二次創作小説(新・総合)

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推しキャラの食卓
日時: 2021/04/19 17:06
名前: モンブラン博士 ◆HlTwbpva6k (ID: pRqGJiiJ)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

私の推しキャラが好物を食べまくる、ただ、それだけのお話です。
少しでも空腹になってくれましたら作者としてこれ以上嬉しいことはありません。

Re: 推しキャラの食卓 ( No.41 )
日時: 2021/09/07 20:18
名前: モンブラン博士 (ID: UB7mX/Qq)

白髪を螺旋状にした少女が、西洋風の椅子に腰かけ、机の上の食べ物を凝視する。
頬は紅潮し口から白く小さな八重歯を覗かせ、瞳が潤んでいた。
少女――藤堂ユリカの眼前に置かれているのは、ニンニクをたっぷりと入れた特製の醤油ラーメンである。ラーメンは速度が命であり、食べるのが遅くなればなるほど味は劣化し麺は伸びるという欠点が存在するのである。
しかし、ユリカは箸を手にしたものの、中々ラーメンに手を付けようとせず。
しきりに左右に視線を動かしている。彼女はファンが自分を見張っているのではないかと気にしているのだ。世にも珍しい吸血鬼キャラを貫くことで、独特の存在感を確立し唯一無二とも評されるほどになったユリカ。吸血鬼はニンニクを嫌う。その為、普段はトマトジュースのみを食し、それ以外のものは口にしないという徹底ぶりだ。
だが、それでは非常にストレスを抱えてしまうので、息抜きとしてたまには大好物を食べることでストレス発散をしているのだ。
だが、吸血鬼キャラなのに大嫌いなはずのニンニクを食べるなど言語道断。
ファンには絶対に見られたくない風景なのだ。
白い湯気が顔にかかり、にんにくの強烈な香りが鼻孔をくすぐる。
息が荒くなり、口からは涎が流れるほどの極限状態に追い込まれていた。
食べたい。食べたい。食べたい。

Re: 推しキャラの食卓 ( No.42 )
日時: 2021/09/07 20:25
名前: モンブラン博士 (ID: UB7mX/Qq)


「いただきまーす!」

長い葛藤の末に、旨味の持続時間に耐え切れず、ユリカはとうとう麺を掴まえ、豪快に啜り始めた。
ツルツルツルツル。
ジュルジュルジュルッ。
勢いよく啜るものだから、汁がはねて机を汚すが構ってはいられない。
今の彼女は全神経をラーメンに注いでいるのだ。
ちぢれ麺は噛むことは忘れさせ、口の中に運ばれては魔術のように消えていく。
続いて具材に突入した。メンマの堅さと柔らかさの両方を兼ね備えた食感を味わい、きくらげのコリコリとした弾力を鳴らし、チャーシューの肉汁と脂身を存分に味わい、まだシャキシャキ感の残るもやしを口の中で反芻した。
丼にあるのは麺も具も無い、ただのスープだ。

「ユリカ様を愚弄していると汁を吸うわよ!」

箸から蓮華に持ち物を変えると、ユリカは蓮華でスープを掬い、一口飲む。
醤油ベースの甘辛い汁の中に、ニンニクの旨味が溶け込み、疲れた体に活力を与えてくれる。ニンニクは昔から食べると元気になる食材として有名である。
ほうと恍惚なため息を漏らしたユリカだったが、一口、また一口と飲み進めるうちに、とうとう蓮華を傍に置き、両手で丼を鷲掴みにした。
細腕に万力の如し握力を込めて持ち上げると、礼儀も恥も外聞も捨て、感情の赴くままに汁を啜った。人間の血ではなく、ラーメンの汁を吸っているのだ。
ゴクゴクゴクゴク。
喉を鳴らし、丼に残るスープの全てを飲み干していく。
口の端から汁が零れるが、些細な問題はどうでも良くなっていた。
旨さの渦に彼女は溺れているのだ。
余ったスープを全て飲み終わり、丼を机に叩きつける。
肩と小さな胸を躍動させて荒い息を吐き出す。
まるでマラソンを全力疾走したかのような疲労感。
けれども実に爽快な疲れであった。
彼女は至福だった。快感と達成感の中で椅子に持たれた吸血鬼の少女は、ゆっくりと瞼を閉じ、遠のく意識の中で母であるカミーラの元へと旅立つのだ。

おわり。

Re: 推しキャラの食卓 ( No.43 )
日時: 2021/09/07 20:29
名前: モンブラン博士 (ID: UB7mX/Qq)

ひかり
「いらっしゃいませ」
千砂都
「ういっす! ひかりちゃん、久しぶり!」
ひかり
「千砂都さん。お久しぶりです」
千砂都
「たこ焼き、1パック貰えるかな。タコカフェのたこ焼きっていつ食べても最高なんだよね」
ひかり
「ありがとうございます」

千砂都は家に帰り、早速たこ焼きのパックを食べることにした。
小さな箱の中には六個の丸いたこ焼きが入っている。
そのうちの一つを爪楊枝で突き刺して、パクリ。
青海苔の磯の香りと中農ソースが互いを高め合い、大きく切られたタコが良い演出をしている。千砂都はパクパクと夢中になって食べ進め、気が付いた時には箱は空となっていた。口についたソースをペロっと舐めて、苦笑する。

千砂都
「やっぱりもうひとつ買っておいた方が良かったかなー」


Re: 推しキャラの食卓 ( No.44 )
日時: 2021/09/07 20:35
名前: モンブラン博士 (ID: UB7mX/Qq)

前髪を眉の上で切り揃えた少女は、こくりと小さく喉を鳴らした。
氷上スミレ。占いと紅茶が好きで、陶器のように白い肌と清楚な印象から、美人と評判の少女である。その美貌と歌唱能力を活かし、アイドルとして活動中だ。
そんな彼女には、友達にでさえ言えない秘密があった。
それは――

Re: 推しキャラの食卓 ( No.45 )
日時: 2021/09/07 20:47
名前: モンブラン博士 (ID: UB7mX/Qq)


「お待ちどおさまです!」

威勢よく運ばれてきたのはトンカツ定食である。
メインのトンカツとみそ汁、ご飯のついたごく一般的なものだが、スミレはこれが食べたくて食べたくて仕方が無かったのである。
脂ものはカロリーが高いため、スタイルを気にするアイドルにとっては天敵。
しかしながら溢れ出る豚の脂肪とサクサクの衣の誘惑は少女を虜にして離さない。普段運動しているから今日だけならば大丈夫なはずという言い訳を口の中で転がしながらも、やはり背徳を感じずにはいられなかった。
昼前で客が少ないとはいえ、友達の大空あかりや新条ひなきにさえ黙って、ひとりで店を訪れカツを食べるのは、ちょっと悪い気もしている。
しかし、クールな自分がカツという似つかわしくないものを食べているのを見られたらガッカリされるのでは?という一抹の不安がどうしても拭いきることができず、結果として彼女はお忍びで食堂に足を運ぶことを選んだ。
一番端のカツを掴む。
微かに震える手で、上品さを崩すことなくカツを噛む。
心地良いサクッとした衣の切れる音。厚い豚の食感と脂の甘味。
分厚いはずのカツなのに少しもくどく感じることはなく、柔らかく食べやすいのは店主が美味しいカツを提供したいというこだわりから上質な豚肉のみを厳選して使用している証拠だ。
胸やけ防止に合間にキャベツの千切りを食す。
それからご飯を食べ、再びカツを食べる。
時には味噌汁でご飯を流し込むなど変則的なパターンも取り入れる。
一つだけでは飽きが来るので変化も重要な要素なのだ。
上品に、けれど食欲には逆らわず。
綺麗にトンカツ定食を平らげ、口をナプキンで拭った。

「ご馳走様でした」

実力者であるスミレの強さの秘密は、ささやかな贅沢にあるのだ。


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