複雑・ファジー小説

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妖怪屋は嫌われ者
日時: 2014/12/15 22:29
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)


この日本という国はある時から、死と隣り合わせの国になった
1999年。突然、空には黒い渦ができ、
その中からは恐ろしい妖怪たちが現れた

いきなりのことで、人間はなにも抵抗をしないまま一週間が過ぎ、
多くの人間が命を落とした
しかし、その黒い渦は特別な力を持つ人間に封印された
今、その黒い渦はどこにあるのかわからない


「あなたたちの名前はなんですか」
「・・・・シロ」

シロと名乗った5人の人間は、のちに奇跡のシロと呼ばれた
この世界に降り立ってしまった妖怪を倒すシロボシという施設をつくり
妖怪たちを退治する活動を始めた

今、シロはどこにいるのかわからない


『妖怪襲撃とシロ』



「・・・これ、最近よくテレビでやるよね」
「妖怪襲撃事件の日が近いからだろ」
「ふーん・・・あ、次の仕事は?」
「地縛霊のやつ」
「あ、それ結構数いるやつ?」
「ああ、そうだな」
「マジ?なら早く終わらせて・・・また、おかし作って」
「わかったから、ほら、行くぞ」
「はいはい」


シロボシとは違う、独立した妖怪退治をする者
ソラボシ、通称妖怪屋



設定

紅刻 星 こうごく せい 女 15歳
ソラボシのリーダー 紋章のついた赤いペンダントをつける
得意技は魔法を使った直接攻撃

月形 空 つきがた そら 男 15歳
ソラボシの副リーダー 紋章のついた青いペンダントをつける
得意技は剣を通しての物理的攻撃

一風 音葉 いちかぜ おとは 女 20歳
妖怪に関する情報屋 使い魔を何匹も持つ 主にソラボシに協力する

ケセランパセラン ぐー、ちー、ぱー
猫又 ニーナ、ニーカ、ニースケ、ニーコ などなど

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.3 )
日時: 2014/12/17 18:01
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<次の日>

「ついた・・・」

空は快晴、雲一つない青空。自然いっぱいで空気がきれいだ

「場所、どこだっけ?」
「こっち」

今回向かうのは昨日もらったばかりの仕事
暁村(あかつきむら)という村での仕事だ
最近、村人が謎の死に方で何人も死んでいるらしい
シロボシの人が調査に何度も行ってるけど、原因はまだ不明みたいで

そうやってもたもたしているうちに、人はどんどん死んでいく
さっさと妖怪を成仏させないと・・・


20分くらい歩いただろうか、暁村と書かれた看板が見えた
木の門の様なところを通ると、古風な家々が並んでいる

「依頼主さんは、旅館の女将さんだっけ?」
「ああ。・・・あそこだ」

空の指さす先にはほかよりもかなり大きくて風情のある建物
まさに旅館って感じだ、いや、旅館なんだけど

「天津旅館(あまづりょかん)・・・」

横開きのドアを開けると、中も木造でできていて、いい雰囲気だ

「すみませーん、どなたかいませんかー?」
「はい、ただいま!」

遠くの方から声が聞こえて、若い女の子が走ってきた
歳は私たちと同じくらい。髪を結いあげて活発そうなかわいい女の子だ

「私たちはソラボシ・・・えっと、妖怪屋の者です」
「あ、それはそれは、遠いところからありがとうございます」

深々とお辞儀をされて、すごく対応に困った
それを悟ったように、空は口を開く

「女将さんはいらっしゃいますか?」
「あ、あの・・・私が、女将です」
「・・・え?」
「すみません、女将に見えないですよね・・・」
「っすみません、失礼なことを・・・」
「いや、全然気にしないでください!私自身わかってるんです。・・・
 申し遅れました。わたくし、女将の一宮朱里(いちみや あかり)
 この天津旅館の経営をしております」

「私は妖怪屋ソラボシの紅刻星です」
「同じく、月形空です」

「今回はよろしくお願いします。詳しい話はお部屋でよろしいですか」
「はい」
「では、こちらへどうぞ」

私たちは一宮さんの後ろを歩いてついていく
さっきの柔らかな笑い方も、歩く後姿も、立派な女将そのもの
すごいなぁ・・・私たちと、全然歳なんてかわらなくみえるのに

「ここが紅刻様と月形様のお部屋になります。椿の間です」

部屋の中に入ると、畳の柔らかいにおいがした
ふすまとかもあって、落ち着く雰囲気
周りを見回していると、一宮さんはお茶を出してくれた

「・・・それでは、さっそく今回のお仕事のお話なんですが・・・」
「はい、ぜひお願いします」
「・・・ことは、先月です。女の子が心臓をえぐられて死んでいました
 しかし、凶器も何もなく、胸の所だけがぽっかりなくなっていて、
 血は一滴も地面についていなかったのです」

血が、一滴も・・・?

「それがきっかけになったかのように村の者が次々と同じように死に、
 みんな今はおびえてほとんど外に出ることはありません・・・」
「死んでいた場所は全てわかりますか?」

「ええと、この地図に全て記録してあります」
「さすが、女将さんだ。先をよんでいらっしゃいますね」
「いえ、そんな・・・」

ああ、一宮さん、顔を赤くしてるよ
空は仕事の情報を聞く相手になると人が変わる
一宮さん、空はこんなにいい人じゃないんですよー・・・
いや、いい人なんだけど、本当の空を知っている身としては・・・
なんか、胡散臭いって言うか、なんていうか

「場所は・・・森の中ばかりですね」
「はい、森の中に入った者ばかりが死んでしまって・・・」
「なにか、おかしな言い伝えとかはありませんか?」
「いえ、特に何も・・・」

「そう、ですか」
「すみません、何も力になれなくて・・・」
「いえ、大丈夫です。ご協力ありがとうございます」
「こちらで宿泊費は負担します。どうか、助けてください・・・」
「もちろんです。しばらくお邪魔になります」

「ありがとうございます、なにかあれば、なんでも聞いてください」
「はい」

ふすまが閉められて、私はつめていた息を吐き出す
・・・どうも、あの固いしゃべり方は苦手だ

「なんか、気づいたことあった?」
「・・・とりあえず、森に関係するのは間違いなさそうだ」
「まあ、そうだよね・・・」
「星は?」
「うーん・・・この小さな村にしては、準備がいいなって思ったくらい
 とにかく、まずは交番に行ってみよっか」
「・・・そうだな」

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.4 )
日時: 2014/12/18 14:17
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

「すみませーん」

私たちは交番にたどり着き、ドアを開けた
中には誰もいない

「・・・留守か?」
「・・・どうしたの?」

奥の方からひょっこり男の子が出てきた
10歳くらいかな。少しはねた髪の毛がゆれていた

「警察の人はいるかな?」
「お姉ちゃんたち・・・誰?」
「私たちは妖怪屋のソラボシっていうの。私は星、こっちは空だよ」
「ふーん・・・」
「君、お名前は?」
「・・・高梨朝日(たかなし あさひ)」
「朝日くんね。警察の人、どこにいるかわかる?」
「・・・それ、僕のお父さん」
「そうなの?」

「でも、もういないよ。・・・おととい、死んじゃった、」
「っ・・・そっか、ごめんね、辛いこと聞いて」
「ううん・・・大丈夫だよ」
「資料とかある場所、わかる?」
「うん、わかるよ」
「ほんと?貸してくれるかな」
「いいよ、でも、おばあちゃんには内緒だよ」
「うん、約束。中入るね」
「・・・星、早くしてくれ」

「空も手伝ってよ」
「俺が、子供ダメなの知ってるだろ・・・」
「知ってるけど、いい子だって」
「そうかもしれないけどな・・・」

空は極端に子供が苦手だ
なんでも、話が通じないのが嫌いらしい
そんなの仕方ないじゃんって思うけどね

「星お姉ちゃん?」
「ごめんね、朝日くん。ほら、空も手伝って」
「・・・無理」
「無理じゃない!ほら!!」
「ちょ、おまっ・・・」

空の腕を無理やり引っ張って中に引き入れる
朝日くんから渡されたファイルを二人で分けて持った

「・・・空、お兄ちゃん」
「・・・なんだ」
「嫌いなの・・・?子供」
「・・・苦手なだけだ。」
「じゃあ、嫌いじゃないんだね?」
「まあ、そうだな」
「なーんだ」

朝日くんは嬉しそうに笑った
そっか、久しぶりなのかも。男の人と話すの

「朝日くんは、おばあちゃんと住んでるの?」
「うん。お母さんは僕が生まれてすぐ死んじゃったから」
「じゃあ、おばあちゃんと二人だけ?」
「うん」

10歳の子にはあまりにも酷な話だ
今は外に出ることもきっと許されていない
だから友達とも遊べないし、おばあちゃんもいないときはたった一人
・・・はやく、解決しないと

「空、メモリ移動し終わった?」
「ああ、終わった」

空はたった数分の間に資料をパソコンにうつしてくれてたみたいだ

「ありがとう、朝日くん。・・・空も」
「・・・ありがとうな」
「ねぇ、また来てよ。僕、一人で暇なんだ」
「・・・暇だったらな」
「約束だよ?」
「ああ」

・・・あれ、ちょっと克服したんじゃない?苦手
ほんの少し嬉しくなった

「・・・どちら様ですか?」

玄関の方に立っていたのは買い物袋をもったおばあさん

「あの、私たちは妖怪屋のソラボシという者で・・・」
「妖怪屋!?勝手に入って・・・朝日!お前が入れたの!?」
「あ、おばあちゃ・・・」
「違います。・・・俺たちが勝手に。申し訳ありません」
「勝手に入ってこないでください!・・・なにもみてないですよね」
「ええ、どうもすみませんでした」
「なら、早く出てって!!」

「・・・星お姉ちゃん、空お兄ちゃん!!」

朝日くんが大声で叫んだ

「また・・・遊びに来てね」
「・・・うん、わかったよ」
「またな」
「うん、ばいばい」

朝日君の顔は笑っていたけど、すごく悲しそうに見えた




「・・・空、なんで嘘ついたの?」
「・・・さっき、おばあちゃんが来たとき朝日に言われたんだよ
 たすけてって」

『・・・空、お兄ちゃん・・・』
『・・・朝日?』
『たす、けて・・・』


「あいつ、すごい震えてた。・・・この村は、なにかがおかしいんだ」
「・・・そっか」

さっきまでのどかに見えていた村が、急に恐ろしく思えてくる
なにかがおかしいっていうのは、この村に入った時から感じてたけど

・・・それにしたって、だ
あんな小さな男の子が、震えるほど怖がるものがある

なら、すぐにそれをなくさないといけない
私たちの、手で

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.5 )
日時: 2014/12/18 15:14
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

「うーん・・・」

私たちは今、旅館の部屋で殺された人の資料の確認をしていた
・・・正直、何も手掛かりはない
っていうか、謎が深まるばっかりって感じだ

殺される人の性別、仕事、年齢、身長・・・なにもかもが違う
同じことって言えば森の中に入った人が殺されているってことぐらい

「空、なんか見つかった?」
「なにも、ない」
「そっかぁ・・・資料を見ても何も見つからないし・・・」

そうなると無条件に聞き込みを進めるしかない

「・・・あー!!もうあたまこんがらがってきた・・・」
「落ち着けよ・・・」
「落ち着かせるためにお風呂入ってくる。ここ温泉あったよね」
「ああ、そうだな」
「じゃ、行ってきまーす」
「のぼせるなよ」
「分かってるってば!!」

私は道具と浴衣を手に取って部屋を出た




「ふー・・・すっきりしたぁ・・・・」

温泉には誰も入ってなくて、たった一人で堪能できたし
落ちつけるには十分すぎる
私は自動販売機からでてきたオレンジジュースを手に取った

・・・それにしても、朝日くんは何におびえてたんだろ
おばあちゃんが着た途端に怖いって言ってた
おばあちゃんが原因?でも、あの人もなんかわざとらしかったなぁ
なんか、怖がってるっていうか・・・

「なぁ、姉ちゃん」

肩に手を置かれて振り返ると、ちゃらそうな男の人が3人立っていた
うーわ・・・めんどくさそう・・・

「なんですか?」
「俺らとあそばない?一人でしょ?」
「はあ・・・あいにく、まにあってますんで」
「そんなこと言わないでさあ」

腕を強引につかまれる
いったいなぁ・・・この野郎

「シロボシって、知らない?妖怪を倒す仕事してんの」
「はあ・・・」

こいつらが、シロボシ?
こんな奴らが、妖怪を倒すって?

「困ってる人を助けんのが仕事なんだよね〜」

「困ってる人を、ですか?」

こんな、こんな奴らが・・・

「あなたたちが?笑わせないでください」
「・・・は?」
「あなたたちは救えないですよ、誰も。傷つけるだけで」
「なにそれ・・・ふざけんなよ!」

こぶしが飛んでくる
ああ、痛そう・・・でも、空のよりずっとましかな

よけようと思ったその時、ばしっという乾いた音が響いた

「・・・なに、してるんですか?」
「空、」
「何だよお前、この子の彼氏?」
「違います。けど、俺のもんなんで。手、出さないてもらえますか」
「はあ?」

「・・・星、行くぞ」
「あ、ちょっと・・・・」

手を握って、引っ張られる
でも乱暴じゃない、ただ力強かった

部屋に戻ると、私は口を開いた

「空、なんで」
「なにが」
「だって、お風呂。ここにいたんじゃないの?」
「気が変わったから。・・・お前、油断しすぎ」
「はあ?だって、あんな奴ら自分で倒せるよ」
「そういう問題じゃない。もっと自分の体を大切にしろ」
「えー?」
「星は男をなめてる。力だって強いし、さっきの奴だって本気になれば
 お前一人、簡単に抑えられるんだぞ」

「なにいってんの、人のことなめすぎ、」
「この腕、」

着物の袖をめくられると、さっき掴まれた部分が赤くなっていた

「・・・わかっただろ、もっと自分を大切にしろ」
「・・・うん、わかった」

ほんの少し不満だったけど、空が心配してくれてるのはわかった

「ほら、手当するから。そこ座れ」
「うん・・・空、」
「なんだ?」
「・・・ごめん、心配かけて。あと、ありがとう」
「いい。お前に大した怪我はなかったしな」
「うん、」

私は自分の赤くなった腕を見た
・・・だって、仕方ないじゃん。

「でもね、あの人達シロボシの人だったんだけど・・・
 簡単ににやにやしながら、妖怪を倒す仕事だって言ってた」
「・・・・」
「あの人たちは、自分の職業を自分がモテるためにしか使ってない
 自分は上の人間だって、偉いんだって、思わせたいだけで」

胸の奥がぐっと熱くなる

「どれだけの人がつらく思ってるかも、苦しんでるのかも、
 ・・・妖怪にだって感情があるってこと、考えてない
 そんな人に、人を救う仕事だなんて、言ってほしくないよ・・・」

ふとそこまで言って、視界が暗くなった
私の腕に空の手が伸びて包帯を巻き始める

「そういう奴がいるなら、なおさら俺たちが解決しないとな」
「・・・うん」
「大丈夫、星は正しいよ」

そこまで聞いて、ぼろぼろと涙がこぼれた

「星?おい、なくなよ・・・」
「空、変だよ。なんでやさしいの、こういう、ときばっかりっ・・・」
「なんだそれ、いつも優しくないみたいに言うな」
「だって、そうじゃん」
「はあ?」

「・・・空の馬鹿」
「ガキか、お前」
「ほーら、怖くなった」

涙を流しながら、私は笑った

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.6 )
日時: 2014/12/19 22:26
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<次の日>

私たちは旅館の着物からいつもの服に着替えた
・・・もちろん、私が着替える時は空を追い出しましたけど

うん、やっぱこの服だよね。落ち着くし
あらためて、なれたこの服のよさを実感する

「準備できた?」
「ああ」

「お出かけですか?」

振り向くと、女将の一宮さんがいた
いつも通りの温和な笑顔を浮かべている

「はい、今日は森の方へ行ってみようかと思って」
「そうですか。資料にも情報がないんですよね・・・」
「なので、情報集めです」

「お気を付けください。・・・ところで、腕は大丈夫ですか?」
「・・・はい、手当もしてありますし」
「ならいいんですが・・・あまり無理をしないでください」

「お気づかいありがとうございます。それでは、これで」
「いってらっしゃいませ」

旅館を出ると、来たときと同じ、雲一つない青空が広がっていた
すっと深呼吸して、私は口を開いた

「うーん、やっぱりしっかりしてるよね。一宮さん」
「そうだな。・・・ただ、おかしなこと言ってたのが気になったけど」
「え?」
「よく考えてみろ」

「・・・・・・・あ、」
「わかったか?」
「そっか、確かに・・・おかしいね」

どうして、あのことを一宮さんが知っていたのかが謎だ
聞いてた?でも、もしそばにいたら気づく自信はあるし・・・

唸って考えていると、遠くの方からたくさんの人の声が聞こえてきた
頭に意識が行き過ぎて、いつの間にか耳をすませていたみたい

「・・・空、向こうで何かあったっぽい」
「・・・まさか、誰かまた・・・」
「急ごう、走る」

そう宣言してから、私は走り出した
後ろからは諦めたような溜息が聞こえて、それが足音に変わった


どのくらい走ったのか、人ごみが見えてきた

「ちょっと、通してください!」
「妖怪屋です、どいてください」

人ごみをかき分けると、見覚えのある人が倒れていた

「っ・・・あの、人」
「朝日の、」

その倒れている人は、昨日見た朝日くんのおばあさんだった
駆け寄ってみると、心臓がえぐられている
左胸の所だけポッカリなくなって、地面が見えていた
それなのに血が出ている様子はない

「なんで、・・・」



「・・・おばあちゃん・・・・?」

聞き覚えのある声
まさかと思って振り返ると、パジャマ姿のままの朝日くんがいた

そうだ、この場所は朝日くんの、あの交番のすぐ近くで・・・

「おばあちゃん・・・」

フラフラと近づく朝日くんを、空は止めた

「朝日、」
「・・・はなしてよ、空お兄ちゃん!!」

朝日くんの肩をつかむ空の手には、少し力が入ったみたいだ

「朝日くん、」
「はなせよっ!おばあちゃんがっ・・・倒れてるだろ!なあっ・・・
 はなせってば!!」

「朝日!」

空が大声で叫んだ
朝日くんの体がびくりと震え、周りの人もどうなることかと息をのむ


「・・・見なくていい。今は、見なくていいんだ」

そういって、朝日くんを抱きしめた

「・・・うっ、ぇ・・・やだよっ・・・おばあちゃんっ・・・
 おばあちゃんっ、なんで・・・なんでっ・・・」

ボロボロと涙を流す朝日くんは一段と小さく見えた
私は無意識に唇をかんでたみたいだった

・・・この子の涙を、無駄になんてするわけにはいかない


ふと、私は周りを見回した。
みんな苦しそうに顔をゆがめたり、ふせたりしている
でも、ほかと圧倒的に違うそれに、私は思わず声を出していた


「・・・なんで、なにもしないの?」

その言葉に、村の人はより一層苦しそうに顔をゆがめた

だって、村の人が死んだんだよ?
何度も何度も、これと同じ方法で死んでいった人がいて、
きっとこの中にはその被害者の家族もいて、

何かせずにはいられない、はずなのに。


みんな・・・何かにとらわれているように口を開かず、ずっと黙ってる

・・・これは、村の一部の問題じゃない
被害者と、加害者だけの範囲の問題じゃなくて

この村、全体がからんでる・・・?

そうだ、この村は・・・暁村はおかしい





なんとなくが、確信に変わる瞬間だった

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.7 )
日時: 2014/12/20 22:13
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

「・・・落ち着いたか?」
「うん、大丈夫・・・」

あの後、葬儀屋の方に後のことを任せて、現場を離れた
なにより、朝日君がすごく辛そうだったし、あそこにいるのは酷だ

そして今は交番の奥の朝日君の住む部屋で休んでいる
朝日君は随分取り乱していたけど、今は随分落ち着いているみたいだ


「・・・朝日くん、教えてくれるかな。今この村で起こってること」
「・・・でも、僕は、」
「大丈夫。絶対解決してみせるから」
「・・・うん、わかった」

朝日君は少し深呼吸をして、口を開いた

「一ヶ月くらい前から、かな。夜中の2時・・・
 村の大人が集まって話し合いをしてたんだ。あの天津旅館で」
「天津旅館で?」

「でも最近はこの近くでやってるんだ。今は使ってない旧校舎の体育館
 シロボシっていう人がきたから・・・」
「なるほどな、見つからないようにしてたのか」

「僕、こっそり見に行ってたんだ。話し合いって言うより・・・
 村の大人たちは話をただ黙って聞いてるだけで。

 でも、抵抗して抗議する人も一週間に何人かいたんだ
 そしたらその抵抗した人が次の日には必ず森の中で死んでて・・・

 情報を漏らすな、逃げることも許さないし、抵抗もするな。
 破った奴は殺すって・・・集会が終わる前に必ず言ってた
 毎日、毎日・・・」

朝日くんのお父さんが殺されたのは約3日前
こっそり朝日くんは集会を見に行ってたってことは・・・
お父さんが抵抗したところも見てたんだ
そして、次の日お父さんが殺されていた・・・

「・・・怖かっただろ、お前」
「・・・え?」
「その集会を見てて。お父さんが抵抗したのも見たのか?」
「・・・うん。その後、お父さんは殺されちゃった・・・
 すごく、怖かったけど、妖怪屋の人に報告しないとってわかってたし

 ・・・シロボシの人には取り合ってもらえなかったけど、
 空お兄ちゃんと、星お姉ちゃんは聞いてくれたから、」

朝日くんは目にたくさんの涙をためていた
それでも、それをこらえて、話を続けてくれた

「・・・みんな、もう逃げられないって思っちゃってたんだよ
 ほんとは昨日も行こうとしたんだけど、おばあちゃんがくるなって

 ・・・気づかれてたんだ、おばあちゃんには。
 おばあちゃん、すごい真剣で、だから昨日は行かなかった

 けど・・・そしたら今日は、おばあちゃんが死んじゃってて、」

溜めていた涙がこらえきれずにこぼれだす
ぼろぼろと涙をこぼす朝日くんの手をただぎゅっとにぎっていた

たぶん・・・おばあちゃんが殺されたのは朝日くんの変わりだったんだ
きっと、おばあちゃんが朝日くんを守るために殺された
・・・もしそうなら、朝日君が危ない


「・・・よし、空、音葉さんに連絡いれよう」
「音葉さんにか?」
「ここは危ないし・・・人質とか、とられたらしゃれにならないよ」
「・・・そうだな」

「え・・・?」

困惑する朝日くんと、私は目を合わせた

「朝日くん、ここは危ないから、私たちの知り合いの所に預けたいの
 それでもいいかな?」
「星お姉ちゃんたちは・・・?」

「私たちは、まだすることがあるから」

朝日くんはまだ不安そうで、視線を空にうつした

「空、お兄ちゃん・・・」
「・・・明日の昼にはかえってくる。だから、安心しろ」
「・・・うん。わかった!」

空の言葉を聞いて、安心したみたいだ
表情に出ていた不安が消えた


音葉さんに連絡を入れてから、約三時間後
音葉さんがやっと到着した
朝日くんのまとめた荷物を渡し、朝日くんもまかせる

「空お兄ちゃん、星お姉ちゃん」
「なに?」
「・・・村の人、助けてあげて。みんな、優しい人たちだから、」
「・・・もちろん!」
「安心しろ、絶対助けて帰ってくる」

「うん!」


電車が出発して、私たちは旅館へ戻る道を歩いていた

「空、もう子供大丈夫じゃない?朝日くんにめっちゃ好かれてるし」
「朝日は、まあ・・・別だろ」
「なにそれ。・・・このあと、準備どうしよっか?」

「・・・お前、いい案あるなら先に言えよ」
「え、なんでわかったの?」
「顔に出すぎ」
「うそでしょ?」

顔をぺたぺたと触る
違う、きっと私がわかりやすいんじゃなくて、空がエスパーなだけだ
きっと、いや、絶対そう

「それで?いい作戦って言うのは?」
「えーとね・・・」


その案を話すと、空は顔をしかめた

「本当に大丈夫なんだろうな」
「まかせてよ、やらないわけにいかないしね」




私たちは朝日くんの準備を手伝っている時、あることを聞いていた

「朝日くん、その集会を進めてたのって・・・話してたのは誰?」
「え・・・、」
「お前が言ってたってことは言わない」



「・・・すすめてたのはね、」


その後の言葉は・・・


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