複雑・ファジー小説

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妖怪屋は嫌われ者
日時: 2014/12/15 22:29
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)


この日本という国はある時から、死と隣り合わせの国になった
1999年。突然、空には黒い渦ができ、
その中からは恐ろしい妖怪たちが現れた

いきなりのことで、人間はなにも抵抗をしないまま一週間が過ぎ、
多くの人間が命を落とした
しかし、その黒い渦は特別な力を持つ人間に封印された
今、その黒い渦はどこにあるのかわからない


「あなたたちの名前はなんですか」
「・・・・シロ」

シロと名乗った5人の人間は、のちに奇跡のシロと呼ばれた
この世界に降り立ってしまった妖怪を倒すシロボシという施設をつくり
妖怪たちを退治する活動を始めた

今、シロはどこにいるのかわからない


『妖怪襲撃とシロ』



「・・・これ、最近よくテレビでやるよね」
「妖怪襲撃事件の日が近いからだろ」
「ふーん・・・あ、次の仕事は?」
「地縛霊のやつ」
「あ、それ結構数いるやつ?」
「ああ、そうだな」
「マジ?なら早く終わらせて・・・また、おかし作って」
「わかったから、ほら、行くぞ」
「はいはい」


シロボシとは違う、独立した妖怪退治をする者
ソラボシ、通称妖怪屋



設定

紅刻 星 こうごく せい 女 15歳
ソラボシのリーダー 紋章のついた赤いペンダントをつける
得意技は魔法を使った直接攻撃

月形 空 つきがた そら 男 15歳
ソラボシの副リーダー 紋章のついた青いペンダントをつける
得意技は剣を通しての物理的攻撃

一風 音葉 いちかぜ おとは 女 20歳
妖怪に関する情報屋 使い魔を何匹も持つ 主にソラボシに協力する

ケセランパセラン ぐー、ちー、ぱー
猫又 ニーナ、ニーカ、ニースケ、ニーコ などなど

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.33 )
日時: 2015/08/20 23:11
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

「・・・・こんにちは」
「っ、」

彼女は何事もなかったように私に向かってそういった
それが当然とでもいうように
周りはがれきと、血のにおいと、どす黒い魔力であふれているのに


「・・・ソラボシ、」
「・・・誰?あなたは・・・」
「私は、アカボシの朱音(あかね)。初めまして。紅刻星さん」

朱音と名乗った彼女は、血だまりを踏みながら私の方へ歩み寄る
危険だと頭の中では警報が鳴り響いていた
この状況を見れば、そんなことは一目瞭然

・・・けど、動けない
あまりにその態度が普通で、自然すぎて、警戒に体がついていかない


「星!!」

背後から突き動かされるような叫び声
その声を聞いてはっとした

「空、」
「・・・あーあ、もっとあなたと話したかったのに」

彼女は残念そうにそういって、自分の髪の毛の先を指先でいじる
こんな仕草だけ見れば、本当に普通の女の子なのに


「また、今度。・・・ばいばい」
「待って!」
「・・・なに?」
「なんで、こんなことするの?」
「なんで?・・・そんなの、シロボシに聞けば分かるよ
 私たちは、可哀想な妖怪にかわって復讐してるの」

「復讐・・・?」
「あなたには、わかるでしょ?」


そういうと、朱音は一瞬で消えてしまった
妖怪にかわって、復讐をしている・・・・・

「星、大丈夫か」
「・・・大丈夫だよ。これから先は相当大変だろうけどね」

「なんで・・・こんな、」
「それは、トップの方に聞けばいいんじゃない?」

月の視線の先には、がれきをどかして立ち上がる白井の姿があった


「白井部長、」
「いったい何が起こっているんですか、さっきの奴はいったい、」

「・・・それは、ほかのA級・S級隊員が戻ってきてからだ
 そこですべてを、話そう」


白井の目からは険しさがにじみ出ていた


「み、んな・・・いや、いやだっ・・・」
「明里・・・」
「死なないで、消えないでっ・・・・お願いだから!!」

ぶわっ!!

「っ!?」
「な・・・・」

明里の周りから緑色の波紋が勢いよく広がる
それが収まったと同時に、明里の体は倒れかかり、朝日が抱えた
今の・・・・


「おい、見ろ」
「空?」
「・・・傷が、治ってる」
「・・・空、やっぱり、明里も、」
「そうかもしれない。・・・本人に聞いてみないとわからないが」

「星姉ちゃん、空にいちゃん!明里は・・・」
「・・・大丈夫、気絶してるだけだよ」
「とりあえず、けが人を運ぶのが先だね」

「おい、お前ら二人も手伝える範囲で運ぶぞ」


空がそういっても、愛と太一はただただ茫然としているだけだった
愛に至っては涙を流し、二人とも放心状態だ

私は二人に歩み寄って、座り込む二人と同じ目線になるようしゃがむ


「愛、太一」
「・・・・・」
「・・・ぼけっとするな!!」

私が大声で叫ぶと、二人は体を大きく揺らした
揺れる瞳が、私の姿をやっととらえる

「そうやって放心してたら、何かが変わるの?何かよくなるの?
 ・・・違うでしょ。そんなこと、一番二人がわかってる」
「・・・・」

「そんな暇ないよ。今私たちのすることは、感傷に浸ることじゃない
 ・・・怪我している仲間を安全な場所に運ぶこと。違う?」
「・・・ああ、そうだな」
「・・・ソラボシにそうやって言われるなんて」

太一と愛はすっと立ち上がって、動き出した




黙ってて変わることは何もない
必死になって動く一時間と放心したままの一時間
どっちも同じ一時間だと、教えてくれたのはお父さんだった

変えないと、今すぐに
切り替えをするための方法をくれたのもお父さんだ


「あなたなら、わかるでしょ?」


その言葉がとても気がかりだとしても、今やるべきことがあるなら
私はやるべきことをやることを取る

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.34 )
日時: 2016/03/12 16:32
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

ボロボロになってしまったシロボシの本部。
その中の地下だけが、何の被害もなくすんでいたため、私たちソラボシと愛、太一は白井の後ろについていった。

知りたいことは山ほどある。
アカボシとはいったいなんなのか、朱音は何者なのか
・・・考え出したらきりがない。

「ここだ。」

白井はある扉の前に立ち止まり、白い石に手をかざすと扉が開いた
その瞬間中にいた人たちが全員立ち上がる

うわ、という声がすぐ隣から聞こえた
そして、全員が息のぴったり合った礼。
・・・ここは軍隊かなにかですか、と問いたくなるほどのものだった

「君たちもそこに座りなさい」

白井が低い声色でそう告げた
その視線の先にはちょうど人数分のイス
会議する時のように楕円型になっているから、端の二人はシロボシと隣り合うことになる

そっと隣に愛が入り、目線がからむ
愛が目配せして、周りを見るように促した


・・・ああ、なるほどね
ソラボシをみるシロボシの隊員の目がいいものではない
太一も向こう側の端に座ってくれているところを見ると、気遣ってくれたようだ

席に着くとき、隣の明里の手がかすかに震えていた
ついさっき目を覚まして、本調子じゃないときにこの状況は心にも体にも辛いんだろうな・・・


そっと手を握ると、明里は私を見て小さく口を動かした

『ありがとう』

それに私は微笑んでかえした


「それでは、始めようか。まずは改めて自己紹介からだな
 私は白井部の部長、白井冬牙だ」

「赤間部の部長、赤間カオル(あかま かおる)です。
 以後お見知りおきを」

「私は蒼野部部長、蒼野香月(あおの かづき)。初めまして」


一応トップはこの三人らしい。
けれど、その差は歴然で、ああ、やっぱりトップはこの人だと白井に対して思ってしまうのは悔しい限りだ

「今回、シロボシ本部が襲われたのは諸君も知っているだろう。
 襲ったのはアカボシ所属の朱音」

スクリーンに朱音の写真が映し出される
歳は私たちと同じ15歳。そうとうな魔力量、技術を兼ね備える
・・・それだけしか、わかっていないみたい


「アカボシについての説明を月影真、頼む」
「はい」

真が立ち上がる
・・・そっか、真はこのことで依頼を受けてたんだ

「アカボシは現在5人の組織で、リーダーは朱音。
 請け負う仕事は妖怪屋狩りです」

妖怪屋狩り・・・!?
私たちがしてることの反対だ

「近々何か動きがありそうだと、今日報告に来たらこのありさまで」
「そうか。引き続き調査を頼む」
「はい」

「さて、ここで本題だ。君たちを集めたのはほかでもない。
 A級、S級隊員の君たちにアカボシを倒すのを協力してもらいたい
 派閥関係なく、ここは協力し、助け合ってほしい」

「「はい!!」」


「そして、このチームに参加してほしいのがソラボシ、君たちだ。
 何度か隊員と対戦するよう仕向けたのも、力量をはかるためだった」

なるほど、だから愛や太一、西田さんも中途半端に終わらせて・・・

「妖怪屋狩りが向こうの目的ならば、いずれソラボシも狙われるだろう
 ここで協力して、アカボシを倒さないか」


「・・・いいですよ。ただし、条件があります」

私の言葉に、白井は目を細めた

「・・・なんだ」
「妖怪を殺さないと誓ってください。どこかに捕獲して集めてくれさえすれば、私たちが成仏させます」

ざわめきが起こった
シロボシには妖怪なんて、と考える人が多いって聞いてたからこの反応は想定内だ

私は白井の目をじっと見据えた
冷たくてさみしそうな目だ
前までは気が付かなかったけど、それは装っているような気がする
・・・昔何かあったんだろうか


「・・・いいだろう。そのための研究を進める」

また、ざわめきが広がった
シロボシの内部の割れ目、亀裂がこの会議の中でも顔をのぞかせる


・・・寂しい組織だな、と無意識に感じていた

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.35 )
日時: 2016/03/13 14:21
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

「星」
「ん?どうしたの?空」

会議が終わってから、私たちはシロボシの立て直しに協力することになった
いつもどおり、空はまっすぐな目で私を見る

「・・・なんで協力するって決めた?」
「え、だめだった?」
「いや、そうじゃない。・・・ただ、お前は断ると思ってたんだ」

「・・・あのね、私、朱音と少し話したの」
「・・・そうか」

あれ、驚かない・・・?


「意外。もっと驚くと思ってたのに」
「なんとなくそんな気はしてた」

出た、エスパー発言
どうしてこうも見抜くかな・・・

「・・・朱音と目を合わせた瞬間、ひるんじゃったんだよ
 怖いって思った。・・・あんなの、今までなかったのに・・・
 戦う前から怖いなんて」
「・・・・」

「わけわかんないこと言われるし、心の芯から冷えてそうな気がして、
 びびった」
「じゃあ、どうしてだ」


「・・・知りたかった。朱音のこととか、アカボシのこととか。
 私たちはいつか、その壁にぶち当たるときがくる
 ・・・どのみち、やらなきゃいけない気がしたんだよ」

「・・・星がそういうってことは、油断できないな」
「そうだよ、手なんて抜いたらやられちゃうよ」


そういってから、しばらく模擬戦をやっていなかったことに気付いた
それは、空も同じだったみたいだ

「・・・今度さ、模擬戦やらない?久しぶりに」
「ことが収まってからだな」
「絶対負けてなんかやらないから」
「あんまり本気出すなよ」

苦笑いで空は言った
確かに、あんまり暴れるとまわりへの被害が大きくなる
でも、空相手に本気を出さないことの方が難しいだろう

となりで、空が立ち上がった
仕事に戻ると言いたいんだろう、そのことくらいはすぐにわかる
何年もずっと隣にいたんだから

ああ、そういえばこういうのって阿吽の呼吸っていうんだっけ
なんか、かっこいいかもしれない
そんなくだらなくて、子供っぽい考えが浮かんでいた



「あー・・・疲れた・・・」
「そうだな」
「空ー、おかしー」
「馬鹿なこと言うな、作れるわけないだろ」
「だよねー・・・。はあ・・・・」

大きなため息をつく
さっきまで無心になって作業を続けていたけれど、おかげでこの疲労感
代償が大きすぎやしないだろうか

「真はどっかいなくなってるし・・・」
「アカボシの情報収集だろ」
「っていうか、どこからそういう情報手に入れてくるのかな」
「知るか、あんな変態帰国子女」

空はそう言い切ってから、身震いした
ハグのことを思い出したのかもしれない
その様子に苦笑いしたときだった


「っ!」
「・・・どうした」
「・・・ちょっとトイレ」
「あ、おい!」


走りだした私の耳には、たしかに空の戸惑いの声が聞こえていた
当然、トイレじゃない
朝日と、明里の声がしたんだ。それも普通じゃない

言い争ってるみたいな・・・・


声の聞こえた方へと向かう


「裏切者。よくもどってこれたな」
「ソラボシなんかに入りやがって」
「・・・そんなんだから、明里はシロボシをやめたんだ
 明里は、悪くない。裏切者なんかじゃない!!」
「うるせぇなぁっ!!」

会話がクリアになってくる
あと、もう少しだ。間に合え!!

角を滑り込むようにして曲がると、長い脇道の先に人影が見えた
倒れこむ朝日と、今にも泣きだしそうな表情の明里


「いい加減にしろよ、お前関係ないだろ!」
「・・・関係、あるよ、」
「やめて、やめてよ、」
「・・・僕の、仲間だ」
「っお前!」
「やめてっ!!」


明里の悲痛な声の後だった

どがっ!


にぶい音が、響く
頬がビリビリと痛んで、衝撃でそのまま草むらに倒れこんでしまった


「星、ねえちゃ・・・」
「な、んで・・・」
「あー・・・いったいなぁ・・・」


口元をぬぐうと、血が手についた
今の衝撃で口の中が切れたらしい
ゆっくりと立ち上がって、殴った奴を見ると、おびえたように一歩後ずさった

「・・・気は、すんだ?」
「っ・・・」
「なに、すんでないの?ならもう一回殴る?」
「星姉ちゃんっ!?」

「だから、これっきりにしてよ。殴るのも、裏切者とかいうのも・・・
 私、仲間傷つけられるのが一番嫌いなの。
 ・・・今後一切許さないから」

まっすぐに見据えて、そう言い切ると、相手の目は戸惑いで揺れた


「い、いや、別に俺は・・・」
「なぐっちゃえば?」


やけに甲高い声が、頭上から聞こえた

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.36 )
日時: 2016/03/13 15:31
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

上を見ると、空中をふわふわと浮かぶ男の子の姿があった
少し赤みがかかった、男の子にしては長めの髪が揺れる

朝日たちと同じぐらいの年に見える子だ


「いいじゃん、いいっていってるんだし」
「で、ですが、染井(そめい)さん、」
「何、びびってんの?じゃ、僕がやろっかな〜」

すとんっと地面に着地した彼は私の顔を覗き込んだ
へんなものでもみるような、嫌悪感と好奇心の入り混じった目
それは朝日や明里にもむけられていた


「僕、イライラしてたんだよ。ソラボシ?妖怪を守るとか・・・・
 わけわかんないこと言って。
 どうせ、実力だって大したことないくせに
 ・・・ま、裏切者にはぴったりなんじゃない?」
「っ・・・」


明里の表情が苦しそうに歪む
それに追い打ちをかけるようにして染井君は続けた

「生意気なんだよ、弱いくせに妙なこと起こすな」
「・・・なにそれ、」

その言葉を聞いて、私は思わず笑ってしまった
染井君は私を睨む


「・・・何がおかしいんだよ」
「バカバカしい、ガキっぽい事ばっかり言うんだから」
「・・・はあ?」
「でかいこと言ってるけど、それって自分の持つ立派な肩書を見せびらかしたいだけ
 ・・・違う?」

染井君の服は西田さんが以前着ていた色と同じ
ってことは、S級隊員ってやつだろう
シロボシのS級隊員がどれほどの強さを持っているかなんて知らない

・・・ただ、これだけは言い切れる


「私、あなたと戦ったら、どんなハンデがあっても勝てるよ」

真顔でそう告げると、染井君の顔はゆでだこのようにみるみる赤くなる
怒りを抑えきれないという様子が、嫌でも伝わってきた


「っざけんなよ、調子乗んなっ!!」

殴りかかってきて、一発受けようと思ったときだった


「空ノ神・星空」

聞きなれた声と、みなれた剣の輝き
染井君のこぶしは私の顔スレスレで止まっていた
剣は、染井君の首筋に当てられている

「・・・空、」
「・・・馬鹿、何してる」
「・・・ちょっと邪魔、どけてよ、この剣」
「その前に手をどけろ」

有無を言わさない声色。完全に怒っていた

「・・・めんどくさいなぁ、」

舌打ちをして、しぶしぶこぶしを染井君は降ろした
空は首筋から剣を離したけど、剣先は未だ染井君に向けられている


「・・・こいつ殴ったの、お前か」
「僕はまだ殴ってないよ。殴ったのはそっち」
「え、あ、いや、俺はそっちの高梨って方を・・・」

「詳しいことはどうだっていい。本当だったら一発かますところだが
 ・・・今はいい、二度目は覚えておけ」
「は、はい・・・」


「・・・いくぞ」
「あ、ちょ・・・」

手首をつかまれ、半ば強制的に連れて行かれそうになる
その後を明里と朝日も追った

「ちょっと待ちなよ」

染井君のイライラしたとげとげしい声が響いた


「紅刻星、でかい口叩いて逃げるなよ」
「・・・別に逃げてないんだけどなぁ、」
「僕と戦ってよ。自信あるんだろ」

「・・・いーよ。ハンデもそっちにまかせる。なにしたっていいから。
 手、縛っても、耳ふさいでもね。
 ただし、明日にしてくれる?もう時間に余裕はないし」
「別にいいけど、しっぽ巻いて逃げんなよ」
「はいはい」

手をヒラヒラ振って、背を向けると舌打ちが背後から聞こえた
いらだちはまだ収まるところを知らないみたいだ
でも、余裕がにじみ出ているのはわかる

・・・よほど自信があるらしいけど


「あいかわらず、物好きだね。君は」

角を曲がったすぐそこには真がいた

「もう戦う前から勝敗はついてる。それでも君は戦うんだ?
 ・・・確かにアイツの伸びた鼻はへし折ってやりたいけど」
「違うよ。それが理由じゃないって。それよりも、早く音葉さんの病院行かないと」


「なら、僕がこっちの二人と先に行ってくるよ」

そういって、真は朝日と明里の肩に手を置いた
2人とも驚いた顔をしている

「え?」
「空が、星に話あるみたいだしね。さあ、行こう」


三人の姿が小さくなってきてから、私は空に向き合った
空は険しい表情をして、黙って私を見ている
・・・結構怒ってるっぽいな・・・


「あ、あのー・・・空?」
「・・・なんだ」
「な、なんか、ごめん・・・?」
「・・・お前、それよくわからずにいってるだろ」

図星だった
ついつい反応した私に、空は盛大なため息をつく

「・・・何があった」
「えっと・・・朝日と明里をみつけたら、ちょうど朝日が殴られそうで
 反射的にかばったら殴られて・・・途中から染井君が来て、
 ちょっと小ばかにしたら殴られそうになって、そしたら空が、」

と、そこまで言って私は異変に気付いた
空がさっきよりもずっと怒っている
それにびびりつつ、じっと空を見つめた


「・・・そこから手を付けていいのかわからないくらい、バカだな」
「・・・はい?」
「お前はいつも相手を挑発したらろくな目に合わない
 少しは学習しろ。」

「・・・なにも、そんなに言わなくたって、」
「挑発するのはいいけど、うまくやれ。へたくそのままやるな」
「あー、うるさい!!」

さすがに腹が立ってきて、怒鳴った
空はそんな私をただ見ているだけだ

「さっきから何?何が言いたいの?文句聞くのなら帰ってからで、」

空の顔を睨みつけたとき、その表情の中の怒り以外の感情を見た


「・・・空?」
「・・・怒りたいのはこっちだ。トイレに行ったとき様子を見に行けば もう殴られてて、また殴られそうになって」

空の声は、かすれていた

「いつも無茶ばかりして、後先考えずに突っ込んでいって・・・
 今まではそれでうまくいってても、いつどうなるかわかったものじゃない」

苦しそうな声。
私は、何も言い返せなかった



「勢いがあって、迷いがないのは戦ううえでいいかもしれない
 ・・・ただ、頼むから、自分を大切にしてくれ。心臓に悪い」

その言葉を聞いて、前に空がシロボシに捕まった時のことを思い出した
あのとき、空は全身傷だらけで、ぼろぼろで。
あと少し遅かったらって考えると、恐ろしくて、震えそうだった

なんでそんな無茶したんだ、と強く思ったのはよく覚えている

空も、私に対してそんな気持ちでいてくれたのかと思うと、
申し訳ないけど、どこか嬉しかった


「・・・ごめん、空。絶対いなくなったりはしないから」
「・・・馬鹿か、お前」

殴られた方の頬をつままれる
ほんの少し、痛い

「そんなことしたら地獄まで殴り込みに行く」
「怖いこと言わないでよ・・・」

空なら本当にそれをしそうで、恐ろしい



「・・・帰るぞ、星」
「・・・うん」

空が手を離したときには、もう頬のけがはすっかり治っていた
空中を飛びながら、空は口を開く

「なんであいつと戦うなんて決めたんだ?」
「・・・私とそっくりだったんだよ。空に会うまでの、私に」

自分に対して持っていた、圧倒的な自信
たいていの奴には勝てると思っていたあの頃の弱い弱い自分
それを目の前に見ているような、そんな気持ちにさせられたのだ


「あのままじゃ、いつどうなるかわからない。
 ・・・誰かが、変えてあげないと」

私はあのとき、空に出会えたからそれを知れた。
逆にあの時空と出会っていなかったら、
きっと、私は今この場にいないんだろう


「・・・そうか、わかった」
「あれ、俺が代わりにやるとか言わないんだ?」
「そう思ってたけど、これは星がやる問題だ。
 ・・・それに俺が出たら、星が逃げたって思うだけだろ」
「そうだね」


夕日がまるで空を飲み込んでいるみたいで、目の前が朱色に輝く
ただただ眺めていると、その先の明日をその中に見た気がした

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.37 )
日時: 2016/03/13 16:24
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

次の日

「へー、逃げなかったんだ?」
「だって、逃げる理由なんてないから」
「あっそ。強がりもどこまでだろうね?」
「強がりがどこまでもつかって?面白い冗談だね」

そういって笑うと、染井君の表情は歪んだ
いらだちをそのまま出してしまうあたり、年相応だなと思ってしまう

場所はシロボシの架空戦闘ステージ
アカボシに破壊されなかった此処は全くの無傷で、支障なく使える
ここには染井君と私しかいないけど、その様子は外のモニターで見れる

それを通して、空や真、朝日や明里はもちろんのこと
シロボシの人も見ているんだろう


「じゃあ、始めようか。ハンデは?」
「ハンデはこれ」

手渡されたのは、黒い布だった
目隠しをしろ、ということだろう

「いまさら、待ったはなしだぞ。土下座して謝るなら考えてやるけど」
「ああ、安心してよ。勝負からは逃げない主義だから」

視界は暗くなり、何も見えない

「それじゃあ、スタートだ」


そういった染井君の声の後、重苦しいため息が耳に届いた

「・・・分が悪すぎる」

空の声だ
確かにそうだね、と心の中でつぶやいてみる。
染井君は、ハンデの時点からすでに間違ってしまった

・・・まあ、それがどうであろうと
負ける気も、手加減する気も、さらさらないのが事実だ


<by空>

あいつはいったいどのくらい星のことを知っているんだろうか
へたしたら、名前と性別と所属している場所しか知らないんじゃないか
・・・もしそうなら、本当に勝敗はわかりきっている

「明里、染井君はそんな技を使うの?」
「彼は・・・水晶玉を操る」
「水晶玉?」
「みてればわかる」

モニターをみると、染井は水晶玉をふわふわと浮かせ、分裂させた
その一つが星へと向かうと、星はそれを掴もうとする
それをつかんだ瞬間、水晶玉はまるでスライムのようにぐにゃりと形を変えて、染井の方へと戻っていった

「お?」
「何だあれ・・・」
「技はあれ。水晶玉の性質を瞬時に変えていく。速さ、大きさ、固さも
 数も、魔法を込めるとその魔法を水晶玉からだせたりする
 器用さを生かした技。どんなものにも柔軟に対応できるんだ」

そう明里が言う間も星は水晶玉をずっとかわし続けていた


「逃げてばっかりじゃん。ほーら、攻撃してみなよ。星お姉ちゃん?」

違う。あれは、逃げるのに精一杯なんじゃない
どうやって倒すのが最善かを考えているんだ
それが固まってしまったら、この勝負はすぐに終わる

モニターにうつる星の口元が歪んだ
少しだけ、笑っている

「・・・あのバカ」

本気でやる気か


<by星>

「・・・なんだって?」

聞き捨てならない言葉が耳に入った
水晶玉が動き回る音が止まる

「は?」
「・・・ちょっと、空。バカって何。聞こえてるっての!」
「・・・はあ?」

小さい声が私のもとに届くのを待った


『悪かった。だからちょっと黙れ。』
「黙れって?・・・おかし作ってくれるって言うなら、許す」
『ああ、わかった』
「よし!」

これはがぜんやる気出てきた

「あんた、頭おかしくなったの?さっきからいったい誰と・・・」
「空だよ。それより、さっさと終わらせようか」
「っ・・・ならお望み通り終わらせてやるよ!!」

いくつもの水晶玉が向かってくる気配
爆発する仕掛けもあるみたいだ
なかなかいい技だし、威力もありそうだけど。

「・・・イザナミ。死せる波紋」

ヴォンッ!

青い波紋が広がり、それに触れた水晶玉は屑になって消えた

「なっ・・・」

イザナミの力は何もかもを無力化してしまうことだ
そこそこ魔力を使うけれど、効果は絶大
たった一つ、壊れなかった水晶玉を手に取り、ゆっくりと染井君に近づいた

「あいにく、私は考えるの苦手だし、好きじゃないんだよ
 それでもどうやって倒すのが一番か考えてたんだけど・・・
 そんな頭良くないし、面倒になっちゃったからさ。
 単純に全部壊して、一個だけ残った奴の動き封じればいいかなって」

笑顔で返すと、染井君の呼吸が規則的じゃなくなった

「動けっ!水晶玉!!っくそ、なんで・・・」
「私が触っている限り、この水晶玉はなんの力も持たないただのガラス玉。
 どうやったって、無駄だよ」

「なんでっ・・・目も封じられてるのに、なんでこんなっ・・・
 さてはお前、自分の仲間と連絡を取って、」
「そんなことしてない。できるわけないのは染井君も知ってるでしょ
 ここは外部から完全に隔離されてるんじゃなかった?」
「なら!なんで外にいる空ってヤツと話ができるんだよ!!」


「・・・それは、私の耳が全部聞こえちゃう耳だから」
「・・・は?」
「どんなに小さな声でも、どんなに遠くても、聞こえるんだよ
 外でこれを見ている人の会話も、外で雨が降ってるその雨音も。
 ・・・染井君とはこんなに近いから、全部聞こえる
 今ほんの少し震えてることも、焦って息が荒くなってることも」

「・・・黙れ、」
「・・・戦闘中よりずっと早い心臓の鼓動も、全部」
「黙れ!!」

染井君の怒鳴り声が響いた
それはどこか泣き出しそうな感じで、それでも、私は続けた


「・・・どうする?物を操ったり、使ったりする人の弱点は、そのものを失ったとき、一気にレベルがさがってしまうこと
 染井君の武器の水晶玉は使えないよ。それでも、戦える?」


彼は、黙ったままだった
私は目隠しをそっととる
視界が開けて、光が入ると少しだけまぶしく感じた
目の前の染井君は下を向いて、こぶしをぎゅっと握っている


「悔しい?苦しい?・・・そうだよね、そういう風に思って当然
 染井君が今まで倒した人たちも、そう思ってたはずだ
 そんな人に向かって、今まで染井君は耳をふさぎたくなるような言葉を言ってきたんだよ」

「っ、」
「・・・でも、私は同じことは言わない
 染井君を見下したり、けなしたりなんてことは絶対にしない
 どうしてだと思う?」

彼は、黙って下を向いたまま息をのんだ
彼の手にそっと水晶玉を戻して、私は口を開く


「・・・それをすることが何よりも恥ずかしくて、かっこ悪い。
 ・・・そう知ってるからだよ」


そういうと、染井君は涙の溜まった目で私をみつめた
そして、ぎりっと音がしそうなほど歯をかみしめ、全力で駆け出し、部屋を出て行ってしまった


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