二次創作小説(新・総合)
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- 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達【完結】
- 日時: 2023/04/09 16:57
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【俺、まだまだ全然知らないんだ、トレセン学園のトレーナーのこと】
原作【ウマ娘 〜プリティーダービー〜】
中央トレセン学園、波乱万丈個性豊かなウマ娘達をまとめる大きな存在があった。
中央トレセン学園生徒会、生徒ながら理事長達に次ぐ実力と権力を持つ特別なウマ娘達。
【皇帝】シンボリルドルフ
【女帝】エアグルーヴ
【怪物】ナリタブライアン
それを導く事を許された選ばれしトレーナー達。
そして、シンボリルドルフのトレーナー、たくっちスノーがある使命のため、トレセン学園のトレーナーを知っていく物語。
【注意】
後々、結構特殊なウマ娘が登場します。
ここに出てくるトレーナーは原作キャラを除きほぼオリジナルです。
この作品はMMオールスターの実質的続編です、その為『あの人達がトレーナー』の為サイレンススズカとハルウララのトレーナーのメイン回はありません。
また、作者が持ってないウマ娘は出る確率が低いです、ご了承ください。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.26 )
- 日時: 2023/03/25 18:45
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第五話】
溶岩とナリタブライアンは、プロジェクト・シンギュラー進行の為に深い絆で結ばれたトレーナーを探そうとしているのだが……
とても6人では扱い切れるものでは無い。
そこでナリタブライアンはある人物に声をかけることにした。
「理事長からも許可が出た、私達生徒会で対処するのも少々面倒だからな……」
「『風紀委員長』バンブーメモリーか……」
「そうだ、アイツなら適任だろう」
「そうか……」
「どうかしたのか?」
「奴のトレーナーの事もある程度は調べていたが…そうか、あの山田論鈍がここに来ていたか」
「知り合いか?」
「いや、時空ではある程度名の知られた男だ。」
山田論鈍。
迫力と熱気と情熱が入り乱れるマンモス校『覇九龍学園』の教師。
論鈍自身もかつて覇九龍学園に入学し、全ての男を『漢』に変貌させ…今も尚伝説となる伝説の番長となった。
その功績を買われ、現在は覇九龍学園の生徒指導を担当しながら中央トレセン学園においても指南を任されている。
「なるほど、その伝説の番長とやらが選んだのがバンブーか」
「番長とは言うが素行が悪い訳では無い、風紀委員長と組んでも水と油という事は無さそうだが……」
二人は学園内のグラウンドを探してみる。
するとそこには、バンブーメモリーの姿があった。
どうやら彼女はレース中のようだ…
しかし、彼女が参加しているのは短距離走ではなく長距離走。
マイルが専門のはずのバンブーメモリーが二千メートルはありそうな道を走り抜けている。
「珍しいこともあるものだ」
「相手したくなったか」
「少し興味はあるが、今はそれどころじゃない…」
二人の目線に気付いたのか、バンブーメモリーはこちらを振り向く。
そして、ニヤリと笑みを浮かべるとさらに加速して走り去っていった。
彼女の走る先にいたのは、なんとも見覚えのある姿だった。
それは、そう、あの……山田論鈍。
「来たかアアアア!!!怪物ッ!!!待っていたぞ!!!」
(声デカッ……)
……
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.27 )
- 日時: 2023/03/25 18:47
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「改めて、アタシは中央トレセン学園風紀委員長、バンブーメモリーッス!」
「プロジェクト・シンギュラーの件は既にアタシもトレーナーも把握しているッス!」
「ワシが加わったからには!!レース参加者も生徒会も!!全て表に出ても恥のない漢に成長させてやろう!!」
「改めてこの学園のトレーナーは最近変なのが多い気がしてきたな……だが、今までに比べてプロジェクトにおいて価値がある存在であることは確かだ」
「地方との交流とあれば模範となる為にもアタシが出て、実力を見せつける必要があるっス!!」
「お前がどれほどのものなのか……見せてもらおう!!」
「望むところっスよ!!」
不思議と炎が見える気がしてきた。
熱血漢同士、ある意味ウマが合うということだろうか? こうして、バンブーメモリーのトレーナーは参加者兼プロジェクト協力者に決まった。
「………こうも早く決まるとはな」
「まぁ、面倒な奴が入るよりはいいだろう……」
「奴らに連絡は入れるか?」
「いや…いちいちルドルフ達に報告するのも面倒だし、向こうも探している最中だ、あまり連絡はしないでおこう」
溶岩は、自分のスマホを取り出してメールの履歴を確認しようとするが、ふと手を止める。
既に誰かからメールが届いていたのだ。
その送り主の名前を見ると、シンボリルドルフとたくっちスノーからであった。
「……向こうから連絡してきたな、大方そちらも誰かしらに声をかけたのだろう」
「向こうは何を見つけてきたと書いてある?」
「たくっちスノーの方は……五月雨灰作、あの厄介者だ」
「アグネスタキオンのトレーナーか……誰から見ても論外だろう、そいつは」
「実際、奴も声をかけたはいいが協力してくれるわけもないと想定していたらしいからな」
「それはただの分かりきった無駄な行動だ…つまりアイツの方は進展なしと、エアグルーヴは?」
「エアグルーヴと西園寺はレラン・アンシュという奴を見つけてきたらしい」
「レアン…確かシンコウウインディのトレーナーか、問題はなかったように見えるが」
「…レースの内容次第が答えで、今の所は保留と書いてある」
「そうか……内容次第、そうだな」
「レースをやるとは聞いているが、そのレースの内容はどうなんだ、長距離か短距離か、芝なのかダートなのか、ただ絆で結ばれたなんてもので脚質もバラバラなやつを集めてもどうしようもないだろう。」
「え?生徒会も詳細を聞いてないッスか?」
「……つい先程始めたばかりだからな」
バンブーメモリーとナリタブライアンはお互いの顔を見合わせると首を傾げる。
まだ、レースの詳細について知らされていないようだ。
すると、そこに現れたのは……やはりこの男、山田論鈍。
「そんなもの気にするまでも無い!!」
「一流のトレーナーならば脚質から大きく外れようとも芝専門で無くとも勝てるものは勝てる!!」
「……まぁ確かに、スプリンター専門のバクシンオーが有馬記念に出て、どういうわけか勝ったこともあるからな」
「さっきマイル専門のバンブーメモリーが長距離を走ってるのも見たばかりだ…桐生院の所も基本どこでも走れる、案外トレーナーの腕が良ければ脚質なんて関係無いのか…?」
「漢たるもの!!迷わず進むべき道を前に進め!!」
それはトレーナーの腕もあるが、適応して成果を残せるウマ娘の方もなかなかに壊れているのだが、ナリタブライアンも強い側の存在なのでそれに気付くことは無い。
「だが、バンブーメモリー、お前はどうするんだ?」
「もちろん、距離がなんであれアタシも走るっスよ!!」
バンブーメモリーはやる気に満ち溢れていた。
それを見た論鈍は笑みを浮かべ、彼女の肩に手を置く。
目に見えて伝わる絆、ようやく心から『トレーナーと深い絆で結ばれたウマ娘』を見つけられた。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.28 )
- 日時: 2023/03/25 18:49
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「……さて、私達はどうする?もっと他のやつを探しておくのか?」
「そんなものは後でいい、奴らばかり何もしていないのは個人的に癪に障る」
「山田論鈍、聞いてもいいか」
「おう、どうした?」
「……今になってだが、何故中央に来た」
「お前の居る覇九龍学園は、前から後まで全てに至り男の完全男子校……それ故、指導してきたものは全て男性」
「それが、ほぼ女子校も同然のウマ娘達にまで手を及んだ、どんな道楽かは知らないが………」
「……………」
論鈍が押し黙る。
そして……
「貴様の疑問に答える前に、ワシからも1つ貴様に問おう」
「貴様は道楽で生き物の人生と熱意を握っているのか?」
論鈍の問いに、溶岩はは眉をひそめる。
何が言いたいのか分からない。
そんな顔をしている。当然だ。
奴にとって論鈍の質問の意味など理解出来ようはずもない。
そんな顔を見て、彼はこう言った。
「お前の言う通りだ、俺は道楽……簡単に言って暇潰しでナリタブライアンに化け物と相手させている。」
「言っておくが、これはこいつもそれを知った合意の交渉だ」
「強い相手との戦いをナリタブライアンが求め、俺はただ余興を見れればそれでいい」
「関係というのはそれぞれの利害一致でも成立する……」
「………噂には聞いていたが、本当につまらん男じゃな、時空断罪者というのは」
「悪いな…常日頃からつまらない仕事ばかりしているので、犯罪以外でなんでもいいから刺激が欲しくなる」
論鈍は、自分の言葉に対して溶岩が淡々と返す様子を見て呆れた。
溶岩の言葉に偽りはない。
彼の表情に感情が一切見えないのが何よりの証拠だ。
嘘を言っているようにも思えない。
論鈍の目の前にいる男は、自分が道楽のために人の運命すら弄びかねない存在であり、相方もそれを理解している。
「それで、俺の質問の答えだが」
「よい、ワシがなんと言おうが貴様にとって得することでも無いだろう、またシンボリルドルフのトレーナーに同じことでも聞かれたら答えておこう」
「ただ……」
「……ある意味では、樫本の言っていた通りだったな、またプロジェクトが進展したら連絡を入れてくるんだな」
「ト、トレーナー……」
「バンブー!総仕上げじゃあ!!次のセットの準備へ行くぞォ!!!」
「う…ウッス!」
バンブーメモリーは、最後の追い込みをかけるべく準備を始めた。
その姿を見て、論鈍は笑みを浮かべる。
やはり、この少女もまた根性がある。
まだ若いのによく鍛えられている。
これなら、バンブーメモリーを有馬記念に送っても期待できるかもしれない。
論鈍はそう思った。
バンブーメモリーのトレーニングをしばらく眺めていると、溶岩の姿が見えなくなっていた。
どこに消えたのかは分からない。
論鈍は気にせず、バンブーメモリーの走りを見ていた。
……
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.29 )
- 日時: 2023/03/25 18:52
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「いいのか、トレーナー」
「共にプロジェクトを進めていくならいずれこうなる話だった、それだけだ」
「………私からも聞くぞ、今こうして退屈しのぎの為に私と相手をしているが、それにも飽きたらそれで終わるのか?」
「…………考えたこともない、いつ飽きるかも分からない事を考えても面倒なだけだ」
「だが、強い者を競わせるのは古代ローマのコロッセオから続く伝統だ、そう簡単に終わるものでもない」
ナリタブライアンの問いに、溶岩は淡々と答えた。
そして、そのまま続けた。
論鈍の言う通り、中央トレセン学園には様々な事情を抱えた者が集っている。
時空に進出した今、こんな者も最早珍しくない。
……
あれからナリタブライアンは気分が乗らず、生徒会室に戻ることにした。
丁度シンボリルドルフとエアグルーヴも戻っていたところだった。
「珍しいじゃないか、君が自ら生徒会室に来るなんて」
「今日は少し気分が変わってな……それで、そっちはプロジェクトの調子はどうなんだ」
「このままでは厳しいというのが現状だ」
「というと、君達もそうなのか」
「ルドルフもか……まぁ、そんな気はしていたがな」
シンボリルドルフやエアグルーヴまでも、プロジェクト・シンギュラーに参加できずにいた。
その理由は単純明快。
深い絆を条件とするこの企画において、関係者である肝心な生徒会達が、この域に達していないのだ。
「会長ですら、ですか」
「ああ……私から見ればそうだな」
「西園寺や溶岩はともかく…彼はトレーナーとしてはある程度腕が経つし、会長のことも信頼している……特に問題があるようには見えませんが」
「……私は彼との付き合いも長いが、ひとつ分かった事がある、ある程度出来ることが多いだけに、1人で抱え込むことが多い」
「あと、自分に自信が無いようでな……どういうわけか今のままでは駄目だ、何かをしなければと考えているようだが…」
「……」
「我々だけじゃない、改めてこの学園のトレーナー達を確認したが、時空進出前より問題のある者があまりにも多い」
「このままでは中央…いや、世界その物の信用に関わる………」
「メンバーを集める以前に、生徒会がこんな始末では話にならんな……」
3人は、プロジェクト・シンギュラーが進まないことに対して苛立ちを隠せないでいた。
それも無理はない。
生徒会という立場上、理事長達の次にこの学園を支えていると言っても過言ではないからだ。
「トレーナー達にも問題が多い以上、この話は進められない」
「私も同感です、会長」
「…………」
シンボリルドルフとエアグルーヴの会話を聞きながら、ナリタブライアンは黙って聞いていた。
「ナリタブライアン?どうかしたのか」
「いや……一応聞いておきたい、お前達は自分のトレーナーをどうする?」
「西園寺も話にならん、私はこのプロジェクトが終わっても今のままならまた契約を切るつもりだ」
「私のトレーナー君は……まぁ、これと言って問題がある訳では無いし、こんな事を頭に入れて余計追い詰めたくもない」
「そうか、それぞれ決めてはいるのか……」
「……君も何か不満があるのか?」
「確かにあのトレーナーの姿勢は褒められたものでは無い、だが自身の快楽の為に競わせる事は……君も分かっていたはずだが」
シンボリルドルフとエアグルーヴの言葉に対し、ナリタブライアンは何も言わなかった。
しかし、彼女の表情はどこか納得していないような顔をしていた。
「……何にせよ、今はこの問題を解決するのが先決だろう」
「そうですね、会長」
「……ふん」
「さて、今日の会議はこれで終わりだ、トレーニングをするなり自由にすると良い」
「そうさせてもらう……これからの事、考えておきたいからな」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.30 )
- 日時: 2023/03/25 20:08
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第六話】
「え!?樫本さんが知恵熱でぶっ倒れた!?」
たくっちスノーはその一報を聞き、大急ぎトレーナー室に駆け込んだ。
そこにはぐったりとソファにもたれかかる樫本理子と、心配そうに見つめるリトルココンとビターグラッセが……
たくっちスノーは以前のエグゼ杯の付き合いもあり、密かに理子達にもプロジェクト・シンギュラーの協力を頼んでいたのだが……
「う……たくっちスノートレーナーですか……」
「一体何が…!?」
「プロジェクト・シンギュラー……深い絆で結ばれたウマ娘とトレーナー達による一大企画……」
「私も、改めて中央トレセン学園のトレーナーについて一通り目を通して居たのですが………」
「問題があまりにも山積みで知恵熱を発症しました」
樫本理子は淡々と説明した。
彼女はURAからこの中央トレセン学園へとやってきたエリート中のエリートであり、その実績たるや輝かしいものだった。
しかしそれは同時に、中央トレセン学園という巨大な組織の中で様々な悩みや問題を抑え込む数少ない防波堤でもあったのだ。
つまりストレスと知恵熱でダウンしているのである。
「その原因ってやっぱり……」
「ええ、貴方の想定している通りです」
「時空に進出してからというものの、トレーナーの質が落ちたように見えます」
「………やはりそうですか」
「エアグルーヴのトレーナーが違法スレスレのSPを名乗る何か、ナリタブライアンのトレーナーが暇潰し目的で担当と怪物を競わせるくらいだからな」
「生徒会達のトレーナーを初めとして、時空出身のトレーナー達はウマ娘に対する誠意が無いものが増えてきました」
「もっとも、以前あのレースで相まみえた人々達のように、全てがそうというわけでも無いことは私も理解しています」
「俺も中央に不備があったわけじゃないと思います…何せ、この世界が発見されて時空に進出されたのもまだ最近。」
「中央のレベルが落ちたんじゃなく、別世界人にこの世界の基準が追い付けなくなったんです」
樫本理子が言うには、中央のトレーナーの水準は確かに高いものの、それ以上に多数の異世界人によって質が落ちているらしい。
特にウマ娘を担当する場合、彼女達に誠心誠意向き合う誠実さが足りないそうだ。
実際、たくっちスノーも元々はあるコネで来ている、来たばかりの頃はシンボリルドルフに指導するに値しない存在だったことは……本人が1番理解していた。
「まずいなコレ……」
「そんな簡単な表現で済むような事態ではありません、中央トレセン学園は本来…レースを、勝利を、夢を求めるウマ娘達にとって頂点に立つべき場所なのですから」
「そして、そこに集った選ばれし者達は皆、己の夢を叶えるべく努力して居る。」
「なのに今の現状はどうでしょう?一部のトレーナーがウマ娘の能力を引き出しきれず、能力不足を指摘されても改善せず、ウマ娘に一切向き合わず自己満足で行動している…」
「ただ役たたずならまだしも、それで結果まで残してるのが問題なんだよな……」
「このままでは中央はウマ娘にとって、最も大切な場所ではなくただの通過点になってしまうかもしれません。」
「そうならない為にも、我々はウマ娘と真摯に向き合い、ウマ娘のために尽力できる人材を育成しなければならないのです」
理子の目は真剣そのもの。ウマ娘達の勝利と、栄光と、成長を願う強い意志がそこにはあった。