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*122*
*美樹side*
心が痛む。
叶わない恋だとわかっているのに、どうしても願ってしまう。期待してしまう。
もしかするとあんたの隣にあたしが居られるんじゃないかって……。
――予感はしていた。
彼が彼女を思いすぎるがために暴走してしまうことを。
傍から見ればただ可愛い女の子からカッコいい男の子がかき氷をもらっただけ。
でも、私達4人にとってはそれは大きな意味合いを持つ。
浅井が真奈に好意を抱いている
そんな明確な構図を表したようなものだ。
当の本人はそれに気が付いているかはわからないけれど、そのうちわかるだろう。彼女は頭がいいのだから。
あたしはただその光景を何も言わずに見ていた。
というより、ショックが大きすぎて何も言えなかった。
息が詰まるような感覚だった。
ただ心の中はどうして?という思いだけだった。
そのうちに凜は自らその場を立ち去った。
自分の行動に驚いて、腹を立てて、悔しくて、逃げたのだ。
そんな彼を慰めなくてはと思った。
こんなあたしがそんなことできるはずもない。そうは思ったが足は止まらなかった。
急いで着替えて、真奈にLINEで立ち去ったことを詫びた後、全速力で凜を追いかけた。
凜の背中が見え隠れした。
彼も走っているようだった。
急に彼が立ち止まって、あたしは追いついた。
そして話しかけようとした瞬間、彼がこちらを振り向いた。
――あたしを見つけてくれた!
そう思った。でも、そうじゃなかった。彼はプールのほうを見つめていた。また真奈のことを思って行動を起こそうとしているのだろう。そんなこと、容易に察することができた。あたしはそれが悔しくて、早くこの気持ちに気づいてほしくて、彼の胸の中に飛び込んだ。
そして思わず口に出してしまいそうになったこの気持ち……。
言ってしまえれば楽になったのかもしれない。それでもそんな勇気はなかった。フラれるのが怖かったから。だから、薄らとだけ匂いを漂わせてその場を走り去った。
――どうか気づいてほしい。
ただそれだけを願って。