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*119*
私は馬鹿だ。誰かが助けてくれることを期待している。逢坂くんが追って来なくてよかったと思うのと同時に追いかけてきてほしかったと思ってしまうの。ああ、本当に私は馬鹿だ。
「はあ」
思わず漏れる溜息。冴えない気持ちを引き摺って私は脱衣所の扉を開けた。
「あ、プールサイドにいた可愛い子だー」
「隣に居た人、超イケメンだったよね!」
「メーアドもらえないかな?」
女性の声が聞こえる中、私はレンタルしているロッカーまでただひたすら歩き続けた。そしてようやく辿り着き、服に着替えた後、スマホを確認すると、LINEにメッセージがあった。
”先にプールを出ますた”
”置いて行っちゃいってごめんね”
”あたしと浅井のことは気にせずに、真奈は”
”逢坂と楽しむで”
顔文字ひとつないメッセージ。そして誤字脱字の多さ……。これは、間違いなく走りながら打ったものだろう。
「本当、せっかちなんだから」
私は頬が思わず緩むのを感じながらロッカーを閉じて、脱衣所を出た。
ずっと暗い所に居た所為か、外に出た瞬間、目が眩んだ。私は太陽に手を翳しながら暫く青空を仰ぎ見た。
「綺麗、だなあ…」
空はどこまでも青く高く澄んでいた。ふと彼女は思い立って後ろを見た。そこにはプールで愉しげに遊ぶ、色とりどりの水着を着た人がたくさんいた。
――まるで水辺にたくさんの花が咲いているようだ。しかし、彼女の眼にはどこまでも悲しく、そして色褪せて見えた。
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