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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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*147*

「真奈ちゃん?早く教室に戻りなさいよ?授業、始まりますよ〜」

えーちゃんがちょこっと扉から顔を出しながらそう言う。私はすぐさま我に返って「はい!」と返事して自分の席に着いた。そして、チャイムが鳴るのと同時に再び花澤さんが教卓の前に立った。

「えーっと、先程挙手した方はその場で起立してください」

そう言われて、先程挙手したであろう人たちが立ち上がった。勿論、私も立ち上がった。そして美樹が言っていた話を信じるわけではないんだけど……逢坂くんも立っていた。女子のみんなは「逢坂くんがいるんだったらあたしも立候補しとけばよかった〜」なんていう甘ったるい声が至る所から聞こえる。

「それで……横断幕係りと看板係りはここに。応援団に所属する方は後方に。どれにも立候補しなかった方は、先生から説明がありますので、暫くそのままお待ちください。それでは散らばってください」

それと同時に立っていた人たちは移動し始めた。私のクラスは40人クラスだが、10人ほどが移動し始めていた。教室前方に5人、後方に5人という感じだ。

「はい、皆さん位置についたようですね?それでは、私の方から説明させていただきます……」

こうしてえーちゃんの話が始まり、私達は体育祭への意気込みを語った。私のクラスの色は青。なぜかこの色を見ていると落ち着くという花澤さんの意見から選ばれた色だ。

「はい、それでは体育祭、成功させましょう!おーー!!」

えーちゃんが拳を天井に向かって高く突き上げると、生徒も笑顔を浮かべながらそれを倣った。

――LHR後

なぜだか私の席の周りにたくさんの女子が集結していた。

「ねえねえ、真奈ちゃん!あたしと係り変わらない?絶対男子も応援団に真奈ちゃん居た方がやる気出ると思うんだけど……」
「美香子より、私と変わらない?綾川さん可愛いしさー……」
「横断幕と看板変わらない?」

皆口を揃えて「私と変わらない?」と言う。全く嫌になっちゃう、都合のいい時だけ、自分の欲を押し付けてきて。私はこういうの好きじゃない。だから断る。

「ごめんね。先生にすっごい頼まれちゃったの」
「ごめん。もう決まっちゃってるみたいで……」

1つ1つ丁寧に断りを入れる。これくらいの嘘は優しい嘘と言えるだろう。私はそう思いながら、笑顔を絶やさずに断り続けていた。しかし、そろそろ私にも限界がやってきた。作り笑顔をしすぎて、笑顔が引き攣ってきているような気がしてきた。もうそろそろ駄目だ――そう思った途端、優那が介入してきた。まさに助け船だった。

「ごめん!皆!真奈とこれから部活だから!皆も頑張って!ほら、真奈早く!先輩が首を長くして待ってるはずだよ」
「そ、そうなの!そういうわけだから皆ばいばい」

私が鞄の紐を肩に掛けて、足早に優那と共に教室を後にすると、不満げな声が遠くから聞こえた。

――翌日

「おはよう、綾川さん」

相変わらずの爽やか王子様スマイルを振りまいている逢坂くん。私はそんな彼の笑顔に目を細めながらも、笑顔で挨拶を返す。

「おはよう」
「あ、そーだ!綾川さん!」
「ん?どうしたの?」
「今日から看板作りが始まるんだって」
「もう始まるの?早いね」
「だね。でもデザインは決まってるみたい。毎年恒例みたいだよ?背景のデザインを少しいじってペイントするだけ、みたいな?」
「へえ。そうなんだ。もっと複雑なものかと……」
「うんうん、俺も。俺もそう思ってた」

逢坂くんはうなずきながら、時計をちらりと確認する。あと10秒でSHRが始まることに気付き、慌てて「それじゃあ、また後で」と言って自分の席に着いた。時間ぴったりに現れたえーちゃん。そこは彼女が律儀な所をよく表していると思う。

「起立。礼」

日直の掛け声とともに一斉に立ち上がる生徒たち。そして、頭を軽く下げて、先生と会釈するようにして、挨拶を交わす。

「おはようございます」
「おはようございます」
「着席」

ガタガタという椅子を引く音と共に、皆が座る。

「えー、今日から体育祭の準備が本格的に始まります。1年生の皆さんはドキドキワクワクでしょうが、あまり浮かれすぎないように。先輩や先生方を手伝うように心がけましょう。以上です。一限目は古典です」

えーちゃんの言葉を最後にリラックスムードに入る1-B。本当にのびのびしている。進学校とは思えないくらいのくつろぎようだが、このクラスは学年で一番の偏差値を誇っているらしい。恐らく、クラス編成に失敗したのだろう。もしくは私や凜の当日の成績がそこまでよくなかったかだ。私がそんなことを考えていると、目の前で手を振る美樹が。

「おはよ」
「おはよー!もう真奈ったら、このあたしが居るって言うのに、朝のうちにおはようの挨拶も無かったなんて……酷いよ」
「30秒遅れで遅刻した方が悪いでしょ」
「さ、30秒なんてそんな大した時間じゃないさ。それに細かすぎるよ!」
「だって、美樹が挨拶してほしかったなんて言うから……」
「わかりましたー。はあ。一限目から古典かー。やる気無くすなあ」
「美樹って古典苦手なの?」
「いいや?普通に得意なのかな?あんまり好きじゃないけど得意みたいな?まあ、天性の才能ってやつかな?」
「……」
「ボケたんだから突っ込んでよ」
「あ、ごめん」
「わ、わざとらしい……!?」

美樹がこれもまたわざとらしく口に手を当てて目を大きく見開いた。そんなやり取りが可笑しくて笑っていると何時の間にか、一限目を告げるチャイムが鳴っていた。


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