複雑・ファジー小説

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妖怪屋は嫌われ者
日時: 2014/12/15 22:29
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)


この日本という国はある時から、死と隣り合わせの国になった
1999年。突然、空には黒い渦ができ、
その中からは恐ろしい妖怪たちが現れた

いきなりのことで、人間はなにも抵抗をしないまま一週間が過ぎ、
多くの人間が命を落とした
しかし、その黒い渦は特別な力を持つ人間に封印された
今、その黒い渦はどこにあるのかわからない


「あなたたちの名前はなんですか」
「・・・・シロ」

シロと名乗った5人の人間は、のちに奇跡のシロと呼ばれた
この世界に降り立ってしまった妖怪を倒すシロボシという施設をつくり
妖怪たちを退治する活動を始めた

今、シロはどこにいるのかわからない


『妖怪襲撃とシロ』



「・・・これ、最近よくテレビでやるよね」
「妖怪襲撃事件の日が近いからだろ」
「ふーん・・・あ、次の仕事は?」
「地縛霊のやつ」
「あ、それ結構数いるやつ?」
「ああ、そうだな」
「マジ?なら早く終わらせて・・・また、おかし作って」
「わかったから、ほら、行くぞ」
「はいはい」


シロボシとは違う、独立した妖怪退治をする者
ソラボシ、通称妖怪屋



設定

紅刻 星 こうごく せい 女 15歳
ソラボシのリーダー 紋章のついた赤いペンダントをつける
得意技は魔法を使った直接攻撃

月形 空 つきがた そら 男 15歳
ソラボシの副リーダー 紋章のついた青いペンダントをつける
得意技は剣を通しての物理的攻撃

一風 音葉 いちかぜ おとは 女 20歳
妖怪に関する情報屋 使い魔を何匹も持つ 主にソラボシに協力する

ケセランパセラン ぐー、ちー、ぱー
猫又 ニーナ、ニーカ、ニースケ、ニーコ などなど

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.28 )
日時: 2015/05/22 17:00
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

<by星>

あのあと、しばらくたってから朝日と明里が来た
二人とも音葉さんが起きているのをみたらまた泣きそうになってたけど
いつも通りの会話がそこにあった
・・・違うって言えば、空が音葉さんじゃなくて、
母さんって呼んでることだ
なんか、あんなの見た後だとほほえましいって言うか・・・

「空兄ちゃん、音葉さんのこと母さんってよんでる・・・!!」
「・・・まあ、母さんだからな、」
「なんで今までよんでなかった・・・?」
「いろいろあったんだ、いろいろ」

空は恥ずかしそうにしてそっぽを向く
なんか、面白い・・・
あの時のことが解決したわけじゃないけど、でも空は変われたんだ
ほのぼのとした空気が流れる中、突然病室のドアが開いた


「こんちわー!」
「・・・こんにちは、」
「っ、な、んで、」
「・・・奈良先輩、瀬戸先輩、」

空に変装していた人と、音葉さんを撃った人がそこにいた
服装はあの時と同じ戦闘服
警戒心が一気に高まった
ほのぼのとした空気は一瞬にして張りつめる

「みんなそろってそんな睨むなよ。・・・ほら、愛」
「・・・・」

愛って言われた人がゆっくり音葉さんの方へ歩いてくる
それを空がさえぎった

「・・・それ以上近付くな」

空がそういっても、相手は無視して近づいてくる
「空ノ神・星空」
空が剣を掴み、そのまま流れるようにして愛の首めがけて剣先が向かう

「空、やめなさい」

音葉さんの言葉で、空の動きがピタリと止まった
剣は愛の首に触れるぎりぎりで止まっている
どちらかが少しでも動けば、確実にあたる
空が動けばもう確実に愛の命を狩ることのできる状態だった

「彼女、攻撃をしに来たわけじゃないんじゃない?」

空は射抜くような視線で愛を見ていた
でも、音葉さんの言葉を聞いて剣をすっと消す
・・・確かに、攻撃をしに来たわけじゃないような気がする

「ええと・・・愛ちゃん、ね。なんの用?」
「・・・あなたみたいな、無関係の人を傷つけたから、謝りに」

ぶっきらぼうな物言い
でも、目がほんの少しうるんでいた
・・・強がってるけど、本当は深く反省してる
案外いい人なのかも

「・・・すみませんでした」
「いいのよ。・・・愛ちゃん、撃つとき少し躊躇してたでしょう?」
「っ、」
「本当はやりたくなかったんじゃない?
 ・・・その気持ちがあるならいいの。私も、今は大丈夫だから」
「・・・なんで、そんな簡単に許せるんですか」
「それは、私が愛ちゃんがいい人だと思ったからよ、」

直感だけどね、と音葉さんが後から付け足す
愛は震える唇をきゅっと結んでうつむいた
たまった涙が今にも零れ落ちてしまいそうだ
・・・本当に、優しすぎるぐらい優しい人だ
一つ一つの言葉が全部あたたかい

「・・・愛、もういい?」
「・・・うん、」
「なら、明里。帰るぞ」
「・・・え?」
「白井部長が戻って来いってさ。ほら、はやく、」

太一が明里の腕をつかんだ
「はい、ちょっと待った!」
私は二人の手を強引に引きはがす

「仲間を簡単に傷つけようとする奴らに、返すわけにはいかないよ」
「・・・って、いわれてもなぁ、」
「っ、」
「明里。・・・いっちゃだめだ、」
「朝日、」

「明里はどうしたい?」
「俺らと一緒に帰ろう」
「・・・私、は、」

明里は言葉を詰まらせながらも言葉を続ける

「・・・白井部のおかげで今までずっとこうしてこれた。だから、
 シロボシに帰るべきだ、」
「明里、」
「・・・っていうのは、わかってます。でも・・・ソラボシの人達と
 ちょっとの間でも一緒にいて、すごく楽しかった
 帰りたいと思うのは、ソラボシなんです
 ・・・だから、すみません」

明里はそう言い切ると、頭を深々と下げた

「・・・けど、明里連れてかないと俺ら怒られんだよなー・・・」
「っ・・・」

太一はしばらく真剣そうな顔で考え込む
でも、急にぱっと明るい表情で口を開いた

「ま、どうにかなる!」
「・・・え?」
「なんとなくそうだろうとは思ってたっつーか・・・覚悟はしてたし
 お前はソラボシにいたほうが強くなれる・・・って
 俺ら二人でも話してたんだ」
「・・・奈良先輩、瀬戸先輩、」

「うちには関係ないし。勝手に元気でやってればいいんじゃない?」
「・・・はい!ありがとうございます!!」
「・・・あ、あと。・・・死ねなんて言って、ごめん、」
「・・・え、」
「帰るよ、太一」
「え、あ!ちょ、待てよ!!」

二人はバタバタと病室を飛び出して行った
・・・なんだ、いいやつじゃん、二人とも

「・・・じゃ、明里はソラボシに入るってことでいいのかな?」
「でも、敵だったのに」
「帰ってきたいのはソラボシなんだろ?」
「・・・うん」
「なら、いいに決まってる!」

そういうと、明里は目を輝かせた

「よろしくね、明里」
「よろしく」
「よろしくね!」
「・・・・よろしく」

いつもの調子で言う明里の表情は笑顔だった

「よかった!同じ年の人がはいってくれて・・・」
「言っとくけど、あんたよりずっと強いから」
「ほんと?心強いね!」
「・・・ああ、もういい!」
「え?明里、なんで怒ってるの?」
「怒ってない!」
「怒ってるよ、ねぇ・・・」
「うるさい!!」

・・・また始まった
でも、これは見てて楽しいし、まあいいか

「いいコンビだね、あの二人」
「・・・そうだな」

空の表情もやわらかい
いいね、やっぱりこういうのって


「・・・それじゃあ、私たちは一度帰ります」
「うん、ゆっくり休んで。・・・空もね」
「けど、俺は、」
「私は大丈夫だから」
「・・・わかった」

空はしぶしぶっていう感じが丸わかりの態度を取っている
いや、普通きっとわからないんだろうけど、いつもよりもずっとずっと
表情が柔らかいんだ
だてにずっと一緒にいるわけじゃない

それが、私はすごくうれしかった

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.29 )
日時: 2015/06/14 21:24
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

病室を出てから、帰り道。
朝日と明里が話している後ろ姿を見つつ、私は口を開いた

「・・・ねぇ、なんか変だと思わない?シロボシの行動」
「確かにな。前ほどしつこく俺たちを倒そうとしてこない」

太一と愛のも、西田のだってなにもかもへんだった

「様子・・・私たちの強さとか、把握しようとしてるのかな」
「いや、たぶん・・・」
「たぶん、なに?」
「・・・まだ確信を持ててないから言えない」
「それでもいいって」
「よくない」
「・・・ケチ」

まあいいや、どうせ今日中には教えてくれるんだろうし
・・・ああ、それにしても、

「・・・今日は、嫌な予感がするなぁ・・・」

澄みきった青空を眺めて、そうつぶやいた
嵐の前の静けさのような、そんな感じで



「・・・ひま、」

外はもう夕日が沈み、薄暗くなっていた
何もすることはないし、嫌な予感も強くなる一方で
どうしようもない思いがぐるぐるとめぐる

「・・・・・・」

ふと、空のパソコンを打ちこむ音がなくなった

「空兄ちゃん、調べ物終ったの?」
「ああ。一応な」
「それで?なにがわかった」
「・・・それを話すと、かなり時間がかかるぞ」

「じゃあ、今はやめた方がいいね」
「・・・え?」
「星姉ちゃん?」

足音がもう近づいてきている
ひどく荒い呼吸音と、一定じゃない足音

どん!!

玄関の方から鈍い音が聞こえた
それから何度も何度も、乱暴にドアを叩く音
普通じゃない。私が行こうとすると、空が止めた

「・・・俺が行く」

そういって、部屋から出て行こうとするのを朝日が止めた

「僕も、行く」
「朝日?」
「なら、私も行く」
「明里まで、なにいってるんだ」
「じゃ、全員で行けばいいよ」

そういったとき、ひときわ大きな音がした
おそるおそる近づき、空がドアのぶに手をかけ、扉を開いた

「え・・・!?」
「瀬戸、先輩!?」

どさりと倒れこんできたのは、傷だらけになった瀬戸愛だった
血がぼたぼたと流れて、早く手当しないと危険だ

「いったい、なにがあったの?」

私がそう聞くと、彼女は必死に、力強く私の腕をつかんだ

「たす、けて・・・太一が、死んじゃうっ・・・・!!」
「奈良先輩が、」
「はやく、しないとっ・・・はや、く、」
「待て。とりあえずこの薬を飲むんだ。治癒の促進剤だ
 次の日つらいが、お前にはついてきてもらわないと困る」

愛はそれを迷わずうけとり、口の中にほおりこんだ
即効性だったみたいで、傷がいるみるうちになおる
呼吸が落ち着いてきたのを見計らって、明里が口を開いた

「・・・なにが、あったんですか?先輩、」

「・・・あんたたちと別れた後、任務を終わらせて本部に帰る途中で
 すごい魔力を感じた。だから、様子を見に行った。
 そしたら、見たことない妖怪がいて・・・・
 太一はうちをかばって捕まったんだ、」
「妖怪って、二人を倒すほど強いんですか・・・」

「どんな妖怪?」
「・・・真っ黒な翼がはえてて、すごくきれいな女の人
 八雲霊(やくもれい)って、いってた」

息がヒュッと詰まる

「・・・八雲、霊・・・」

なら、あいつだ。絶対に
体が勝手に震えだす
・・・昔戦ったことのある妖怪だ。
そして、私たちは負けて、そのあげく、呪いをかけられた
・・・その呪いに私たちは今もなお苦しめられてる

しかもあの時呪いをかけられたのは、私の読みの甘さと冷静さをかいた
ことが原因だった

「・・・おちつけ、星」
「・・・わかってる」

私は深呼吸して、落ち着かせた

「八雲霊は相手の霊力を奪う。あと数時間たったら、太一の命はもう
 助からなくなる」
「・・・行こう。愛、案内して」
「・・・ありがとう、」

「お礼は全部が終わってからにしましょう、瀬戸先輩」
「明里、」
「あの、すみません」
「朝日?」
「・・・お願いがあります、僕に銃を貸してください」

「・・・なんで」
「僕、この銃の音がすごく聞きなれている気がするんです
 ・・・今だけ、貸してください。お願いします」
「・・・いいよ。太一を助けるのに協力してくれるんだし
 ただし、うちの指示通りに撃って」
「はい!!」

「・・・そんじゃ、いくよ」


いつかは戦わないといけない相手だったんだ
そのいつかが、今日になっただけで。
・・・昔の何かを、今、吹っ切らないと

震えだしそうだった手をぎゅっと握りしめた

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.30 )
日時: 2015/07/05 22:50
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

ひどく風が強い
森のざわざわと草木が擦れ、揺れる音があちこちから聞こえてきた
暗いから、巨大な何かがうごめいているようで不気味だ
昔の忌まわしい記憶がじわじわとよみがえる

・・・嫌で嫌でたまらなかったから、奥深くに押し込んだ記憶
ゆっくりと、でも確実に鮮明になって頭に浮かぶ

「・・・近いな」
「・・・うん」

此処からでも感じる強い魔力と、におい、へばりつく様な空気の悪さ
それは前に感じたものと寸分違わない

「・・・もう、つく」

愛がうめくような声でそう言ったとき、ひときわ強い風が吹き抜けた
風に負けじと逆らって数歩歩くと、風が不自然にやんだ
目を開けると、まわりにはポッカリと空間が開いたようにその場所だけ
草原が広がり、湖があった


『・・・ああ、お久しぶり。星ちゃん、空くん』
「・・・八雲霊、」

皮膚がびりびりマヒしたみたいにしびれる
前よりも魔力が強い。そう感じるのは自然な流れだ

「・・・太一を返して。友達の大切な人なの」
『だめよ。この子も私のものになるの』

何もない空間から、ぐったりとうなだれた太一が現れた

「太一っ!!」

悲痛な愛の声がむなしく響く
それを聞いて、八雲霊は口が裂けそうなくらい口角を上げる
そして、太一の頬をいとおしそうにゆっくりとなでた
長い銀色の髪が、怖いほど美しい顔が、怪しくゆがむ

『おいしそうな子が、たくさんねぇ・・・』

ぞわりと鳥肌がたったのを無視して、私は口を開いた

「・・・倒してやる、」
『・・・坊やたち、相手をしてあげて』

草原から黒い、どろどろの何かがいくつも人の形になっていった

「空ノ神・星空」
「九尾の狐」
「造形・クナイ」
「指示する通りに撃って」
「わかった」

黒いものに向かって、一斉に走り出した

「鬼火!」

青い炎があたると、相手は簡単に蒸発する
一体一体は弱いけど、絶え間なく出てこられたらきりがないじゃんか

「かはっ・・・!?」
「明里!!」

朝日の銃が黒いものを捕えて倒す

「大丈夫か!?」
「っ・・・なに、これ・・・立てない・・・!?」

・・・ただの霊体じゃないってわけね
相手の力を吸収する力を持ってるっぽい

「朝日!明里を安全なところに!」
「了解!」

・・・それにしたって数が多すぎる
このままこいつらの相手をしてたら、八雲霊の思うつぼだ
八雲霊のいる方向に、周りの敵を倒しながら向かう

「星、なにを・・・」
「黒いヤツ、任せたから!」

うすら笑いを浮かべる私のトラウマは、もうすぐそこだ

「業火・罪火」
『・・・星ちゃん、あなたは、』
「っ、星!!」

火があと数センチで届くというところだった
目の前から八雲霊が消える

「なっ・・・」
「後ろだ、星!!」

後ろを振り向くと、ひどく凍てついた視線が私を捕えていた
はやく間合いをとらないと
頭でわかっていても、体は動いてくれなかった

「あ、ぁ・・・・」
『あのときと何も変わってないのね。・・・お母さんうれしいなぁ』

長い爪が私の額に当たり、昔の禍々しい思い出を無理やり引き出す
・・・あの時も、私は今みたいに突っ込んでいって、そして・・・

『新しい呪いをかけようか』
「ひ、」
「やめろっ!!」

空が私と八雲霊の間に割り込んだ
これも、あの時と同じだ。もし、全部が同じだとしたら、

『・・・来ると思った、空君』

八雲霊の手がすっと伸びる
・・・空が、呪いをかけられる
それを認識した瞬間、私の体は反射的に動いていた

「空、逃げて!!」
『その封印されてる、君の不幸を集める力を解放するよ』

パリンッ!!

「っ、」

空のペンダントが粉々に砕け散る
ショックで、息をするのを一瞬忘れた

『私は君たちにそれぞれ二つの呪いをかけたのを覚えてる?
 空君には不幸を集める力と治癒力増加。
 星ちゃんには幸せを集める力と妖怪の思いがわかる力
 二人とも重要なのを封印してしまうんだから』

いつのまにか、黒いものに私と空は囲まれていた

『厄介なのはあなたたちだけだから、はやく私のものになりなさい』

呼吸が落ち着いてできない
全身が心臓になってしまったみたいで、ひどく苦しい

「・・・星、」
「空、ごめ・・・」
「しっかりしろ。・・・まだ、終わってない」
「空・・・?」

「ここで倒さないと、俺たちは一生過去にとらわれたままだ」
「・・・けど、私は今もまだあの時から変われてなくて・・・」
「あのときと今、違うのはなんだ?」
「・・・え?」

「・・・まず、俺たちは二人だけで戦ってるわけじゃない」

バンッ!
黒いものが銃声とともに消えていく
いくつものクナイが飛び交い、黒いものを次々と消していく

・・・どこからやっているのかはわからないけど
朝日も、明里も、愛もいる

「あと、呪いを一つは使いこなせる。最後に、」
「・・・わたしたちは強くなった」
「・・・そうだ。ついでに奥の手も使ってないだろ」
「ああ、そういえば」

私は意を決してペンダントを握りつぶした
破片が手に刺さって痛いけど、そんなこと気にしていられない
このペンダントは魔力セーブの効力もある
つまり、これを壊した今、魔力のストッパーはない

「・・・はやく、太一を助けないとね。・・・行くよ、空」
「妖刀・悪霊」

星空の代わりにつかんだのは真っ黒な剣
空が一歩踏み出すと、大量の黒いものが空に襲い掛かった

「吸い込め」

空がそういうと、黒いものが一斉に剣に飲み込まれて行った

『そんな・・・私の坊やたちが、』
「好きなだけ飲み込め。ただ、暴走するなよ」

空の言葉に応えるように、剣は怪しく光る

『・・・返せ、私の・・・私の坊や!!』
「八雲霊、その坊やはあなたに支配されることなんて望んでないよ」
『なに、を、』
「その人たちにとって、あなたは憎くて大嫌いな女でしかない」

『ちがう、ちがうちがうちがう!!
 私の子供がそんなことを思うわけない!!』

黒い塊が私を包み込むように向かってきた

「・・・アマテラス」

アマテラスの力を借りると、黒い塊はきれいに蒸発して消えた
幸せしか集めない力もあるからか、悪は徹底的に寄せ付けないらしい

「八雲霊、あなたの罪をてらしてあげる」

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.31 )
日時: 2016/03/13 15:43
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

ひどくとりみだした八雲霊に向かって魔法をかける
すると、つんざくような悲鳴を上げた

『あ、あぁ・・・私の、坊や・・・』

八雲霊の姿がみるみる変わっていき、しわくちゃの老婆の姿になった
魔法で姿を変えてたんだ・・・

『・・・許さない・・・』

勢いよく八雲霊が襲い掛かってる
・・・前の自分だったら、おびえてたんだろうな
でも、今は違う

「・・・まかせたよ、空」
「カウンター魔法・破壊」

空の黒い剣からすさまじい量の黒いモノが噴き出て、八雲霊を襲った
さっきよりもずっと苦しそうな悲鳴を上げて、八雲霊は倒れこむ

「あなたの大切にしていた坊やにとどめを刺された気分はどう?」
『・・・なぜ、そんな風になってしまったの・・・?
 私は弱いあなたが大好きだったのに・・・』
「・・・変わってないなんてもう言わせない。変わってないのは
 八雲霊。あんたの方だよ」

『・・・そうね、そうかもしれない』
「・・・空、」
「ソラボシの名のもとに、開け、地獄の扉」

空が剣を突き刺すと、どす黒い空間が現れ、八雲霊を飲み込み始めた


「・・・さようなら」
『・・・さようなら?・・・違う、』
「っ!?」
「っこれは・・・」

私と空の手首に黒い物が巻きついた
八雲霊とつながるそれは、八雲霊が呑み込まれて行くと私たちを黒い
空間に近づける

『そう、私は変わってないの・・・昔から、あなたたちを自分のものに
 するって、決めたことは今も変わってないのよ?』
「っなにこれ、全然外れない・・・」
「俺たちの魔力を通じなくさせてるのか、」
「ばか、冷静になってる場合じゃないって!」

もう黒い空間はすぐそこだ
あれは地獄へ続く空間
入ってしまったら戻ってこれる可能性は限りなくゼロに近い

「伏せて!星姉ちゃん、空兄ちゃん!!」

反射的に伏せると、背後からクナイと弾が飛んできて鎖が切れる

「ありがとう、明里、朝日!」

地味に青あざになってるけど、まあいいや

『私の・・・私のものが、全て・・・・・』


髪をふり乱した八雲霊がかっと目を見開く
その赤い目を見た途端、体中に激痛が走る

「っ・・・い、たっ・・・」
『呪いをかけましょう・・・?一生その痛みにとらわれるの、』
「っふざけるな!!」

空が剣を構えたそのときだった
痛すぎて涙で滲む視界に黒い物が入り込む

「それは、かけられると困るんだよね、」

突然黒い布をまとった人が現れ、八雲霊の頭を掴みあげた

「・・・消えろ」

最後に、黒い空間に八雲霊を突っ込んでしまった
その瞬間、体中を駆け巡っていた激痛はさっぱりなくなる

「・・・随分、油断してるんじゃない?2人とも」

・・・聞き覚えのあるやわらかな低音の声
少し小ばかにしたような口調も、私は知っていた

「・・・まさか、真?」
「久しぶり。星、空」

黒い布をとると、少し大人びた月影真(つきかげ しん)がそこにいた
真は何度か一緒に仕事をしたことのある人だ
年齢は私と真よりも一つ上

っていっても、敬意よりか、同じ仲間って言う意識の方が強い

「げ・・・」
「星、大丈夫なの?」
「平気だよ、全然」
「空は?」
「・・・平気だ」
「へー、本当?」

真が一歩歩みを進めると、空が妖刀・悪霊を掴みなおした

「近づくな!」
「うわ、仲間に剣なんて向けないでくれる?」

・・・また、始まった
そんな風に思いつつ、私は倒れた太一を抱えて朝日たちのいる方に運ぶ

「愛、」
「太一!!」

愛は太一が無事なのを確認した途端ぼろぼろ涙を流した
・・・そうとう心配してたんだ
そう思うともらい泣きしそうになった

「明里、もう大丈夫?」
「平気。けど、あの人だれ?」
「空兄ちゃん、剣向けてるけど・・・」

「敵じゃないよ。月影真って言って、私と空より一つ年上
 前に何度か一緒に仕事してたこともあるんだけど・・・
 私たちも会うのは五年ぶりかな?」

そういい終わると、爆音が響いた
見ると、空と真の激しい攻防が繰り広げられている
空の剣と、真の召喚魔法によって出された竜とがぶつかってははなれを
繰り返している


「・・・あんなに戦ってるけど?」
「あれ、いっつもなの。その日一日最初に会ったとき」
「いつも?」
「見てれば分かると思うよ」

視線を向けると、空がちょうど竜を倒したところだった

「なんでそんなに嫌がるの」
「黙れ、されたくないからに決まってるだろ」
「これは挨拶だよ?そのくらい、させてくれたって、」
「それがされたくないって言ってるんだ」

空からは殺気と嫌悪感があふれ出ていた
そんなに嫌がることないのに・・・へるもんじゃないし
じりじりと距離を取ったままの二人を見てため息をついた

と、その時
ぶわっ!!

「なっ・・・!?」

空の背後から、突然黒いものが現れる
それはさっきペンダントを壊されたときに出てきたものと同じだった
そうだ、ペンダントは壊れたままだ・・・

「やば、い!」

反応が少し遅れて、私は駈け出す
その少しが致命的だったのは、駈け出した時からわかっていた
黒いものは今にも空を飲み込みそうで・・・
さっき剣でこれを飲み込んだけど、その技はそうとう魔力を使う

「くそっ、」
「馬鹿だね、油断してるからすぐこうなる」

白い光線が黒いものに直撃する
真の竜が食い止めてくれているみたいだった

「星、ペンダント早くなおして」
「あ、うん!」
「空もこいつら強いから、援護」
「言われなくても」

白い光線に青い光が混ざる
空の魔力が混ざっている証拠だ
ほんのり、空と私の壊れたペンダントが輝く
・・・よし、なおった

「空!!」
「ああ、」

空がペンダントをつかむと、黒いものが突然塵になって消える

「・・・ほんと、厄介な呪いだよね。っていうか、まさかと思ったけど
 ペンダント壊れてること忘れてるとか・・・」

真が小ばかにするように笑うと、空の眉間にしわがよる
あー・・・怒ってる

「・・・うるさい」
「あれー、助けてくれた人に言う言葉はそれですかー?」
「あ?」
「ほーら、ありがとうって言える?」

ぶちっという音が今にも聞こえてきそうだ
ここまで空を怒らせる人間は真以外に私は知らない

「・・・変わってないね、感情的になると君はすぐ周りを見なくなる」
「っ、」

さっきまで十分とっていた間合いが一気に詰められる
ここまで来たら、もう諦めるしかない

「はい、久しぶり。空」

真はそういうと空に軽くハグをする
空の顔は一瞬で青ざめて、私以外のほかの四人の目は点

「な、ななななな・・・」
「え、空兄ちゃん・・・え?」

明里と朝日の混乱しようは誰にも引けを取らない

「離れろ変態!!」
「うわ、変態って・・・人聞きが悪い」

剣を構える空からはもう殺気しか出ていなかった

Re: 妖怪屋は嫌われ者 ( No.32 )
日時: 2016/03/13 15:45
名前: 青い春 (ID: XkqMA9PN)

「え、なに・・・そういう関係?」

太一がぽろっとこぼした言葉を空が聞き逃すはずはない
空の鋭い視線に、太一はがらにもなく大きく震えた

「違う。次またふざけたこと言ってみろ、串刺しにするぞ」
「まあまあ・・・空、落ち着いてって。ほら、けが人だよ。仮にも」

私がたしなめると、空は渋々といった様子で妖刀・悪霊を消した
ふーっと息をつく空の様子から、相当体力を消耗しているとわかる

「空兄ちゃん、この人・・・・」
「さっきのハグは・・・?」

明里はおそるおそる質問を口にした
さっきみたいに怒るかもしれないと思っているのか・・・
明里のいつもの強気な姿勢はない

まあ、妖怪じゃない人間に対してあんな感情的になる空を見たのは
初めてだっただろうから、仕方ない
私にはただじゃれているようにしか見えないけど


「こいつ、帰国子女なんだ、今もいろんな国をてんてんとしてるから、
 ほとんどの国の言葉は話せる。移動してる中で、親しい奴とは
 ハグして挨拶する文化のある国に長い間住んでたらしくてな・・・」

それで、今もハグして挨拶だ
と、空は真を睨みつけながらそう言った
空はこの挨拶がどうもお気に召さないようで・・・

もともと全身を使ったスキンシップと無縁だからなおさらなんだろう
空曰く、真にハグされることは私にキッチンを汚されることの2倍は
いやなんだそうだ

もちろん、そういう文化のない国で女性にやることはないらしい
ただし、親しくてもハグをしない人間もいる

真に理由を聞けば、加齢臭の強烈な人とか、汗だくのデブとかにハグを
したいと思う?と返されて納得した
つまりさまざまな条件の中で空はハグできる親しい人間認定されている


「少なくとも、真は味方。召喚魔法の使い手で、実力も確かだよ」
「っていうか、この四人はソラボシに入った人達?」
「違う。明里と朝日はそうだが、あっちの二人はシロボシの人間だ」

「シロボシ?ちょうどいい。僕、シロボシに行くところだったんだ」
「え?何の用?」
「トップの三人にご報告だよ。頼まれてた依頼があってね」

もちろん、シロボシに所属しているわけではないけど、と真はつけたす
真はあいかわらずの無所属らしい

「・・・君らもついてくる?ソラボシさん」
「星、空・・・どうする?」
「僕は・・・どっちでも大丈夫だよ」

明里と朝日は私たちに選択をゆだねてくれている
本当は二人とも嫌だろうし、不安なはずだ
明里はやめようとしているところだし、朝日は何度か襲われてる
・・・でも

「・・・行く。いいでしょ?空」
「ああ。・・・・聞きたいこともあるしな」

聞きたいこと。それは山積みだ
それに、太一と愛の手当だって忘れてはいけない

「それじゃあ、全員で」

真は両手を地面につけて、ぐっと力を込める
真の一部三つ編みにされた髪が重力に逆らい、浮く


「転送魔法」



私たちはまだ知らない
この先に何があるのか
そして、

・・・・このままじゃいられないと、突きつけられることを




「・・・・な、に。これ・・・・・」
「は・・・・・?」

ついた場所は、確かにあのシロボシだった
でも、私が知っている、あの綺麗に整備されたシロボシは跡形もなくて
がれきが転がり、建物がところどころ壊れていた

そしてなにより、血を流し、傷ついた人が倒れていて。


「どう、なってんだ・・・・おい、おい!!」
「・・・ぁ、太一・・・・?」
「どうなって、何があったんだよ!?お前が、シロボシがなんで、」
「あ、あいつが来たんだ・・・アカボシが、」


・・・アカボシ・・・?
聞きなれないその言葉に私は眉間にしわを寄せた
太一のことを知っているらしいシロボシの青年は、太一の足をつかんだ

「頼む、ほかの奴を助けてやってくれ。あいつから守ってくれ、」
「わかった、わかったから、」

太一が言葉を続けようとしたとき、爆音が響き渡った

「・・・こっち」
「おい、星!?」

どこから音が聞こえたかくらい、わかる
後ろから聞こえる声を無視して、私は走った
爆音に混ざって聞こえた叫び声、悲鳴を見捨てられるわけがない

その場所にたどり着いて、吹きつけてきたのは熱風だった

「っ・・・・」


煙が消えて、遠くの方が見え始めたとき
誰かが立っている、一人・・・・女の子?
茶髪のツインテールの私と同じ年頃くらいの女の子

・・・そのはずなのに
やけに心臓の音が大きく聞こえる
なんで、こんな・・・・

女の子はゆっくり、ゆっくり私の方に振り返った
その少女の瞳を見た瞬間、私は手を無意識に握っていた

鼓動が早くなる
どうして、あの子の目を見ただけなのに



この時、私は確かに感じていた
ただものじゃないと、強いと。

初めてだった、戦ってもいないのに恐怖を感じてしまったのは


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