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*105*
「どうした真奈?」
急に立ち止まった私を変に思ったのか、凜が掴んでいた手を放してこちらへ振り返る。
そして、私の頬を伝う大粒の涙を見て動揺した。
「ま、真奈!どうしたん、だ?」
「凜…」
私は涙を堪えることができずに凜の胸へと飛び込んだ。
凜はただ驚くばかりだ。
「凜、ありがとう…。そしてごめんね」
私はそう呟くと、凜は力一杯私を抱きしめた。
いつだってそんな変わってしまった私を守ってくれたのは凜だった。
小学生の頃はそれが当たり前すぎて気づけなかった。
記憶を思い出した今、やっと凜にお礼を言えるんだ。そして謝罪も。
「何があったのか俺にはよくわかんねーが、取り敢えずありがたく受け取っとく」
そう言って、凜は私を抱きしめる手を緩めた。
私は凜の腕から抜け出て
「うん」
と満面の笑みで頷いた。
凜の頬が赤いのはきっとこんな目立つところで私が抱きついたりなんかしたからだね。
ごめんね。
「それじゃあ、行きましょう!」
私が元気よく言うと、逢坂くんは不機嫌そうに。凜はまだ頬を赤らめながら。美樹は事情を説明しなさいと目で訴えながら「おー」と言った。
――バス内にて。
「皆さん、国際通りは楽しめましたか?国際通りというのはですね…」
バスガイドさんの長い話がまた始まった。
「ねぇ、真奈。さっきのどういうことか説明してよね」
美樹がそう言いながら私に詰め寄る。
そうでした…。美樹は凜のことが好きだったんだよね。
私、なんてことしちゃったんだろう…。
一人で頭を抱えていると、美樹が可笑しそうに言った。
「そこを聞いてるんじゃないわ。いや、そこを聞いてるんだけど…とにかくやましいことがなかったかを聞きたいの」
「それ、嫉妬?」
「…真奈ちゃん?」
美樹に満面の笑みでそう呼ばれると、口答えはできない。
「はい、美樹さん。今すぐに話します!」
私はそう言って話そうとしたものの、右隣から暗いオーラを放った視線を感じたので筆談で説明することにした。
そして、ようやく説明が終わるころに、バスが那覇空港に到着した。
「なるほどね!真奈ってば本当、少女漫画の主人公なんだから〜。そのうち、その”あの子”ってやらが真奈の前に現れるかもよ〜」
冗談めかして美樹は言う。
私も「かもね〜」なんて笑顔で言ってるけど、どうしても冗談のようには思えなかった。
あの子が私の目の前に現れるような気がするのだ。
なぜなら…近々催される体育祭の開催日辺りであの約束から10年経つことになるのだから。