二次創作小説(新・総合)
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- 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達【完結】
- 日時: 2023/04/09 16:57
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【俺、まだまだ全然知らないんだ、トレセン学園のトレーナーのこと】
原作【ウマ娘 〜プリティーダービー〜】
中央トレセン学園、波乱万丈個性豊かなウマ娘達をまとめる大きな存在があった。
中央トレセン学園生徒会、生徒ながら理事長達に次ぐ実力と権力を持つ特別なウマ娘達。
【皇帝】シンボリルドルフ
【女帝】エアグルーヴ
【怪物】ナリタブライアン
それを導く事を許された選ばれしトレーナー達。
そして、シンボリルドルフのトレーナー、たくっちスノーがある使命のため、トレセン学園のトレーナーを知っていく物語。
【注意】
後々、結構特殊なウマ娘が登場します。
ここに出てくるトレーナーは原作キャラを除きほぼオリジナルです。
この作品はMMオールスターの実質的続編です、その為『あの人達がトレーナー』の為サイレンススズカとハルウララのトレーナーのメイン回はありません。
また、作者が持ってないウマ娘は出る確率が低いです、ご了承ください。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.16 )
- 日時: 2023/03/05 23:24
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「なるほどな……エグゼ杯に出れただけはある」
「お、俺の方こそ……まさか中央トレセンにここまでの奴が……」
「てかルドルフさん!!アンタすごい余裕ぶっこいて俺らと揃って走ってたけどまだ奥の底見せてたよな!?」
「ふふ……さぁ、どうだろうか」
「だが……なるほど」
「今までブライアンがレースで追込をしたことはない、そしてあの実力……暇潰しでトレーナーとなり彼女を選んだというが、その腕は舌先三寸では無いようだ」
溶岩がそう呟く。シンボリルドルフはそれを聞いてフッと笑う。
たくっちスノーは、溶岩のに尋ねる。
トレセン学園の生徒会長であるシンボリルドルフは学園内だけではなく、全国からも注目を集め、今後時空でも大きく知らしめることになる。
……否、彼女だけではなく生徒会全てが
「生徒会のトレーナーならお前も聞いてるはずだ」
「シンギュラーか……まぁ、暇潰しにもなるし、俺も粗方調べておいた」
「こっこいつ……やる気無さそうに見えてすげぇ役に立つ……西園寺は見習ってくれよ……」
「西園寺……西園寺大乱か」
「誰だ?」
「エアグルーヴの新しいトレーナーだ」
「ああ……あいつ、また担当トレーナーを変えたのか」
「まぁそういうこと、これから俺達トレーナー3人と、ウマ娘3人でこの理事長が考えたよく分からないプロジェクトを進めていくんだ」
「それでウマ娘と深く結ばれているトレーナーのコンビを調査するように言われたわけだが……」
溶岩はたくっちスノーを見る。たくっちスノーは首を傾げた。
溶岩はため息をつく。
一方その頃、西園寺は早く終わらせてしまいたいと試験を受けているが、もう何度も落ちている。
すると、確認の為にたくっちスノーが溶岩を連れて戻ってきた。
「エアグルーヴ、調子はどう?」
「全然ダメだ、このたわけは何回繰り返しても合格点に達しない」
「………なるほど、これがエアグルーヴのトレーナーか」
「誰ですか貴方、時空断罪者ということは分かりますけどこんな所に居ていいんですか」
「悪いがコイツも純然たるトレーナーだ、しかもライセンスもちゃんと持ってる」
「………で、合格してもらわないと困るんだけど、出来そう?」
「出来そうというか、今まさに出来るまでやらされてるんですよ、私」
西園寺はため息をつきながら答える。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.17 )
- 日時: 2023/03/05 23:28
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
その時、理事長室から大きな音がした。
駿川たづなが慌てて出てくる。
彼女は焦った様子でシンボリルドルフに伝える。
「………プロジェクト・シンギュラーの詳細が遂に分かりました、ちょうど生徒会のトレーナーさんが3人揃ってるなら、今お伝えします」
「プロジェクト……そういえばわたしわすへてましたけどそんなのありましたね」
「溶岩とブライアンはどこまで聞いている?」
「深い絆で結ばれたトレーナーとウマ娘のコンビが多く必要としか」
「なるほど、俺とルドルフさんが聞いた時と同じか……」
こうして一同は今回のプロジェクトの説明を受けた。
その詳細とは、簡潔に言えばある相手との交渉であった。
成立には様々な能力を持ったウマ娘たちの力を束ねる必要があるらしく、とにかく優れたトレーナーとそれによって育てられたウマ娘が必要だという。
「聞いてみれば、要するに慈善試合……って単純な話でもないだろうな、理事長の事だから」
「そうですね、理事長は『大一番』と言っていましたが」
「大一番?何の?」
「いえ、そこまでは教えてくれませんでした、ただ……」
「ただ、何か?」
「ちょっと来てください」
たづなはたくっちスノーのみを連れて奥へと入っていく
溶岩とシンボリルドルフは疑問符を浮かべるが、とりあえず待つことにした。
しばらくするとたくっちスノーは帰ってくるが、頭を抱えていた…物理的に。
「どうした、トレーナー君、一体何を聞いて……」
「……すまん、ルドルフさん……こればっかりはまだ口に出せんかも」
そう言うと、彼は再び頭を悩ませる。
かくして、プロジェクト・シンギュラーは始まる…
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.18 )
- 日時: 2023/03/25 18:46
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第三話】
……かくして、トレセン学園生徒会の3人とそのトレーナーが揃い、改めてプロジェクト・シンギュラー開始の為にトレーナーを探すことにしたのだが……
「……にしたって、ウマ娘と深く結ばれてるトレーナーなんてなぁ」
「そんな都合の良い話があるわけないよねぇ……」
たくっちスノーは苦笑いしながらそう言い、西園寺もそれに続く。
そしてシンボリルドルフも珍しくそれに同意するかのようにため息をついた。
「……」
そんな中で一人だけ、黙りこくったまま俯く者が居た。
「溶岩どうした?資料なんか見て」
「俺は精神論は詳しくない、そういうものを考えるよりは目に見える実績から判断した方が手っ取り早い」
「まぁ確かにそうかもしれんが…」
溶岩の言葉にたくっちスノーは賛同しつつも、どこか煮え切らない表情を浮かべていた。
「いや、その……強いやつ、まぁ覚えはあるけどよ、正直入れたくないなっていうのが……」
「そうか、それでこの五月雨灰作という男は……」
「は!?あ、あ、灰作!!?」
「そいつもリストに含まれてんの!?」
「この学園全てのトレーナーが候補になっているから含まれてないものはいない」
「嘘だろ……」
溶岩の答えにたくっちスノーは頭を抱え、西園寺も絶句する。
そこに、今まで無言だったシンボリルドルフが口を開く。
その顔には若干の焦燥感があった。
それもそうだ、シンボリルドルフもあの灰作の事を知っていた、いや…あの件のことを考えれば無理もない 。
「……その人が何か?」
「ああ……お前達はまだその時トレーナーじゃなかったから知らないのも当然か」
「まだトレーナーが居なかった頃の我々も背筋が凍ったからな」
「一体何なんだ、その男は」
「灰作トレーナーは……」
シンボリルドルフはその先を言い淀んだ。
流れを察して…たくっちスノーが代わりに答えた。
「エグゼ杯の時よりも更に前だから……そりゃ知らんやつもいるか、あの事件の事」
「事件?」
「あいつの担当はアグネスタキオン…名前くらいは聞いたことあるだろ、ここで一番…いや、一番じゃないかもしれないが問題のあるやつ」
「アグネスタキオンか」
「タキオンなら私も知ってます」
「彼女は確か……実験台になるトレーナーを常に募集していると聞きました」
「それもあるが……この間ヤバかったのはアレだ」
曰く…アグネスタキオンはこれまで数多くの薬品を制作していたが、そのうちの失敗作を灰が勝手に飲んでしまい、体中の穴と言う穴から血を吹き出して倒れた事があるらしい。
そして、そのまま病院送りになったとか。
他にも、それらの薬を詳細も分からず他のトレーナー達にばら蒔いたとか……
「ちなみに俺も、その時飲料水扱いで飲まされたうちの一人」
「よく生きてましたね」
「流石に俺でも死ぬかと思ったがな…」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.19 )
- 日時: 2023/03/25 18:19
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「とにかく、アイツはダメだって!絶対に!」
「だが、奴がトレーナーとして優れているのは事実だろう」
「それは……まぁ確かにな」
「そもそも、何故あんな男を入れることに反対している」
「アレで納得しないってのか!?」
溶岩の言葉に、たくっちスノーは思わず机に頭をうちつけた
………
同時刻 中央トレセン学園内にて、とある男が研究室で一人佇んでいた。
やや白髪混じりの黒髪、鋭い目付き。
まるで獲物を睨み付ける鷹のように。
「ふぅん、面白いのがいるようだねねぇ」
そう呟きながらアグネスタキオンは手元にある資料を眺めていた。
そこにはたくっちスノーの顔写真、経歴、能力、その他諸々が記載されている。
「帰ってきたのか、あいつ。」
「ああ、それもまた何か変化した状態でね」
「という事は、俺達の以降のことも知っているのか?」
「恐らく、今頃気づいていると思う」
「なら、少しおちょくってくるかい?」
「いや……そんな気分でもない」
と、話していたら……たくっちスノーとシンボリルドルフが研究室に入ってくる。
「改めて……久しぶりと言っておくか、五月雨灰作」
「ああ、旅に出たと聞いたけど帰ってきたのか」
「こっちも色々あってな、お前は相変わらずそのナリなのか」
「別にいいじゃないか、俺は俺の好きなように生きるさ」
「ところでたくっちスノーとルドルフだけか?残りの生徒会は?」
「あのな、ここにどんだけトレーナーいると思ってるんだ、バラけなきゃやってらんねーよ」
と、言いつつ三人は椅子に座った。
シンボリルドルフはその横に立ち、腕を組む。
どうやら、これからの話を聞くつもりらしい。
一方たくっちスノーの方はスマホを取り出し、いじり始めた。
……
「ふーん、なんか深い絆がどうこうのトレーナー達が必要と」
「お前らに関しては完全に論外だけどな、絆とかじゃなくて利害の一致だろ、お前達は」
「それはどうかな、少なくとも私はこのトレーナー君を選んだ事に後悔はしてないがね」
「……そして、君も」
タキオンは灰作の方を見る、すると灰作は苦笑いを浮かべた。
しかしすぐに目をそらし、タキオンはルドルフの方に向き直した。
たくっちスノーは画面を見つめている。
たくっちスノーは未だに灰作の事をよく思っていない、前の事件のことを引きずってるのもあるし、そもそも灰作はタキオンの事を…
「まあ俺としても興味無いし、あんまり深入りするつもりはない、他のトレーナー探した方が早いんじゃないのか」
「俺達は最初からプロジェクトの為に会いに来たわけじゃないよ」
「ふむ……とすると、君はなんの為に?」
「調べたぞ、あの時のこと」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.20 )
- 日時: 2023/03/25 18:21
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
灰作がタキオンに指を指し、タキオンの表情が変わった。
タキオンが灰作を問い詰めるように近寄る。
だが灰作は全く怯まず、タキオンに顔を向けずに聞く。
シンボリルドルフもよく分かってないのか、たくっちスノーを見る。
「あの時…?どういうことかな、トレーナー君」
「灰作…例の薬失敗作をばらまいた時…」
「だからアレは知らなかったッて言ってるだろー」
「それもあるが、その他諸々でお前はライセンスを剥奪された」
「それなのに三日もせずに戻ってきた、一体何をしたのか……先に言うとコネとかじゃなかった」
たくっちスノーがそう言うと、タキオンの口角が上がった。
灰作が続ける。
タキオンがやったことは、かなりグレーゾーン。
普段授業をあまり受けず、危険な実験や薬品を開発しトレーナーで実験させる。
灰作はそれを受け入れた、いや、進んで行った。
……今更、離れたくなかった。
「…………俺は、勉学は昔から何をしなくても100を出せた」
「方程式も一通り年齢2桁になる前に覚えたし、よく分からない資格も取った」
「飛び級は何回もやった、でもそれが面白くなくて何回も辞めちまった」
「中学に入った時に、陸上を始めた」
「走ることに意味は無いと分かっていながらもどんどん速くなっていった」
「小学校から始めて何年も鍛えてきたプロの奴らをごぼう抜きにして、大会でも優勝した」
「俺はその時思ったんだ……普通の、所謂『人類』っていうのは所詮この程度でしか無いんだなって」
「だから俺は人類に成り済ました、奴らと同じ程度の存在に成り下がるようにして生きてきた」
「陸上の経験から中トレに所属して……」
「『平凡』という器として振舞っていた時、まぁその時……初めて会ったんだ、俺と同じに」
灰作がタキオンに目を向ける。
タキオンは微笑みながら話を聞いている。
その笑顔はいつもの作り笑いではない。
灰作がタキオンに歩み寄り、手を取る。
そしてそのまま続けた。
タキオンの顔からは笑みが消えていた。
「確かに俺はプロジェクト・シンギュラーに相応しくないのは俺自身分かる」
「俺自身がそうだったから分かる、天才が平凡というぬるま湯に浸かるとな、劣化するんだ、ガキの頃より俺のスペックは2割くらい落ちた」
「中央も俺がいた環境に比べてレベルは高いが、それでも俺がそうだったようにタキオンには及ばない」
「……アグネスタキオンを劣化させないようにするのが、トレーナーとして君の仕事じゃあ無いかね?」
「まぁ、それはそうだね」
ルドルフが灰作に聞く。
ルドルフから見ても、灰作の言葉に嘘があるとは思えない。
だが、灰作が本当に言いたいことをまだ言っていないような気がしたからだ。
灰作は少し黙った後、こう言った。
その言葉は、誰よりも真剣に見えた。
「俺がタキオンに拘る理由は俺並みの天才だからじゃない」
「見てみたいから」
「ドーピング以外の出来る全てでどこまでタキオンは速くなれるのかを」
「タキオンの走りを見て、感動して、そして……」
「あいつの限界を見たい」
「どこまで走られるか、どこまで早くなれるか、どこまで勝利できるか、そして……」
「最終的にどこまで走って、どんな風に脚が止まってしまうのか」
「その生命は有象無象の生物よりも何百倍も価値があり、何百倍も伸ばす価値がある」
「俺は、タキオンの選手生命が死ぬところを目の前で見てみたい」