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*126*
私と凜が出会ったのは幼稚園の入園式だった。
『…終わります。皆さん立ってくださ〜い』
マイク越しに誰かの声が聞こえる。確か園長先生のはずだ。
『これにて入園式を閉式とさせていただきます』
こうして入園式は終わった。当時の私は入園式とは一体何なのかよくわからなかったので、大変つまらないものだった。
「真奈?ちょっとお外で遊んで来て?母さん、ちょっとここの人とお話しなくちゃいけないの」
「うん!分かった!」
私は頷くとすぐに、母の言う通りにグラウンドへと出た。今思えば大変小さなグラウンドだったが、当時はとてつもなく大きく見えた。
「うわ〜!」
私は目をキラキラ輝かせながらたくさんの遊具を見ていると、1つ目に留まったものがあった。それはブランコだった。
「あれ、楽しそう…」
そう呟くとブランコに吸い込まれるようにそこへ向かった。すると、片方は私より前に来ていた女の子が乗っていたので、もう片方に手を伸ばし、鎖をつかんだ途端誰かの手と重なった。振り向くと男の子が私と同じ体制で立っていた。そう、それが――凜だったのだ。
「あ、ごめん!」
私は慌てて手を引っ込めたが、その男の子は無表情のまま
「ん、やるよ。俺、べつにいーし」
と言って、私にブランコの鎖を押し付けて去って行ってしまった。私はお礼を明日言おうと決めて、そのブランコを楽しんだ。
――翌日
昨日私にブランコを譲ってくれた男の子を捜しだし、お礼を言った。そしてそれと同時に名前を聞いた。
「昨日はありがとう」
「別に大したことじゃねーし」
「ううん、ありがとう。あの、あなたの名前は?」
「俺は浅井凜だ。お前は?」
「私は綾川真奈!よろしくね!」
私は笑顔を浮かべて手を差し出した。彼もその手をおずおずと握った。
「ねぇ、凜はどこに住んでるの?」
「俺?あの桜並木の近くだよ」
「嘘!?私も同じ!近いかもね!」
「…実は俺、昨日お前見た。入園式の後」
「そうだったの!?私、全然気づかなかった!」
「そりゃそうだろうな。俺の家とお前の家、5・6軒遠かったし」
「5・6軒?」
「お前そんなのも知らねーのか」
当時から物知りだった凜はそう言ってよく私に自慢したものだ。今ではそんなことは全くない。
「それじゃあ、今日一緒に遊ぼうよ!」
「今日?」
「…駄目?」
「いや、駄目じゃないんだけど…その、俺、女子と遊んだこととか無いから」
「大丈夫!遊ぼう!」
こうして私はその日一緒に凜と遊び、意外と気が合うことが分かった。それからというもの、毎日、日が暮れるまで凜と遊んだ。そしてその遊び場が……あの桜並木だったのだ。