お嬢様に虐められて虐めましょう。
作者/ 黒猫ミシェル

【第一章】第一話
廊下を通るわたくしを、皆が見てる。
尊敬、畏怖、謙遜、恐れ、敬い――様々な感情。
でもそれは、仕方がない事だわ。
だって、わたくしは容姿端麗、文武両道何ですもの。
加えて、あの月城家の一人娘。
最愛のお父様は、私を可愛がって下さる。
この私立聖皇興院で一番権力がる家柄、月城家。
そのわたくしに逆らう者など、ここでは誰一人いないわ。
だから、
「・・・痛い」
「っあ!も、申し訳ありませんっ麗華様っ!!」
「あなた・・・。良い度胸してるわね」
「お、お許しくださいっ!!」
生意気にもわたくしの頬に傷をつけた、目の前の女。
わたくしが通ったら、道を開け、尊敬の目でわたくしを見つめる。
それが常識。それを、この女は愚かにも、わたくしの前を走り抜け、
しまいには、美しいわたくしの顔に傷をつけた。
「決めたわ。今月の『うさぎ』はあなたで決定」
「ヒッ!!?」
「ちょうど良かったわ。『うさぎ』を誰にするか、迷っていたの」
「お、お許し、下さい・・・」
必死にわたくしの靴に頭をスリ付け、許しをこう女。
フン。いい気味だわ。
これからわたくしを、どう楽しませてくれるのかしら?
「光栄に思いなさい。わたくしの玩具になれるのだから」
「うっううぅ・・・」
「あなたは親に、教育を受けていないようね」
涙でくしゃくしゃのみっともない顔。
それをわたくしは思い切り蹴りつけた。
「言って御覧なさい。『うさぎ』に選ばれたなら・・・?」
「あ、ありがたき・・・ううっ」
「続き」
「し、幸せです。麗華様の、お、玩具にならせて頂い、てっ」
「そうでしょう。明日から、わたくしも楽しみだわ」
そう言い、麗華様はたくさんのとりまきと一緒にこの場を去った。
後に残るのは、泣き崩れた哀れな彼女と、それを眺めるクラスメイト。
しかし同情の視線は投げかけても、鼻血を出したその子を助けようと
する者はいなかった。・・・・もちろん、私もその一人。
何故なら彼女は私達のクラスメイトではなく、麗華様の玩具になった
から。麗華様の『うさぎ』に構ってはならない。
それが、この学校の決まり、掟なのだ。
第二話
「麗華様、この問題が分かりまして?」
「ええ。分かりましてよ、先生」
「説いてみて下さる?」
「分かりましたわ」
皆が麗華様を注目する。
クラスメイトが注目する中で、麗華様は優雅に席を立った。
「これで、よろしいかしら?」
「ええ、素晴らしい、完璧ですわ!」
『流石麗華様だわ』
『お美しいわ』
先生のあとに、次々と麗華様を称賛する声。
出来て、当たり前だ。褒められて、当たり前だ。
ココの先生達は例え間違っていても、麗華様を褒める。
それが、先生達での決まり事だから。
「では、由愛さん、説いて下さる?」
「わ、分かりましたわ・・・」
「由愛さん、説けなかったらお仕置きですわよ?」
クスクスと、麗華様が由愛さんに囁いた。
先生には聞こえない、けれど由愛さんにはしっかり聞こえる声で。
「は、はい・・・」
「お早くいらっしゃい、由愛さん」
「はい・・・・・」
ガクガクと震えながら席を立つ由愛さん。
あきらかに様子が可笑しいのに、先生は心配するそぶりすら見せない。
次に『うさぎ』になるのが由愛さんだと、気づいたのだろか?
「こ、これで、合っていますで、しょうか?」
「残念ながら、間違っていらっしゃるわ」
「・・・・っ」
由愛さんの顔が、絶望に歪む。
血の気が引いていき、蒼くなっていく。
「由愛さん、席に戻って結構ですわ」
「・・・・・・・・」
席に戻ってきた由愛さんに、麗華様は美しい顔で囁いた。
「お仕置き、決定ですわね」
囁かれた彼女の目には、涙が浮かんでいた。

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