二次創作小説(新・総合)

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【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達【完結】
日時: 2023/04/09 16:57
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

【俺、まだまだ全然知らないんだ、トレセン学園のトレーナーのこと】

原作【ウマ娘 〜プリティーダービー〜】

中央トレセン学園、波乱万丈個性豊かなウマ娘達をまとめる大きな存在があった。


中央トレセン学園生徒会、生徒ながら理事長達に次ぐ実力と権力を持つ特別なウマ娘達。

【皇帝】シンボリルドルフ
【女帝】エアグルーヴ
【怪物】ナリタブライアン


それを導く事を許された選ばれしトレーナー達。

そして、シンボリルドルフのトレーナー、たくっちスノーがある使命のため、トレセン学園のトレーナーを知っていく物語。

【注意】
後々、結構特殊なウマ娘が登場します。
ここに出てくるトレーナーは原作キャラを除きほぼオリジナルです。
この作品はMMオールスターの実質的続編です、その為『あの人達がトレーナー』の為サイレンススズカとハルウララのトレーナーのメイン回はありません。
また、作者が持ってないウマ娘は出る確率が低いです、ご了承ください。

Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.46 )
日時: 2023/04/01 18:19
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

トレセン学園の職員室にて、一人の男が絶望していた。
この筆記試験の時点で、既に十人以上も落選している。
残酷だが、これが本来のハードルなのだ。

「………ふう、ひとまず筆記試験はなんとかなったか」

「が、こんなものレースで言えばまだ第1カーブに差し掛かったくらい……」
「ここで落ちるようじゃあ、到底無理だな……」

「さて……ここから先は運次第だな……」
たくっちスノーは、覚悟を決めた表情で次のステップへと進んで行った。

……
「次は面接です…といっても、それぞれに簡単な質問をするだけなので、気軽にお答えください。」

「1人ずつ呼びますので、呼ばれるまで待機してください」

アナウンスが聞こえる、どうやら面接が始まったようだ。
早い段階でたくっちスノーの番になった。
最初に呼ばれてたのは、あの人か。
そして順番が回ってきた。
たくっちスノーは扉を開ける。
そこには、たづながいた。
そしてたづなはこちらを見て言う。

「時間が押しているので、私達からする質問は一つだけです」

(一つだけ…簡単な質問と言っていたが、それだけで判断する以上やっぱりさっきのは社交辞令、真剣に、それでいて迅速に答えないと……)

「はい、よろしくお願いします」

「まず最初に…これは質問ではなく確認です、貴方が担当しているウマ娘は?」

「シンボリルドルフです」

「あの方が語る夢…全てのウマ娘を幸福の元に導く、我々職員から見ても途方もなく、1人で背負うにはあまりにも重すぎる……」

「その為に貴方がいます、貴方は彼女に対して何が出来ますか?」

(これが、俺に対しての質問……)
たくっちスノーは考える。
シンボリルドルフの事を思い浮かべながら……
そして、答えを出した。

「………」


「命を賭けられます」

「俺はあらゆることが出来ます、自分自身でさえも把握しきれないほどの全てを行うことが出来る、全てに変われる……それが、たくっちスノーという生物」


「そして、それだけの力を持った以上俺には責任がある。」


「俺もまた、ルドルフさんのようにこれだけの力を持ったものとして……目に映る物全てを守らなくてはならない責任がある」


「俺は……なにがなんでもあの人の夢を叶えてやりたい」


「いや……ルドルフさん以外にも抱えてる夢は多いが、俺は俺として生まれた以上、その全てを果たします」

Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.47 )
日時: 2023/04/01 18:22
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

答えた後、職員達は何も言わずに面接は終わった。
良い心境だったのか、それとも間違っていたかも定かでは無い。
「はい、ありがとうございました。」
「では次……」

そうして、たくっちスノーが終わった間にも次々と面接室に入ってはすぐ終わったり、時間がかかったりする。

たくっちスノーは折角なので、他の知り合い達のトレーナーの結果も確かめてみることにした。

………

「アグネスタキオンのトレーナーさん、貴方は…彼女を最大限に育て、その上で壊れるところが見たい……そう言ったのですね?」


「心配は無いさ、俺自身がそうだったように天才はヤワに壊れるものじゃないし、永遠に壊れないものなんてないんだ……」

「そう、使い古した洗濯バサミが劣化して割れるのと同じように……だからこそ」


「あいつの選手人生が目の前で死ぬところは」

「誰にも邪魔させない」
……

「シンコウウインディのトレーナーさん……貴方には、見てもらいたいものがあります。」

「貴方が作成し落としたと考えられるものであり、貴方が密かに勝手に作っていた隠し部屋から発見したものです」

「誰が発見した、とは言いませんが…ここに映っているものは一体どういう事か説明してもらえますか?」


……

「うおっ、なんだ!?パトカーの音が聞こえ始めたぞ!?」

試験中だと言うのに、サイレンの音と共に警察車両が学園内に突入してきた。
そして、警官達は面接の待機部屋へ突入していく。
そして、何人かが連行されていく。

(時空犯罪者が隠れてた……ってわけではなさそうだな、なんか見たことあるツラもいた気がするが気の所為ってことにしよう)

………

そして、数日後。
試験結果が高評価された。


「あ……あった!」
たくっちスノーは喜びながら、通知を確認する。
そこにはこう書かれていた。
ーー
合格。
トレセン学園のトレーナーとして、これからの活躍を期待しています。
ーー
たくっちスノーは喜んだ。
改めて、ようやくちゃんとしたスタートラインに立つことが出来たのだ……。

「………これで、またトレーナーとして活動出来る」

「……はずだよな」

Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.48 )
日時: 2023/04/01 18:25
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

実は今日、シンボリルドルフの姿を見ていない。
彼女だけではない、殆どのウマ娘が学校内で見かけないのだ。
今日が休日であるという告知も無い。
何か嫌な予感がする。
「……」

「お?お〜い!たくっちスノーじゃん」

「お前、なんでそんなところに突っ立ってんの?」

「……」

「あぁ!もう!無視すんじゃねえ!たくっちスノー!」

「うるせぇ!」

「俺に構ってる暇あったら自分の担当のことでも考えてろ!」

たくっちスノーは、背後から話しかけてくる男を吹っ飛ばす。
男は壁に激突し、そのまま気絶する。
たくっちスノーは、その場を後にしようとする。

………

「……」

結局、あちこちを回ったが見つからなかった。

「どうする……届けでも出すか?万が一時空案件だった時の為にあちこちに連絡をかけておいた方が……」


「たくっちスノートレーナー、どうしましたか」

「あ……樫本さん」

樫本理子が、今自身が居る所に来た。
たくっちスノーは、彼女に話を聞いてみることにした。

「………多分、把握してます?なんか今日、ウマ娘が結構居なくて……」

「その質問の前に、貴方はトレーナー試験に合格出来ましたか?」

「え?ああ、まぁ……一応、筆記と面接の方は」

「そうですか、なら貴方にも話しておいていいですね、貴方が抱えているものの為にも」

「はあ……」

「先に結論から言いますが、シンボリルドルフは今日1日ここに来ません、それ以外の今日見ない方々も全て」


その言葉を聞いた瞬間、たくっちスノーは驚愕の表情を浮かべた。
そして、すぐさま質問をする。

「来ない……ってのは?俺達トレーナーには言えない何かがあるのか?」

その質問に対して彼女は答える。
そして、答えた後の彼女の表情は暗いものだった。

「我々はウマ娘を導く責任がある、ただ私達が彼女達を選ぶのではなく、彼女達にも我々を選ぶ権利がある」


「トレーナー達には言ってませんでしたが、担当ウマ娘達それぞれに密かに伝えました 」

「改めて、その人達の担当としてこれからも一緒に夢を捧げられるか?と」

「つまり……合格しても、その担当がまた俺達と共に居てくれるかは限らない……俺達の面接みたいな事をしていると?」

「そういうことです、私も他の職員に頼んでココンとグラッセに同じことを」

「結局は改めて図り直して実力や人格が適正基準に達していたとして…真の問題は共に生きたウマ娘達の心境ですから」

たくっちスノーは、納得したような顔をして口を開く。

「そっか、じゃあ今日一日は1人で頑張らないとな」

「ちょっと安心しました、ありがとうございます」


「では、私は他の方の所へ向かうので…これで。」

Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.49 )
日時: 2023/04/01 18:28
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

シンボリルドルフ達に今日は会えない事が分かった、それなら……出来ることをしようと走る練習をしようと思った時……DVDが落ちていた。


「ん……これ、市販で売られてるダンスレッスンのDVDか」

「……見てみるか」

そして、彼はそれを見てみた…………

「なるほど……振り付けはこうやって、息切れしないように体力を整える動きは……」

(そういえば俺は、元々ルドルフさんにちゃんとした指導をするために自分から走ることを始めてたな)

(そしたら、自分だけの走り方やトレーニング……自分らしさをようやく見つけられて、走ることが、何より好きになって……)

「あー………」


………


「トレーナー君、トレーナー君」

「あ……?もう朝」

「いや、朝が終わる10時だ」

たくっちスノーは目を覚ます、すぐ側にはシンボリルドルフが居て、DVDが散らばっていた。

「あー……そういえばしばらくウマ娘達の方も忙しくて顔が見れんって事で、やることが無いから」

「36時間ぶっ続けでダンスレッスンとか全部見てて疲れたから1時間仮眠してたんだった……」

「君ほど不老不死を存分に活用している生物も居ないだろうね」

シンボリルドルフがたくっちスノーを引っ張り上げる。
そして、たくっちスノーは地面に倒れ込む。
彼の体は埃だらけになっていた。
そして、ルドルフはたくっちスノーに問いかける。

「どうして今になってダンスの練習を?」

「だって……俺、ライブにもろくに行けなくて悪いとは思ってたし、ダンスレッスンの方は全然出来なかったから」

「走る方だって真剣にやったんだ、スケジュールにダンスを加えることくらい、なんてことも無い」

「……あ、そういえば…ウマ娘達が改めて今のトレーナーと契約し続けるのか、みたいな話だったな」

「一応俺は選ばれた立場なんで、聞いときます」


「___このままで、いいです?」
たくっちスノーは少し緊張しながら質問をした。
それに対して、シンボリルドルフは微笑みながら答えた。

「実を言えば私も結構悩んだ、だから答えよう」

「私の夢を背負えるような存在はここでは君ぐらいで…」

「君の夢を追える存在は、私くらいだ」

「じゃ……」

「ああ、これからもよろしく」


こうして、シンボリルドルフとたくっちスノーは改めて今のまま再始動した。


………


「これで少しはトレセン学園も変われるんだよな?」

「ああ、再試験とは別で新規雇用もしたし……面接でも半分以上が落ちている、再契約を望まなかったウマ娘も少なくなかった」

「って事は………前に比べたらだいぶ比率は減ったってことか、まぁちゃんとしたヤツが増えて良かったよ」

「……だが、良かったことばかりでも無いのも事実だ…来れば分かる」

シンボリルドルフはたくっちスノーを生徒会室へと連れていく。そこにはエアグルーヴとナリタブライアンが居た。
シンボリルドルフはドアノブに手をかけ、扉を開ける。
すると、そこには…………
エアグルーヴとナリタブライアンが口論をしていた。
シンボリルドルフはそれを止めるように声を上げる。
しかし、それでも2人の言い合いは収まらない。

「おいどうした?西園寺と溶岩は……2人のトレーナーは!」


「ああ、彼らは普通に落ちた」

「普通に落ちた!?」

「そして……プロジェクト・シンギュラーもあり生徒会が動けないということは現状無理だ」


「そこで暫くは……エアグルーヴとナリタブライアンのトレーナーは君が掛け持ちということに……」



「…………」



「はい!!?」

Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.50 )
日時: 2023/04/01 18:31
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

一方、地方トレセン学園。

スターアベネスの片割れ、ベルとその担当であるログアサルトとログアサラナイトは新たな問題に直面していた。

「なんでこんな事になっちゃったんだろうね……」

「さあな」

「だるぅい……」
それは、チームメンバーをどうするかという問題だった。
そろそろ本格的なレースに向けての調整を始めなければならない。

というのに、親善レースのチーム戦を行うには2人では足りない。


「短距離、マイル、中距離、長距離、そしてダートの五部門……最低でも5人は必要なのに……」

「ま、親善でも中央の奴らとやりたいなんて奴はそう居ないからなぁ」

「じゃあヨソからスカウトすればいいじゃん?」

「簡単に言うけどねぇ……中央ならまだしも僕らそんな知名度があるわけじゃないから」

「……」

ベルが頭を悩ませているが、ログアサルトは既に結論を出していた。

「俺は……別に2人でもいい」

「え……いや、無理だよ!流石にチーム戦で2人は無理がある!」

「そうでもない、要はお前は短距離からダートまでの5種類で1人ずつ求めているわけだが……」

「俺たちでまとめてそれをやる」

「は!?」
突然の提案に驚くベルと、その提案にニヤリと笑うログアサルト。
しかしログアサルトの言葉はまだ続く。
それどころか、とんでもない事を言った。
それは……

「簡単な話だ、まず俺が長距離とダートに出る、短距離とマイルはアサラナイトが走り……中距離で俺達2人がまとめて走る、そうすれば全部門解決する」

「は!?アタシもそれやんの!?」

「短距離もマイルもすぐ終わるだろ」

「え〜めんどくせ〜」
と、文句を言うアサラナイトを無視して、ログアサルトはベルと向き合う。

「い…いや!それってつまり、2人でレース3つずつ連続で掛け持ちするって言ってるようなものじゃん!」

「1つのレースでも疲労は結構残るのに、それをぶっ続けなんてトレーナーとしては流石に止めるよ!」
ベルが必死で止めようとするが、ログアサルトは一切引く気はなかった。
そもそも、ログアサルトにとってこの提案自体は悪いものではなかった。
だが、ベルは違った。

「あのね、トレーナーとして止めるってのもあるけどさ」

「もしこのプロジェクト・シンギュラーで君が壊れるようなことがあったらどうする?」

「君の為にも言っているが、何よりベルさんの為に途中で止まってしまうようなリスクは何としても避けたい」

「……」

「でもメンバーが集まらない問題は変わらない……今更中止にも出来ないし、このまま変わらないなら本当に君達2人にやってもらうしか無くなっちゃう」

「誰かの願いを叶えればいいのかな……」

ベルが頭を抱えて悩み始める。
すると、今まで黙っていたアサラナイトが口を開いた。
彼女は何か考えがありそうな顔をしている。
そして、こう言った。

「そういやその話って、トレセン学園側は把握してんの?中央じゃなくてウチの所」

「え?そりゃもちろん、ベルさんがやりたいからと言っても何も話さず勝手にやるわけにもいかないし」

「そっか、なら分かってるか」



「地方の奴らは何があっても動かないよ、アンタにどんな願いでも叶えられる力が本当にあったなら尚更」

「だってそうでしょ?中央に勝てる可能性なんて無いんだから」

「……え?」
アサラナイトの言葉に、ベルが反応する。
彼女の言葉に、疑問を持ったのだ。

「待ってくれ、アサラナイト……君は何を言ってるの?」

「一から?1から説明しないとダメか?」

「ナイト、説明しろ…俺も少しだけわからん」

「………」


「何もしてほしくないわけ」

「え?何もしてほしくない?」

「そ、レースに対して真剣ではある、夢はある、けどそれは……向こうからすりゃ人並みでちっぽけなもんだけど、それが相応で相応しい」

「アサルトみたいなのが異例なんだよ、地方トレセンに来たのはそうやって、強い世界には挑まずそこそこで生きて終わりたいからみたいなのが多い」

「レースでわざと負けるような真似は永久追放は常識、けど真剣にやったところで勝てる相手でも無い、別に負け試合が嫌なんじゃなくて、勝てる見込みもないのにやるのが嫌いなんだ」

「だからそういうヤツらは、自分のレベルにあったレースをやる、それで満足する」

「だからアサルトもアタシも腫れ物になった……3人で、勝手にやるしかないんだけど」

ベルは、そこでハッとした。
確かに、中央のレースに挑むというのは無謀かもしれない。
しかし、それでも、この彼女達は挑戦したいと思った。

なら……

「………アサルトがしたいことは分かった、選択肢もそれしかないなら受け入れるしかない」

「だったらもう、極限まで壊れないようにするのがトレーナーとしてのベルさんの仕事だからね、レースは辞めるつもりはないし、今更辞められない。」

ベルとその担当であるログアサルトとログアサラナイトはこれからの方針を話し合っていた。
既にチームメンバーについては2人共承諾していた。
後は、このやり方でどうやってレースに勝つのかだ……


………
「トレーナー君、資料まとめあげたからそれぞれのファイルにしまってくれ」

「よし、分かった」

「おい、お前の部屋あまりにも汚れているぞ」

「また世界を出る時にまとめて掃除するっての」

「おい、肉が少ないぞ」


「うっせー!回鍋肉は野菜が多いもんなんだよ!」





「あーーーーーちくしょう!!」

「流石に手も足も回んねーよこんなの!!」

一方、中央トレセン学園も問題ばかりであった。

トレーナーの質問題を解決するために再雇用、再試験を行った結果…なんやかんやでたくっちスノーはシンボリルドルフだけでなくエアグルーヴとナリタブライアンのトレーナーも兼用しなくてはならなくなった。
たくっちスノーはシンボリルドルフ達生徒会の仕事を掛け持ちしているのでそちらの方も手伝わなくてはならない。
特に、シンボリルドルフに関しては生徒会長としての職務を全うしなければならないため、その分たくっちスノーが負担をある程度減らしているのだが……

「お前らん所のトレーナーはどうした!溶岩は!?普通に合格出来るくらいのスペックはあったろ!」

「あいつは……実は同業者が来てな、時空断罪者の方も再試験があるらしい、当分は他の世界に移動することも出来ないそうだ」

「じゃあ西園寺……は、聞くまでもないか」

「元々あのたわけは護衛人として動きやすい立場として生徒会のトレーナーを優先していていただけだからな」

「私と契約を解除したトレーナーは数多くあるから、その内の一人として溶け込むという選択肢を選んだようだ」

「なんつー開き直り……じゃあマジで、俺1人で3人なんとかしないといけないのか……」

シンボリルドルフのトレーナ、たくっちスノーは頭を抱えていた。たくっちスノーは、トレーニングメニューの考案、調整、スケジュール管理などは覚えたが、それ以外の事務仕事、特にシンボリルドルフ以外のトレーナー業務は殆ど経験が無い。
シンボリルドルフのトレーナーになる前は、陸上選手としての実力を認められてトレセン学園にスカウトされ、そのままトレーナーとなった。
故に、他のウマ娘のトレーナー業務をしたことは無い。
ましてや、エアグルーヴ、ナリタブライアンの担当をするのは今回が初めてであり、今まではシンボリルドルフのトレーナーとしての業務を行っていた。

「おい、肉は無いのか」

「溶岩は普段どうしてたんだ」

「よく分からんミート缶みたいなものを渡していた」

「そんな成分もよくわかんないやつウマ娘に与えんじゃねえよアイツも!あーもう……こちとら食費節約で自炊始めたのに……」


「全く……こんな調子で、プロジェクトは本当に進むのか?」

「相手は地方のウマ娘……と、単純な問題でも無いだろう?」

「ああ、スターアベネスに関しては私も以前から彼に話を聞いている、ログアサルトの実力もその場で見てきたかが、油断出来たものじゃないだろう」

地方との交流、また、学園同士の切迫感を共有し合い、お互いの技術を高めあうこと。そして絆と実力を深めるためにプロジェクト・シンギュラーは成功させたい、が……

「そのベルという男はトレーナーとしてはどうだ?」

「そこは分からん、ただ……あいつだって何かしらの勉強はしているはずだ、願いの力で何もしなくても合格とかはやらない奴だからな」

「トレーニング法で言えば、認めたくは無いが中央より遥かに上だろう」

「あいつは天才科学者ドクター・ジルトーによって生み出された存在で、あいつ自身も研究者としての手ほどきを受けている。」

「機材は最新鋭、いやそれ以上の物を用意して、常に研究を続けているんだろうな」


「あいつならウマ娘を想う気持ちは誰よりも強い、ルドルフさんを…俺を倒すためにここまでしてきた、どんな状況でも油断は出来ない」

「今回ばかりは俺も、凄く真剣にやらなければ負けるかもしれんと思ってるぐらいだ」

そう、この場にいる誰もが思っていた。
しかし、たくっちスノーは忘れていた。
スターアベネス…2人組のうち、もう1人を。


「おい、たくっちスノー……いるか」

「いるけど相手したくない」

「なんだ、新しいトレーナーか?」

「おや……確か君は地方で会った、スターアベネスのもう1人…確か『テネ』だったかな」

「そうだよ、お前何それ?ハーレム?」

「おう同じことチーム組んでるトレーナーに言ってみろ、マジで死ぬぞ」

「………で、なんだよテネ、俺今忙しいんだけど、他でもないお前のダンナとの真剣勝負でな」

「なんだ、ベルの奴は本気で1人でお前を倒す気だったのか」

テネと呼ばれた奴はニヤリと笑った。
その笑顔にたくっちスノーは少しだけ嫌な予感を覚えた。
だが、その予感は直ぐに的中することになる。
それは、その次の瞬間であった。
ドガァン!! 爆発音と共に天井が崩れ落ちてくる。

「ブラックタール!!」

たくっちスノー達は間一髪の所で避けて、黒い成分を飛ばして、崩れた天井を作り直す。

「貴様…!!」

「お前らも分かったろ?テネってのはこういう奴……願いの力でここまで滅茶苦茶しやがる」

「願いを叶える力を使えば、軽い気持ち1本で余裕だ」

「ベルより先にオレがお前を倒してやろうか?」


「…………」

その挑発的な発言は、シンボリルドルフの怒りを買った。
彼女は、怒りを露わにして拳を握る。
だが、その時……
たくっちスノーは全く動じず、あっけらかんと言った。

「あっ分かった、お前最近ベルに全く相手にされてないな?」
ビキッ……
テネの顔が真っ赤に染まり、血管が浮き出た。
その表情を見て、たくっちスノーは思った。
(あ……図星だった)

その後、指を鳴らして消えて行った。

「何がしたかったんだ、あの女は……」

「こればっかりは俺にも分かんね…だが、最近合体してないと思ったらマジでテネとベルで何かあったのか」

「でもま…そうなるだろうなとは思ったよ」

「地方に行って、ベルに会った時……すっげー久しぶりなのに感じたもん」


「どんな能力や願いの力をフルに使って戦闘を仕掛けてくるテネより、計画を練って科学力で人を操作するベルの方がよっぽど強いかもしれない」

「頭のテネ、体のベルだったスターアベネスの関係は俺の知らない間に逆転していたみたいだな」

シンボリルドルフは、たくっちスノーの対応で冷静さを取り戻して、トレーニングを始める準備をした。

「なら、我々も……トレーニングを始めようか」

「ああ、こっちだって負けるつもりは無い……勿論、ルドルフさん以外もな」

こうして、生徒会は新たにたくっちスノーの元トレーニングを始めた。
シンボリルドルフは、トレーニング中にふとたくっちスノーの言った事を考えていた。
先程の言葉……
『究極天才』と言われたスターアベネスの内部割れ、そして、たくっちスノーの口から発せられた言葉……
それが意味する物は、一体なんなのか。


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