複雑・ファジー小説

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妖怪屋は嫌われ者
日時: 2014/12/15 22:29
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)


この日本という国はある時から、死と隣り合わせの国になった
1999年。突然、空には黒い渦ができ、
その中からは恐ろしい妖怪たちが現れた

いきなりのことで、人間はなにも抵抗をしないまま一週間が過ぎ、
多くの人間が命を落とした
しかし、その黒い渦は特別な力を持つ人間に封印された
今、その黒い渦はどこにあるのかわからない


「あなたたちの名前はなんですか」
「・・・・シロ」

シロと名乗った5人の人間は、のちに奇跡のシロと呼ばれた
この世界に降り立ってしまった妖怪を倒すシロボシという施設をつくり
妖怪たちを退治する活動を始めた

今、シロはどこにいるのかわからない


『妖怪襲撃とシロ』



「・・・これ、最近よくテレビでやるよね」
「妖怪襲撃事件の日が近いからだろ」
「ふーん・・・あ、次の仕事は?」
「地縛霊のやつ」
「あ、それ結構数いるやつ?」
「ああ、そうだな」
「マジ?なら早く終わらせて・・・また、おかし作って」
「わかったから、ほら、行くぞ」
「はいはい」


シロボシとは違う、独立した妖怪退治をする者
ソラボシ、通称妖怪屋



設定

紅刻 星 こうごく せい 女 15歳
ソラボシのリーダー 紋章のついた赤いペンダントをつける
得意技は魔法を使った直接攻撃

月形 空 つきがた そら 男 15歳
ソラボシの副リーダー 紋章のついた青いペンダントをつける
得意技は剣を通しての物理的攻撃

一風 音葉 いちかぜ おとは 女 20歳
妖怪に関する情報屋 使い魔を何匹も持つ 主にソラボシに協力する

ケセランパセラン ぐー、ちー、ぱー
猫又 ニーナ、ニーカ、ニースケ、ニーコ などなど

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.18 )
日時: 2014/12/31 21:56
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<10分後>

「はぁ、っ・・・」

バチバチバチッ!!

「ぐっ・・・、・・」
「降参する?」
「しない・・・何回も言わせるな、」

口答えすると、もっと強い電気が流れた


「か、はっ・・・い、っ・・・・・」

電気が止まるとがくりと力が抜けた

「・・・君はどうしてこんな風になってまで耐えるんだ?
 なにか、理由があるの?」
「・・・あ?」

「この髪留め、女の子用だね?ラメが入ってる。これは・・・」
「やめろ!!」

髪留めに触れられそうになった瞬間、反射的に叫んでいた

「汚い手で、触るな」
「・・・・まあ、いいよ。いずれ調べさせてもらうからね
 さぁ、また電気を流すよ」

その言葉に自然と体がこわばる
スイッチにゆっくり指が伸びていく
きっと、そばでそれをやるのは精神を折るためだ

覚悟を決めたその時、

『やめろ!!』

ロケットペンダントから強い衝撃が発生する

「ぐっ・・・!?」

Dr蓮杖が軽くふっとばされて、なんとか着地した


「連動魔法か、」
『やめろ!空兄ちゃんに触るな!!』

その声には聞き覚えがあった

「朝日・・・?」
『空兄ちゃん?大丈夫?』
「ああ、平気だ。ニースケは?」
『大丈夫、元気だよ』
「そうか・・・」

よかった・・・
そう思ったのもつかの間、Dr蓮杖がペンダントを掴みあげた

「封印魔法」
『空兄ちゃん、安心して。きっと、あと少しで、』

その後からはプツリと音が途切れた

「面倒なことしてくれるね。こっちも時間がないから、最大でいくよ」
「お前は、こんなことをさせてる上の奴をどう思うんだ?」

このままやられるのは気に食わない
少しでもこいつの精神を揺さぶってやろうと思った

「・・・は?」
「疑問に思ってるだろ?あの白井って奴はきっとお前らのことを
 道具としか思ってないぞ」
「なにを、」

「気づいてるんだろ?。・・・お前みたいなやつの方が、
 よっぽどくだらないな。自分の意志も言えない、そんな」
「黙れ、」
「・・・くだらない人間だ」

「・・・そのうるさい口、きけなくしてあげる」


バチバチバチバチバチッ!!

「ぐ、っ・・・・か、はっ・・・・っ・・・・」

長い、苦しい
電気が全身を駆け巡っているのを感じた
息すらうまくできなくなる

体が酸欠を訴えてきたとき、ドアが大きく開かれた
あわてた様子で西田が入ってくる

「Dr蓮杖、紅刻星が敷地に侵入し、隊員を何人も、」

その言葉を遮るようにして、ものすごい轟音が聞こえた
そしてガラスの落ちるような音
天窓が割れたのか。その音がやむと降り立ったような音が響いた

「・・・空、」

その声は紛れもなく星だ

「おいおい・・・魔法反射の強化ガラスだぞ・・・」
「・・・初めまして、こんばんは。妖怪屋ソラボシ、紅刻星
 ・・・仲間を取り返しに来ました」


「初めまして紅刻星さん、Dr蓮杖です。大切な空君ならそこに、」
「・・・空?」
「電気を流しててね、これが最大・・・ああ、気絶しちゃったかな」
「あなたがシロボシに入ると言えば、これは止めてあげるわ」

「・・・ばかじゃないの。空も、演技してないでこっち来てよ」
「・・・」
「光刺の矢(こうしのや)」

風邪を斬るような音とともに、動きを制限していた鎖が外れる

「ばかな・・・倒れるに決まって、」
「・・・お前、おそいんだよ」
「・・・は?」

久しぶりに地に足をつけたように感じられた
電気はまだ、体に残っていて体がビリビリしている

「文句言うな、馬鹿。なんで黙ってたの」
「動くと体力が消耗するだろ」

いつも通り歩いて西田と、そしてDr蓮杖の前を通り過ぎる
そうしたとき、Dr蓮杖に腕をつかまれた

「待って。このまま返すわけにはいかない」
「離せ」
「だから、返すわけには、」
「・・・離せっていってるの、聞こえないか」
「っ・・・こっちも、手放すわけにはいかないから」

「そのとおり」


聞き覚えのある声
ドアの方を見ると白井がいた
ゆっくり歩み寄ってくるその姿からは支配欲がにじみ出ていた

「初めまして紅刻星さん。私は白井、どうしてもシロボシに入らないと
 ・・・なぜ?」

「シロボシとは考え方が違うからね。まして、こんな手段使ってまで
 無理やり入れようとしてくる奴がいるような部に、入るわけない」

星から殺気がにじみ出ている

「君たちの力は妖怪なんかを守るのに使ってはもったいない
 そんなくだらないことよりも、もっと、」


その言葉を聞いた瞬間、俺はDr蓮杖の手を振り払い突き飛ばしていた

「・・・は?」

低い声色。星は完全に切れていた


「妖怪も人間も守る?くだらない、そんなのは所詮夢で理想だ
 妖怪の様な低能死ぬべきなんだよ」
「っあんたね、」

「星、ふせろよ」
「空?」

俺は片手を突き出して、足に力を入れて地を踏みしめた

「カウンター魔法、破壊」
「っ!?白井部長!!」

手から放たれる衝撃波
その力に何歩か後ずさった


舞い上がったホコリと、衝撃によって崩れた壁に壊れて火を上げる機械
静かになってきたとき、遠くの方から足音が聞こえてきた


「・・・長居はできなさそうだな」
「そうだね」

「・・・って、何書いてるんだ?」
「口答えってヤツ?」

俺は壁に書かれた文字を読んで、ため息をついた
・・・あきれる、ほんとに


「・・・ほら、行くぞ」
「はいはい」

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.19 )
日時: 2015/01/04 22:14
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by白井>

「白井部長!大丈夫ですか!?」
「Dr蓮杖か・・・?」
「はい。西田が結界を張ってくれたので・・・」

ふと上を見ると青い膜が張ってあるのが見えた

「っ・・・」

それが、音を立てて崩れる
青い膜が雪のようになって輝き、落ちて行った

「西田!?大丈夫?」
「私は平気。・・・あの二人、随分なことしてくれるじゃない」

壁は崩れ、火もあがって煙だらけの研究室はもう使えそうにない
修復にはかなりの時間がかかりそうだ

「・・・すばらしい、」

月形空、紅刻星よりも価値はないと踏んでいたが、このカウンター攻撃
・・・初めから計算して、黙って電気を受けていたか。
だとしても、ダメージは大きかったはず。とんでもない精神力だ

そして、紅刻星。
私に伝達が行くより先に此処にたどり着いていたと聞いた
ありえない速さで訓練を受けた隊員を倒しているのは映像で見たが。

・・・あの二人に共通するのは、すさまじい魔力量
何にも動じない度胸。そして・・・人をおののかせる覇気

妖怪屋、ソラボシ・・・奴らは私を想像以上に楽しませてくれる。
・・・ますます手に入れたくなってきた

「白井部長!あれを・・・」

西田が指さす先を見た瞬間、自然と笑顔がこぼれる

「・・・おもしろい」


壁には青い文字で、こう書いてあった

妖怪屋 ソラボシ参上!
誰に何を言われようと、我々は人間も妖怪も
命を懸けて守って見せます


皮肉にも、割れた天窓から見える空は、星がきれいに見えていた


<by星>

「なんなんだ、さっきの壁に書いてたやつ」
「だから、口答えだって」
「口じゃないだろ。しかもセリフがくさい」
「うるさい」

私と空は綺麗な星空の中を飛行していた

「・・・ね、降りて休もう」
「は?おい・・・」

空の手を引いて、どこかの小さな公園に足をつけた

「星、早く戻らないと朝日と音葉さんが心配するぞ。
 休んでる暇なんて・・・」
「・・・・」
「・・・星?」

私は空の両方の手を握って向き合った

「・・・あーあ、こんなに怪我してる・・・」

手首には鎖の痕、皮膚にはやけどの跡もあるし服も汚れてる
きっと鎖の痕は足首にもついてるんだろうなぁ・・・
服の下だって、あおたんとか、打撲してたりとか・・・

「星、どうした・・・?」

ああ、もう。なんでわかんないんだこの馬鹿
我慢がメーターを超えて、私はすっと息を吸った

「どうしたじゃない!!」

大声で叫ぶと、空がひるむ
叫ぶと同時に、押し込めていた感情がこみあげてきた

「こんなに怪我して、何で逃げなかったの!?
 あんな鎖、空だったらすぐに外せたはずでしょ!」
「・・・白井にソラボシを侮辱されたんだ。黙って帰るわけにいかない
 から、一泡吹かせてやろうと思った」

「馬鹿!アホじゃないの!?なんでそこでむきになってるわけ?」
「星だって、あるだろ」
「それはそうかもだけどっ・・・無駄に心配させないでよ、」

涙が一つこぼれた
胸のあたりがギュッと閉まって熱くなる

「連れて行かれたって聞いたとき、心臓止まるかと思った
 さっきの気絶したフリだって、もし本当だったらどうしようって、」
「・・・悪い、」

涙が止まらない
そでで乱暴に涙をふいた

「お願いだから、無理しないで。もう誰にもいなくなってほしくない」
「・・・星、」

空が手を握り返してくる

「悪かった。でも、俺はいなくなったりなんてしない。絶対だ」

あたたかい。手も言葉も、全部が
涙が自然に止まって、苦しさもなくなっていた

「・・・人に心配かけといて、なにそのセリフ」
「お前が壁にかいた言葉の方がよっぽどだろ」
「うるさい」

本日二回目のうるさい
ついつい面白くなって、笑顔がこぼれた
なんで、空のいうことはこんなに信用できるんだろう
何の根拠もないのに、すっと心に入ってくる

「薬はあるの?」
「まだ音葉さんからもらってない」
「・・・すぐもらえって、何回も、」
「まだできてないって言われたのに今すぐ作れって言えるか?」
「・・・いえないです」

「わかっただろ、早く行くぞ」
「わ、ちょ、・・・待ってよ!」

もう一度靴に魔力を与えて、綺麗な星空へ上昇した

「・・・・・」


それを見ていた人がいたとも知らずに


<by明里>

「・・・あの二人、できてるのか・・・?」

目の前で起こっていたことを見て、そうつぶやかずにはいられなかった
紅刻星と月形空は友人というにはすぎた関係だ

だからといって恋人というのも何か違う気がする
友人以上恋人未満ってこういうことか、と勝手に納得していた


私は情報を入手するため、ふたりをずっとつけていた
情報は多ければ多いほど、計画の抜けは少なくなるもの

・・・まあ、あんなところに遭遇したのは予想外だったけど

「よっ!明里ちゃんっ!!」
「っ!?・・・って、奈良先輩・・・」
「うちもいるんだけど」
「瀬戸先輩も、どうして・・・・」

私の目の前に現れたのは奈良太一(なら たいち)先輩と
瀬戸愛(せと あい)先輩。
私よりワンランク上のA級隊員で同じ白井部所属だ

「ソラボシの情報収集してるらしいね?」
「はい、そうですけど・・・」
「なら、その情報頂戴」
「・・・え?」

「白井部長から頼まれちゃってさ〜・・・俺ら変装得意だし?」
「変装するんですか?なんのために?」
「油断してるところを攻めて気絶させる。そんでシロボシに持ってくる
 ・・・ってかんじ」

「・・・そういうことなら、ソラボシの二人がそれぞれ分かれて任務を
 するときがあります。そこがチャンスじゃないですか?」
「マジ?それいつ?」
「今日から一週間後です」

「OK、ありがと。でも、性格とか仕草とか研究したいし、うちらも
 次から監視混ざるわ。じゃーね」
「ばいばい明里!!」

私は一礼して、顔を上げたときにはもう二人の姿はなかった

「白井、部長・・・・」

妖怪を守ることなんてくだらない
・・・本当に、そうなのか。よくわからない
だいたい今の作戦だって、正直納得いかない部分が多い
変装なんてしたところで、あの二人を倒すことなんてできないだろう
それは、ずっと監視していて思っていることだ

・・・って、なにをかんがえてる?
ソラボシをシロボシに入れれば、確実に力は上がって、いいはずだ
・・・なのに、

「っ・・・気持ち悪い」


嫌いだ、妖怪は。自分の大切な人を殺したから
今まではそうだった。

・・・・じゃあ、今は?



煮え切らない自分は、何よりも嫌いだと心の底から思った

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.20 )
日時: 2015/01/05 21:47
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

音葉さんの店に入り、カウンターの奥のドアを開けた

「ただいまー!」
「ただいま」
「空兄ちゃんっ!!」

朝日が空に飛びつき、空がよろめいた

「ほんとに、大丈夫だった?」
「ああ、心配かけたな・・・」
「怪我してるよ、空くん。ほら、こっち座って」

空は音葉さんに手当てをしてもらいながら口を開いた


「朝日、これ落としてたやつ」
「あ、やっぱり空兄ちゃんが拾っててくれたんだ。ありがとう!」
「なに?そのペンダント」

「これ、朝日が落としてったやつでな、俺のことを守ってくれたんだ」
「・・・ん?」

それ、どういうこと?

「僕、もう一つのペンダントから聞いてたんだ。空兄ちゃんのやりとり
 途中で聞こえなくなっちゃったけど・・・」

「急にペンダントから衝撃波が起きて、Dr蓮杖が飛ばされたんだ
 それで封印の術をかけられたから、」
「・・・ちょっと待って」

音葉さんがいぶかしげな顔をして口を開く

「それは連動魔法ってことでしょう?
 私、そんなの朝日君におしえてないけど・・・・」
「・・・本当ですか?」
「うん・・・」

「朝日、そのペンダントみせて?」
「いいよ」

朝日から二つのロケットペンダントを受け取る
一つには家族の写真、もう一つは・・・

「・・・これ、魔法陣・・・!?」
「・・・かなり高度で、完成度も高い。完璧な魔法陣」

音葉さんがその魔法陣をじっと見つめてそういった
そういうってことは、かなりのものなのは間違いじゃない

「朝日、この写真とってもいいか?」
「え?う、うん」

空が写真をとると、その下にも同じ魔法陣がほられていた
音葉さんが私と空からペンダントを受け取り、口を開く

「・・・朝日くん、これは誰からもらったもの?」
「お父さんからだけど、お父さんはお母さんの遺品だって言ってた」
「・・・お母さんの名前、わかる?昔の名前」

「高梨の前ってこと?たしか・・・結鳥皐月(ゆいどり さつき)、」

カチャンッ!

音葉さんの手から、写真が入っていた方のペンダントがすべりおちた



「結鳥、皐月・・・!?」

結鳥皐月。その名前には聞き覚えがあった
今はどこにいるかわからない、お父さんから聞いたことのある名前だ

「シロの、メンバーの一人・・・」
「まさか・・・、」

空は反論しようとして口をつぐんだ
空もお父さんから聞いたことがあったのかもしれない

「・・・わかった。ありがとう朝日君。ごめんね、落として・・・」
「う、うん」

「音葉さん、」
「連動魔法ができたのは、空くんを助けたいって言う強い気持ちと
 朝日くんのセンスの良さがあったから。
 ・・・次からは連動魔法の練習もしていこうか」
「うん!」

「・・・・」

空は口をつぐんだままだった
空、いったい何を考えてるの?

・・・まだあのことを引きずってるの?

私は無意識に空の服を掴んでいた

「・・・星?」
「大丈夫、みんないる。・・・誰もいなくなったりなんてしないから」
「・・・わかってる、ありがとう」

空は笑った
でも、いつものすっきりした笑顔じゃない
どこか弱々しくて、寂しそうな、そんな笑顔

・・・そうやって取り繕ってばかりだ、空は
お父さんたちが急にいなくなったあの時から・・・・

私も空も音葉さんも、変わってしまった
どうして?いつから音葉さんと他人みたいに接するようになったの?
・・・それは自然すぎて、私も自分のことに精いっぱいで、
昔は気づかなかったことだ


空、音葉さんは・・・・・血のつながった、




空のれっきとしたお母さんでしょ?




その後のことだった
朝日はすっかり疲れてしまったみたいで、眠っている

「・・・音葉さん」
「なに?空くん」

「なんで、本当のこと言わなかったんですか」
「空・・・」

「朝日くんにはまだ早いと思ったの。
 ・・・朝日くんは病気で亡くなったって聞いてるみたいだから」

「真実を伝えない方が残酷だとは、思わなかったんですか」


とげのある言葉
聞いていて苦しくなった

「空くん、」
「少なくとも、俺はそうだったんです
 父さんたちのやっていたことを知ったのは、父さんがいなくなった後
 その時もあなたはあの時は話すのには早かったといった

 ・・・それが、どれだけ後悔したか」

「・・・ごめんなさい」


「・・・あなたは、何も変わってないんですね、」

背筋が冷えていく気分だった
音葉さんのとても苦しそうな表情と、小さなごめんなさいの言葉
しばらくその場から動けなかった

はっとして空の方を見ると、朝日をおんぶして出て行くところだった

「空!!」

あわてて靴を履き、空を追いかけるようにして飛び出した
音葉さん、ごめんなさい・・・

「空!ちょっと!!」

空の腕をつかんで、引き止める

「なんで、なんであんなこと言ったの!?音葉さんには音葉さんの
 考えがあったんだよ?」
「・・・・」

「それに、音葉さんは空の、」
「母さんだよ。・・・家族だったからこそ、言ってほしかった
 一人で苦しんでなんてほしくなかったんだ」
「・・・空、」

「・・・自分でもよくわからないんだ。なんであんなこと言ったのか」

振り返った空の目には涙がたまっていた
・・・そんな顔されたら、何も言えなくなるじゃん

私はなんて声をかけたらいいのかわからなかった


「・・・結局、変わってないのは俺だな、」

違うそうじゃない
変わっていないのは、変われていないのは私も同じだ

あの時から、私たちの関係や考えは変わって、
でもその本質的なものは変わってなくて。


・・・あの時から、私たちは止まったままなんだ・・・

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.21 )
日時: 2015/01/08 22:09
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by太一>

次の日

「ん、まあこんなかんじ?」

俺は月形空に変装していた
写真と自分の顔を見比べてみる

「・・・結構いい顔してんだな、こいつ」

悔しいけど、男の俺でもかっこいいと思ってしまった
不覚・・・

「あんたよりはずっといい顔だからね」
「うわ、失礼な奴・・・」

この野郎、それ結構刺さるんだぞ・・・

「紅刻星もかわいいよな」
「うちよりもかわいいって言いたいんでしょ」
「ちげーって!俺は女の子皆に優しいの」


・・・ちょっとした仕返しだったのは否定しないけど

「・・・・」
「なんだよ、その目」
「いや、気持ち悪いなって、」
「気持ち悪い言うな!」

ああ、だめだ。これ以上腹が立つと魔法が解ける
この変装魔法は繊細だ
ちょっとの変化が魔法にも影響する

「太一、いくよ」
「おうよ」

廊下に出ると、ちょうど入ろうとしていたのか、明里がいた
驚いたように目を見開いて、理由に気付いたのか目を伏せる

「奈良先輩、瀬戸先輩、任務頑張ってください」
「ありがと、明里」
「変装はどう?あんたのみたまんま?」
「はい、大丈夫です。声も全部、カンペキだと思います」

「そんじゃ、いってきまーす」
「はい」


話し方もいろいろ調べたし、大丈夫だろ、たぶん
変装に気付くほど勘のいいやつらとは思えねーし
まあ、いけるはずだ、きっと





「おい、星」
「え、空?なんで?地縛霊退治は?」
「地縛霊は夜の方が勝手に出てくるだろ。そこ狙うから手伝いに来た」

「なにそれ、人のことなめてるんじゃない?」

っ・・・なんだこいつ、顔めっちゃ近いっ・・・
こんなんが普通なのかよ

「なめてなんかない。暇だっただけだ」
「へー。でも私一人で十分!気の流れをなおすだけだし」
「まあ、そうだな」


紅刻星についていくと森の中に入った
そして、綺麗な湖の前で立ち止まる

「・・・ここかぁ、」


すっと息を吸い込む音も響くくらい、静かな森だ
こういう静かな森はかなり強い奴が宿っている
だからこそ、怒らせるとめんどうくせぇんだよな

「森ノ神よ、我はソラボシ。森に手を出すことをお許しください」

森が返事をするように葉を擦れさせる
その音があちこちから聞こえて、波がひくようにおさまった

「気よ、正常な流れに戻れ」


空気が、動く
・・・すげぇ・・・・。これが、紅刻星の力
森を怒らせることなく、気を戻した

気の流れはよければ天候も作物に恵みを与えるけど
悪いと不作をもたらしたり、村に被害をあたえるんだよな


「よーし、終了。・・・まだ暇なんでしょ?付き合ってよ」
「あ、ああ」

歩きながら、くだらない事ばかりを話し続ける
・・・こいつらいっつもこんな感じかよ
いらねぇ話ばっかだし、肝心な情報になるような情報は全然でてこない

「ね、今日帰ったらゼリー作ってよ。みかんのやつ」
「ああ、わかった」

てきとうに言葉を返していると、風がすっと吹き抜けた
いらだちを吹き飛ばしてくれるようで、とても気持ちいい

目線を上げると青空が広がっていた
どうやら森を抜けて、丘に出たみたいだ


「きもちいいよね、ここ」
「ああ、そうだな」

「・・・きっと、空は好きだと思うよ」


・・・言葉に違和感を感じる
紅刻星を見ると、長い髪が風で揺れていた

・・・きれいだ、でも、凛々しくてとげのある美しさ
相手の瞳はらんらんと光っていた


「月形空はそういう人なんだよ、ニセモノさん」
「・・・・・」

前言撤回
そう簡単に任務は成功しなさそうだ



<by愛>

同じころ

私は月形空の任務が終わるのを待っていた
かれこれ10分になるけど、かなりいた地縛霊はもう5体くらい

仕事が早いし、無駄がない・・・・相当な強者なのは確かみたい


「ソラボシの名のもとに、天界の門よ、開け」


空間に白い渦が現れて、地縛霊が吸い込まれていく
これが・・・妖怪を黄泉の国に送る力・・・

「空、」
「・・・星?お前、なんで・・・」
「任務終ったから、こっち来たの」
「ああ、そういうことか・・・」

気付く様子はない
楽勝、簡単だね・・・

「おい、星?」
「え?」
「大丈夫か?なんか変だぞ、」

月形空が覗き込んでくる
っ・・・近い、顔がっ!
あわてて顔をそらして口を開いた


「変じゃない、大丈夫だよ」
「なら、いい」

・・・いつもこんな顔近くするわけ?恋人みたいだ

「・・・星」
「なに?」
「少し、暇つぶしするか」
「え?う、うん」


森を歩くと、小鳥のさえずりや葉の擦れる音が聞こえてくる

「珍しいね、空が暇つぶしなんて」
「気分がそうだった」
「なにそれ、」

「今日、お菓子はみかんゼリーでいいよな?お前好きだろ?」
「うん、楽しみだなぁ・・・」

くだらない話を続ける
こういう話の中にこそ、情報があるはずなんだけど・・・
白井部長が必要にしているような情報はなさそう


「・・・あ、」
「どうしたの?」

月形空は急に木のそばにしゃがみ込んだ

「・・・鳥、怪我してる」
「あ、ほんとだ・・・」

青い小鳥だった。片方の翼が傷ついて飛べないみたいだ

「飛べないのかな、かわいそう・・・」


すくい上げようとしたとき、月形空の手がすっとのびて小鳥に触れた
ふわりと暖かい風が起こると、小鳥の傷はきれいに消える

「・・・手当てしないとね」
「・・・え?」
「紅刻星は小鳥にそう問いかけるんだよ。そういう人間なんだ」

「・・・・・」


「勉強不足だな、偽者」

射抜くような目の光
背後で青い鳥が空に向かって飛んで行った

男のくせに、きれいだ、月形空は


楽勝なんて言うには、早かったかな

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.22 )
日時: 2015/01/09 22:20
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by星>

「・・・いつ、俺がニセモノだってわかった?」
「最初の雰囲気。似てたけど、微妙に違ってたから
 その時はまだ曖昧だったんだけど・・・」
「じゃあ、なんで?」

「・・・今日帰ったらゼリー作ってよ、みかんのやつ」
「・・・?」
「覚えてない?私がそうやって言ったの」
「それのどこが・・・」

「・・・私、ゼリー大っ嫌いなんだよね。特にみかんのやつは
 本物の空だったら、絶対に表情を変えるってわかってたから
 けど、あなたは一切表情を変えなかったでしょ?」

「・・・なるほど、それでばれたってわけね、」
「監視の期間、短かった割には上出来だと思ったけど
 ・・・相手が悪かったよねー」

聞こえるんだよ、全部
空には姿が見えてたし


「今頃は、空もわかってるかな。もしかしたら、もう戦ってるかも」
「俺らの任務は気絶させてでもお前らをシロボシに連れていくこと
 失敗はできねーんだよ、傷つけたくないんだよね、女の子は
 ・・・黙ってついてきてくんない?」

「やなこった」

間髪入れずに答えてやった


<by空>

「どうしてうちが偽者だってわかったわけ?」
「決め手はお菓子だな」
「はあ?」

「星はみかんゼリー、大嫌いなんだ。
 なのに、お前は楽しみだとか・・・心の中で笑ってた」
「人のこと笑わないでくれる?」

偽者は敵意むき出しだ。
わざとさかなでしてみただけだったのに、やりすぎたかもしれない

「うちの任務はあんたを連れていくこと。どんな手を使ってもね」


相手が動く

「ホワイトチャージ、」

拳銃が現れ、引き金が引かれた

「銃か、」

よけて、あたったところをみると溶け始めていた

「これは酸性の玉。あたったら溶けちゃうけど?あんたの体も」
「めんどうだな、」

「月形空、あんたは剣を使うんでしょ?ぶが悪かったみたいだけど、
 容赦なんてしないから!!」

「・・・・」


放たれる弾をよけ続ける
なかなか隙がない、むやみに近づけば弾があたるだろう
しかも、相手は動く方向を的確に狙って撃ってくるから厄介だ

「どうしたの?よけてばかりじゃない」
「ああ、そうだな」
「っ・・・これで最後!」

銃が光り、変形していった

「連続放射、」

・・・最後。
そう、最後だ。ここまで来てしまえば・・・

大きく後ろに下がると、森を抜けた
障害物は何もない、吹き抜けの丘だ

視界の端に星と偽者を捕える
そのまま加速して、偽者の腹部に蹴りを決め込んだ

「が、はっ・・・!?」
「よくできてるんだな、俺の偽者」


<by星>

「やっぱり、来ると思った」

空のニセモノが吹っ飛ばされる

「なっ・・・」

私は放たれていた弾をよけて、ニセモノの背後に回り込んだ

「どーも、初めまして。私のニセモノさん」
「っ!?かはっ・・・・・」


背中に蹴りをいれると、ちょうど空のニセモノのそばに落ちていった
・・・あー、やっぱり自分と同じ顔の人倒すってなんか嫌だ
・・・けど、今のやつで二人とももとの姿に戻ったみたい


「おつかれ、空」
「ああ、おつかれ」
「作戦大成功だね、」

「なに、その作戦って・・・」
「実はある人から聞いてたんだよ。奈良太一と瀬戸愛が私たちに変装し
 てシロボシに連れて行こうとしてくるって」
「なっ・・・」


だから筒抜けだった
まあ、あの変装だったら情報がなくてもすぐにわかっただろうけど
おかげさまで作戦も立てれたってわけだ

ちなみに、みかんゼリーは楽しそうだから言ってみただけだった


「どうする?戦って、俺たちを倒して行くか?」
「望むところっ・・・」
「愛、待って!」
「なに!?太一、さっさと・・・」
「やめよう。ぶが悪いから」

「はあ?あんた何言って・・・」
「俺らだけじゃ、こいつらは倒せねぇ・・・」

「っ・・・仕方ないって?・・・ああ、もう!!」


愛が歩き始めた
私たちとは反対の方向に

「あ、愛?」
「気分悪くなったし、帰る」
「・・・わかった」
「・・・月形空、紅刻星!覚悟してて、絶対つぶす!!」


そう言い残して、二人はいなくなってしまった


「・・・朝日、もういいよ」
「うん、」

そして、なにもない空間からでてきたのは朝日と明里
朝日は特訓で大分術が使えるようになってきていた
だから、透明魔法を使って隠れててもらったんだ

「・・・明里、ありがとう」
「・・・別に、」

そもそも情報をくれたのは明里だった
傷の貸しを返すと言って、今回のことを教えてくれたんだ


「明里のおかげで助かった、ありがとう」
「・・・って、空。なに、この距離」
「・・・無理だ、やっぱり」
「はあ?ふざけないでよ!折角協力してくれたのに!」

「・・・しばらく一緒なら、なれるんだけどな・・・」
「なれて、今すぐ!」
「無茶言うな。・・・お菓子なくすぞ」
「ごめんなさい」

朝日と明里に笑われた
仕方ないじゃん、お菓子は大切だよ
明里ははじめ、朝日に敵意むき出しだったけど、もう大丈夫みたいだ

「それより、明里は大丈夫なのか?シロボシの奴にばれたりしたら、」
「そんなヘマしないから、平気」
「本当?なんかあったらすぐ来てよ、」

「うっさい!ガキに言われたくない!!」
「なんで?同じ年なのに」
「っ・・・とにかく!朝日と違って自分の身くらい自分で守れる」

かわいいなぁ・・・このやりとり


「・・・明里」
「・・・なに」

「助けてほしい時はいつでも来てよ?」
「・・・気が向いたら。ばいばい」
「またね。明里!」
「うるさい!!」


「・・・朝日にだけ、あたりきつくないか?」
「いろいろあるんだよ、きっと」
「は・・・?」


わけがわからないというように首をかしげる空を見て、笑ってしまった


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