二次創作小説(新・総合)
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- 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達【完結】
- 日時: 2023/04/09 16:57
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【俺、まだまだ全然知らないんだ、トレセン学園のトレーナーのこと】
原作【ウマ娘 〜プリティーダービー〜】
中央トレセン学園、波乱万丈個性豊かなウマ娘達をまとめる大きな存在があった。
中央トレセン学園生徒会、生徒ながら理事長達に次ぐ実力と権力を持つ特別なウマ娘達。
【皇帝】シンボリルドルフ
【女帝】エアグルーヴ
【怪物】ナリタブライアン
それを導く事を許された選ばれしトレーナー達。
そして、シンボリルドルフのトレーナー、たくっちスノーがある使命のため、トレセン学園のトレーナーを知っていく物語。
【注意】
後々、結構特殊なウマ娘が登場します。
ここに出てくるトレーナーは原作キャラを除きほぼオリジナルです。
この作品はMMオールスターの実質的続編です、その為『あの人達がトレーナー』の為サイレンススズカとハルウララのトレーナーのメイン回はありません。
また、作者が持ってないウマ娘は出る確率が低いです、ご了承ください。
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.31 )
- 日時: 2023/03/25 19:58
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
だが、一方で……理子も人間。
これほど大きな問題を1人で耐えきれず、知恵熱を出してしまうほど精神的に疲弊しているのもまた事実。
それを見て、たくっちスノーは少し考え込んだ。
(バンブーメモリーのトレーナーをやってる、伝説の番長とか言われてる山田論鈍はこう言ってたな)
(漢とは生物的分類では無く振る舞いにある、気高い精神と模範と自他ともに救いになる力、これさえ持っていれば小童も老人も男も女も皆が漢……)
(漢を増やしたいから、ここに来た……本当にいい人だったな)
(あの二人はスズカとウララを連れて自分の世界……連絡は取れないが、ちゃんとトレーナーをしていた。)
(なんか……久しぶりに田舎に帰ってきたら開拓されて変貌していたみたいな感覚だ)
ここに居るトレーナー達の事を考えていた。
ウマ娘達のように個性派で滅茶苦茶な者も多いが、それでも……
「ルドルフさんもこのままじゃプロジェクトどころじゃないって言ってた……理事長はどこまで把握……」
その時、たくっちスノーに1つの可用性が浮かんだ。
「………いや、逆、か?」
「逆……そうですか、貴方もこう考えましたか」
「とすると、樫本さんも」
「パターンの1つの内として…ですが」
「………秋川理事長は、プロジェクト・シンギュラーをトレーナーとウマ娘の垣根を越え、ウマ娘とトレーナーの間に強い繋がりを持たせることでウマ娘の可能性を引き出すもの……そう言っていた」
「だから、俺達生徒会はこのプロジェクトに必要な物として深い絆で結ばれたトレーナーと担当を探していた」
「でも思い出した、ルドルフさんはプロジェクトの事を初めて俺に説明した時こう言った……『君はこの学園のトレーナーの事をもっと把握する必要がある』」
「逆に、秋川理事長は……トレーナーの事を徹底的にマークし、候補に上がる気配もない問題のある人物を調べ上げて欲しかったのかもしれない。」
理子はその言葉を聞いて、眉をひそめた。
まるで、本来1番認めたくない可能性のように。
しかし、彼女はたくっちスノーの次の言葉で確信に変わる。
彼女が、自分と同じ結論に至ったことを。
そして、それは……
「前にこんな事を貴方に言いましたね、トレーナーがウマ娘を一流へ導くための心構え……」
「思い通りに酷使することなく、担当に見下されることなく……常に、同じ目線で管理することが必然…」
「つまり、今回の件は新規プロジェクトという建前を使ってトレーナーを調べ上げさせ…問題のある者を炙り出す……」
「……」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.32 )
- 日時: 2023/03/25 20:02
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
「……」
理子が黙り込むと、2人の沈黙が続く。
やがて、口を開いたのは理子だった。
「……仮に、そうだとしても……貴方はどうするのですか」
「……理事長代理だった頃の貴方なら、仮にそういう真意でこのプロジェクトを初めて、その後どうします?」
「貴方が言うように今の条件では別世界に追い付かない…ならば試験内容の見直しです。」
「筆記の問題を時空で売られている参考書以上まで大きく一新するのは当然として、更に道徳性や協調性を問われる物を追加し、そこで良い成績を残した者は合格とする……これで改めて中央に求められる能力を持ったトレーナーを選抜できます」
「………秋川理事長が、そこまで考えいるかは分からないが」
「あくまで私が行うとしたらの推測ですからね」
「……それで内容を一新して再試験となったら、俺達も」
「当然です、今の私はトレーナーであり、貴方もどこまで旅に行こうがその事実は変わらない」
「……」
たくっちスノーは考える、これからそうなったとして、自分はどこまで出来るか?
改めて自分はレベルが上がったトレセンの試験に受かれるのか?
「………俺、試験は正直自信ありません」
「でも俺はあの人の……シンボリルドルフのトレーナーになりました」
「………」
「俺には『全て』が出来ます、比喩表現で無く、なにかの劣化ではありますが全てが思い通りになります」
「空も飛べます、火も吹けます、爪をドラゴンのモノに変化させることも出来るし、空から金を降らせることも出来る……ウマ娘達がやってることをその場でコピーすることも出来ます」
「………けど、それは俺の……いや、この俺の存在自体も……俺のものじゃ、ない」
「能力は全て誰かのコピー、『たくっちスノー』という名前も沢山の偽名もあいつから貰ったもの、国王という立場も今の経歴も全部あいつから借りて……」
「………自分と言えるものが何一つ無かった、このトレセン学園に来るまで」
「ルドルフさんに会って、俺もレースを始めた、自分だけの練習スケジュール、走行フォーム、技、パターン……」
「俺は初めて『俺だけの物』をここで得られました、だから」
「俺はシンボリルドルフの夢を叶えてやりたい、全てのウマ娘の幸福を……」
「……俺も常々考えます、全ての生物の幸福って、本当に出来るのかなって」
理子は、その言葉を聞いて……静かに目を閉じた。
まるで自分の中の何かを、整理するように。
そして再び、ゆっくりと瞼を開く。
そこには先程までの冷徹さは無く、代わりに優しさがあった。
「無理かもしれない、出来るわけないと言われるのも想定のうちです、俺も何となく感じる」
「……ちょっと、俺が旅をしていた時…こんな話を聞いたんです、この世に『特価交換』なんてものは存在しないと」
「特価交換……何かを失い、その代償で得られるものがある、錬金術師なんかでよく謳われる言葉です」
「だが、実際にそんな物はない……だって、失ったとして実際に何かを得ているわけでもない……だったかな、そんな言葉」
「ウマ娘達もそう…レースなんか特にそうだ、G1で一着となり夢を掴める者は1人、それ以外の十人以上が敗者となる……」
「ある者は夢を諦め、ある者は脚が故障する……彼女達は何を等価に何を得た?その話を聞いてからここに戻ってそんなことを考えた」
「………それでも俺は」
「『全てのウマ娘』の幸福をこの学園で実現させます、シンボリルドルフの望む夢の為に」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.33 )
- 日時: 2023/03/25 20:05
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
理子の表情は、どこか寂しげで……そして、悲しそうな笑みを浮かべていた。
そして、たくっちスノーの決意を聞いた理子は……
「……もう、見舞いは充分です、持ち場に戻るように」
「………失礼しました」
………
理子のトレーナー室から去ったたくっちスノーは、生徒会とトレーナー達で集めた資料を確認する。
これくらい用意すれば理事長に報告しても問題ないだろう。
理事長室に向かおう……そう思っていると。
「お」
「………お前か」
ナリタブライアンがベンチに居た、その隣には……
「【石頭】…って言えば伝わるか」
溶岩の時空断罪者としての同僚…以前レースで顔を見た事もある石頭であった。
……
「なんでお前までここに居るんだ?」
「ちょっとしたレースでの付き合いでな、溶岩について相談したいことがあるとブライアンが連絡してきた」
「……で、お前の話を聞いてみればそっちも大変そうだな。」
「ああそういえば……ルドルフさんからちょっと聞いたけど、最近調子悪いんだって?」
「ああ……アイツにも言われたな、存じていたはず……そうだな、私も分かっていた」
「奴にとって私は暇潰しの存在、そうだとしてもっと上の存在と走って競えるならなんでもいい……そう思っていたがな」
ナリタブライアンは自分の掌を見つめながら呟く。
いつものように握り拳を作る。
しかし、そこからは何も生まれなかった。
虚しさだけが、彼女の中に残る。
彼女は走りたいのだ。
己の限界を超えるような、圧倒的な力を。
その為、溶岩を選び、道楽にされることを受け入れ、数多の敵と競った。
「最初は巨大な龍のような生物とやった」
「機械と、花と、獣と、ウイルスと、武士と、悪魔と……とにかく色んなやつと戦った、その全てがこの学園以上の相手で、今まで以上に強かった。」
「だが……渇きは満たされないどころか、余計に虚しさが募っていくだけだった」
「私が求めているものは……これじゃないんだ、と」
「そしてある時、姉貴にこの事を相談したら予定を変えさせて違うレースに参加を持ち掛けた、時空に出てからはもうなんてことも無いこの世界の天皇賞にだ」
「……不思議だがな、実力は時空で連れてきたヤツよりも下ではあった、だが何故か…ほんの僅かだがそいつらよりも満たされた感じがしたんだ」
ナリタブライアンの独白を聞き、石頭が口を開く。
「質が落ちてきたってのはここのトレーナーだけの話じゃ無くてな、実力はあってもモラルや精神面で問題がある奴が増えてるんだよ」
「あっちこっちの企業でも迷惑してる、時空断罪者も…俺はかれこれ数年は働いているが、酷いもんだな」
「元々断罪を暇潰しにしてるような異常者が、そのままの思考で暇潰しに外に飛び出してこの始末となれば、時空断罪者の面目丸潰れだな」
「こりゃ本当に……秋川やよいが何を考えているかは分からないが、大改革しないとまずいことになるだろうな」
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.34 )
- 日時: 2023/03/25 20:10
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
【第七話】
「プロジェクト・シンギュラーは深く結ばれたウマ娘とトレーナーが力を合わせ、地方と親善レースを行う物……そう考えていた」
「でも実際は、問題点のあるトレーナーを絞り出し、雇用条件等を見直して優秀なトレーナーのみ残すというもの……これ、本当だったんすね」
「……君の言う通り、かもしれないが……」
珍しく目を伏せている。
この場にいるのは秋川やよい理事長と駿川たづな、そしてたくっちスノーの3人だけだ。
「俺のようなへ別世界出身としては時空監理局という前例もありますし、俺自身はここに入れてくれた縁もある……」
「他の世界から来た実力しかない奴があちこちで迷惑被ってるなら、それは当然の処置だし…なんか、申し訳なくもなる」
彼は困ったように笑う。
まるで、そんなつもりはなかったけど結果的にそうなってしまったから仕方ないとでも言いたいかのように。
その言葉を聞いた理事長は耳を立てながら顔を上げる。
しかし、その表情はいつも通りの笑顔だ。
だが、尻尾だけはゆらりゆらりと揺れていた。
「で、樫本さんが考えたように試験内容を見直して再試験…も考えて?」
「もちろん、それは学園としても頭に入れているのですが……レースを挟まないといけない以上、準備が諸々……時間が……」
「あ、プロジェクトにあった模擬レースって本当にやるつもりではあったのか」
たつまなの言葉を聞いてたくっちスノーは納得したようだ。
彼の言葉にこくりと小さくうなづく。
それを見て、少し考え込むような仕草を見せるたくっちスノー。
何か思いついたらしく口を開く。
「……なら聞きたいんだが、その対戦相手の地方のトレセン学園。」
「学園としてはどこにでもある小規模な物だったが、突如その学校所属の『ログアサルト』と『ログアサラナイト』というウマ娘が急成長を遂げ始めた」
「URA本部が調査したところ……貴方達のように別世界出身者がトレーナーをしていました、模擬レースやプロジェクト・シンギュラーを持ち掛けたのもその方です」
「俺の本題はそこです、そのトレーナーについてなんだけど」
「そのトレーナーは……本当に『スターアベネス』と名乗ったのか?」
理事長はその質問に対して静かに首を縦に振る。
それをみた彼は腕を組みながら眉間にシワを寄せ、真剣な面持ちになる。
しばらく沈黙が続いた後、ゆっくりと口を開いた。
「なら尚更両方引く訳にはいかない」
「再試験は絶対に通させるし、模擬レースも絶対にやる」
「深い絆で結ばれたウマ娘とトレーナーの奇跡……そんなものでも無きゃ、あいつには勝てない」
「その為にも俺は再試験にも受かるし、レースにも絶対に出します」
「では、失礼します」
たくっちスノーは荷物をまとめ、一度理事長室から出る。
「理事長…再試験やトレーナーの見直しを行うのであれば、流石にレースは中止…とは行かずとも予定を伸ばすことは……」
「うむ…なんと言えばいいのか、こっちとしてもレースを今更無かったことには出来ない状況に…その……」
……
- Re: 【ウマ娘】皇帝と女帝と怪物と俺達 ( No.35 )
- 日時: 2023/03/25 20:12
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
理事長室を出た先で、シンボリルドルフがそばで待機してきた。
「………いつから居たんです?」
「プロジェクトの事で何を隠していると思っていたら……こういうことか」
「……いや、だって調べる時間が欲しくて……名前だけが同じで別かもしれないってこともあるし」
「それで結果は?」
「最悪なことに、見事に俺がよく知ってる方のスターアベネスだった」
「あの……」
2人が話しながら廊下を歩いていると、後ろから桐生院が声を掛けてきた。
「その話……詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
……
たくっちスノーとシンボリルドルフは、桐生院家の使いが運転する車に乗せられて地方へ向かっていた。
「ログアサルトとアサラナイトの件は、桐生院家を初めとする名家達も耳にしています、ウマ娘もですが、一体どんなトレーナーがどんな指導をしたのか……」
「それで…スターアベネスというのは、あのバクシンオーさんの」
「ああ……そういえばトレセン学園にあの子がいたな……そうだよ」
「そいつは…ここでサクラバクシンオーのサブトレーナーをしているスターアベネスJrの親だ」
「そして……トレーナー君にとってはここに来る前からの因縁のライバルらしい」
「因縁かどうかは俺も分からんが……まぁ、そうだよ」
シンボリルドルフが桐生院に、先程あった出来事を説明した。
桐生院はそれを聞き、複雑な表情を浮かべている。
シンボリルドルフの説明が終わると同時に、車は停止した。
窓の外を見ると、そこにはトレセン学園に似た建物があった。
どうやら地方トレセン学園に到着したようだ。
…
「スターアベネスという方がトレーナーになっている事に、何か?」
「アイツは俺と同じで人間じゃない、『ネガイモノ』という作られた生物なんだ」
「名前の通り、あいつはどんな願いでも自由自在に叶えられる、自分に対しても相手に対しても」
「……ただ、アイツは元々『時空犯罪者だった頃の俺の』ライバルだ、今は分からんが善意で人の願いを叶えるような奴じゃない」
「それが、いつの間にか俺のようにトレーナーになっていたと?一体何考えている……」
たくっちスノーは頭を悩ませていた。
それもそのはず、スターアベネスもまたたくっちスノー同様に過去では危険な存在として扱われていた。
そんな人物が、今頃になって何故トレセン学園に居るのか……
「おい、たくっちスノー」
「!」
気が付くと……スターアベネスが後ろに居た。
「付けてたのか?」
「こーんな地方までわざわざやって来る理由なんて、お前に限った場合だとオレに会いに来たぐらいだろ」
そう言って、スターアベネスはニヤリとした笑みを見せた。
その笑顔を見て、シンボリルドルフは嫌な予感を覚える。
それは、まるでこれから起きる事を楽しみにしているような、子供のような純粋さがある反面、邪悪な気配を感じたからだ。
「あれが…スターアベネス…」
「いや…あれはまだその内の半分」
「『スターアベネス』は名称ではなく、2人1組の『怪物』としての名前だからな」
「えっと、じゃあ残りの半分っていうのは……」
「そいつは『ベル』って奴だ……それでオレは『テネ』だ」