つだろ」
 メモを残すとドアに手をかけた。

「お礼は言わないよ」
 牡丹の言葉に大貫は手を挙げる。
「俺はただ探偵社に行きたがってた市民を連れて来ただけだ」

「ただ、これであの借りはチャラだ」
「ちょっと足りないけど。いいことにしてあげるよ」
 牡丹の言葉に苦笑したが何も言わず事務所を出て行った。











「ったく。大貫さん、いいんですか?」

 外で待っていた詩音が早速聞いて来た。喜八郎はすでに帰っていない。
「なんのことだ?」
「あの被害者の子連れて来たあたりから察しついてますよ」
 とぼけたが詩音の言葉にフッと笑った。


「黒尾を恐れて万全になるまで動かないような腰抜けの上連中よりあいつらのほうがずっと上手くやれる」

「そうですかね?」

「……【シェイド】って組織の事知ってるか?」

「あぁ、裏街の最大組織で、もともと【亡霊レムレース】はそのなかの一部隊だったんですよね。でもその母体である【シェイド】は幹部連中が崩れて解体。その残党で出来たのが今の【亡霊レムレース】。それがなんですか?」

「その【シェイド】を崩したのは【異能探偵社】だ」

「…………」




「まぁ、今の若い奴らじゃないが実力は十分。【亡霊レムレース】が相手だろうと関係ネェだろ」
 大貫はそう言って笑うと煙草をふかした。



「……上はどうも【亡霊レムレース】を利用したいみたいだからな」
 そう呟いた言葉は詩音に聞かれる事無く消えていった。

××異能探偵社×× 【8/30更新】オリキャラ募集〆切。 ( No.67 )
日時: 2014/09/01 20:52
名前: 八朔 ◆KyMuo3h4jg (ID: AdHCgzqg)

失礼します!
そして初めまして八朔と申すものです。
入賞された作品は全部見させてもらっています←おい

改めて銅賞おめでとうございます!
この作品も実は連載された当初から見ていたのですがキャラの使いどころが絶妙ですごいなあと思っておりました!
銅賞を取ったのを機にコメントをしてみました!

最初からギャグも入れつつストーリーが進むのでとても読みやすいです。バトルシーンも見入ってしまいました^^


桃矢君の過去が少しずつ明らかにされてきたので更新される日々がすごく待ち遠しいです!
これからもがんばってください!


それでは、失礼しました!

Re: ××異能探偵社×× 【8/30更新】オリキャラ募集〆切。 ( No.68 )
日時: 2014/09/02 10:05
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)


>>八朔さん

いらっしゃいませ!

銅賞……?と思って確認したら
マジですか!
まさか賞が取れるとは全く思ってなかったので今小躍りしてます←

当初から読んで下さってホントにありがとうございます!!
お褒めの言葉、すごく光栄です。
これからもつたない小説ですがよろしくお願いします。




>>読者の皆様。


なんかこのたびカキコの夏の大会の銅賞をいただけたらしく、
投票して下さった皆様を含め読んでくれている方々ありがとうございます!!!

そろそろ学校が始まり、さらに就活もひかえているので
あまり積極的にこちらを更新できないかもしれませんが
今のうちにストックためて一部だけでも完結させられるように頑張ります!!!

これからもよろしくお願いします。

Re: ××異能探偵社×× 【執筆中。】銅賞ありがとうございます ( No.70 )
日時: 2014/09/03 20:57
名前: るみね (ID: 8hBaEaJR)


   第捌話 [墓地]


 【帝都拾参区】。

 広大な【帝都】の中で最も治安が悪く不安定な地区。
 無法者が入り乱れ、闊歩し、軍警もその治安を放棄しているこの地区では、全うな商店など無いに等しく、ボロボロの闇市や酒場の看板が下がり、薄暗い路地には人買いやら売人やら怪しい男たちや危険な空気を纏った人間がたむろしている。
 そんな暗い通りが並ぶ一つの道に我が物顔でたむろしていた男達は奥から響いて来た乾いた下駄の音に動きを止めるとスッと道をあけた。

 その間からこの空間に似合わない白い服を纏った黒髪の美人が現れた。透けるような白い肌は薄化粧で整った顔立ちが良く生えている。少し遅れて赤みを帯びた茶髪に燃えるような赤い瞳の男が続く。
「お帰りなさい、禅さん」
 水無月小夜が薄い微笑みで迎える。
「ただいま、小夜。__焔も」
 男、陣刀焔は軽く会釈を返した。その間も一行は歩みを止めず更に通路の奥に進んだ。
「ちゃんとできたの?」
「出来たに決まってんだろ!ちゃんと殺しといたって」
 小夜のからかうような言葉に悠真は頬を膨らませて言い返す。

「で、なんで路佑はダウンしてるわけ」
 焔が面白そうにボロボロの路佑を見つけると聞いた。その言葉に路佑の表情があからさまに不機嫌になった。
「なんだよ?やられたのか?誰だよ、探偵社のやつか?縁か?東郷か?園村か?暮葉か能登か……それとも」
 絶え間なく言う焔の言葉と名前に路佑の顔が更に不機嫌になるが、その一瞬を焔は見逃さなかった。
「ハッ、東郷か!あの甘い野郎にやられたわけ!?」
「…………」
「ちょっと、焔」
 さすがに小夜が諌めに入るが焔はまったく気にも止めていない。
「油断でもしたか?あいつの異能は知ってんだろ?」
「…………それ以上言ったら」
「やるか?」
 口を開いた路佑と焔の間で殺気が交差する。

「焔。それぐらいにしとけ」
 禅十郎の言葉にさすがに焔も両手を上げて路佑からはなれた。
 そこではじめて少し離れた場所を歩く桃矢を見つけた。
「……なんだ、お前もか。てっきり逃げ出したのかと思ったぜ?」
「……お久しぶりです」
 桃矢は会釈を返しつつも、久しぶりに訪れたこの空間に吐き気を覚えていた。
 周囲にいる血の気の多い男達は相変わらず、目の前に立っている以前は”櫻”の同僚として見ていた人間達も自分の異能を知った今では違う感情を抱いてしまう。
 今目の前で繰り広げられる殺伐とした会話も空気も。それは異能探偵社の人間達との会話で感じていた心地よさとは何処かが違う。

 黙った一行は入り組んだ路地を二度三度右折左折を繰り返し古い建物の前に立った。
 レンガで出来たその古い建物は周囲の高い建物に囲まれているようで一様に怪しい雰囲気を孕んでいた。
 【亡霊レムレース】の拠点だ。

 花が先頭に立って扉を開け、他の面々はその後に続いた。中の廊下は外見と違って簡素だが整えられた空間だった。最低限の明かりしかないが汚いと言う印象はない。
 そこをさらに進んで開けた空間に出た。
 【亡霊レムレース】の構成員達が拠点に使っている空間で、開けた工場跡地のようにも見える。
 そこにも数人の人間達が集まっており、彼らも到着した禅十郎一行を見ると立ち上がって敬礼した。

「あぁ、黒尾さんおかえりなさい〜」
「お疲れさまです」
 軽い調子で声をかけたのは色素の薄い灰色の髪、桃矢とあまり歳の変わらない少女だ。女性の割に高い身長と厚着のせいでかなり大柄に見える。【亡霊レムレース】で”桃矢”に対して普通の態度を見せた数少ない人間である輪状斑だ。
 斑の隣に立っているのは長い黒髪をひとつに結った女性だった。小柄であまり化粧をしていないが深緑色の瞳で禅十郎たちを見ると会釈した。桃矢には見覚えの無い人間なので、新入りらしい。


「とりあえず、桃矢は【墓地】にいってもらおうか」

 散らばっている資材のひとつに腰をかけた禅十郎はこともなげに言った。
「え……?」
「逃げた罰だよ」
 いつもと変わらない感情の読めない不敵な笑み。
 その台詞に焔がニヤニヤ笑った。
「まさか、大人しく帰ってくればなんのおとがめもなしで、あの探偵社の奴らも巻き込まずにいられると思ってたのか?」
 桃矢の心を見透かしたような言葉。
 【墓地】とは建物の最上階にある簡単に言えば監禁部屋だ。

「のぶ子。連れてけ」
 唖然とする桃矢をあざ笑うように斑と一緒にいた黒髪の女性に焔が言うが、少し考え込んでいた禅十郎はいいと言うと隅にいたチンピラの一人を呼んで桃矢を連れて行かせた。


「俺たち【亡霊レムレース】はあの探偵社の連中みたいなお人好し集団じゃないんだよ」

 何も言えない桃矢をひきづるようにして、桃矢は【墓地】に連れて行かれた。


「失敗も逃亡も同じだ」






























_____だから、お前は甘いんだよ。”桃矢”





「黙ってろ……」








 【墓地】に監禁されて三日目。

 建物の最上階と言っても窓なんて呼べる物は無く、小さな空気穴から一筋の光が差し込んでいるぐらいだ。むき出しの電球が下がっているので暗くはないが、部屋はくみ上げられたレンガをそのままにしたような冷たく固い部屋で落ち着こうにも落ち着けない。
 別に食事を取り上げられているわけではなく、日に二回。のぶ子が運んで来た。それがあるだけまだマシなようだが、両手に繋がる鉄の枷が余計に桃矢の心を沈ませた。
 そしてなにより、この薄暗く冷たい空間が桃矢の昔の部屋を思い出させた。
 なにか失敗をするたびに、桃矢の両親は幼い子供を容赦なく部屋に閉じ込めた。
 気に入らない事があれば、殴った。櫻も一緒に。
 そして____



____櫻は親を殺した


 フッと湧いた気配。
 禅十郎に話された事でもう桃矢ははっきり自覚していた。
 自分の中にいる櫻の存在を。
 そして、自分がやってきた記憶も。



 幼い頃。桃矢と櫻は双子として一緒に育った。

 桃矢達にはなにも問題なかった。しかし、両親は桃矢達に対して一切の愛情が無かった。
 彼らにとって桃矢は単なるストレスのはけ口でしかなかった。
 虐待、暴力、体罰。
 閉じ込められたくらい部屋。
 それでも桃矢は絶えられた。櫻が助けてくれたから。しかし、そうやってずっと桃矢をかばってきた櫻は絶えられなかった。


 ある日の朝。
 起きた桃矢がリビングで見つけたのは部屋中に飛び散る血とその血の海で倒れる両親、二人を見下ろす櫻の姿だった。
「…………櫻」
 強ばる声で問いかけた桃矢に櫻は満面の笑みを浮かべた。
「……大丈夫。桃矢を怖がらせる奴らはもういない」
 その笑みは今でも桃矢の脳裏にこびりついている。
 血の似合わない純粋な笑み。

 その後はもうほぼ”桃矢”の記憶には無い。
 禅十郎に拾われ、櫻にくっついて盗みから犯罪の見張りの手伝いまでやった。
 櫻が異能者であると知られるやその仕事はどんどん過激な物に変わっていった。そして、初めて桃矢も手伝った仕事。そこで櫻の記憶がぼやけている。
 禅十郎が言う言葉が本当ならそこで櫻は死に、桃矢のなかで”櫻”が生まれたのだ。

 それでも桃矢は気づかず、”櫻”として【亡霊レムレース】の仕事を続けてきた。すべては桃矢を守るために。桃矢は櫻は生きていると信じ続け、人格の主導権は”櫻”が握ってきた。
 しかし、あの小鳥遊家の暗殺と裏切り者である男の処刑で、初めて”櫻”が揺らいだ。

____俺には弟がいるんだ!あいつのためにも死ねないんだよ!!


 男が死に際に”櫻”に懇願してきた言葉。
 桃矢を守るために生まれた人格である”櫻”にその言葉は直にきた。その動揺で”櫻”は初めて桃矢に人格を奪い返された。
 ”櫻”を人格でなく本当に存在していると感じている桃矢に。
 【亡霊レムレース】を嫌う桃矢は"櫻"の人格を感じぬままに逃げ出し、そして……


____探偵社に拾われた。



「……」



____ったく、暢気な奴だよな。桃矢は。


 気配と響いてくる声。いままでは存在している相手と思っていても真実を知らされた今は平然と反応を返せない。


「もう消えてくれ……」


 皮膚に爪が食い込む程強く拳を握りしめてしばらくすると気配は消えていた。
 ため息をつくと軽くドアがノックされて施錠が外れる音がした。

「朝ご飯」
 握り飯と水の入ったコップのプレートを持って入ってきたのは、のぶ子だった。
 ここ数日桃矢に食事を運ぶのはもっぱら彼女の仕事だ。

「……どうも」
 言葉少なに返事をする。
「異能者なんでしょ?逃げようとか思わないの?」
 鎖をジャラジャラ言わせてプレートを受け取る桃矢にのぶ子が聞いた。面識があまり無いためか言う事が容赦ない。
「出来たらやってる」
 禅十郎に向かっていったあの異能を発言させようと何度も試みたがどうやって異能を使っていたのかも分からない。わからないものを使う事も出来ない。”櫻”はしきりに桃矢に向かって囁き続けたが人格が入れ替わる事が怖くてその声を無視し続けていた。

 ふぅんといったのぶ子はさっと腰を上げた。
「ま、出来てもそんなことしない方があんたのためね」
 禅十郎に知られる事を言っているのだろう。
「大人しくしてなさいよ、くれぐれも!」
 のぶ子は念を押すようにそれだけいうとさっさと部屋を出て行った。





「…………はぁ」


 ため息をつきながらもご飯をほおばる。
「探偵社の皆。大丈夫かな……」

 思わずそんな言葉を呟いてあわてて頭を振るとその考えを消した。
 もう自分は彼らと関わっては行けないのだと。


 と、不意にその耳が微かな音を捕らえた。

 カツ……コツ………

 なにかを砕くような叩くような本当に微かな音。
 別にネズミが走っているわけでも廊下に誰かいるわけでもない。しかし、その音は確実に聞こえていた。
 その音をたどると桃矢の対面のあの空気穴のあいている場所だ。
 よく見ればそこから見える小さな丸い視界にちらちらと黒い影が動いている。
 そしてその穴から何かがじっと桃矢を見ていた。しかし、それは一瞬ですぐに影は消えた。
「…………?」


 首を傾げたとたん。
 軽い衝撃と爆風とともに桃矢とは反対側の壁が崩れ落ちた。屋根に大穴が空き三日ぶりの太陽光が桃矢を照らして思わず目を細めた。それでなくてもレンガが崩れた埃やらで視界はかなり制限されていたのだ。
 驚いたのは桃矢だけではない。
 扉の外で見張っている二人の男も何事かと銃を構え飛び込んできた。
「なんだ!」
「なにやりやがった!?」
 聞いてきても知らない事には答えられない。

 男たちは油断なく煙で濁った視界の中銃を向けた。
 何かがいる。
 その気配の中現れた黒い影____

「……カラス?」
 気の抜けたように男が呟いた。
 土煙から現れたのは大型のカラスだったのだ。ヒョコヒョコと歩いている。
「シッシッ!」
 一人が手で追い払うような仕草でカラスを追い立てながら部屋に桃矢以外誰もいない事を確認する。
「敵襲か?にしても……」
 その時男はふと目の前の男を恐れるでもなくみじんも動かないカラスに違和感を感じる。
 まるで興味深い者でも見るように男を見上げるカラス。
 そして、カラスが無造作に翼を広げ、扉近くに立っていた男の顔色が変わった。
「離れろ!そいつは_______


 まるで何かの早送り映像でも見ているかのようだった。
 目の前にいたカラスがみるみる膨らみ、振り上げられた巨大な足の強靭な鉤爪が目の前にいた男の首をつかむと強引にその体をひねった。
 首の骨が折れる嫌な音と扉近くの男の撃った銃弾がその男の体にめり込む。
 そして動揺した男がもう一発を打つよりも先に、盾にした男の影からのびた拳が男を壁に叩き付けていた。

 脳震盪で昏倒する男を踏みつけたその人物を桃矢はあっけにとられて見上げていた。



「相変わらず間抜け面だねぇ」




 すっかり羽根が消え去った牡丹はまるで迷子を見つけた母親のような軽さでフッと桃矢に笑いかけた。










「迎えにきたよ」

Re: ××異能探偵社×× 【9/3更新】 ( No.71 )
日時: 2014/09/06 14:49
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: 7PvwHkUC)

お久しぶりです!
銅賞おめでとうございます♪ っても、るみねさんが入る可能性は普通に高いと思っていたのですが(笑
金賞の方の作品だけ……読んだことないのだが、面白いのかな?
さてと、予想通りオリキャラはキャンセルなされたのは良いのだが……
久しぶりに着たのに、感想がまた書けない。
すみません。


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