複雑・ファジー小説

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nameless world【名も無き世界】 祝!一周年!
日時: 2017/07/04 14:24
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

ある日、世界は誕生した。ある者によって……

ある日、宇宙は誕生した。ある者によって……

ある日、地球は誕生した。ある者によって……



ある日、全てが誕生した。ある者によって……



「世界は1つじゃない。別の世界に行って、無くしてしまえば良いが自分で創造するのも、悪くないな」





ある日、世界が終わった。

世界の名はネームレス。


普通の人間
何も能力を持たない人間。しかし彼らにも、強化人間や、サイボーグになれる道がある。

超能力者
普通の人間では不可能な能力を可能にする人間。遺伝により引き継がれる。

強化人間
元は普通の人間の体の部分の能力が飛躍的に強化される人間の事。人間が本来持つ機能を上げる事が出来る。人工によって強化人間になる。

サイボーグ
普通の人間の一部の体の個所をロボットに改造した人間の事。しかし、体の個所をサイボーグにしても良いと認められるのは、義足等の方々のみ。

アンドロイド
1から造られたロボットの事。何処から生まれたのか不明。普段は普通の人間のように過ごしている。人間側は、アンドロイドの能力に脅威を感じている。しかし、人間側もアンドロイドを制作している国も存在している。

未確認生命体
この世界が誕生してから、ずっと、存在している者。例:妖精等
人間に差別されてから、基本、人間の事をよく思っていない。人間側も未確認生命体の能力に恐れ撲滅を考えている。

オカルト
以上の点に属さない、まだ科学的にも証明不可の者

生物兵器
人間の手によって、造り出された兵器


この小説に出てくる様々な考えを持つ組織です。


大神型違法サイボーグ
この世界の混沌を目指している大神と言う者の部下。大神の裏切りは許されないが、裏切り者は実際に存在する。

名も無き教団
教祖と言う者が信仰している宗教。とは言っても、インチキである。信者と幹部がいる。インチキだと知る者は幹部と教祖。そして、創造主と言う生物兵器を創りだす事が出来る者のみ。しかし、信者にも、幹部に上り詰めて、信者を利用しようと言う者はいる。

神の元のアンドロイド
神と自ら名乗る者に従うアンドロイド達。此処に属しているアンドロイドは、人間を管理するべきだと考えている。例外も存在する。

神以外のアンドロイド
基本は人間にバレないように大人しくしている。しかし、中には、人間を撲滅する考えを持つ者や、組織を造ろうとするアンドロイドもいる。

暗殺部隊
政府により構成された部隊。しかし、一旦崩壊してしまうが、警視総監が再構成しようと言う事で暗殺部隊が復活。様々な考えを持つ人物がいるが、警察の言う事は基本聞く。勿論、聞かない者もいる。

刑務所・施設
刑務所は犯罪者が捕まって来る所である。施設は、強力な超能力者や極悪犯罪者、違法サイボーグ、アンドロイド、オカルト関連者、未確認生命体が入っている。

未確認生命体
人間の世界とは違い、結界に包まれた世界。王と呼ばれる者が、支配している。王としての考えは、弱者である人間を見守る事が未確認生命体である強者の役目と言う方針である。ゆえに、人間との交流を拒む。

人間の世界にいる未確認生命体
脱走して、人間の世界にいる未確認生命体。

ノーエスパー
インターネットで結成された超能力を持たない者の集団。最近は、今無き青い星と言うゲームの集会のようになっている。

名も無き高校その一
普通の高校。

名も無き高校その二
名も無き高校その一から少し遠い高校。

その他
これらに属さない者達。何でも、構いません。


目次は、>>522>>753です。>>522が文字オーバーの為、目次の続きは>>753になりました。


登場キャラは、>>535 です。



追記 siyarudenさんとモンブラン博士さんとバラバラさんが、名も無き世界のスピンオフを執筆してくれる事になりました。


モンブラン博士さん作:サディスクラブの離反者。

siyarudenさん作:名も無き世界【Nobody knows the stor】

バラバラさん作:暴走した愛は何を見る?【名も無き世界】

全て、複雑・ファジー小説にて連載されております。

この度は、この小説のスピンオフを執筆してくださりありがとうございます。

物語は完結しましたが此方の素晴らしい作品も是非ご覧ください。

これからも応援宜しくお願いします。

追記2 この度、6月30日にオリキャラ募集を終了します。今まで、オリキャラを提供して下さった方々、本当にありがとうございました。

オリキャラ募集を終了する理由としては、本編を終わらせる為です。(外伝等は執筆予定)


未熟な所もあったと思いますが、これまで応援して頂きありがとうございました。


追記3 6月30日で、この小説のオリキャラ募集は終了します。

未熟な私に今までオリキャラを提供してくださった皆様には本当に感謝しています。

これからも応援宜しくお願いします!

追記4 11月中で完全完結!&一周年!今後の予定は、リメイクや外伝を書く予定です。

Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.218 )
日時: 2016/02/29 16:06
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

病院の入り口に全力で走る白樺がいた。

「……あいつは」

武藤は白樺の後を追った。

「あ〜ひゃひゃひゃひゃ!珍しいね〜。武藤が勝手な行動を取るなんてね。ファントム君、武藤を追わなくても良いのかい?」

黒獅子はファントムを見ながら笑う。

「いえ、作戦通りですね。さっき走った人の名前は、白樺 和人さん。花霞 叶多の存在を知る関係者です。武藤さんは白樺さんの記憶を変える為に行ったんですよ」

ファントムは黒獅子が勝手な行動をしない様に黒獅子の腕を掴む。



一方、雲に乗っている、芽小折、霜月、桐生と花霞は……。

「あ、あれは何でガンス!」

芽小折は、ある方向に指を刺す。


そこには、巨大なドラゴンがいた。



「システム解除。直ちに、あの少女を救うぞ。津田」

右目の無い男が隣の男に呟いた。

「ブライアン。……どの雲に少女がいるんだ?」

津田は双眼鏡でのぞく。

「意外に皆さんって重いんですね。背中がかなり痛いです」

スライムの形状をしたドラゴンはそう言って飛んでいる。


武藤は白樺の後を追った。

そして、手術室では、照山が倒れていた。

照山の前に一人の女性が現れる。

「蓮嶺」

其処にいたのは奏雲 梨琉だった。






「ドラゴンも想定内かい?」

「……想定内ですね。まあ、ドラゴンが来る事は予測してませんでしたが、策はあります」

ファントムはドラゴンの所へ行こうとするが、黒獅子に止められる。

「折角、面白くなるんだから、僕達は見物しようよ!」


一人の人物がファントムと黒獅子に向かって話す。

「お前ら、暗殺部隊だろ?さっき、武藤と言う男と話していたからな」






一方、ドラゴンと雲は。



「ねえ、こういう時は、逃げるのが一番だよ。未来予知で私達は、花霞を取られるから」

桐生はドラゴンを見る。

「でも、一瞬だけ、私戦うね!だって、戦いたいんだから……!」

霜月がそう言って飛び上がる。

ブライアンと津田は霜月に銃を向ける。

桐生は機関銃をドラゴンに向けて撃つ。

ブライアンと津田は一部のスライムに包まれ、後のスライムが桐生の方に向かう。

芽小折が雲を増やし、スライムに向かって叫ぶ。

「穴あき雲!」

穴のあいた雲が出現して、スライムに触れた瞬間、スライムの身体に穴があいた。

桐生は機関銃をスライムに向けて撃つ。

スライムは自分の身体を硬くして銃弾を防ぐ。

そして、スライムから槍の様なモノが色んなところから生え、槍を桐生達に向けて発射する。

その後、スライムは霜月の所へ行く。

芽小折は雲を発生させ、攻撃を防ぐ。


霜月は鉤縄を使い、ビルの屋上に移動する。

ブライアンと津田はスライムによって、ビルの屋上に投げ飛ばされる。

霜月は鉤縄でブライアンと津田に向かって投げる。

津田とブライアンは銃を霜月に撃とうとする。

霜月は鉤縄を津田に巻き付け、津田をブライアンに、ぶつけようとする。

ブライアンは避けるが、津田はそのまま外に投げ出される。

一つになったスライムが津田を包み込む。


芽小折と花霞を運ぶ桐生が霜月の所へ行く。

「楽しいなー戦い。早く、殺してあげたいよ」

霜月が狂気の目でブライアンを見つめる。

芽小折は津田を包むスライムを見る。

直後に巨大な雲が現れ津田に向かって覆う。

「これで、スライムの動きはあの男ごと封じたぺシ。残るは片目が無い奴のみダ二!」

「これが戦闘経験の差か。だが、一人だけ、戦力を外しているやつがいる」

ブライアンがそう言った途端に桐生は花霞に銃を向ける。

しかし、タイミングが遅く花霞は目を開き、能力を発動させ、霜月と桐生と芽小折を吹き飛ばす。


実は花霞は霜月に連れていかれた時から目覚めており、津田のテレパシー能力により、指示を受けていた。

「彼女がいなかったら、俺達はまだ、施設の中だった。俺達に脱獄のチャンスを与えた花霞を我々は全力で救済する」


芽小折は雲を用意して、霜月と桐生を転落から防ぐ。






一方、ファントムと黒獅子は……。

仮面を被った者がファントムに向かって殴りかかる。

ファントムは避けて、わき腹に蹴りを入れる。

黒獅子は少し遠くに行って見物している。


「貴方は何処かのプロレスラーに似てますね。自分がヒーローだと勘違いしたんですか?」

膝蹴りを仮面を被った者にする。


黒獅子は寝ながらファントムが殴る様子を見る。

「あの攻撃の方法は、武藤に似ているね。いや、同じかな?」






一方、武藤は通りすがりの人物を殴っていた。

「明らかに、既存の記憶とは違う。私自身が記憶を改ざんする理由は無い。とすれば、考えられるのは、同じ系統の能力を持つ者」

そう言って通りすがりの人物をさらに殴っていた……。

「おい、武藤何してんだぁ!」


丁度、川宮が居酒屋を探している途中に武藤を発見した。


Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.219 )
日時: 2016/02/29 17:41
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

ブライアンは花霞の所に来て逃げる。

「ブライアンさん.....津田さん達は....!」

「あいつ等なら、問題無い」

津田を包んでいた雲の隙間からスライムが出て来る。

「津田さんは、雲を操る者を排除したら、雲が無くなるので、その時を待っていてください」

桐生は機関銃を向けながら話す。

「作戦の範囲外だし、私は、逃げた方が良いね♪移動移動!!」

桐生は雲に乗り何処かへ逃げる。

「……ズバリ桐生が逃げたと言う事はこの戦いは負けるのでしょう!」

「ふ〜ん、それじゃ芽小折は、花霞を追ってね。私は、このスライムと死なない程度で闘うから……!」

「私は、任務を優先しますダテ。……霜月。またな……!」

芽小折はブライアンの方向へ走る。

「私の名前は、ダイラタンシーです。ちゃんとした名前があるんですよ」

ダイラタンシーは人型になり霜月の所へ行く。

ダイラタンシーは腕の部分をそれぞれ二つに伸ばし、鎌を創り上げる。

「忍者の貴方には、死んでもらいましょうか?」

ダイラタンシーは腕である鎌を伸ばし霜月に向かう。

霜月は華麗に鎌を避けダイラタンシーの目の前に行き、兜割りと言う武器で、ダイラタンシーに当てる。

ダイラタンシーの一部が針の様な形状に飛び散り、霜月に向かう。

霜月はすぐに逃げる。

ダイラタンシーの背中から、スライムで出来た翼が現れる。

霜月は忍者刀を取り出しダイラタンシーに向かう。

翼から無数のトゲが現れ霜月に向かう。

霜月は忍者刀でトゲを打ち返す。

霜月は焙烙火矢と呼ばれる爆弾をダイラタンシーに投げる。

ダイラタンシーは、爆弾と思わずトゲで焙烙火矢を刺す。

途端に焙烙火矢は爆発する。

「……死んでないね」

「しかし、効きましたよ。ええ、まあ、これ以上は無駄なので、帰らせて頂きます」

ダイラタンシーは飛び出し帰ろうとする。

「……!逃げちゃうんだ。折角、楽しくなってきたのに!」




芽小折は倒れていた。

花霞達を見つける事までは出来たが、花霞に吹き飛ばされ気絶している。

桐生が傍にいる。

「気絶すると、能力が無くなるから、雲も無くなるんだね」






霜月の目の前には、津田が立っていた。

「お兄さん、死んで?」

「……フッ。俺……いや、俺達は簡単には死なない。何故なら、生きる執念を持っているからだよ」

ダイラタンシーは、芽小折を探していた。

芽小折を殺せば、雲も無くなると考えたからだ。

しかし、タイミングが悪く、ダイラタンシーが芽小折を見つけようと思った瞬間に、芽小折は気絶した。


津田はダイラタンシーをテレパシーで呼び出していない。

「……君みたいな奴がいるから、この世界は血まみれなんだよ。何故、戦うんだ。何故、争うんだ。……何故、秩序を必要としないんだ」

「皆、殺し合いが好きだからよ!」

「日常を崩壊させてまでもか?」

「私にとって、日常は血まみれ」

「成程な。なら貴様は私と同じく死んだ方が良い。我々の理想に相応しくないからな」

「貴方も死ぬ?どう言う事なのかな?馬鹿なのかな?」

「血に汚れているのは、君も私も同じだ。そう言う者に秩序の世界は相応しくないだろ?」







Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.220 )
日時: 2016/02/29 19:06
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

仮面を被った者が倒れる。

「超能力を使うまでも無いですね」

ファントムが仮面を被った者の目の前に行く。

ファントムは、暗殺部隊が敵に襲われているのに気付く。

「成程、君は時間稼ぎですか。しかし、捨て駒達は何をやっているのですかね。女子高生の一人も連れて行けないなんて、くだらない連中ですね」

「……な、仲間も大切にしない奴が、この世界の秩序と名乗っている。……笑わせるな」

仮面を被った者は立ちあがる。

「お前達のやっている事は、正義の名の元に非人道的な事をしているんだよ。お前らは犯罪者より酷いんだよ」

ファントムは仮面を被った者を蹴飛ばす。

仮面を被った者は、血反吐を吐く。

「お前等の秩序は間違っている」

「君達のくだらない思想を押し付けても困りますね」

「本来の秩序は……皆が平等で笑っていて、誰も傷つかなくて、誰も損をしなくて、誰も泣かなくて済む……そんな世界のはずなんだ」



ファントムは、笑顔で仮面を被った者に殴りかかろうとする。

その時、病院の入口が開かれる。

其処に立っていたのは、照山と奏雲だった。

ファントムは照山と奏雲に笑顔で向かって歩く。

「お医者さんですよね?良かったです。此処で血まみれになって倒れていたんですよ」

二人はファントムの笑顔で油断していた。

ファントムは首の裏をチョップで叩き気絶させる。

「やっぱり、相手を笑顔を見せて、油断させる方法は便利ですね。黒獅子さん」

「お〜!暗殺者らしいね」

すると、突如照山が起き上がり、ファントムに向かって銃を撃つ。

ファントムは紙のように薄くなり、避ける。

奏雲が歌う。

「ねえ、君はうそつき。

だから、君は呪われる。

それで、君は失う。

なにを、君はある事をする。

そして、君は……」

奏雲は照山と仮面の者を連れて逃げる。

突如、ファントムは倒れる。


其処には武藤が立っていた。

「彼には呪いがかかった。そして、その記憶を消去した。これからの彼の活躍に支障が来たす恐れがあるからな」

黒獅子はファントムを覗き込む。

「しかし、ファントム君は強いね。天使のような可憐な笑みで相手を一瞬で油断させるんだから。僕達には無い、暗殺能力だね!それで、奴らをどうするんだい?」

武藤はある方向を向く。

「川宮が奴らの後を付けているから、問題無い。川宮はこういう事に関してはプロだからな」



Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.221 )
日時: 2016/03/01 15:21
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

川宮は照山達の後をつけていた。


「まさか、照山さんが本当に裏切るなんてなぁ……。あぁ、悲しいなぁ……」



一方、桐生と芽小折と霜月は、武藤と黒獅子とファントムの元へ帰っていた。

桐生は気絶していた芽小折を運んでいた。

「芽小折って重いね。途中で、ビルから叩き落としたくなったよ♪」

霜月はボロボロになりながら、津田を連れて来ていた。

「こいつが、花霞を奪おうとした敵だよ!しかも、アンドロイドだし!」

武藤はファントムを起こす。

「……どうして、ボクは寝ているんですか。……ボ、ボクの作戦が失敗したんですか?そ、そんなはずは……!」

「大丈夫だ、ファントム。全ては想定内だ。現在、川宮が照山達の尾行をしている。照山達は必ず拠点へ向かう。川宮が照山達にバレなければ、我々は照山達の拠点を知る事が出来、攻撃が何時でも出来る」

「武藤さん。……次の作戦は必ず成功させます。期待してください」

「ああ、参謀役として、我々に指示を与えてくれ。後は、色んな可能性を考えるべきだ。有り得ない事でも有り得てしまうのがこの世界だ。此処は君がいつも戦っていた闘技場では無い。此処は……戦場だ。君の能力は私を越えている。君ならすぐに分かるはずだ」






桐生は霜月に話しかける。

「武藤って何か、変わった気がするね。あんなに面倒見、良かったっけ?」

霜月はクナイで津田を殴っている。

「キャハ♪アンドロイドってこんなに丈夫なんですねー!……武藤さんが変わったのかなんて、一、二回会っただけじゃ分かりませんよ!」

黒獅子の傍に、高速で川宮が辿り着く。

「どうも、川宮ですが、申し上げますっ!……拠点を見つけました」

黒獅子は能力を使い、腕から氷を発生させる。

「さて、第二ラウンドだね……!」







第二十四章 名も無き戦場 完

視点変更

次へ続く

Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.222 )
日時: 2016/03/01 18:53
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

第二十五章 名も無き林檎






「……成木さんが、いなくなりました!」

「い、急いで親族に連絡を!」








此処は、警察病院では無く、普通の何処にでもある病院。


「どうやら、実家には帰っていないようです」

「……成木 林檎さんを危険な状態になる前に絶対に探しだせ!」














此処は、とある部屋。


「おい、御堂の奴が捕まったみたいだ。俺達もそろそろ、まずくないか?」

「ああ、しかも、御堂のおかげで、今まで、詐欺もバレずに済んだのに……」

此処は、詐欺グループの拠点。



「……!おい!騙した金が……全部無くなっているぞ!」

「はあ?な訳無いだろ?……嘘だろ?……まさか、若城 迎(わかぎ むかえ)の奴が……」









男は走る。自由の為に。

女は走る。自由の為に。

男は走る。これからの夢の為に。

女は走る。これまでの夢の為に。





男は街の外れにいた。

そこには、果樹園が一面に広がっていた。

「此処まで、逃げれば、大丈夫か……」

男はリュックを背負っていた。リュックの中身は、詐欺で騙した金。


男は橋を渡ろうとしていた。

その道中に、橋の手すりに座っている女がいた。

女は歌う。

「新しい朝が来た 希望の朝だ
喜びに胸を開け 大空あおげ
ラジオの声に 健やかな胸を〜♪」

途端に女は気を失い、橋から落ちようとしていた。

男は咄嗟に女の腕を掴み、橋からの転落を防ぐ。


女は目覚める。

「あれれ???私、倒れてましたか!!!」

男は驚いている。

「倒れてましたかって……倒れたら、橋から転落して死ぬ所だったんだよ。……どうして、そんなに笑顔でいられるんだ」

男は女の格好を見る。女の格好は、裸足で病衣だった。

「君、病院から……」

女は笑いながら男を見つめる。

「そう!!私、病院から脱走して来たんです!!!やっと、コンクリートの箱から飛び出せたんです!!!」

男は携帯を取る素振りを見せたが、携帯を元に戻す。

「……救急車とか警察とか呼ばないんですか???まあ、私は全力で逃げちゃいますけど!!!」

男は笑っている女を見ている。

「俺には、呼べない。何故なら、俺は……逃亡しているからだ」

女は笑っている。

「奇遇ですね!!貴方も逃げているんですか!!!……で??何から逃げているんですか?」

男はリュックを隠す素振りをする。

「……同じ、病院だよ。俺は、ちゃんと計画して脱走した。だから、ちゃんと服も用意して着ているし」

女は目を輝かせていた。

「本当に同じだったんですね!!私、大分感動してます!!でも、服なんて着れれば良いじゃないんですか??」

男は動揺していた。

「いや……あの、病衣だと、すぐに病院から脱走したと言う事が分かると思って……」

女は男の格好を見る。

「まあ、そんな細かい事は置いといてさ!!これも何かの縁だよ!!病院から脱走した理由とか色々聞きたいし、私自身も行きたい場所がいっぱいあるからさ!!私と一緒に旅行しようよ!!……最初で最期のね」

女は男の腕を引っ張り、何処かへと行く。

男と女は、公園にいた。

男は女の方を向いた。

「……君の超能力って何だい?」

女は常に明るく男に接する。

「無いよ!!私には、超能力は無いんだよ!!」

「超能力が無い人なんて聞いた事無い。まさか、君はアンドロイド?……もしかして、違法サイボーグとか!?それとも……」

男は女から少し離れる。

「人間じゃないとか超能力者とかアンドロイドとかサイボーグだとか、案外どーーでもいいことなんだよ!!!」

それから、女は話す。

「ねえ、そういえばさ。貴方の名前って何?」

「俺の名前は、若城 迎……」

「私の名前はね!!成木 林檎!!」



若木は空を見る。

「それで、どうして君は、病院から脱走したんだ?」

「私、今、19歳なんですけど、20歳まで生きられるかどうか分からないってお医者さんに言われたんだ!本当は、最期まで生きる事を諦めないで、病室にいるべきなんだけどさ……。最期くらい、外に出てみたかったんだよ!!それで、君はどうして病院を脱走したの??」

若木は言葉に詰まり、話題を変える。

「いや、まず……死ぬの?」

「は〜いっ!その通り!!私もうすぐ死ぬんです!!でも見てください!!ピンピンしてます!!ぶっちゃけ今めちゃくちゃ人生楽しいです!!」

成木は元気な素振りを見せる。

「……そ、そうか……」

若城は得意の嘘で、成木を騙そうとしていた。

「俺は……。俺も……死ぬんだよ。うん、死んじゃうんだよ……でも、あれ、すぐにと言う訳じゃないよ?……うん、そうそう」

若城は成木が超能力が無いと嘘をつく程、凄い超能力を持っていると勘違いしていた。

「え〜っ!!!でも、まだ私みたいに一年後とかじゃないから良いよね!!」

若城は少しだけ罪悪感に襲われた。

成木はブランコを見る。

「私は、死ぬなら、大空の中で死にたいんだ!!だって、最期に見る景色が、真っ白な天井って、あまりにも悲しいからね!!」

成木はブランコに乗る。

「私、ブランコって初めて乗るんだ!!……こんなに楽しいんだ!!」

成木は子供のように、ブランコで遊んでいた。

成木は話す。

「君も考えた事あると思うけど。病気なんかにならなくて、普通に生きていたら、私の人生ってどうなっていたかな〜って!!」

若城は、咄嗟に頷いていた。

ブランコは大きく振れる。

「普通に友達が出来て、普通に学校に通って、普通に外で遊んで、普通に……親友や恋人が出来たりしてさ!!」

若城は、小さく頷いていた。

「……でも、生きる事の大切さを学んだから、良いんだ……!!君もそうだよね?」

「ああ!そ、そうだよ!」

若城は、成木の隣のブランコに乗る。

若城は自身の人生を思い返していた。

友達と一緒に過ごした退屈な日々。学校に行っても、やる事は居眠りくらい。外で遊ばず、一人で家の中でゲーム。親友も恋人もいたけど、金の為に騙し、裏切った。


若城は外の世界の汚れを知らない成木を見つめる。

「ねえ、今日、私たちが出会ったのって……運命かな!!まあ、運命じゃなくても、出会ったのは変わりないから、ぶっちゃけどうでも良いんだけど!!!」


若城はリュックを自分の太ももに乗せ、抱きしめる。

若城は大きな罪悪感に包まれていた。

「成木さんの病気ってどうにか、ならないんですか?」

「どうにか、なっていたら、脱走なんかしないよ〜!!でも、脱走して良かったよ。死ぬ前に、私の気持ちを知る事が出来る君と会えたからね!!」

「……お、俺も良かったよ」


若城は金を放り投げても、この場から去りたかった。

罪悪感は若城の感情を支配していた。

しかし、成木と一緒にいると言う事で、何かが起こっても絶対的な安心が勝っていた。

彼女の超能力は、警察を恐れない程の強力な能力のはずだからだ。

そんな事を考え、その場から動けずにいた。

だが、実際は気付いていた。

彼女には超能力が無い事を。

自分でも、何故、自分に嘘をついているのかが、分からなかった。

彼はまだ、恋に気付いていなかった。





「ねえ……死ぬまでで良いからさ!!私と一緒に逃げない?これも何かの縁だし!!」

冗談まじりで、成木は笑っていた。




「ああ……。逃げよう。俺達は何処へでも行ける。何故なら、自由だからだ!!!」



「……そうだね!!私達は自由だから!!!」










「おい、若城の奴を見つけたぞ。女と一緒だ」

「……先回りして、金と命を奪うぞ」





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