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恋桜 [Cherry Love]  ――完結――
作者: 華憐  (総ページ数: 176ページ)
関連タグ: 恋愛 三角関係 高校生 美少女 天然 
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円陣を最初に組んだだけあって、私達青チームはかなり強かった。午前の部は負けなしだった。50メートル走、100メートル走、各学年ごとの男女別400メートルリレー、玉入れ、綱引きの種目ではすべて1位を獲った。まさに首位独走状態だ。ちなみに私は400メートルリレーに出た。これは一応代表選手が選ばれ、その4人で計1600メートルを走るというものだ。選ばれた限りは責務を果たさなければならない。私はそう思いながら、アンカーの襷を肩から下げた。そしてテイクオーバーゾーンが始まるラインから中腹辺りで待ち構える。前走者を信じて後ろは振り向かない。

タッタッタッタ……

段々リズムよく近づいてくる足音。確か、青チームと黄チームの接戦だったはず。私はそう思いながら、ちらりと左隣の黄チームのアンカーを見た。今の今まで余裕だった彼女の瞳に一瞬、焦りの色が見えた。つまり……今、青チームが黄チームを少し抜かしているということだ。私はそうとわかれば自信がついてきた。そして、前走者の「真奈!」という掛け声とともに、一瞬の迷いもなく駆け出した。左手に渡されたバトンの重さ。バトン自体はプラスチックでできた、軽い物には変わりはないけれど、これまでに走ってバトンをつないできた3人の思いが詰まっている。この重みは……そのオモさだ!私は走り出した途端、すべての思考回路が停止した。ただひたすらに、無我夢中で、400メートルを走った。常に5メートル後ぐらいからついてくる感覚に焦りを感じながら走った。だんだん皆の声援が耳に届いてきた。

「フレーフレー青組!フレフレ青組!頑張れ頑張れ青組!ま〜な〜GO!!」

皆……!私、絶対1位獲るよ!私はゴール100メートル直前で改めてそう思い直すと、ラストスパートを掛けた。ずっと私の後ろを付いてきていた黄チームのアンカーも同じようだ。だんだん追い上げられているような感覚がある。それでも私は……負けない!負けられない!

こうしてその一心で走った結果――

『なんと、午前の部最後の種目、4×400メートルリレー、女子1年生の部、1位は青組です!!』

キャーという歓声が上がる。しかし、まだアナウンスには続きがあるようだ。私は乱れた息を整えるために少し歩きながら、それに耳を傾ける。

『そしてさらに!!歴代記録を更新です!!』

わあ――!!という歓声とどよめきが全校生徒に響き渡る。勿論親の間にも。

『それでですね、各選手ごとのタイムも計っていたのですが、女子も男子も1年生は歴代記録を塗りかえました!これは後程表彰します!』

おお――!!とこれは全校生徒が互いに祝福しあい喜び合った。

『それではここから約1時間ほどお昼休憩に入ります。生徒の皆さんは熱中症対策として校舎内へお入りください。保護者の皆さんも、レストルームをご用意しております。係りの者の案内に従ってそちらの方でご飯をお召し上がりくださいませ』

こうして、午前の部は幕を閉じた。

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