二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【完結】ハピネスチャージプリキュア!〜最悪バッドな始まりを〜
- 日時: 2017/02/04 21:50
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
初めましてか何度目まして!ひのりです!
新年ですね!
今日からは、ハピネスチャージプリキュアの小説を書きたいと思います!
以前一度書いたことがありますが……あれは少し……黒歴史です←
今回のはそうならないようにしたいですねw
それでは、よろしくお願いします。
- Re: ハピネスチャージプリキュア!〜最悪バッドな始まりを〜 ( No.24 )
- 日時: 2017/01/14 23:18
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
「夜空に煌く希望の星!キュアフォーチュン!」
私は名乗り、腰の辺りに生えている翼を生やした。
そして、一気にサイアークの元に飛び、右の拳を撃ち付けた。
拳は、サイアークの黒い体にめり込む。
さらに、私は左、右、左と連続で拳を撃ち、サイアークを追い込んでいく。
「氷川……ッ!?」
その時、私の名前を呼ぶ声がした。
振り返ると、そこでは、影野君がこちらを見ていた。
「影野く……ッ!?」
一瞬、取り乱してしまいそうになった。
しかし、すぐに平静を取り戻り、サイアークに回し蹴りを放って蹴り飛ばす。
それから、影野君の元に飛び寄り、彼の肩を掴んだ。
「なんでここにいるの!?危ないから隠れててって言ったじゃない!」
「いや、そんなこと言われてないし……」
「あれ?そうだっけ?」
「言ってない」
影野君の言葉に、私は記憶を蘇す。
……あぁ、確かに言ってないや。
「ごめんなさい。つい、言ったと思ってて」
「いや、それは良いけど……あっ」
その時、影野君は私の後ろの方を見て、声を発した。
私は、咄嗟に彼の体を抱きかかえ、そのまま前に跳んだ。
直後、背後で何か重いものが地面に当たる音がした。見ると、サイアークの足が僅かに道路を抉っていた。
「ッ……話は後。今は下がっていて」
「あ、あぁ……分かった」
彼は、そう言うと立ち上がり、後ずさる。
私はすぐにサイアークと対峙すると、「星の力を聖なる力に!フォーチュンタンバリン!」という掛け声と共に、フォーチュンタンバリンを出した。
そして、そのタンバリンを片手に舞い踊る。
「プリキュア!スターライトアセンション!」
掛け声を言いながら、紫色の鎖と星を纏った金色の閃光波を放った。
これで浄化できる。そう思った矢先、サイアークはその光を弾き飛ばし、私に蹴りを放ってきた。
「カハッ……?」
口から吐息が漏れ、私は近くの建物に背中を打ち付けた。
鈍い痛みが走り、私は膝をつく。
顔を上げると、そこには、少しずつ近づいてくるサイアークの姿があった。
「なんで……スターライトアセンションが……」
「フンッ。プリキュアと言っても、この程度の実力か。ぴかりが丘最強、とか言われているようだが、実力はあまり無いようだなぁ」
ブラックの言葉に、私はフラフラと立ち上がり、フォーチュンタンバリンを握る力を強くする。
せめて、めぐみ達が来てくれれば、プリキュア・イノセントプリフィケーションを使うこともできる。
きっと、サイアークが暴れていることが騒ぎになれば、それで……。
そう思っていた時、突然、サイアークの顔に黒い剣のようなものが刺さるのが見えた。
「……えっ?」
何が起こったのか理解する暇もなく、さらに、二本、三本と、黒い剣が刺さっていく。
飛んできた方角を見ると、そこには、一人の少年が立っていた。
「シャドウ……」
「どういうつもりだ!シャドウ!」
ブラックの怒声に、シャドウは特に反応も示さない。
やがて、シャドウが指をパチンッと鳴らすと、黒い剣が爆発し、サイアークの体ははじけ飛んだ。
「おい、シャd……」
「僕は、あくまで強い奴と戦うために、アンタと組んでるだけ」
シャドウは、そう言うと立っていた電柱から飛び降り、真っ直ぐ私に近づいてくる。
「今、僕が最も戦いたいと思っているのは……キュアフォーチュン。お前だけだ」
「っ……」
彼の言葉に、私はタンバリンを構えた。
浄化してやる……ッ!そう意気込んでいた時、彼は踵を返し、去って行く。
「え……」
「今日は、もう、戻る。……修学旅行ってのは、楽しむものなんだろ?」
その一言と共に、彼は消えていった。
ブラックは、その様子を眺めた後で、「では、私もおいとましておきますかねぇ」と言い、消える。
私は変身を解き、その場にへたり込んだ。
その時、見覚えのある三人が、飛んでくるのが見えた。
- Re: ハピネスチャージプリキュア!〜最悪バッドな始まりを〜 ( No.25 )
- 日時: 2017/01/15 21:49
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
「世界に広がるビッグな愛!キュアラブリー!」
「天空に舞う蒼き風!キュアプリンセス!」
「大地に実る命の光!キュアハニー!」
「……もう戦い終わったわよ」
「えっ」
やってきて、決めゼリフを言った三人に、私は冷静にツッコミを入れた。
それに、三人は少しショックを受けた様子で、変身を解く。
「いおなちゃん一人でサイアーク倒しちゃったの?すごいね!」
「いや、私が倒したわけじゃないの……ブラックとかいう、別の神様が出したサイアークなんだけど、すごく強くて、倒されそうになった時に、シャドウが……」
「えっ!?シャドウが!?」
めぐみの言葉に、私は小さく頷いた。
しかし、結局なぜ、彼は私を救ってくれたのだろうか。
そういえば、修学旅行がどうとか……。
「あっ!影野君!」
その時、めぐみがそう言って、手を振るのが分かった。
彼女が手を振っている方向に視線を向けると、影野君が、こちらに走ってくるのが見えた。
「影野君……えっと……」
「……もしかして、その三人も、お前と同じ……?」
影野君の言葉に、私は返答に迷う。
めぐみ達は、彼の言葉の意味がよく分かっていない様子で、キョトンとしている。
私はしばらく迷った後で、「実は……——」と事の顛末を話す。
「えぇー!?バレちゃったの!?」
めぐみの言葉に、私は頷く。
ひめとゆうこも大層驚いた様子で、それぞれ目を見開く。
「影野君……その、このことは……」
「分かってる。他言するなってことだろ?お前らの会話を聞いてて、なんとなくは理解してた。言わないよ。誰にも」
その言葉に、私は安堵の息を漏らした。
とりあえずは、一安心。まぁ、彼は元々口が軽いようにも思えないので、多分大丈夫だろう。
「ところで、ひめとゆうこはエキスカーションに戻らなくていいの?」
「あっそうだ!早く戻らないと、ヤバヤバいよ〜!」
ひめは、そう言うとゆうこの腕を引っ張って、走って行く。
結局戦わなかったし、無駄に移動させて申し訳なく思う。
「それにしても、なんだかんだでいおなちゃんと合流できてよかったよ〜。探してたんだよ!」
「ごめんなさい。ところで、他の男子三人は?」
「あぁ、近くにいるよ。私、トイレだって誤魔化してきたから」
そう言って、めぐみに案内され行ってみると、そこでは、男子三人がベンチに座って待っていた。
彼らは、私たちを見ると、遅いと口々に言った。
それに謝ってから、私たちは、近くのラーメン屋で昼ご飯を食べた。
影野君に感謝を言う暇もないまま、私たちのエキスカーションは無事に終わっていった。
- Re: ハピネスチャージプリキュア!〜最悪バッドな始まりを〜 ( No.26 )
- 日時: 2017/01/15 21:50
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
「それじゃあ、告白ターイム!」
二日目、夜。
お風呂も終わり、一時間程度の自由時間。
ひめとゆうこが私たちの部屋に集まり、四人で雑談をしていた。
修学旅行用のお菓子をつまみながら雑談に花を咲かせている中、ひめが、唐突にそう言い放った。
「告白タイム?」
「そ!好きな人を言うの!それじゃあトップバッターは〜!めぐみ!」
「あ、あたしぃ〜!」
ひめに指名されためぐみは、自分を指さしながら素っ頓狂な声をあげた。
そして、顔を耳まで真っ赤にして、しばらくモジモジしながら、「いないよ……」と小さな声で言った。
「いないって……好きな人が?」
「う、うん……そういうの分からないし」
めぐみは、そう言ってごまかすようにペットボトルの水を飲んだ。
「嘘だぁ〜!じゃあ当ててあげる!誠司!」
「ブハッ!」
しかし、あっさりひめが言ったために、そのお茶は空中に霧散する。
私は慌ててティッシュを出し、それを吹く。幸いにも水であるため、染みになったりはしない。
「な、なん……ッ!?」
「バレバレだよ〜?めぐみ、最近、誠司誠司言ってるし。今日のエキスカーションなんて、私たちを見た瞬間、迷子のいおな達をダシに誠司に話しかけるし」
「めぐみ、そんなことしてたの?」
ひめの暴露に、私はつい、めぐみに聞く。
しかし、彼女は顔を真っ赤にしてうつむくため、真実は分からない。
だから、ゆうこに聞いてみると、朗らかに微笑みながら、持ってきたハニーキャンディを口に含んでモゴモゴさせていた。
「あ、あたしの話はもう良いでしょ!?それより、ひめはどうなのよ?」
開き直っためぐみがそう聞くと、ひめはすぐに「いないよ」と即答した。
「いないの?」
「うん。だって、私は将来王子様みたいな、カッコよくて、強くて優しい人と結婚するんだも〜ん!」
「そんな人が実際にいるわけないのに……」
私があきれながら言うと、ひめは「いおなは夢が無いなぁ」と、頬を膨らませながら言った。
「そう言ういおなはどうなのさ?」
「私?私は、前にも言った通りいないわよ」
「え〜?あの転校生君じゃないの?」
「はぁ!?」
茶化すようなゆうこの言い方に、私は、つい喧嘩腰な返答をしてしまった。
それに、彼女はクスクスと笑う。まさか、私の反応で遊んでる……?
「もう恋愛の話はおしまい!それより……皆はさ、中学校卒業したら、どうするの?」
なんとなく気になったので、聞いてみる。
卒業後。きっと、私たちは、バラバラになってしまうだろう。
この先どうなるのか、少し気になった。
「あたしは……特に、何がやりたいってのはないけど、人助けが好きだから、それを生かした職業に就きたいな」
先に口を開いたのは、めぐみだった。
確かに、お人好しで、人の幸せを優先するめぐみらしい。
「めぐみちゃんらしいね。私は、家のお弁当屋さんを継いで、お姉ちゃんと、ファンファンと、お父さんお母さん。五人でずっと、皆にお弁当を作って、幸せにしたい。だから、調理の学校に行きたいな」
「ゆうこらしいね!私は、卒業したら国に帰る。ブルースカイ王国のプリンセスだし、ヒメルダとか、キュアクイーンなんて付けられてるからね。名に恥じない、立派な姫として、国を護るの」
「へぇ〜。皆、ちゃんと考えてるのね」
私は感心しながら、ペットボトルのお茶を口に含んだ。
「いおなは?」
その時、ひめが聞いてきた。それと同時に、ペットボトルが空っぽになる。
「何?」
「いおなは、どうするの?」
そう言われた瞬間、私は、一瞬返答に迷った。
卒業後……なんて、考えたこともなかった。
高校は、都内で一番偏差値の高い高校に行くつもり。全国模試での結果も良いし、先生だって、私なら確実に行けると言ってくれている。
でも、その後なんて考えてない。ただただ、ぼんやりとした毎日を過ごしていただけだ。
「……私は、まだよく分からない。とりあえず、高校は決めてるけど、それからどうしたいのかとかは、よく分からないの」
「ふーん……まぁでも、いおなちゃんなら、きっとどんな職業でもやっていけるよ!」
「そ、そうかしら……?」
「うん!」
めぐみは、そう言って「ねっ?」とゆうこやひめにも聞く。
すると、二人も大きく頷いた。
それだけ信用されているということに、少し嬉しく思いながら、私はお茶を飲もうとした。
そこで、ペットボトルの中が空っぽであることに気付いた。
「あっ……お茶がない」
「あ〜、飲み干しちゃったんだ。じゃあ、あたしのあげる」
「そんなの悪いわ。確か、一階に自動販売機があったハズよね?そこで、水か何か買ってくる」
私が、そう言いながら鞄から財布を取り出していた時、ひめが「じゃあ、ついでにオレンジジュース買って来て!」と言って、200円を渡してきた。
「何、それ……パシリじゃない」
「ついでだよ。つ・い・で!お釣りはあげるから!お願い!」
「ハァ……分かったわよ。じゃあ、ちょっと行ってくる」
手を合わせてくるひめにため息をつきつつ、私は立ち上がり、部屋を出た。
- Re: ハピネスチャージプリキュア!〜最悪バッドな始まりを〜 ( No.27 )
- 日時: 2017/01/16 21:21
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
「全く、ひめは友達を何だと思ってるんだか……」
私は、小さくため息をつきながら、古い自動販売機に小銭を入れ、オレンジジュースのボタンを押した。
やがて、ガタンッと音を立ててジュースの缶が落下するのと同時に、当たりのルーレットがグルグルと回った。
どうせ当たらないだろうと自分用の飲み物を買う金を用意していた時、機械から、『大当たり〜』という声がした。
「へぇ……これって本当に当たるものなのね」
感心しながら、私はお茶のボタンを押した。
ひめのおかげで、少し得しちゃった。
自分の金を出さなくて済んだことに、私は密かに喜んだ。
その時、機械が、また当たりを示した。
「えっ……また?」
不審に思いつつ、ついでに、めぐみにも買っておくかと、適当にジュースのボタンを押した。
すると、また当たりが出るので、ゆうこのお土産にと別のジュースのボタンを押す。
しかし、まだ当たりが出て、仕方なく、適当にお茶のペットボトルのボタンを押すと、ようやく当たりは止まった。
「この機械、壊れてるんじゃないかしら……」
そう思いながら、私は五本の飲み物を両手に抱える。
重い……というか、持ちにくい!片手に二本づつ持てば、四本までは楽に持てるだろうが、五本目はどうしようか……。
悩んでいた時、男子の部屋に上がる階段から、誰かが下りてくるのが分かった。
−−−
<シャドウ視点>
キュアフォーチュンが仲良くしろとうるさいから、歩み寄ろうとは思った。
しかし、目の前で枕を投げ合って笑ってる男三人を見ていると、彼等と親しくなろうとは思えなかった。
……一人になりたい。
「ちょっと、飲み物買ってくる」
僕は、どうせ聞こえてないだろうとは思いつつ、そう言い訳をして、部屋を出て階段を降りる。
一階に着くと、自動販売機があるロビーに近づいた。
そこには、何かを両手で抱える美少女がいた。
「あら?影野君!」
と思ったら、それはキュアフォーチュンだった。
プリキュアを美少女とか、何を考えているんだろう僕は。
「こんなところで何をしてるんだ?っていうか……」
視線を下げると、彼女は、両手で飲み物の缶やら、ペットボトルやらを両腕で抱え、かなり辛そうにしていた。
よく見ると、彼女は寝間着姿で、普段は下ろしている髪を後ろで一つに束ね、服は、ラフな感じのシャツとズボンだった。
「まさかお前……パシられてんの?」
つい、そんな言葉が零れた。
僕の言葉に、キュアフォーチュンは「違うし!」と反論する。
「ただ、ちょっと当たりが出過ぎただけ。多分、あの自動販売機壊れてるんじゃないかしら」
「そう……」
「ところで、影野君はどうしてここに?」
「一人になりたかったのと、飲み物を買いに来ただけ」
僕の言葉に、フォーチュンは「じゃあ、私邪魔よね?」と恐る恐る聞いてくる。
だから、それに首を横に振った。
「いや、お前と一緒にいるのは苦じゃないよ」
「そう?それならいいんだけど……」
彼女は、しばらく視線を彷徨わせた後で、「そうだ!」と言って、お茶のペットボトルを渡してくる。
「これは……?」
「今日のお礼、と……四本なら持ちやすいから、おすそ分け」
そう言って、彼女は優しく笑った。
その笑顔を見た瞬間、僕の胸は、ドキッと高鳴った。
なんだ?今の……。
「あ、ありがとう……」
「それじゃあ、私は上がるわね。皆も待たせてるし。明日もお互い、楽しみましょう?」
彼女は、それだけ言ってこちらに背を向けると、両手に飲み物を持って階段に向かっていく。
止めなくちゃ。なぜそう思ったのかは分からない。
でも、僕は息を吸い込んで、声を発しようと……———
「ひかっ……」
「へぇ〜?青春を満喫してるねぇ」
耳元で囁かれた声は、脳内に直接響くような感覚がした。
聞き覚えのある声に、僕の体は固まり、ゆっくりと振り返った。
「……ブラック……」
「プリキュアのあの子が、気になるのかい?」
ニヤリと笑いながら言われた言葉に、僕は「違う!」とすぐに否定した。
「顔が赤いし、説得力無いけどねぇ?」
ブラックの言葉に、僕は口を噤む。
反論する術はない。でも、僕はフォーチュンを好きになるわけ……。
『貴方は、私より長生きだから……』
一瞬、脳の奥が痛む。
僕は右手で頭を押さえ、数歩後ずさった。
「ぅぅ……ぁ……」
「ん?シャドウ、どうした?」
ブラックの言葉に返事する余裕もなく、ただ、頭の激痛が辛かった。
ついには、床にお茶のペットボトルを落とすハメになり、僕は両手で頭を押さえ、目をギュッと瞑る。
「ぅぁあッ……」
「……」
直後、頭の奥が痺れる感覚があり、僕は両手をダランと垂らした。
何も考えられなくなって、ぼんやりと前を見る。
「プリキュアと関わってから、頻度が明らかに増えているな……」
ブラックが何か言っているが、意味がよく理解できない。
しばらくすると、思考がクリアになって、僕はその場に立ち尽くした。
えっと、確か、キュアフォーチュンからお茶を貰って、それで……。
気付けば、目の前には誰もおらず、僕は、その場に立ち尽くしていた。
「おい、何してるんだ。あと五分で就寝時間だぞ」
教師の言葉に、僕は「あ、はい」と返事をして、床に落ちていたお茶を拾った。
その時、先ほどの、キュアフォーチュンの顔を思い出した。
『四本なら持ちやすいから、おすそ分け』
「……少し、可愛かったな、なんて……」
なんとなくひとり言を呟いてから、僕は自室に戻った。
- Re: ハピネスチャージプリキュア!〜最悪バッドな始まりを〜 ( No.28 )
- 日時: 2017/01/18 17:17
- 名前: ひのり (ID: uLF5snsy)
<いおな視点>
「わぁぁぁ……」
大阪にある、日本国内で二番目に人気の遊園地を前に、めぐみは目を輝かせた。
私は、昔空手の全国大会でこの近くに来たときに来たことがある。とはいえ、ほとんど覚えていないし、やはり、目の前にすると中々の圧巻だった。
一度見た事がある私でも呆然とするのだから、初めてのめぐみが驚くのも無理はない。
「よぉーし!たくさん遊ぶぞぉー!」
「めぐみはこっちじゃなくて!誠司〜!」
ひめは、めぐみの背中をズイズイ押しながら、遠くにいる相楽君を呼ぶ。
やがて、彼が走ってくると、めぐみの体を思い切り押した。
「二人で楽しんでおいで〜!私たちは三人で楽しんでるから!」
「えっ……えぇ!?」
驚くめぐみと、しばらくして状況を把握し、顔を赤くする相楽君。
しばらく二人はお互いを見合ったり、私たちを見たりを繰り返していたが、やがて、誠司が「じゃあ……行くか」と言うと、めぐみも小さく頷いた。
そして、私たちに「じゃあ、また」と言って、歩いて行った。
「なんか、初々しいねぇ。じゃあ私たちも行こうか!」
「残念。私は、ゆうこと2ショットだから」
なんとなく、いつだったかのクリスマスの時のように、私はゆうこの肩を抱いてひめに意地悪をしてみた。
すると、ひめは「えぇー!」と不満げな声を出した。
「フフッ、冗談よ。三人でまわ……」
りましょうか、と言おうとした時、遠くに一人で立っている影野君の姿を見かけた。
彼は他に、修学旅行で同じ班だった男子三名と一緒だった。
友達になれたんだ。良かった。
「いおな〜。どうしたの?」
その時、ひめがそう言ってきた。
私は、それに「なんでもないわ。行きましょう」と言って、二人と一緒に中に入った。
−−−
「わぁー!これ可愛い!」
遊園地の中にあるお土産コーナーを見ながら、ひめは声をあげた。
それに私は「あまりお金を使いすぎないようにね」と笑いつつ、キャラクターもののお菓子を手に取る。
道場の皆の分と、おじいちゃんの分。海外にいるお父さんとお母さんとお姉ちゃんは……いらないかな?とりあえずお姉ちゃんとはお揃いのフード付きタオルでも買っておこう。
そんな風に考えながら、視線を上げた時、ぼんやりとした様子で店内を見ている影野君を見つけた。
「影野君っ」
私が呼ぶと、彼はこちらを見て、少しだけ目を見開いた。
「お前は……」
「影野君達もここのお店に来てたんだ。もう何か買ったの?」
そう聞いてみると、彼は少し目を逸らして、「特に何も……」と言う。
「何も?」
それを聞いて彼の手に目を向けると、彼は何も持ってなかった。
同じ店内にいる他の生徒たちは、皆、袋とかを持っているのに、だ。
「何も買わないの?」
「あぁ。そもそも、何か買って、それでどうするというんだ?」
「どうするって……いつもお世話になっている人に渡したり、自分で持って、思い出にしたり」
私の言葉に、影野君は、理解できないと言いたげな表情をした。
お土産なんて買うのは当たり前だから、なんで買うのかなんて考えたこともなかったし……説明するとか、難しいな。
「なんていうか、助けてもらったりとかした人、いない?そういう人に、普段の感謝の気持ちとして渡したりとかするんだけど」
「……いや、いない……」
「……そっか」
そもそも、こういうものは強制するべきではないのでは、と少し思った。
これ以上色々言うのもアレなので、私はそれから「じゃあ良いの。それじゃあ」と言って、お土産を探し直すことにした。
「あぁ、でもそういえば、昨日からお前にお茶貰ったな」
その時、とんでもない爆弾が落とされた。
「はぁ!?」
「ホラ、おすそ分けとか言って渡してきただろ?そのお礼だったら、買おうかなって」
「ちょ、ちょっと待ってよ……」
あれはあくまで、怪我の応急処置や、私のせいで迷子になってしまったり、色々と迷惑を掛けたちょっとしたお礼だ。
しかし、そんなことを説明する間もなく、彼は、適当に近くにあったキャラクター物のキーホルダーを手に取った。
それは、赤いモフモフした生き物と、同じような見た目をしたピンク色の生き物のキーホルダーで、普通、こういうものはカップルなどで付けるものだ。
こんなものを私一人が貰っても……。
「女がどういうものが好きかとか分からないから、とりあえずこれで良いか?」
「えっ……でも、こういうのって、その……友達とかと分けてつけるものだし、私、貰っても渡す人なんて……」
そこで、なぜか頭にお姉ちゃんの顔が浮かぶ。
お姉ちゃんとお揃いにするのかぁ。でも、もうカゴにフード付きタオル入れちゃってるし……あ、でもキーホルダーはあっても困らないか。
「それじゃあ、俺が片方貰えば良いか?」
しかし、唐突に影野君が言うので、私は驚いて咽そうになった。
「えぇっ……ッ!?」
「ん?ダメか?」
「いや!ダメじゃないよ!全然!」
私が聞くと、彼は「そうか」と言い、そのままレジに持って行ってしまう。
そして、小袋を早速ビリビリに破き、「はい」と言って、ピンク色のキーホルダーを渡してくる。
「あ、ありがとう……」
私はお礼を言い、両手でそのキーホルダーを包み込んだ。
影野君と……お揃い……。
「すごく、嬉しい」
「ん?そうか」
彼は、そう言うとどこかに歩いて行った。
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