二次創作小説(新・総合)
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- 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達【完結】
- 日時: 2023/04/09 16:57
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【俺、まだまだ全然知らないんだ、トレセン学園のトレーナーのこと】
原作【ウマ娘 〜プリティーダービー〜】
中央トレセン学園、波乱万丈個性豊かなウマ娘達をまとめる大きな存在があった。
中央トレセン学園生徒会、生徒ながら理事長達に次ぐ実力と権力を持つ特別なウマ娘達。
【皇帝】シンボリルドルフ
【女帝】エアグルーヴ
【怪物】ナリタブライアン
それを導く事を許された選ばれしトレーナー達。
そして、シンボリルドルフのトレーナー、たくっちスノーがある使命のため、トレセン学園のトレーナーを知っていく物語。
【注意】
後々、結構特殊なウマ娘が登場します。
ここに出てくるトレーナーは原作キャラを除きほぼオリジナルです。
この作品はMMオールスターの実質的続編です、その為『あの人達がトレーナー』の為サイレンススズカとハルウララのトレーナーのメイン回はありません。
また、作者が持ってないウマ娘は出る確率が低いです、ご了承ください。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.21 )
- 日時: 2023/03/25 18:24
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
タキオンの表情は変わらない。
たくっちスノーは呆れ顔だ。
シンボリルドルフは表情を変えずに聞いていた。
灰作はタキオンの手を握ったまま、目を離さない。
タキオンが口を開く。
灰作が握っている手を握り返し、灰作の目を見つめ返す。
「私も私で、私の実験に付き合ってくれる人が欲しいだけなんだ」
「ただそれだけの為に、お互いはここまで来た」
「君が私と一緒に来てくれるなら、君の望む限り最高のモルモットにしよう」
「ま、刺激はあるさ…で、さっきの答え合わせだったな」
「……さっき言った通り、常人のフリして生きてたら失敗作ばらまいて、うっかりトレーナー権を逃した、本当に鈍り始めたんだな」
「だから、また実力で取り戻した」
「実力…本当にあれを実力って言っていいの?」
「ある世界で大規模パンデミックが発生した、人が突然変異で虫になるというバクテリアがばら撒かれた」
「ある人物がその薬の特効薬を出した、それを提供する条件が」
「俺をアグネスタキオンのトレーナーにしろ、だろ?当人の目の前でもったいぶるな」
灰作の返事を聞いたタキオンは笑みを浮かべた。
灰作に見えないよう、ルドルフに目配せをする。
ルドルフはそれに応えるに首を振る。
灰作はタキオンに背を向ける。
「言っとくが虫の件は俺じゃないぞ、何かしらに貢献すればURAも動かざるを得ないと思っただけだ」
「何かな、ここに来たのは樫本辺りに探ってこいとでも言われたのか?」
「好奇心」
「そう…だが実際成功したし役に立ったからいいじゃないかね」
「そういう問題じゃねぇだろ……失敗したら時空犯罪者になってもおかしくないのに」
タキオンの言葉を遮るようにたくっちスノーが言う。
ルドルフ達が言いたいことは分かる、確かにこの男を野放しにするべきではないだろう。
しかし、ルドルフにはどうしてもこの男が危険人物だと思えなかった。
それはタキオンも同じようで、二人は黙っていた。
「それで、お前はプロジェクトを進めなくていいのか、俺に構うよりはそっちの方が大事だろ」
「あぁ、今はいいよ俺も暇だからお前と会話してるわけじゃないし」
「……たくっちスノー」
「何?」
「……いやなんでもない」
「ふーん……じゃ、俺そろそろ行くわ」
タキオンが小声で話しかけるが、たくっちスノーは気にせず、ルドルフと共に研究室から出ていった。
「トレーナー君、私からも一つ質問がある」
「何よ、タキオン…俺そろそろ薬作りたいんだけど」
「彼が言っていた事件は、そして君の真意はどこまでも本当なのかな」
「そんな事気にしてなんになる?」
「……何にか、ならあえて私はこう答えよう」
「トレーナーくん、私が君をトレーナー君として選んだのは、君が望まない平凡な君を見たからでもある」
「…………」
「大口叩いたけどさぁ、俺がお前をまた選んだのって……」
「何もしてないとなんか勝手に死んでそうって思ったからなんだよね」
「…………」
タキオンは絶句していた。
灰作は自分の発言がツボに入ったらしく、笑い転げていた。
タキオンはため息をつく。
灰作がタキオンの方を見て、呟くように言った。
まるで独り言のように。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.22 )
- 日時: 2023/03/25 18:45
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第四話】
「………う、SPの私が何故人探しなど」
「文句を言うな、貴様は護衛人である以前にトレーナーだ」
トレセン学園生徒会はプロジェクト・シンギュラー遂行の為、深い絆で結ばれたトレーナーとウマ娘を探し、西園寺とエアグルーヴは今も探していた
しかし西園寺は不満げに眉間にシワを寄せていた。
「……むぅ、確かにそうですが……」
「だが、今の貴様にそれが出来ないことは分かっている……そこで、私の方から目をつけているやつが一人いる」
……
「シンコウウインディ?そんな人居るんですか」
「そうだ、私として見れば日頃から軽い問題を起こしているような奴だが……最近、奴のトレーナーになったレラン・アンシュという男は評判がいい」
「おや、どんな人なんですか?」
「まぁ、一言で言うならよく出来ただな。それに仕事熱心な男でもある。その証拠に今朝も校門前を掃除している姿が目撃されている。」
「それに……あの我々では手が付けられないウインディをしっかり扱って指南している、仕事面、人間性…共に欠点の見えない男だ」
エアグルーヴの言葉を聞いて少しだけ興味を持ったのか、西園寺の目付きが変わった。
そして、ある場所にて……
「グラウンドでも部室でもなくこんな学校の裏…?何故こんなところへ」
「この辺りは校舎が日陰になり視界が悪い…あの土の跡を見て何か分かるか」
「何かを掘り返した跡ですね、草が全然生えてないということはこれを何回も繰り返したとみますが」
「そうだ、ここはあいつが落とし穴をよく
掘る場所でな。」
「なるほど、だからここに来ることが多いと」
二人は地面の跡をなぞるようにして進みながら捜索する。すると、遠くの方でバシャッと水の跳ねるような音が聞こえた。
西園寺とエアグルーヴはその音に反応して、互いに見合わせると足音を忍ばせて近づいていく。
その時だった、西園寺の足元がツルリと滑ってしまい体勢を崩した。
慌てて態勢を立て直そうとするが、時すでに遅し……西園寺は穴に落ちていった。
「おい、たわけ!」
「はーっはっはっは!遂に引っ掛かったのだ!」
と、西園寺が落ちたのに反応してウマ娘が飛び出してきた、彼女がシンコウウインディだ。
「ウインディ……貴様また…」
「さて、どんな奴が落ちたのか確かめてやるのだ」
シンコウウインディが落とし穴を確認するが、そこには靴が入っているだけだった。
「あれ」
「こっちですよ」
シンコウウインディが気がつく間もなく、西園寺が背後に回りリボンで拘束する。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.23 )
- 日時: 2023/03/25 18:32
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「悪いですが、この程度のトラップは仕事柄よく経験してますので」
すると、シンコウウインディは悔しそうに顔を歪めると、突然に駆け出した。
そして、逃げ出そうとするが、西園寺がそれを許すはずがない。
あっという間にウインディを捕まえると、再びリボンで縛ってしまう。
そのまま地面に転がすと、ウインディはジタバタと暴れるが、どうにもならない。
「くぅ~!離すのだ!」
「すみませんね、トレーナー業よりこっちの方が強いもので」
「全く、手間をかけさせる」
「あっ、こんな所にいたのか…ウインディ」
ウインディの声を聞いて、男が駆け付けてきた。
「ん…ああトレーナー、そいつだ」
「ええ?というと…貴方がレラン・アンシュですか」
「あ、ええ……私の事を?見ない顔ですが貴方もトレーナー?」
「まぁ、私としては不本意ながらそうですね……」
レランはシンコウウインディの首根っこを掴むと、持ち上げる。
シンコウウインディは手足をばたつかせるが、抵抗むなしく男達の腕力には勝てなかった。
レランはウインディの様子に困ったような表情を浮かべている。
「それで、シンコウウインディに何か?」
「いや、ウインディというよりはあなたに用がある…と言ったところでしょうか?」
「はあ……」
……
……
「なるほど、だいたい事情は分かりました」
「私としては、貴方はいいとしてもっと他の人にも声掛けないといけないのが……」
「おいたわけ、少しはやる気を見せろ」
「しかしですね、私としては理事長のの護衛の為に来たのに何故プロジェクトの手伝いなどを……」
「手伝いではなくれっきとした参加者だ、我々は!」
「そちらはなんだか大変な事になってますね」
「そういえばまだ名前を言ってませんでした、私は西園寺大乱といいます、一応本職は護衛です」
「レラン・アンシュ…といっても、ここでは結構名が知られてるみたいですが」
「ウインディを担当に選んだというだけでも衝撃が走ったが、さらにURAファイナルズで決勝まで行ったからな」
「まぁ、大したことはしてませんよ」
「しかし、ウインディのあの癖だけは何とかして欲しいものだ、ウインディ、少しは反省したらどうだ」
「ふん!そんなの知らないのだ!それに癖じゃなくて本能なのだ!」
と、シンコウウインディが言うと、レランがふっと笑みを見せる。
その瞬間、西園寺が咄嵯に動いた。
一瞬にしてシンコウウインディの背後に回ると、体のあちこちにリボンを巻きつける。
体をきゅっと締め上げられ、シンコウウインディは身動きが取れなくなってしまった。
「………!」
「どうしました?」
「西園寺さん、このリボンそのまま貰っていいですか?」
「え?別に構いませんけど…仕事用なのでかえはいくらでもありますし」
「それで、話は逸れたがプロジェクト・シンギュラーの件は……」
「ああ……私としては構いませんが、そのコースがダートコースで走れるかどうかは別問題ですよ」
「さて問題は…どうするウインディ?」
「ウインディちゃんは、走りたいのだ!」
「しかしレースの詳細がまだ分からない以上…ダートとも限らないし距離も…」
「うーん……それでもウインディちゃんは走るのだ!」
「ということなので、そろそろ用事があるので失礼します」
レランはシンコウウインディを連れて、その場から去っていった。
「ふむ……これでようやく目処が立った、後は…おいたわけ、何を見ている?」
「ええ…エアグルーヴ、貴方が言うにはレランは何一つ欠点のないような人物だそうですが」
「私みたいな人を見る仕事してると、どうも何かしらの問題点を疑ってかかってしまうんですよね」
トレセン学園の廊下を歩きながら、西園寺は言った。
西園寺の言葉を聞いて、エアグルーヴはため息をつく。
そして、こう続けた。
「貴様は人の事を悪く言いすぎだ、たわけ。」
「すみませんね、人を信じるのは苦手な性分で」
「仮にレラントレーナーに何か問題があったとしても、ウインディが何も言っていないのであればまだ生徒会が動くまでもない」
「今はプロジェクトの方を優先だ」
「はい……というかこれ、何人くらい会いに行けばいいんですかね……」
西園寺とエアグルーヴは、次なる場所へ向かって行く……
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.24 )
- 日時: 2023/03/25 18:36
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
トレセン学園、それは多くのウマ娘たちが通う学園である。
当然そこには様々な人たちがいる。
トレーナーやスタッフ、生徒たち……。
その中でも、今世間でも学園でも話題になっているのは"あるトレーナー"だった。
『レラン・アンシュ』
シンコウウインディという生徒を担当しており、レースにおいて素晴らしい結果を残している。
レラン自身もかなりの実績を残しており、トレセン学園のトレーナーの中でもトップクラスの成績を誇る人物である。
また、性格は温厚であり、誰に対しても優しく接することが出来る好青年でもある。
一部の者からはレランは完璧な人間だという声もある。
誰もがそれを信じて疑わなかった。
レランは練習の時は決まってシンコウウインディを初めとしたウマ娘達の後ろに回るようにに移動して観察する。
ウマ娘の足に追いつくため、シューズを特別なものにしてその後ろ姿をカメラに捉える。
レランは正に誰から見ても優秀なトレーナーであるかもしれない。
だが……?
…
夕暮れ頃、トレーナー達が資料を見たり、人によっては帰宅の準備をしている頃、レランは周囲の人に軽く挨拶した後、急いで学校の裏へと回る。
そして……土で隠した鉄製の蓋を開き、誰にも付けられてないことを確認して地下へ続く階段に入っていく。
その姿を、偶然近くで落とし穴を掘っていたシンコウウインディが目撃していた。
「むぅ~、トレーナー、ウインディちゃんに内緒で何してるのだ?」
シンコウウインディは穴を放置したまま、レランの後を追うように走り出す。
レランは後ろから誰かが来ることに気が付き、咄近くにあったロッカーの中に身を隠す。
「あれ、今確かに誰かいたような気が……」
やってきたのはシンコウウインディであった。
ウインディは辺りを見渡したが、特に誰もいない事でつまらない物を感じ、再びどこかに向かっていった。
レランは出ていったのを確認して、ロッカーから出てくる。
「ふーっ、危ないところだった……隅々を探索するようなことになってたらバレていたかも」
レランはロッカーから出て、目の前にある更に奥のドアを開く。
そこは薄暗い倉庫のような部屋で、中央には大きな机がある。
レランはその机の下に置いてあった段ボール箱を開けると、中には大量のDVDがあった。
「今日はどれにしよう…あと、カメラも確認しておかないと」
レランは段ボールを漁り、その中から一つのディスクを取り出す。
その中身は……?
「さぁ……今日も始めよう」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.25 )
- 日時: 2023/03/25 18:39
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「トレーナー…?一体何してるのだ…?」
だが、シンコウウインディも別に帰った訳では無かった。
レランが居ることは分かっていたので一旦様子を見てから再度入り、ドアに空いている僅かな小さい穴から奥を覗いていた。
(あれ…あの部屋にあるもの…)
部屋の周りを見てみると、ホワイトボードには大量の写真が貼り付けられており、あちこちにマネキンが置かれていた。
(なんであのマネキン…ウインディちゃんとおんなじ頭してるのだ…?)
(トレーナーが何をやってるのかよく見えないのだ)
シンコウウインディは気になり、もっと見やすい位置に移動する。
すると……
『あっ!ウインディちゃん!』
「!?!?」
レランの声が聞こえた瞬間、反射的にシンコウウインディは動き出し、そのまま咄嗟にロッカーの中に入る。
……扉から出てこない、どうやら気付いたわけじゃないようだ。
「びっくりしたのだ…えっと……」
「もう少しだけ見てみよ……」
シンコウウインディは、ほんの少しの罪悪感を抱きながら、もう一度覗き込む。
レランは先程の場所に立ち、手に持っている何かを眺めている。
それはカメラだ。
レランはそれを手に取り、様々な角度に向けて撮影する。
また、今度は別の物をカメラに収めてシャッターを切る。
それを何度も繰り返して満足するまで撮り終えると、今度はまた別の場所に行き、棚を開けたり閉めたりと、何やら忙しない。
「一体何してるのだ…もうよく分からないから、突然開けてイタズラしてやるのだ」
と思ったその瞬間、シンコウウインディはあることに気づいた。
カメラで撮影され、ボードに貼られている写真は、自分の物も含めて全部ウマ娘の後ろ姿であった。
マネキンも全て壁の方を向いて…レランから見て全員背後にいるような配置になっている。
シンコウウインディは少し怖くなってきた。
「さて…ではそろそろ…」
レランは昼頃譲り受けた、シンコウウインディを捕らえた西園寺の長いリボンをマネキンに括り付け、部屋の真ん中に設置する。
そして、レランはリボンの端を持ち、思いっきり引っ張った。
ビィンッ!! バキッ!!! 勢い良くリボンを引っ張ったことで、きゅっと体が締め上げられるが、負荷に耐えきれずに壊れてしまった。
「おっと…流石に仕事で使うだけあって強度が高すぎる…やっぱり似たようなものを買っておこう」
レランは割れたマネキンを片付ける為に外に出ようとする、シンコウウインディはまたロッカーに入り、その隙を狙って一気に飛び出す。
「一体なんだったのだ……」
ふと、足元を見ると写真が1枚落ちていた。
おそらくレランが落としたものだろう。
シンコウウインディがそれを拾って確かめてみると……
「お…おお……」
「へ……」
「ヘンタイなのだーーーーー!!!!」
……
その日以降、シンコウウインディは少しの間レランに対して警戒心を抱くようになった。
レランは今も尚、周囲から見て優れたトレーナーとして人々に敬われている。