複雑・ファジー小説

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妖怪屋は嫌われ者
日時: 2014/12/15 22:29
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)


この日本という国はある時から、死と隣り合わせの国になった
1999年。突然、空には黒い渦ができ、
その中からは恐ろしい妖怪たちが現れた

いきなりのことで、人間はなにも抵抗をしないまま一週間が過ぎ、
多くの人間が命を落とした
しかし、その黒い渦は特別な力を持つ人間に封印された
今、その黒い渦はどこにあるのかわからない


「あなたたちの名前はなんですか」
「・・・・シロ」

シロと名乗った5人の人間は、のちに奇跡のシロと呼ばれた
この世界に降り立ってしまった妖怪を倒すシロボシという施設をつくり
妖怪たちを退治する活動を始めた

今、シロはどこにいるのかわからない


『妖怪襲撃とシロ』



「・・・これ、最近よくテレビでやるよね」
「妖怪襲撃事件の日が近いからだろ」
「ふーん・・・あ、次の仕事は?」
「地縛霊のやつ」
「あ、それ結構数いるやつ?」
「ああ、そうだな」
「マジ?なら早く終わらせて・・・また、おかし作って」
「わかったから、ほら、行くぞ」
「はいはい」


シロボシとは違う、独立した妖怪退治をする者
ソラボシ、通称妖怪屋



設定

紅刻 星 こうごく せい 女 15歳
ソラボシのリーダー 紋章のついた赤いペンダントをつける
得意技は魔法を使った直接攻撃

月形 空 つきがた そら 男 15歳
ソラボシの副リーダー 紋章のついた青いペンダントをつける
得意技は剣を通しての物理的攻撃

一風 音葉 いちかぜ おとは 女 20歳
妖怪に関する情報屋 使い魔を何匹も持つ 主にソラボシに協力する

ケセランパセラン ぐー、ちー、ぱー
猫又 ニーナ、ニーカ、ニースケ、ニーコ などなど

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.43 )
日時: 2016/03/23 14:37
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by空>

久しぶりに妖怪討伐の任務のため、陽冷(ようれい)の森に訪れていた
この場所はよく、父さんと剣の実戦練習をしていた思い出深い場所だ

とはいえ、この森のそばの村や町にいる人たちは絶対にここを訪れない
陽冷の森は通称『妖霊の森』と言われるほど妖怪がたくさんいる
日差しがきちんと入っているにもかかわらず、この森の気温はずっと低くて、季節に全く左右されない


それは、この森の木々が出す瘴気のせいらしいが、これが妖怪たちは好むらしい
妖怪屋にとっても、陽冷の森はみんな知っている特別な場所だ
いくら倒しても、妖怪達は減るところを知らない


ザシュッ!!

刀の確かな手ごたえ
俺は何の変哲もないただの刀を手に、襲い掛かってくる妖怪をなぎ倒していた
もちろんみねうちだ
殺してしまったら黄泉の国へ送ることができない


あらかた倒して、妖怪たちが出てこなくなったとき、黄泉の国へ送るための扉を開けた
光の玉が一つ、二つとあちこちから上がり、吸い込まれて行く

この光景が一番好きだ
元のいるべき場所に帰っていくときのあたたかいひかりはとてもきれいだと思う


そんな風に思っていたときだった

ずしんっと振動がすぐそばで起こった
振り返ると、巨大な猫又がいた


鋭い爪が振り上げられる
それを素早くよけてから、刀を掴みなおす

今日一番の強さだろう
この大きさの猫又は初めて見た

鋭い爪を持つ手が振り下ろされ、それをよけるとすさまじい風圧が襲う
そうとうなパワーだ
そう思ったとき、ふと、昨日の七世に受けた攻撃を思い出した


あいつの剣の腕前は・・・悔しいが、相当だったのは確かだ
ただ、あいつの考えまでを認めるわけにはいかない
それに、

「・・・俺はまだ、死ねない」


ズシャッ!!

血しぶきと、猫又のつんざくような悲鳴
つい、強く切りすぎてしまったみたいだ

「あ・・・悪い、」

近付くと、傷だらけで瀕死の状態にもかかわらず、巨大な猫又は毛を逆立てて威嚇してきた
こいつ・・・様子が変だ
まるで、何かをかばっているみたいな・・・・


「・・・!」

よくみると、その大きな体の後ろで小さな猫又が声を上げていた
こいつは・・・自分の子供を守っていたのか

「・・・安心しろ、傷つけたりなんかはしない
 お前たちを元の場所に戻すだけなんだ」

言葉は・・・通じているみたいだ
威嚇していたのがふっと止まる

「・・・ソラボシの名のもとに、天界の門よ、開け」

ふわりと白い光が猫又と、その子供をつつみ、光の中へと消えて行った
・・・猫又は、いったい最後の瞬間、なんていったんだ
妖怪は人間の言葉がわかるのに、人間は妖怪の言葉がわからない

それは、助けを求めていたとしても、助けを求めていることを理解されないってことだ
最悪、傷つける奴だっている
だから、時々星の力がうらやましくなる


初めての時こそ、あいつは苦しがっていたけれど、
今では妖怪と話せてうれしいと笑うあいつをみると、自分にもそんな力があれば、なんて思ってしまうんだ



「さすがだね、お見事だよ」
「・・・げ、」

頭上にはDr蓮杖がいた。
こいつには以前、ひどい目に合わされたことがある
まあ、昨日わざわざ謝りに来たからそこまで怒っていないとはいえ、
どこかサドのような感じをにおわせるこいつは苦手だ

そういうところは真と似ているかもしれない


「そんなに僕のことが嫌いかい?」
「・・・用件はなんだ」

「さっきの会議でチームが決定してね。
 君は蓮杖班に入って北側から妖魔塔に入るんだ」
「お前、S級だったのか」
「お前じゃなくて蓮杖さん。班の名前からわかるとおり、僕が一応リーダーなんだよ」

「・・・蓮杖さん、あんたS級なのに科学者なのか?」
「まあね。けど、戦闘には参加しない。僕は指示を送るだけ」
「は?」
「君らが注文した妖怪を集める場所を考えたり、物を作ったり、
 こっちも大変だから」

「・・・リーダーなのに?」
「・・・そう。悪いね。でも僕がいなくても、僕の班は十分強い」

「・・・何を隠してる」
「別に、何も隠しちゃいないよ。・・・ん?」


ふと、蓮杖の目が俺の足元でとまった
みてみると、威嚇する小さな猫又だった
さっき、一緒に送り損ねたのか

「お前さっきの猫又の子供か?今すぐ送ってやるから・・・っ!」
「あ、」

思い切り指にかみつかれる
案外力が強い。
指を何度も何度も噛み、牙を立ててくる


「こら!それ以上彼を傷つけるなら、」

蓮杖がナイフを取り出すと、ひどくおびえたように猫又は震えた
けれど、それはすぐになおって、さっき以上の力で噛みつく


「やめろ、威嚇させるな」
「何言ってるんだ、さっさと牙を抜かないと、」
「俺は平気だ。・・・こいつはたぶん、俺に親をどうにかされたと思ってる」
「っ、」

指をかみ続ける猫又の目を見ると、ひどくおびえているのがわかった
おびえているのに、その牙は食い込んだままだ


「・・・お前の母親を俺は殺してなんかない。みんな黄泉の国に行ったんだ。
 死んでない、生きてる」

そういってもまだなお毛を逆立てている
必死で言葉を探して口に出した

「お前は仇討ちのためなんだろ。仇をうつ必要なんてない
 ・・・ずっと噛んでるの、痛いし、苦しいだろ
 俺もお前も、お互いいい思いなんてしない。だからやめておけ
 俺は、傷つけたりなんかしないから」


そういって小さく微笑むと、噛む力が緩んだ
そして、そっと口を離す

「よし。・・・ごめんな、悪かった」

母さんが持つ猫又の誰よりも、こいつは小さい
優しく頭をなでてやると、小さく鳴き声を出した
何かを・・・伝えようとしてるのか?


「・・・悪い、俺は、お前の言ってることがよくわからないんだ」

自分で言って、ため息をつきそうになった
感謝してくれてるのか・・・?よくわからない。勝手な想像だ


「ちょ、空君、血がすごいよ。はやく止血しないと・・・」
「いや、いい」

持ってきていた飲み水を手にかけて血を落とすと、もう傷痕しか残っていなかった


「え・・・・」
「昔、任務でしくじった時にかけられた呪いだ。便利だけどな
 ・・・気持ち悪いか」
「・・・いや、すごくいい力だ」


そういって蓮杖は笑った
残った傷跡を猫又は治そうと、必死でなめてくれていた

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.44 )
日時: 2016/03/24 14:13
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by真>

「はあ・・・・」

ついさっき、赤間部の一ノ瀬直矢(いちのせ なおや)から、一ノ瀬班に入り、南側から妖魔塔に入ると知らされたばかりだ
赤間部は白井部の次に人数が多い

悪い妖怪は倒すけど、第一に人間を守りたいという考えの人が集まってできている組織だ
別に考えがどうとか、そういうことを言いたいんじゃない

任務だし、お金をいただいているから仕方がないものの・・・
僕はシロボシの空気が大嫌いだ
あちこちでギスギスした感じの心の声があふれている

醜い。その一言に尽きる
人が多ければ多いほど、いいこともある分、汚いところも多い
だから、僕はあちこちをてんてんとするんだ
組織なんて、面倒くさい

ソラボシみたいなのは別だけど


そんなことを考えながらふらふらと行くあてもなく歩いていると、大きな公園のそばを通った
曲が公園から流れてくる
最近この国ではやっている曲だ
これは・・・吹奏楽かな


気になって公園に入り、人が集まっているところに行くと、制服を着た集団がさまざまな楽器で音楽を奏でていた
日本ほど、こういう部活動がはやっているところはない
あれは、高校生?

なら、すごくうまいところなんじゃないだろうか
聞いていてとても心地がいい
音楽に耳を傾けていると、ふと一本の楽器の音しか聞こえなくなった

綺麗な音だ、トランペットが美しい旋律を奏でていた
それがきこえなくなると、割れんばかりの拍手があたりをつつんだ


「ありがとうございました。藤城高等学校吹奏楽部のみなさんにもう一度大きな、」

急に、司会者の女性の声が止まる
ぶわりと女性の心の色が文字を作った

『苦しい辛い痛い助けテヤめてオネがいダカラ・・・!!』

次の瞬間、司会者の女性が叫び声をあげた
皮膚がおかしく変色を始める
これは・・・・・


「・・・悪霊が、乗り移っている、」

ざわめく人波を必死にかきわけてステージに向かった
あれは、やばい奴だ
本能がそう警告している

司会者の女性がけいれんをピタリとやめると、フルートを持つ女子高生に襲い掛かった

「え、」
「させない!!」

短刀をつかって女性の手首を切り落とすと、叫び声をあげた
それが合図になったように、観客やステージ上の生徒たちが一斉に逃げ出す
こちらとしては好都合だ、周りを気にせず倒せる


「・・・ねぇ、やめてあげてくれないかな。君の宿主、怖がってるんだよね」
『嫌だ。離れない、離さない』
「ああ、そう。・・・なら、こっちも手加減は、」

「いや、やめて!こないで!!」

悲鳴が耳に届き、振り返るとさっきやられそうになったフルートの子が座り込んでいた
その視線の先にはこっちが相手している女性と同じ、悪霊に憑りつかれた男性


「二体・・・っ!?」

鋭い爪が目の前を通過した
危ない・・・やられるところだった
早く倒して、あっちに行かないと・・・


「大丈夫!?」
「せ、千・・・」

戦いながら視線を向けると、さっきソロを吹いていた少女がフルートの子の所に駆けつけていた


「さあ、行こう!」
「あ、」
「くそ、」

もう男性が、斧を振りかぶっている
とっさに彼女はフルートの子をかばった


「召喚魔法・白の大蛇」

白い巨大な蛇は司会者の女性にとぐろを巻き、動きを封じる
くそ、間に合わないっ・・・

そう思ったときだった


ガキンッ!!

男性の斧がなぜか空中でピタリと止まった
短刀がその時間のおかげで男性に届き、腹部に突き刺さった


「ソラボシの名のもとに、天界の門よ、開け」

ふわりと男性と女性から光が出て、操り人形の糸が切れたように、二人は崩れ落ちた


「はあ・・・」
「よ、よかった・・・あ、あれ?大丈夫!?」
「・・・それ、気絶してるだけだと思うけど。彼女」

「へ?・・・あ、本当だ。良かったぁ・・・」


心底安心したというように溜息をつく彼女は、それと同時に手に持つトランペットを抱きしめた


「・・・大丈夫?」
「あ、はい。平気です」

ショートカットの髪を揺らして、彼女は不器用に笑った
手を見るとかすかに震えているし、目も涙の膜がうっすらとはっている

「怖いのに、よく友達を守ったね。信じられないけど、僕には」
「いけって誰かに言われた気がして・・・馬鹿みたいですけど」

彼女の持つトランペットを見ると、なんだか不思議な力が宿っているような気がした


「あの、本当にありがとうございました」

頭を下げる彼女を見て、僕はついさっきの出来事を思い出していた
さっき斧が止まったのは、いったいどうしてだろう
いや、止まったというより、止められた感じだった気がする

何か、見えない壁にぶつかったような、そんな・・・


「・・・僕は月影真。妖怪屋ソラボシに所属してるんだ」
「え・・・?」
「君の、名前は?」

「白神、千(しらかみ せん)といいます・・・」
「千、少し付き合ってくれる?」
「・・・へ?」


自分がおかしいなんてことはわかっていた
ただ、どうしても気になる
千が何者なのかを知りたい


まるで、彼女の音に感動したときのような感覚だ
蝶が花によっていくように、僕は彼女に魅せられていた

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.45 )
日時: 2016/03/25 14:08
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by朝日>

「高梨朝日君。あなたは妖魔塔の東側から夏目班と共に入って行動します。私の班の仲間を紹介したいから、来てくれるかな?」

夏目琉歌(なつめ るか)さんにそう言われたのは30分ほど前だ
琉歌さんに連れられて、今、僕は・・・


「・・・ここですか?」
「うん、ここだよ」

まるで魔女の館の様な洋館の前にいる
カラスの鳴き声はあちこちから聞こえるし、森の木々の葉がこすれる音はやけに低い

「さあ、ようこそ。蒼野部へ!」

ぎぃぃっ・・・

古い木の扉が軋むような音を立てて開かれる


・・・本当にこれは歓迎されているのかな・・・
絶対入っちゃいけない雰囲気がしている

「おっかえりー!」
「ただいまー」
「・・・おかえり」
「お、例の高梨朝日君か」
「あ・・・初めまして」

琉歌さんに抱き着いた女の人は咲季(さき)さん
空兄ちゃんにどこか似た雰囲気の男の人は圭人(けいと)さん
大人の男性という雰囲気を醸し出すのは奏真(そうま)さん
というように、琉歌さんは紹介してくれた

なんだろう・・・この人たちは、ソラボシと雰囲気が似ている
ソラボシの本部にはびこるおかしな緊張感と敵対心がここにはなかった


「騒がしい・・・何事だよ、」
「蒼野部長。高梨朝日くんです」

白衣を着た茶髪の女の人・・・この人が、蒼野香月さん
前会議で少ししか見ていなかったから、ちゃんと見たのは初めてだ


「高梨朝日・・・おおっ!ソラボシの!!」
「初めまして、あの、」
「よく顔を見せてくれ」

蒼野さんはまじまじと僕を見つめた
驚きと気恥ずかしさで、あっけにとられていると、蒼野さんは口を開いた


「よく・・・似ている。目元なんか、皐月にそっくりだ、」
「え・・・お母さんを知ってるんですか?」
「知ってるも何も、彼女は私の唯一無二の戦友だ。いいライバルだった」

「・・・そう、ですか・・・」

この人は嘘をついていない。
本当に、僕のお母さんと蒼野さんにはつながりがあったんだ


「君は・・・覚えてないか。無理もない。朝日は本当に小さかったからなぁ・・・
 会ったことがあるんだが」
「そうみたいですね」

「・・・ああ、そうなんだよ。ところで君はどうして私の言葉を信じられる?」
「・・・え?」
「何を根拠に、私を信じているんだ?」
「それは・・・」

なんていえばいいのか、わからなかった
言いたくない。ここで言えば、ソラボシのみんなにも知られる


「・・・やっぱり、そうなんだな。君は、ウソかホントかわかるんだ」
「っ・・・」
「コントロールはできてるみたいで、なによりだ」


「・・・お願いします、このことは秘密にしてください」
「どうして?」
「僕はこの力が好きじゃないから。それに・・・気持ち悪いでしょう」


「君の仲間は、君のその力を気持ち悪いって言うのか?」
「それは、言わないと思います。けど、」
「それに、君の仲間はその力にとっくに気づいてるはずだ」

「・・・え?」
「彼らも同じように生まれつき力を持ってるだろ。同族はすぐにわかるさ。
 隠すことなんてない」
「な、なんで・・・」

「・・・君たちは優しい。周りも朝日が自分の力を知られたくないと思っているなんてこと、気づいているからな。だから何も言わない」
「・・・・そう、か、」


「・・・まあ、気にすんな!」
「わっ!?」

背中をバシバシと叩かれて、髪の毛をわしゃわしゃと掻き回される
叩かれた背中は、じんじんと痛い
けど、優しい暖かさを感じた

「人なら悩み事の一つや二つ、あるに決まってるしな!
 立ち止まっているわけにはいかない」

蒼野部は少数精鋭で考え方はソラボシと似ている
人数が少ないから、家族みたいな関係になれるんだ

・・・そうだ、この人はどこか・・・お母さんに似ている


「そうと決まれば、特訓だ。皐月の息子だ・・・厳しくいくぞ」

・・・前言撤回。やっぱり似ていないかもしれない
野生の猛獣のようにぎらりと目を光らせた蒼野さんをみてそう思った

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.46 )
日時: 2016/03/25 14:27
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by明里>

私はシロボシの本部が好きじゃない
前まではこんなこと思わなかったのに、ソラボシのあたたかい空気と雰囲気に触れてしまったあとでは、ひどく冷たく感じていた

・・・そして、今はなおさらそうだ
正直怖い


「春井明里。君は今回の妖魔塔潜入の任務は西口から磯崎班と共に入る。いいな?」

いかつい口調のこの人は磯崎正人(いそざき まさと)
シロボシの中の白井部に所属していて、S級の中でも強い5人の中に入る

この人と話すのは初めてだ
目の前に立つと威圧感に押しつぶされそうになる


「怖いですよ、磯崎先輩」

染井君がちゃかすようにそういった。
何が嫌かって、こいつが同じ班だってことだ


「・・・お前はシロボシを抜けたんだったな?」
「・・・はい」
「・・・なるほど、そのことを気にしているなら、ただの時間の無駄だぞ」
「え?」

「俺はそんなこと、全く気にしていないからな」


・・・は?
わけがわからない。この人はいったい何が言いたいんだろう・・・?
そう思っていたとき、その場にいた隊員が噴き出した
大きな笑い声があたりをつつむ

「・・・何がおかしい」
「いや、先輩。励まそうとしてるんでしょうけど、全然伝わりませんって」
「・・・本当か」

「全然本人気付いてねぇし・・・」

・・・そっか。
この人、私が裏切ったってこと、自分は気にしていないから考えなくていいって伝えようとしてくれてたんだ・・・


「面白い人だろ。いかつくて威圧感ハンパないのに、ド天然」
「・・・うん」
「・・・あのさ、この間、悪かった」


染井君が深々と頭を下げる
あっけにとられていると、頭を下げたまま口を開いた

「シロボシをやめて、後悔してるかと思ったら、ずっといきいきしてて
 ・・・磯崎先輩、あんたのこと見込んでたから許せなかったんだ」
「・・・磯崎先輩が、どうして?」

「負傷した隊員治したの、春井さんだったから。とんでもない魔力量だ、うちにほしいってぼやいてたんだ」

染井君の磯崎先輩のマネは意外とそっくりだった
思わず笑顔がこぼれる

・・・S級の人たちは、こんなに仲がいいのか。知らなかった
不安しか感じていなかったのに、今はいくらか期待している


「ありがとう、染井君」

そういうと、彼は気恥ずかしそうに笑った

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.47 )
日時: 2016/03/28 13:43
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by星>

西田班に入ることを命じられてから一週間
訓練ばかりの毎日だった
そして、今も

ドサッ!


勢いよく草原に寝ころぶと、雲一つない青空が広がっていた

「はー・・・また負けた・・・」
「なかなか手ごわくなってきたわよ?星も」
「慰めとからないです・・・何十回ってやってるのに、五回か六回しか勝ててないし」

「だてにS5入りはしてないってこと」

大人っぽい笑顔がまぶしい
S5っていうのは、シロボシの中で群を抜いて強い人たちのことを総称してそういうらしい
メンバーは西田さん、蓮杖さん、一ノ瀬さん、夏目さん、磯崎さんの五人

そこまで考えて、ふと疑問が浮かぶ


「蓮杖さんって、シロボシの科学者じゃなかったんですか?」
「・・・あいつは、科学者でも隊員でもない。ただの役立たずよ」

西田さんの表情が曇り、吐き捨てるようにそう言った
彼女が感情的に何かを言うのはめずらしい
西田さんと蓮杖さん・・・この二人の間にはなにか確執があるんだろうか


「・・・はい、それじゃあ練習再開ね」
「あ、はい」


練習が終わった後、吹き抜けになっている廊下で休んでいると、空と蓮杖さんの声が聞こえた

「蓮杖さん、白井部長に言われました。剣術ならあんたに教えてもらえって」
「・・・白井部長も人が悪いな。僕は何年もブランクがあるし、S5なんていいうのは肩書に過ぎない」
「やってみないと、わからないじゃないですか」

「いくら白井部長が言ってたとしても、それは無理だよ
 ・・・僕は、刀を持つ資格なんてない」
「・・・は?」
「とにかく、ほかの人にやってもらうんだね。
 あ、薬を開発したんだ。ちょっと使ってみない?」
「お断りします」

「そっかぁ、残念だなぁ・・・」
「あ、おい!」

会話が途切れて、そっと覗きこむと、空とばっちり目が合ってしまった


「・・・聞いてたのか?」
「聞いてたって言うか、耳には行ってきちゃったって言うか・・・
 あーごめんなさい!盗み聞きです!!」

負のオーラが空から出ていることを察知して、正直に言うと、空は初めから正直に言え、と飽きれたようにいった
そういえば、空と話すのは久しぶりだ


「ところで、さっきの話なんだけど・・・」
「ああ、今日訓練してたら白井部長が来てな、シロボシで一番剣術が長けているのは蓮杖だから教えてもらえばいいっていわれたんだ」

「なるほど、それでさっき話してたの?」
「そうだ。それにしても、なんだか様子がおかしかった
 刀を持つ資格がないなんて・・・」

「・・・あ、そういえば」

私はさっき西田さんと話したことを空にそのまま伝えた
今の会話と、西田さんのさっきの言葉
お互いにある、この違和感
・・・話がつながりそうな気がした


「・・・なにかありそうだな」
「だね。・・・そうとなれば、やることは一つしかないよ」

私がそういうと、空はあからさまに嫌そうな顔をした
また何かやるのか、と顔に書いてある
そう、そのとおりだよ。空


「調査しよう。二人で」
「調査って・・・誰に聞くつもりだ」
「そりゃあもちろん、空の話を聞いて知ってそうな人は一人しかいないでしょ?」
「・・・なら、さっさと行くぞ」

「え?う、うん」


「・・・どうした?お前が行くって言ったんだろ」
「いや、いつもならここで小言の一つや二つ・・・ねえ?」

「小言を言っても、お前の突拍子もないことに付き合わなかったことはないだろ」
「・・・うん、そうだね」

「・・・なんだ、にやにやして気持ち悪い」
「べっつにー?」

空は怪訝そうな顔をしたけど、ふしぎと怒りは沸いてこない
ただ、多少会って話をしてないくらいで、私の相棒は変わらずに私と行動してくれる

それを知って、単純にうれしかったんだ
空が相棒で、私は幸せだ


・・・こんなこといったら、空は絶対照れて、しばらく口をきいてくれなくなるから言えないけど


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