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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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――放課後

「あの、私今日から看板を担当することになったので、暫く部活動に顔を出せないかもしれないんです。すみません」

私が先輩の教室の前で先輩に向かって深々とお辞儀する。先輩らはそれを笑顔で快く受け止めてくれた。そして、先輩への報告を終えた私は教室の帰り、教室で待っていた逢坂くんと早速作業を始めることにした。まず見本となる写真を見ながら看板の板に下書きを施す。そして、それを終えたらまず背景から塗り上げる。色は夏の晴天によく映えるように黄色とオレンジでドット柄を描くことにした。

「なんかこういうの久しぶりだなあ」

逢坂くんが楽しそうにペンキで看板の背景を塗りながら言う。ちなみに、今日は一番バックとなる背景の黄色を塗り、明日、オレンジでドット柄を描く予定だ。だから、私も逢坂くんも今、同じ黄色のペンキを片手に色を塗っている。

「私も久しぶりだなあ。おじいちゃんを手伝った時以来だから……2年ぶりかな?」
「おじいちゃん?」
「そうそう。京都に住んでるの」
「へえ、そうなんだ。何したの?」
「んーとねぇ……」

こんな感じで会話のネタに困ることは無かった。しかし、1つ困ることがあった。それは……色を塗り進めるにつれて逢坂くんと近づいてしまうということだった。どういうことかというと、私達はより効率よく作業を進めるために、手分けして端から塗り進めていたのだ。そのためどんどん私たちの距離は近づき、最終的には向かい合うような形で作業を進めなくてはならないのだ。そんなことになったら、私の心臓は破裂しそうなくらいドキドキするに決まっている。というよりも既にそういう状態になっている。段々と口数が減っていき、互いに塗装に集中力を掛けていた所為か気づけば額と額がくっつきそうな距離まで近づいていた。間近で感じる逢坂くんの息遣い、動き。そのどれもが惚れ惚れするほどに無駄がなく美しい。

「綺麗……」

私が逢坂くんを見て、感嘆しながら思わずそう呟くと、逢坂くんがふと顔をあげた。その時、危うく唇と唇が接触しそうになった。私はそれに驚いて思い切り後退りしたが、逢坂くんは全く動じる様子がない。寧ろ今何が起こったのか、全く理解していないようだ。

「ん?どうかしたの?そんなに慌てて」
「ううん、なんでもないの」
「そっか。それよりもさっき、綺麗って言ってなかった?」
「え?あ、ああ。あれはね……」

逢坂くんの動きすべてが美しすぎて……何で口が裂けても言えるはずがない。私は適当な理由を見つけようと目を動かし、窓の外に目を向けた。

「あ、あの夕日が赤くて綺麗だなって思って」

私は思い切り今思いついたばかりの理由をつけたして、逢坂くんの質問に応答した。逢坂くんはそれを聞いて「そっか」と笑顔で答え、私達は再び作業に取り掛かった。

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